ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~   作:sora1996

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第38話「星空と月と花火の下ー前篇ー」

外はまさに快晴の一言で片づくほどの青空が続いていた。雲ひとつない空は澄みきっていて外では蝉が五月蠅いぐらい程鳴き声を奏でておりまさに夏の風物詩が揃いきっているという状態だ。

8月の中旬にもなると夏休みもいよいよ半分を過ぎた頃になった。甲斐拓哉達は今現在車である場所へと移動していた。その場所とは・・・・・

 

 

「おお、海だ!!」

 

 

 ファッション部一行が向かっている場所から見えてきたのは空に負けないほどの澄んだ青が広がっている海。そう、拓哉達は本日から数日間ファッション部の合宿と言う名目でえりかの母の友人が所有している海が近くにある別荘へはるばるやって来ていたのだ。

その別荘のロケーションは海が近くにあり夏休みの終盤までは近くでお祭りが開かれ花火大会も行われており遊ぶには最高の場所だ。

 

 

「暑い……」

 

 

別荘に着くなり拓哉はえりかを除いた他の部員達は荷物運びを手伝っていた。遊び道具に食料となると結構な量であり男子といえどもかなりの重労働であった。と言うよりは女子達に意図的に重いものだけ持たされたと言う方が適切だろう。暫く時間をかけてようやく荷物運びをあらかた片づけた拓哉は五月蠅い女子達を一階にほっておこうと一人で先に割り振られた部屋に入って休んでいた。

 

 

「水が欲しい……けど飲み物は下にあるんだよなぁ…あぁ~めんどくさい」

 

肉体労働で身体が熱くなっている事もあるがこうも暑いと喉の渇きは半端なものではない。拓哉は水分が欲しいと持ってきたペットボトルの蓋を開けるが既に入っている水は既に飲み干してしまっていて暑さを和らげるモノはこの場には扇風機ぐらいしかない。拓哉は扇風機の前に立って風を身体中に浴びてなんとか暑さを飛ばす・・・10分ぐらいそうしていると幾分かマシになったようでダルさは無くなってきた。

 

「ふぅ、風が気持ちいい。これならデザインもいいのが浮かびそうだ」

 

 

部屋の窓を開けてみるとそこからふいてくる海風が心地よく拓哉の身体に当てられる。

 

 

「外に出てみようかな」

 

 

 外の景色を見てみようと拓哉はバルコニーへと向かってみる。すると身体中にたくさんの風を受けて拓哉は両手を広げて大きく背伸びをして身体を伸ばす。

広がる大自然はをこの目で直に見るのはやはり格別でありここに居ると心も浄化されてしまうかもしれないと思うほどであった。

 

 

「拓哉・・・」

 

 

「ああ、いつきか。どうしたんだ?」

 

 

 バルコニーでのびのびとしている所にいつきが声をかけてきた。彼女の顔は何やら思いつめているような顔をしておりこの景色には合わない。何を想いつめているのだろうかと拓哉は彼女に声をかける。

 

 

「僕、来てよかったのかな?」

 

 

「?」

 

 

 突然の問いに拓哉は疑問視の顔になる。別に誰もそんな事は思っていない筈……寧ろ他のメンバーは楽しそうに話していたという印象だった。拓哉はいつきが何を言いたいのか分からなかったがそれに察しがついたように目の前の少女は言葉を続ける。

 

「折角の合宿に【生徒会長】の僕が居たんじゃ皆、楽しくないんじゃ……」

 

 

 

「確かに、【生徒会長としてのお前】じゃ・・・お互いに楽しめないかもしれない。だったら【生徒会長】じゃなければいいんじゃないか?」

 

 

 いつきの言葉を途中まで聞いたところで遮って拓哉は察しがついたようにそう言った。拓哉の言葉の意味にいつきは驚いた顔になるがそれに構わず彼女の手に視線を合わせる。

 

 

「人って言うのは見た目が変わるだけで心も変わったような気分になれる。人の印象もそれだけで変わる。肩書を捨てたいなら外見を変えればいい」

 

「…肩書を捨てる?」

 

 

「うん。どう行動を起こすかそれはお前次第だけど……敢えて言うなら折角来たんだから楽しまないと損だぞ?過ぎ去ってしまった時間は取り戻せない……後になって後悔してしまっても遅いんだから」

 

 

 不器用ながらに必死に言葉を探して拓哉はいつきに言った。真意が伝わったのか拓哉の言葉を聞いたいつきはその途端にバルコニーから自分の部屋へと戻っていった。暫くすると制服姿ではなく以前に自分でデザインしたあの服を着こなした彼女は拓哉の前に現れた。

 

「ど、どう・・・かな?」

 

 

「いいじゃん、似合ってるよ。じゃあ、皆にも見せに行こう!!!」

 

 

「えっ!?ちょ、拓哉!!」

 

 

 いつきの手を取った拓哉はつぼみ達が居る部屋に彼女を連れていった。つぼみとえりかを呼んでいつきのアシストをするように指示して拓哉は雑誌を丸めて作った即席マイクのように見立てたそれを手に持って司会者のように進行を進める。

 

 

「えぇ~それではお集まりの皆様方に改めて今この場をお借りしまして新入部員を紹介いたしましょう。この方です、どうぞ!!」

 

 

 拓哉の司会の合図にあわせていつきはゆっくりとその姿をファッション部の部員にお披露目をして見せる。すると残りのファッション部員4人は普段の印象が一気に砕かれて微妙に存在していた距離感がなくなった。

 

 

「これであたし達の心は一つになった。いつき、るみこ、なみなみ、とっこ、拓哉、つぼみ、なおみ。そしてあたし。よぉい、ファッション部初合宿張り切って行くよーー!!」

 

 

 唐突にえりかがベットの上に立ち改めて心が一つになった事と合宿開催を宣言し全員は昼ごはんに流しそうめんをすることになった。

拓哉は意外と負けず嫌いというよりもイベント好きのえりかの事だから流しそうめんと言う名のバトルが繰り広げられるだろうと予想し拓哉はそのメンバーから外れて別の場所にいた

 

 

「こっちのもそうめんあるのに。ねぇ?」

 

 

「全くだ」

 

 

 流しそうめんと言う名のバトルを繰り広げているつぼみ達を尻目に拓哉となみなみことななみ達はその様子を見て静かにそうめんを食す。ファッション部面々はその後食事を楽しんだ後は・・・

 

 

「新しい自分・・・かぁ」

 

「………」

 

 

 夜になり月明りが照らすバルコニーで拓哉は一人景色を眺めていた。別に眠れないわけではない。こうやって夜空も澄んでいて星が近くに感じるほど綺麗に見える・・・思えばこうやって星を見るのも久しい気がする。

そう言えば小さい頃は父さんとよく一緒に星を見ていたな。あの頃は・・・楽しかった。でもそれは今も・・・・・

 

 

「拓哉、眠れないんですか?」

 

 

 後ろから声がすると拓哉はその方向を見る。そこには眠そうに目元を手の甲で擦っているつぼみの姿があった。見る限りでは眠りかけているようだった様子だった。

 

「いや、偶には夜更かししてみようと思ってさ。それより見てくれよ!!星空が凄い綺麗だよ」

 

 

 拓哉が珍しくはしゃぐ姿を見たつぼみ達は言われるがまま彼の隣に立つと星空を見てその美しさに言葉を失った。その瞳に映ったそれは日ごろの生活では決してみる事が出来ない吸い込まれそうな程数多くの星が光り輝いている光景だった。その星空とはまた別に海を照らす三日月もまた今のシチュエーションを活気立たせていて確かに彼に言う通り夜更かしして見るだけの価値はあった。

 

 

「俺さ、父さんが死んでから忘れていたのかもしれない・・・こうやって友達と一緒にはしゃいだりする事の大切さを」

 

 

 拓哉はバルコニーの手すりに背を向けて寄りかかりながらつぼみにそう語った。そういえば拓哉の父親は小さい頃に亡くなったと聞いている。それ以上の事は彼が教えてくれなかったからあまり詮索はしなかった。二人は暫く星を眺めていると不意につぼみは拓哉の隣にそっと寄り添って近づいた。

 

 本来の目的であるファッション部のデザイン画作りへと取りかかった。自分で書きあげたデザインの服を自分で作り上げそれを文化祭のファッションショーで発表するとの事らし。そしてそのテーマは【新しい自分】ということで一同は試行錯誤を繰り返しながらその日の一日をデザイン画活動へと費やしたのだった。

 そしてその日の夜は・・・・・

 

 

「拓哉、その聞いてほしい事があるんです」

 

 

「!?」

 

 

 今この場でなら言えるかもしれない。心臓がバクバクバクと激しく高鳴っていくのがそして今までにないほど気持ちが高ぶっている事も肌に感じるほど分かる。しかし今居るのは自分と拓哉の二人だけ…神がくれた絶好のシチュエーションを逃してなるものかと少女は今まで生きてきた人生で一番と思われるほどの緊張を必死に押し殺して目の前に居る相手に視線を向ける。

 

 

「拓哉、私は貴方の事が・・・・」

 

 

 ここから先の言葉が続かない……あと一言「好き」という言葉が。どうしてだろう?経験がないからか?違う彼の事が本当の意味で大切だからだ。大切に思っているからこそ拒絶されたら怖い。だからここから先の言葉が続かない・・・でも言葉にして伝えなければいつまでも自分の気持ちを伝える事が出来ない。

 

 

「私は、貴方が・・・・す、好きです!!!」

 

 

「っ!!!」

 

 

 遂に言ってしまった「好き」と言う一言。それを聞いた瞬間に拓哉も顔が一気に真っ赤になった。目の前に居る彼女も同じように顔が赤くなっていて物に例えるなら二人ともリンゴのようになっている。

 

 

「えっと・・・あの、つぼみ」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「………ありがとう」

 

 

 今度は自分が勇気を振り絞る番だと拓哉は思いつく限りの言葉を探し出た一言を彼女に向けた。本当だったらこういう場面ではもっといい言葉あるのかもしれないが思いつかない。自分も思う.......どうしてここまで不器用のかと・・・・我ながらカッコつけれない自分が恥ずかしいと拓哉は思った。

 

 

「・・・・・はい。もうちょっとだけこうさせてください」

 

 

「ああ。もう少しだけ・・・・な」

 

 

つぼみは拓哉も同じ気持ちであるという事を察しがつくと二人はそのまま星を眺めて時間を過ごすのであった。綺麗な星空は二人にとって一生の思い出になるだろう・・・こうやってお互いの想い人と一緒に眺める星空の景色なのだから忘れる筈はあるまい。

 

 

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