ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~ 作:sora1996
本題であるデザイン画づくりへと取りかかった。しかし午前中はずっとこの作業をやるとなると流石に集中力は続かないのか初めて一時間弱で早くもファッション部一行はだらけ始めていた。
「なぁ、気分転換に外に行こうぜ~。こうも缶詰だとアイディアのアの字も出ない」
「う~ん、ぶっちゃけあたしもネタ切れだしねぇ。確かに拓哉の言う通りかも……皆で気分転換にお散歩行こうよ」
「おお、さんせ――――」
鉛筆を加えながらも項垂れる拓哉は自分と同じく集中力の意図が切れかけているファッション部の他の部員達にそう言う。えりかも同感であるのか拓哉に同調しそう提案するが一人だけは意見が違うようであり拓哉が同意する前に言葉を遮った。
「駄目です。今日は夕方から皆で花火をやりたいと。昼間はデザインをしようと言ったのはえりかと拓哉ですよ。」
「はい、おっしゃる通りです。つぼみさん・・・はぁ~」
反対意見を提示したのは他ならぬつぼみだった。釘をさすように全員にそう言った。一度決めた事はブレさせないという几帳面と言うか真面目な彼女らしいと言えば彼女らしいのだが。しかしこうも缶詰だと本当に頭が溶けてしまいそうだが一度言いだしたらこの娘は融通が利かない。ここは諦めて午前中は無理にでも頑張るしかないかと座ろうと視線を不意に前に戻してみると・・・・
「っ!!」
そこにはファッション部全員の視線が拓哉に集まって。なんで?どうして?と拓哉は思ったがここぞと言う時にこういう事になるのは男子の宿命か・・・・しかしどうやって説得しようか・・・拓哉は思った。この部活内で俺の安息の時はないのかと。
暫し拓哉は考えたのちつぼみを上手く引き寄せる何かがないかと考えたのちそう言えば事前に調べた事で絶対に喰いついてくる事があったと思いだした。これならば絶対に上手くいくと拓哉は指を顎に当ててわざとらしく声をあげて見せる。
「湧水のようにアイディアが浮かべは楽しんだけどね・・あ、水と言えばこの近くの森に大きな池があって其処には珍しい花があるって図鑑で見た気がするな。~アレは、確かぁ~みず・・・・みずか」
「ミズカンナですかぁ!?」
「う、うん」
予想通りと言うよりは予想以上の反応であり思わず拓哉は呆気にとられる。つぼみ曰くその花は紫色の綺麗な花でありなかなか見つけにくい綺麗な花であるという事らしい。流石に歩く植物辞書のように植物の知識を詰め込んでいる。
つぼみの花に関する興味の強さを一同は改めて認識するのであった。というよりも好きなモノに対するパワーは時にここまで便利になることを認識したと言う方が適切だろうか。
「あっ・・ごほん、ちょっとお散歩するぐらいならいいかもしれませんね」
『やったーーー!!』
拓哉の作戦は見事に成功し頑固一徹のつぼみを説得し一同は散歩の為に小さな山林にハイキングをすることになった。流石に山の中は多くの樹木があり見渡す限りの緑に目が癒される。
「これだけ樹木が多いとカブトムシやオオクワガタの他にも珍しい昆虫もたくさんいそうだな」
海が近い事もあり森の中の空気は非常に澄んでいる。夏だと言うのにマイナスイオンの効果もあるのか少し涼しいほどだ。これだけ自然が多いなら夏の風物詩の代名詞である蝉以外にもカブトムシやオオクワガタが数多くいそうだ。
「(スズメバチとかには注意しないとな。見た限りこの道沿いにはみられないけど・・どこの樹が捕獲場所にはいいだろうか)」
これは夜になったら捕まえに行こうかと拓哉は思わず考えてしまう。今のうちにめぼしいクヌギの樹木を見つけておくかと辺りを見ながら暫く歩いていると突然えりかの悲鳴が響く。
「ぎゃぁあぁああっ!!?!?クモぉ!?」
えりかが歩いるところに偶々糸を張り巡らせているクモが居たのだった。実はえりかはクモなどと言った虫は苦手であり目の前に突然現れた事も重なって大声をあげて驚くのであった。
「きゃぁっ!?」
えりかの大声に驚いた他の面々はドミノのようにぶつかり合ってしまって一山後ろに居た沢井なおみがバランスを崩して勢いよく倒れそうになる。それに気が付いたのか近くに居たいつきが手を伸ばす。
「危ない、沢井さん大丈夫かい!?」
「は、はい」
「よかった」
なおみはいつきに問いかけられると一瞬の間をおいてすぐに返事をした。クモによるひと騒動は終わったのだが女子達はそれが行く手を塞いでいるため離れるように後ろに固まっており動こうとしない。
「おいおい、このクモは無害だぞ?・・・ってそういう問題じゃないか」
苦笑いしながらも全く動こうとしない女子一同を見て拓哉はやれやれと溜め息をつく。これではいつまで経っても先に進めないと辺りを見渡して近くにあった折れた木の枝と手に取りクモに近づける。するとクモはそれに捕まり拓哉は近くにあった木に降ろす。
「ビックリさせてゴメンな」
『おぉ~~~カッコいい!!』
流石は昆虫少年と言うべきか。昆虫や虫の事となるとつぼみと同じくかなりの知己を持ち女子が嫌うであろう虫の対処の仕方も精通している様子でいつき以外の女子達は拓哉の意外なる一面に声を揃えてそう言った。ここにきて拓哉の隠れたスキルの大活躍の時なのかと周りは思ったに違いない。
「みんな大げさだよ。なぁ、いつき」
「なんで僕に聞くの?」
「・・・・すんません」
いつきに同意を求めようとしたら何やらものすごい視線を食らってしまった拓哉は慌てて謝った。たしかにクモは虫嫌いの人からすれば10人中9人は嫌いだと言う事は知っているが外見が理由で嫌われてしまっているのは非常にかわいそうなものだ。だがこういう場面で拓哉はよくこんな事を考える。
・・・・どんなものにも外見というのは大事なものであるのだなと。
「さっすが拓哉!!お願い、此処は虫博士の出番ってことであたし達の前あるいてくんない?』
「はいはい、分かったよ。さぁ、気を取り直して先に進もう」
なんだかんだ女子に頼られるのが嬉しいのか拓哉は先頭に立ってファッション部一同は先に進む。道中には綺麗な川があり其処には遠くで見ても魚が泳いでいるのを確認できるほど水は透きとおっていた。
拓哉達一行は果てなく広大な緑が続く森林、山から濾過された水が小川へと流れる音、蝉や虫たちの鳴き声などの多くの自然をその身体に感じとっていくといつのまにか心も綺麗に浄化されていくかのようだった。
「なおみちゃん、さっきの拓哉カッコよかったですね。それに、咄嗟にさり気無く貴女に手を伸ばして支えになったいつきも」
「つぼみちゃん、私ね……ずっと生徒会長に憧れてたの。カッコよくて勉強もスポーツも何でも出来て……もう私からしたら雲の上のような存在で」
「分かります、直美ちゃんの気持ち。私なんか転校してきた頃なんかいつきが女の子だって知らなかったから・・・・ついその淡い恋心をですねぇ」
その恋は3分で終わってしまったのはえりかと拓哉しか知らない秘密である。因みに今はちゃんとした相手はすぐそばに居るのだが・・・おっと、この事は拓哉との秘密であり親友であるあの珍獣にも話していなかった。それに今の話とは関係ない。つぼみは心の中で自分の気持ちが脱線している事に気が付いてすぐに現実に帰る。
「私、生徒会長とどうやって仲良くなればいいか分からないの。こうやって同じ部活に入って合宿だなんて全然想像してなかったもん。ねぇ……つぼみちゃんはどうやって生徒会長と友達になったの?」
「ええっ!?・・えっと、一言ではなんとも申し上げられないと言うか」
まさか拓哉がビーファイターで自分、えりか、いつきがプリキュアであり「【こころの大樹】に選ばれた守護者になって親しくなりました」なんて言うわけにはいかない。といってもその事以外に自分といつきの接点を上手く説明できないため他に上手い言い訳が思いつかない。つぼみは茶を濁す様に言葉を適当に並べると、なおみは納得したのか勝手に話を進めていた。
皆みたいに生徒会長と普通に仲良く出来たらいいのに・・・・どうしたらいいのかな」
「・・・・・」
人と仲良くなる方法がわからない。つぼみも同じ悩みを持っているためその気持ちは痛いほど分かるがその問題に対して具体的にどう解決すればいいかその場でアドバイスできない。何故ならば自分もそのコンプレックスを完全に克服できたというわけではないからなのだ。
「(こういうとき何て言えばいいんでしょう・・・・そう言えば昨日の私はどうして拓哉にあんな事が言えたんでしょうか。ちょっと前の私なら絶対にあんな事男の子に言うなんて出来なかったのに・・・・)」
昨日の事を今になって考えてみれば本当に不思議に思うほどだ。もしかしたら自分で思っている以上にコンプレックスは克服出来ているのか?自分では気が付いていないだけなのだろうか?
だがもしもそうだとしても自分の言葉で説明できない以上は本当の意味で克服したとは言えないのではない筈・・・つぼみは自分で自分に自問自答しながら前に居る彼に向って視線を向けなおみと共に目的地の池へと歩く。
暫くして目的地である池に到着したファッション部一同。つぼみは目当てであるミズカンナを見るなり普段は見せないほど興奮して感激し目を輝かせた後えりかの提案で池をバックに昼食を食べることになった。因みに拓哉はというと・・・・
「ちょっとカブトムシやオオクワガタとかを探しに行ってくる。すぐ戻るから」
なんと女子達を残して一人で昆虫採集に行ってしまったのだ。夜行性である昆虫は昼間には活動する事は殆どないため採集するには適していない。しかしこれだけ自然が多いこの場所を目の当たりにしてしまうと昆虫マニアとして我慢できなかったのだろう。珍しく興奮した様子になっている拓哉の姿を見てしまったファッション部は絶句して何も言えない状態になってしまっているが当の本人はお構いなしの様子。
「こんな事もあるかと持ってきておいてよかったぜ。じゃあとで」
突然何処からともなく取り出した虫取り網や採集用の蜂蜜が入った鞄麦わら帽、更には自前の虫捕り用の捕獲籠を装備するなりすたこらサッサと森の奥へと入って行ってしまった・・・ホントに彼は昆虫が好きなようだ。
「……行っちゃいましたね。どうしましょうか?」
「ほっとこう。ああなると止められないから」
拓哉の意外なる行動を見てしまったつぼみはポカーンとなってしまう。彼にもああいう一面があったのだとある意味知らない一面を知る事が出来たから悪い気はしなかった。しかし、その隣に居るえりかはどちらかといえば少し呆れている様子であった。虫が苦手である彼女からすれば拓哉の行動原理はイマイチ理解できないのだから仕方がないのだが。
「とりあえずあの昆虫マニアはほっておいても大丈夫だから、あたしたちはランチタイムにしよう」
えりかはそう言うなりブルーシートを地面に敷いてランチボックスを開ける。その中には彼女の母の特性ランチが沢山入っておりファッション部女子達はそれを見るなりテンションが上がる。
「えりか、ちょっと」
「?」
つぼみは他のメンバーに気がつかれない様にえりかに呼びかけると少し離れた場所へ移動する。誰にも気が付かれていない事を確認すると先程の事をえりかに説明しどう解決するかを考えてもらおうというのだ。話を聞いたえりかは意外な悩みを持っている事に驚いたのか「う~ん」と声を漏らした。
「成程、なおみにそんな悩みがあったとはねぇ」
「折角の機械ですし、もっといつきと仲良くなってもらいたいと思うんですけど……どうしたらいいんでしょう?」
「まっかせなさーい!!」
えりかには何やらいい作戦があるようだ。つぼみはその作戦に期待を抱いていたがこのとき気が付くべきであった。この珍獣のやる事は強引過ぎて時に人の悩みをかき乱す事があると言う事に。