ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~   作:sora1996

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第40話「星空と月と花火の下ー後編ー」

「この森すごいな。昼間なのにこんなに虫が元気だなんて」

 

 

 つぼみ達がひと騒動起こすほんの数分前の森の中で拓哉は久々の虫捕りに我を忘れていた。昼間はカブトムシやクワガタムシなどは土の中で眠っている事が多く夜にならなければその姿を見る事はあまりないのだがこの森にいる虫達はそうではなく昼間なのに多くの虫達が活発に動いているのだ。

それだけではない・・・・拓哉も今になって気が付いたのだが不思議な事に此処に居る昆虫達は拓哉を怖がらない。いや、正確に説明するのであれば寧ろ拓哉という存在を昆虫達は歓迎されているのではないかと言う風に感じられる。

 

 

「っ?……今誰か通ったか?」

 

 

 大はしゃぎもココまでにしてそろそろ皆が居る池に戻ろうと拓哉は林から通り道へと戻ろうと歩みを進めていると突然猛スピードでその道を誰かが走って行くのが見えた。遠かったため誰かはハッキリと分からなかったが何か嫌な予感がする・・・不穏な胸騒ぎを感じた拓哉はその人影が見えた方向へ向かうが既にその影の主の姿がなく見失ってしまった。

 

 

 

「・・・何処に行ったんだ?」

 

 

 止まらない胸騒ぎを心中に抱えながら拓哉は人影が何処に行ったかを推理しながら考える。だが小さい山といえども部屋に動いて迷ったら大変なことになる。幸いまだ人里が近いから救いはある。しかしそれだけでは済まない気がする・・・・この言葉に出来ない程の止まらない不吉な予感・・・根拠がない分達が悪いのか拓哉は少しだが焦りが隠せない様子だ。

 

 

「拓哉!!」

 

 

「いつき?どうしたんだ?」

 

 

「実はさっき・・・」

 

 

 焦っているところで後ろからいつきの声が聞こえてきた。拓哉はいつきに何があったのかを問いただすと彼女の説明を始める。話の過程を聞いて拓哉は思わず大声で「はぁ!?」と聞き返してしまった

 

 

「あの馬鹿なんでいつもトラブルを・・・」

 

あのトラブルメーカーは・・・デザトリアンになってもそこら辺は変わらないのだなと拓哉は少し内心呆れたが今はそれに気をとられている場合ではない。早く一人で何処かに行ってしまった彼女を探さなければと辺りを見回す。暫く2人でなおみを探していると拓哉のポケットの中に入れていたビーコマンダーからアラームが鳴り始めてた。

 

「っ!?・・・おいおい、予感が当たっちまったよ。・・・こういう時ぐらい外れてほしいもんだけどな」

 

 

「まさか沢井さんに何かがあったってこと!?」

 

 

 

「ああ、その可能性が高い。」

 

 

 ポケットから取り出してビーコマンダーを見てみると角が青く光って警告音が鳴っている。コマンダーがこの反応をしているという事は不安が確信に変わったという事だ。

 もしかしたら既に誰かがデザトリアンにされているかもしれないと拓哉は一度目を閉じて心を静める。非常事態の時こそ冷静さは欠かせないものなのだから。

 

 

「………こっちだ!!」

 

 

「えっ!?」

 

深呼吸をして冷静さを取り戻した所でコマンダーを頼りに辺りを見回し直感を信じて拓哉はいつきと共にある方向へと走った。いつきは根拠のない拓哉の言い分に半信半疑であったが勝手に突き進んでいったからには追わなくてはならない。二人は・・いや、正確には拓哉を追いかけるいつきが走る事数分後。

 

 

「スプレーーーーーーーっ!!!!」

 

 

 

「デザトリアン・・・遅かったか」

 

 

 聞き覚えのある唸り声が響いた瞬間に拓哉はその方向に向かって全速力で走って行く。すると其処には虫除けスプレーに手足が生えたような身形のデザトリアンが既におりその前にはクモジャキーが堂々と立っている姿が確認できた。

 

 

「クモジャキー!!!」

 

 

「あぁ?おお、まさかお前達がここにおるとは丁度いいぜよ。この前の勝負の続きさせてもらうじゃき」

 

 

「・・・口を開けば勝負、勝負って・・・んとにお前はそれ以外言うセリフがないのかよ?・・・っ!!」

 

 

 何度も耳にタコができるほど聞いているセリフに拓哉は嫌気がさしているため嫌悪感を剥き出しにしてそう言った。その拓哉の前に映ったのはデザトリアンが無差別に辺り一面へスプレーの噴射口から毒ガスを乱射している姿。それと見た瞬間に拓哉の顔は嫌気のさした顔から憤怒のモノへと変わった。

 

 

「やめろ!!!こんな綺麗な森でそんなもんばら撒いたら樹や虫達が……」

 

 

 この美しい森で殺虫剤という虫や木々にとっては有害物質の塊でしかないものを大量にばら撒いてしまったら生態系は一気に乱れて取り返しのつかない事になってしまう。拓哉はデザトリアンに向かっていったがそれを邪魔に思ったデザトリアンは彼に向けて殺虫スプレーの雨を発射した。

 

「危ない!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 直撃する間一髪のところでいつきが拓哉を抱えて後ろの茂みへと非難した。茂みに隠れた二人はすぐに起きあがりデザトリアンに見つからない様にしながら茂みに隠れて其処から様子をうかがった。二人はいつ出ようかとタイミングを計る。拓哉はいつでも戦えるがいつきはポプリがいないと変身が出来ない。

 

 

「いちゅき!!!」

 

 

 最悪の場合は拓哉が一人で戦うしかないとビーコマンダーを構えるがそのタイミングでポプリが駆け付ける。どうやらデザトリアンの気配を感じて此処まで一人できたようだ。こうなったら逃げる必要はないと二人は

 

「二人とも、ココでデザトリアンを食い止めるでしゅ」

 

 

「うん。いくよ、拓哉!!」

 

 

「おう!!!」

 

 

 役者は揃ったと拓哉はビーコマンダーをいつきはシャイニーパヒュームを手にとっていく。暴れるデザトリアンを食い止めるべく青い鎧戦士と黄金の太陽の戦士の力を解放し青と金の光がその場を包んでいった。

 

 

「プリキュアの種、いくでしゅぅ!!!」

 

 

 いつきが黄金の光に場が包まれて風景が変わると彼女にも変化が現れる。ショートヘアーだった髪がロングヘアーに変わったのだ。ポプリを抱きしめ高くあげるとポプリの胸から光が射出され其処から凝縮された黄金色のプリキュアの種が生み出される。

 

 

「プリキュア!オープンマイハート!!」

 

 

 プリキュアの種をシャイニーパヒュームに装填していき光り輝いていく。そして金色の光の香水を上半身に拭きかけて辺りにその光が拡散するといつきは上半身にパヒュームの光を噴きかけるフリルが出現その次にスカートが纏われていく。

 次に脚に光を浴びせるとロングブーツが纏われ胸、両手首にパヒュームの光を浴びせるとプリキュアの象徴のハート型のリボンとリストバンドが形成される。

 いつきは一通りのコスチュームが纏われたあとにロングになった髪を靡かせるとそれがツインテールに纏まっていき色もイエローかかった茶髪からゴールドに変わり髪止めのリボンとピアスがつけられて変身が終わる。そして仕上げにシャイニーパヒュームを腰に当ててパヒュームキャリーに収納するとポーズをとって全体のシルエットを見せる。

 

「陽の光浴びる一輪の花、キュアサンシャイン!!」

 

 

「重甲!!」

 

 

 拓哉はビーコマンダーを取り出し赤いスイッチを押して黒い羽のウィングを開かせると変身コードを叫んでコマンダーを頭上に掲げた。

掲げたビーコマンダーが青く光りを発生させあると中に収納されているブルービートのインセクトアーマーが元の大きさに戻っていき拡散し拓哉の身体もその蒼い光へと包まれていった。

まずは腕に素早く鎧が纏われ次に胸と下半身そして顔以外のすべての部分に重厚なる鎧がまとわれると最後に拓哉の顔が鎧騎士の仮面に包まれて蒼いカブトムシの戦士へと姿を変えて蒼い閃光が当たりに発生する

 

 

「ブルービート!!!」

 

 

 ジャキっと金属音を冴えながらポーズを決めて鎧騎士の姿に変えた少年は名乗り上げを決めた。

 

『はぁああああっ!!!!』

 

 

 変身完了後にブルービートとサンシャインは同時に飛び上がってパンチとキックのダブル攻撃をデザトリアンに向けて放った。パワーファイターのブルービートと変身者のスペックが高いサンシャインの強烈なる不意打ちによってデザトリアンは地面に倒れる。

 

 

「やはり出てきよったか。やれ!!!」

 

 

 デザトリアンに不意打ちを食らわせた者の正体がブルービートとさんじゃインだと知るやいなやクモジャキーの突撃命令が下ると一斉に二人に向けてスナッキーの先兵部隊が向かってきた。

 

 

「はぁあぁっ!!!」

 

 

「でりゃぁあっ!!」

 

 

 しかし今更雑魚相手に苦戦するほど2人は弱くはない。ブルービートは先の戦いでの破損から完全修復したスティンガーブレードを装備して向かってくるスナッキーを斬り刻む。

サンシャインはと言うと鍛えあげている格闘戦術を駆使しスナッキーを投げ飛ばし人海戦術で身体の動きを封じられ様なものであればプリキュアのエネルギーを暴走させて身体に爆発のような波動を放って牽制する。

 

 

「ビートルブレイク!!!」

 

そのサンシャインに負けていないのがブルービートであった。彼に周りにも数多くのスナッキー軍団が取り囲んでくるが一瞬の隙を見逃さずブレードの斬撃で一気にスナッキーを消滅させた。

 

 

『たぁあああああああぁああぁああああぁっ!!!!!!』

 

 

恐ろしいスピードでスナッキー部隊を空へ投げ飛ばし昼間のお星さまへしてったり時には斬り刻んでやったりとどんどん数を減らしていく。

 

「ほぉ随分とやるなぁ・・・デザトリアン!!!」

 

 

「スプレーーーーー!!!」

 

クモジャキーの指令を受けると不意打ちを狙いデザトリアンは素早く頭を動かすとターゲットをサンシャイン絞り彼女へとそのスプレー発射口を向ける。

 

 

「っ!?」

 

 

「危ない!!!」

 

 スナッキー軍団を倒しきった事で油断していたサンシャインは反応が遅れてしまい攻撃からの回避が間に合わなかった。だがその彼女の前にブルービートが立った。インセクトアーマー全身で殺虫剤を受け止めた瞬間に彼の身体はすぐに異変が起きた。

 

 

「ぐあぁあっ!?!?・・・な、何だ!?い、インセクトアーマーの動きがおかしい」

 

 

ただの液体を受け止めただけ。そう思っていたのだがそれは大きな間違いだったのだ・・・・物理的な攻撃は受けていないにもか関わらず大打撃を受けた様にアーマーから火花が散りその場に手と膝をついて脱力してしまうほどのダメージが彼に襲い掛かったのだ。すぐに立ち上がるが鎧は思う様に機能しない。

 

 

「ブルービート、大丈夫!?」

 

 

「あ、アーマーが……機能が、インセクトアーマーの機能が低下していっている」

 

 

 異変を感じアーマーに目線をやってみると殺虫剤を受けた胸の装甲の表面が若干ながら溶けているのだ。拓哉の目に映ったのは【Armor―Error】の表示。装着者の拓哉も知らなかった。まさか昆虫の弱点がこのインセクトアーマーの弱点にもなるとは思いしなかった。

 鎧の機能が低下し身体も思うように動かせないが今は森や虫達を守るために早くあのデザトリアンをなんとかしなければならない。ブルービートは立ち上がろうと力を込めるが自分が思っている以上にダメージは深刻でありその身体は動かなかった。

 

 

「これはええ。ブルービートにトドメをさせ!!!」

 

 

『っ!?』

 

 

 再び湧いてくるスナッキー軍団。更に迫るデザトリアンに2人はお互いに背を合わせながら周囲を見て状況を判断する。今の自分達の戦況的にはサンシャインは本調子だがダメージが受けインセクトアーマーに異常をきたしているブルービートは全快ではないため正直二人だけでは厳しい。

 

 

「キーーーーーーーっ!!!!」

 

 

 その二人にお構いなしにデザトリアンと殺虫剤を噴射し同時にスナッキー軍団も跳びかかって動きを封じにかかった。もはや絶体絶命のピンチ・・・スナッキーの大軍団が一斉に飛びかかってきた瞬間に2人は思わず目を瞑った。

 

「っ!?」

 

 

絶体絶命の二人に対するその攻撃は当たる前に何かによって防がれてデザトリアンもその何かによって飛ばされていた。思わず顔をそむけて身構えていた二人は何事だと思って前方を見ると其処にはあの二人の姿があった。

 

 

「っ!?マリン」

 

 

「遅れてごめん」

 

 

「大丈夫ですか?ブルービート」

 

 

「ブロッサム。ったく、遅いぞ」

 

 

 ギリギリ間に合ったとマリンはサムズアップをして得意のドヤ顔を浮かべその隣に居るブロッサムは弱っているブルービートに肩を貸す。4人が揃った瞬間にクモジャキーはニヤリと笑みを浮かべて口元を歪ませた。どうやら2人だけでは勝負としては物足りなかった様子だ。

 

 

 

「ようやく残りも来たか。デザトリアン、まとめてぶっ潰すぜよ!!!」

 

 

『!?』

 

 

 クモジャキーの号令の途端にデザトリアンの攻撃が激しくなる。4人は直撃をギリギリで避けながらもデザトリアンとの距離を縮めてやる・・・やはり逃げてばかりでは勝負には勝つ事は出来ないの。勝つためには攻めなければならないと散開しながらデザトリアンの攻撃パターンを分析する。

 

 

 

「0,1,0インプット。絶対零度冷凍弾!!!」

 

 

 あの動きを封じるのが先決だと判断したブルービートはブロッサム達にデザトリアンの注意がブロッサム達に分散している隙をつきホルスターからインプットマグナムを引き抜き構える。素早く暗証コードを入力し一度飛び上がりながら距離を縮め近距離での絶対零度冷凍弾を脚に浴びせて氷柱へと変えさせる。

 

 

「す、スプ!?・・・っ!!!」

 

 

「今だ。行くぞ!!!」

 

 

 

 今こそ反撃の時。ブルービートは全員に合図を出すとサンシャインは後衛で援護体勢を維持しブルービート、ブロッサム、マリンの3人がデザトリアンへと距離を縮めていき各々攻撃態勢へと入った。

 

 

「マリンダイブ!!」

 

 

「ブロッサム・ダブルインパクト!!」

 

 

「スティンガーブレード」

 

デザトリアンへ向けて飛び上がりマリンは両足を伸ばしたキックをブロッサムはブルービートと共に飛び上がってブロッサムはダブルインパクトのエネルギーを拳に込めてブルービートはスティンガーブレードを装備して空中でビートルブレイクの発動体勢に入った。

 

「スプレーーーーーーっ!!!」

 

 

『っ!?』

 

 

 易々と攻撃を通してくれるほどデザトリアンも馬鹿ではなかった。3人に向けて殺虫剤スプレーの雨によって反撃を仕掛けようとその発射口を3人に向けたのだった。ブロッサムとマリンはともかく昆虫の力の結晶であるブルービートにとっては至近距離からあの攻撃を受ければ人間が硫酸を浴びに行くと同じぐらいの自殺行為に等しい。

 

 

「(この距離じゃ回避が間に合わない。こうなったらアーマー大破覚悟で突っ込むしか・・・だがそれだとブロッサム達が)

 

咄嗟の事で回避しようにも既にデザトリアンとの距離は詰められており動きが追いつかない。咄嗟の事にパニックを起こしてしまったブルービートは一瞬だけ動きが止まった。その様子を見逃していなかったデザトリアンも狙いを彼に定めスプレーを全力で発射するとその雨が彼に向って降り注がれた。

 

 

「サンフラワーイージス!!」

 

 

 間一髪のところで後方に居たサンシャインの黄金の盾【サンフラワーイージス】がブルービートを殺虫剤の雨から守った。体勢を立て直すべくブロッサムとマリンがブルービートに肩を貸し一度離れる。

 

 

「ありがとうサンシャイン。ギリギリ助かった。あの噴射攻撃をなんとかしないと。・・・しかし、あの早技・・まるで荒野のガンマンだ」

 

 

「いっそのことスプレーの穴の部分を石で塞いじゃえば?」

 

 

「簡単に言うな。・・・・ってソレだ!!」

 

 

 マリンの発言に全員の視線が一挙に彼女へと向けられた。こんな時に冗談が過ぎたのかとマリンは冷や汗を浮かべるが次の瞬間にはブルービートが何やらいい策を思いついたとデザトリアンの全体を見る。

 

「ビートスキャン!!」

 

 

 インセクトアーマーの特殊能力の一つに相手の弱点を探り出す探査能力がある。そのツールが『ビーストキャン』でありブルービートは今ゴーグルに映し出されているこのでデザトリアンの最大の武器殺虫剤の発射口を探っているのだ。探知能力でデザトリアンの全体図をくまなく探す。

 

 

「奴の攻撃はあの照準だ。あれを使えなくすれば勝てる!!……方法は?」

 

 

 発見した場所は顔面の中央の部分。あの部分を使えなくすればデザトリアンの戦力は大幅にダウンする。それさえ出来れば必ず勝てる・・・しかし、迂闊に動けば攻撃のレスポンスの差で押し負けてしまう。

 

 

「そうか!!」

 

 ブルービートが策を講じているとゴーグルのモニターにカブトムシが羽ばたいている場面が写される。それを見た瞬間ブルービートは方法を思いつく。まだ隠されているインセクトアーマーの特殊能力の一つ・・・それこそが打開策だ。

 

 

 

「何か思いついたんですか?」

 

 

「ああ、方法はこれだ!!」

 

 

 ブルービートが前に出る。そして腕を前に突き出して組んでいくとインセクトアーマーの残りのエネルギーを一点に集め始める。稲妻の様な光が彼のアーマーから発生するとそれに合わせ組んでいた腕を下の方に勢いよく振り下ろした。

 

 

「ビーファイター、ソニックフラップ!!」

 

 

 その瞬間にアーマーに蓄積したエネルギーが変換されデザトリアンへと向けて発射されるとデザトリアンの身体から突然火花が発生し苦しみ始めた。

 『ソニックフラップ』それは昆虫の翅の羽ばたきに習った機能であり、超音波を放つ技。破壊力は限られ威力は大したものではない。だが小さいものでもそれが一つに集まれば大きいものを倒す力を生み出す事もある。敵(デザトリアン)に学び反撃する、昆虫(インセクトアーマ)に学び群れ(チームワーク)を活かす。これこそが真のチームプレイだ。

 

 

「ス、スプ!?・・・・グオオォオォオォオォオッ!?!?!?!」

 

 

 

 超音波の一点集中攻撃をスプレーの噴射口に照射すると次の瞬間には発射口を潰されてスプレー噴射を封じるたのだ。

 

 

「さぁ、反撃だ。行くぞ!!!」

 

 

 今こそ反撃の狼煙を上げるときだとブルービート達はデザトリアンへと向かっていった。

 

 

 

 

最大の攻撃手段を封じた今こそ反撃の時。4人は一斉に再度散開して標的のデザトリアンへと距離を一気に詰める。

 

 

「たぁあっ!!!」

 

 

 第一攻撃を発したのはブルービート。先程の雪辱を晴らさんとばかりの勢いでデザトリアンとの距離を縮めて近づいていく。デザトリアンもそれに気が付いて攻撃を仕掛けるがギリギリのところでブルービートは避けて飛び上がった。

 

 

「パルセイバー!!!」

 

 空中でブルービートはパルセイバーを装備し黄金に輝く刀身をデザトリアンへと振り下ろして斬撃攻撃の嵐を叩きこむ。素早い動きで右へ左に動きデザトリアンの巨大な腕による反撃のパンチを華麗によけるとトドメとばかりにパルセイバーに向けて大声を発する。

 

 

「パルスラッシュ!!!!!」

 

 

 パルセイバーの黄金の刀身が蒼くきらめくとブルービートの意思とシンクロしてその小振りサイズの刀身の大きさが変化する。青とゴールドの光を纏ったパルセイバーの刀身は数倍に大きくなりブルービートはそれを勢いよく振り下ろしデザトリアンへと初の大ダメージを叩きこんだ。

 

 

「ス、スプレ・・・・・・」

 

 

「ブロッサム、マリン」

 

 

「はい!!」

 

 

「おうさ!!」

 

 

 ブルービートの攻撃に続いてブロッサムとマリンが同時に前に出る。そしてブルービートのインセクトアーマーの肩の部分を踏み台にして勢いよく空へと跳び上がる。

 

 

「ブロッサム・インパクト!!!」

 

 

「マリン・ダイブ!!!」

 

 

 上空へと跳び上がった二人は同時に牽制技の部類でも強力な力を持つ技を発動する。ブロッサムのピンク色のエネルギーを纏った拳が叩きこまれそれに続けてマリンのソニックブームが辺りに発生するほどの超高速の急降下キックが叩きこまれた。

 

 

「す、スプレーーーーーーっ!!!」

 

 

「まだ立つのか!?」

 

 

 だが3人の技を受けてもデザトリアンは尚も立ち上がってみせる。普通のデザトリアンであれば今の二人の攻撃にそうは耐えきれるものではないのだが……驚きのあまり声を出すブルービートは呟いた。

 

 

「ワカラナイ……如何シタライイカワカラナイ」

 

 

『ッ!?」

 

 

 立ち上がりながら突然デザトリアンは4人に向かって媒体されている人間の心の中にある本心を曝け出し始めた。4人はまだ交易が来るのかと身構えるがデザトリアンは立ち上がると自らが隠している本音を続ける。

 

 

「ワタシハ生徒会長ト友達ニナリタイ。デモ憧レノアノ人トドウ接スレバイイカワカラナイ!!!!」

 

 

『……』

 

 

「仲良クナリタイ……デモ、ドウシタライイカワカラナイ。ワタシハドウスレバイイノォ!!!」

 

 

 デザトリアンは感情をむき出しにしたまま4人に向けて攻撃を仕掛ける。殺虫剤による攻撃はソニックフラップによって封じられてしまったがその程度など全く問題ないとドスドスドスと大きな足音をたてながら距離を一気に詰める。

 

 

「スプレーーー!!!!」

 

 

「何っ!?」

 

 

 突然の事に咄嗟の判断の遅れ時に命取りとなるのが戦場の戦い。ブルービートが気が付いた時にはデザトリアンの影が彼の身体を覆いかぶせているような距離だ。

 

 

「ぐあぁああぁあああぁあっ!?!?」

 

 

 その次の瞬間にはブルービートの身体はデザトリアンの巨大な腕によって薙ぎ払われて森の樹木へと勢いよく飛ばされてしまうとそれに合わせて彼の悲鳴が森の中へと木霊する。

 

 

「ブルービート!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

『うわぁああぁああぁああああぁあああっ!?!?!?!」

 

 

 ブロッサムが飛ばされたブルービートへ声をかけたその次の瞬間にデザトリアンは次のターゲットをブロッサム、そしてマリンへと絞る。見かけによらず素早い動きは2人の目には到底把握は出来るものではなかった。

 

「グオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 その一瞬の隙を見逃さず反撃の高速移動からの打撃攻撃が叩きこまれ2人も程無くしてブルービートと同じ方向へ吹っ飛ばされた。

 

 

「皆ぁ!!!……っ!!!」

 

 

 飛ばされた3人に声をかけるサンシャインにデザトリアンはターゲットを向けていき勢いよく腕を振り下ろしていく。この間合いでは跳び上がっても避けるのは間に合わない。

 

 

「サンフラワー・イージス!!」

 

 

 サンフラワーイージスを召喚しサンシャインはデザトリアンの攻撃を防ぐ。すると更にデザトリアンは自身の心の中にある不満を言葉で表現し叫ぶ。

 

 

「っ!?・・・私はなおみさんの想いにどう応えたら」

 

 

 『人の思いに応える』どうすればいいのか分からないのは誰もがそうだろう。しかし想っているだけでは相手には伝わらない。言葉にてまたは行動に示さなければ無理なのは当たり前だ。だがその方法がわからないが為に悩む事もあるだろう。それによって時には『こころの花』を萎れさせ病ませるほどに。

 

「下らんのぉ。仲良くなりたい?なんじゃよぉ分からん理由でこころの花をからしたのぉ。友を得る方法はただ一つ……『熱い拳』で語り合うのみ。ゴチャゴチャ悩まんと相手の飛びこんでいけばいいぜよ!!」

 

 

 確かにクモジャキーの言っている事は一理ある。悩んでいていつまでもウジウジシているぐらいならば『当たって砕けろ』という言葉があり相手のぶつかっていくことも一つの手段としては候補に挙がるだろう。クモジャキーは残りの戦士キュアサンシャインへと攻撃を伸ばそうとデザトリアンへと命令を下す。

 

 

「ゆけ、デザトリアン!!!」

 

 

「スプレーーーーーっ!!!」

 

 

「っ!!!」

 

 

 相手は自分の事を想ってくれている人間。それを感じてかサンシャインは反撃を躊躇する。その間にもイージスを粉砕しようとデザトリアンは腕を伸ばし何度も叩きつける。そして次の一撃で粉々にしてしまおうと力を込めたその時・・・・

 

 

『はぁあああぁあああぁああああああぁあっ!!!!!』

 

 

 森へと飛ばされたブルービート、ブロッサム、マリンの3人の渾身のトリプルパンチアタックがデザトリアンの身体へと叩きこまれ地面へと転がり落とした。

 

 

「脳筋野郎。確かに”今回だけは”お前の言ってる事には筋が通ってる部分がある。それは認めよう。だけどな、人が相手に対してどうやって想いを伝えるかそれをお前が強制する権利はない!!」

 

 

「なんじゃとぉ!?」

 

 

「人間は誰だって他者にどう思われているか常に考える。大切だと思っている気持ちが強ければ強いほど本当の気持ちを伝えられなくなる事だってあるんだ。・・・その人の迷いに漬け込んでデザトリアンの糧にした貴様を許さん!!!」

 

 ブルービートやクモジャキーにそう強く唸るように言葉をぶつける。それはまるで自分の事を重ねているかのようにも見える。彼自身も今自分の隣に居る人に想いで答えていないからだろう……

 

「(まるで自分に対して言ってるみたいだ。だけど、俺も同じだ。このデザトリアンと………)」

 

 いつか自分もその想いに応える日が来る……その時になったら自分はどうするだろう?同じように悩むのか?……いや、違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええい、鬱陶しい・・・やれ、デザトリアン!!!」

 

 

 突如動きが止まったブルービートへとクモジャキーはデザトリアンを向かわせる。だが動かない彼に変わってブロッサムとマリンのダブルパンチが再びデザトリアンを地面へと平伏した。

 

 

「オ友達ニナニタイヨォオオ!!!!」

 

 

「友達になるのは簡単だよ。だってもう仲良くなりたいと思ってるんだもん」

 

 

「っ!?」

 

 

「マリンの言う通りです。二人が友達になりたいと思っているならいつきとなおみちゃんはもう友達です。ですよね?サンシャイン」

 

 尚も叫び続けるデザトリアンに向けてマリンが前に出た。それにブロッサムも同調しサンシャインに声をかける。

 

 

「うん。友達だ。私と君は友達だ!!!」

 

 

 サンシャインは両手を広げてデザトリアンに向けて言葉を投げる。デザトリアンの中に潜在意識がその言葉に反応すると攻撃の手が急激に緩み始めた・・・つまりサンシャインの気持ちがデザトリアンの媒体にされているなおみの心に届いたのだ。

 

 

 

「デザトリアン、そんなぬるい友情では己を高めることは出来んぜよ!!!」

 

 

 

「クモジャキー!!」

 

 このやりとりに一人納得ができないのは当然クモジャキーただ一人だ。デザトリアンに向けてサンシャイン達の言葉ぬるいと罵り攻撃命令を続行しようとするがサンシャインによって遮られる。

 

 

「友情の形は人それぞれ。自分の考えを押しつけそれ以外の考えを貶める。その心の闇、私の光で照らしてみせる!!」

 

 

 サンシャインは怒りを胸に秘めながらクリスタルから光を発生させる。ゴールドの光がハートの形になると「シャイニータンバリン」に変化させてそれを手に取ってその場に踊るようにタンバリンを叩いてヒマワリの形をしたエネルギーを次々と発生する。

 

 

「花よ舞い踊れ、プリキュア!ゴールドフォルテ・バースト!!!」

 

 

 彼女の必殺技の掛け声とともに後衛に待機していたヒマワリ型のエネルギー弾はデザトリアンへと一斉に発射されてまるで雨の如く降り注いでいった。巨大な身体中にヒマワリのエネルギー弾が敵を包み込んでいった。

 

 

「はぁあああああああああああっ!!!!」

 

 

 タンバリンをまわして浄化のエネルギーをデザトリアンにへと送り込んでいくと身体を宙へと浮かせてみ動きを封じ。タンバリンを持つ手を前に伸ばしてそれを回していき浄化のエネルギーを送り込んでいく。

 

「ちっ。ここからが本番じゃき。俺の新たなる必殺技『ビックバン・クモジャキーサマークラッシャー・スペシャル』」

 

 

 デザトリアンを浄化された事に業を煮やしたクモジャキーは密かに開発した新技を見せてくれるとばかりにブロッサム達へと拳に込めた赤黒いエネルギー弾を発射した。

 

 

「脳筋野郎が……ブロッサム、マリン」

 

 

「はい!!」

 

 

「やるっしゅ!!」

 

 

 クモジャキーの長ったらしい必殺技名を聞いたブルービート、ブロッサム、マリンが前に出ると劇劇の準備を即座に開始。ブロッサムとマリンはフラワータクトを手に取りブルービートはインプットマグナムとパルセイバーを装備する。

 

 

「セイバーマグナム!!!」

 

 

「ブロッサムタクト!!」

 

 

「マリンタクト!!!」

 

 

 蒼、ピンク、水色の光がそれぞれ3人の手の中にある武器から発生すると即座に3人はクモジャキーが放った赤黒いエネルギー弾へと照準を合わせる。

 

 

「花よ輝け、プリキュア!ピンクフォルテ・ウェイブ!!!」

 

 

「花よ煌めけ、プリキュア!ブルーフォルテ・ウェイブ!!!」

 

 

「マキシムビームモード!!!」

 

 

 3人から放たれた3つのエネルギー波はクモジャキーのエネルギー弾を粉砕しクモジャキーへと向かう。流石に分が悪いと判断したクモジャキーは3人の合体光線が自分へと及ぶ前に瞬間移動でその場から消える。

 

 

 

『・・・っ!?』

 

 

 逃げられた?そう思った矢先にクモジャキーは腕を組みながら気の得たの上に立っており自分達を見下ろしている。劣勢を強いられている癖に態度だけは上から目線のようだ。

 

 

「力をつけてきたのぉ……ますます楽しくなって来たぜよ」

 

 

 相変わらずの戦い以外興味を示していないというセリフだけ残して今度こそ瞬間移動で4人の前から姿を消した。まさか今の合体攻撃でも自分達の力に対して恐怖を抱いていないというのか?だとしたらクモジャキーという幹部の強さは一体……これからの戦いはますます激しくなると4人は言い知れぬ予感に包まれる。

 

その日の夕方になると学園祭用のデザイン画のストックがようやく目標数にまで達成した。これで後の数日間は心おきなく遊びができる。そして本日の夜はメインイベントは夏の風物詩である花火だ。

 

 

 

「…………」

 

 

 えりか達が花火を楽しんでいる中で拓哉は一人でペンションのバルコニーで夜空の空を眺めていた。今日のデザトリアンの心の声は他人ごとではない気がしてならない。いや、まるで自分の事を言われているかのようで気分はすっきりしないでいたのだ。

 

 

「拓哉?」

 

 

「っ!?・・・つぼみ」

 

 

 後ろからの声に振り返ると其処には可愛らしい浴衣を着た花咲つぼみの姿があった。普段見ない彼女のその姿に思わず拓哉は目線に困った。何故ならその姿は本当に可愛いからだ。

 

 

「あ、あんまり見ないでくださいよ。恥ずかしいです」

 

 

 

「あ、ああ」

 

 

 何で素直に本人に今の姿が可愛いと言えないのだろう。拓哉はこうも自分が抱いている事が伝えられない自分自身に内心イラっとしてしまうが心を落ち着かせる。つぼみは何も言わずに彼の隣へと移動し昨日と同じように星空を眺める。

 

 

「なぁ、つぼみ」

 

 

「は、はい!!」

 

 

 

「今日のデザトリアンの心の声・・あれ、まるで俺の事を代弁してるかのようだった。・・・でもお前の言葉を聞いて吹っ切れた。だから、俺の気持ちを聞いてほしい」

 

 

「え?」

 

 

 突然拓哉がつぼみの顔を見て真剣な表情を見せる。つぼみはと言うと拓哉のいつにない行動のせいか緊張してしまい挙動不審の状態だ。

 

 

 

「つぼみ、・・・・・俺も、いや…俺はお前の事が好きだ。だから俺の傍にずっと俺の隣に居てくれ!!!」

 

 

 自分の想いを今こそ彼女へと伝える時。昨日は彼女が勇気を振り絞って自分へと気持ちを打ち明けた・・・だから今度は拓哉が抱いている目の前の少女に自分の気持ちを打ち明ける番なのだ。

 もっといい言葉があったかもしれない・・・でも今の気持ちはこの言葉だからと拓哉は精一杯の言葉をつぼみへ言った。

 

 

「勿論です。ずっと隣に居ます。貴方の傍にこれからもずっと」

 

 

 つぼみがそう言って拓哉に抱きついた瞬間にえりかが浜辺でロケット花火を打ち上げた。花火が星空と月の下で弾けると夏の夜空を美しく照らす。

 

 

 星空と月と花火の下で夏の香りする淡い恋を2人は実らせたのだった。


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