魔法少女リリカルすれいや~ず!   作:タカヒロオー

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今回からしばらくSIDE(視点)がコロコロ変わります。読み苦しいかもしれませんがご了承ください。


四十九、それぞれの 心に潜む 闇の意味

NO SIDE

 

弾けた魔力を頼りにはやてを探すリナたちだったが、そこで見つけたのは覇王グラウシェラーと魔王に侵食された融合騎…シャブラニグドゥ・ナハトだった。後に「破滅の聖夜」と呼ばれる闘いが今始まろうとしていた…。

 

SIDE:リナ

 

…魔力の痕跡を追ってここまできたけど、待ってたのは最悪の結果だわ…

 

「あれは…クロハネさん?!」

 

なのはの呟きに私は頭を振る。

 

「…ほう、久しい顔がいるな。まさか異なる世界で再び合間見えるとは思わなかったぞ、〈魔を滅する者/デモン・スレイヤー〉リナ・インバース…いや、今は…」

 

「…今のあたしは逢魔リナ、リナ・インバースとは違うわ。そっちこそ女性の姿なんて初めてじゃないの?…魔王シャブラニグドゥ!」

 

あたしは魔王であろう女性を名指しで指差すが、それを聞いていた覇王グラウシェラーが高笑いをあげる。

 

「くくくっ…こいつの名は魔王融合騎シャブラニグドゥ・ナハト。魔王様の記憶と能力を受け継いではいるが、あくまで別物…すなわち、我等はこの世界を破壊し支配する同胞となったのだよ!」

 

………!!じゃあはやてや他の騎士たちは…?!

 

「騎士たちは魔力コアとなって夜天の書に吸収され、それに絶望された我が主、八神はやては今は管制人格と共にわたしの中で眠っておられる。」

ナハトは一旦言葉を止め、右手を掲げる。するとその手の中に一本の杖…杖の先に骸骨の着いたそれを、あたしは前世で見たことがあった。

 

「…?!…な、なんなのこの吐き気を感じる禍々しい邪気は?リナ、あれってまさか?!」

 

さすが元セイルーンの巫女ね、アメリアには判ったか。…あれは餓骨杖(がこつじょう)。シャブラニグドゥの武器にして、最強の魔剣と呼ばれる一振りだ。

 

「…私の中の魔王の記憶を基に、夜天の書の力で複製したいわゆるレプリカだ。とはいえ限り無く本物に近いがな。」

 

ナハトは餓骨杖を振り下ろし闘いの構えを取る。

 

「…騎士を失った主はこの世界に絶望し、嘘であってほしいと願った。そして覇王はこの世界を破壊し滅する事を願った。…ならば私はその願いを叶えるだけだ。…私が暴走するその前に!!」

 

「ちょっと待ちなさい!はやてとクロハネはあんたの中で眠ってるだけ…まだ死んだわけじゃないでしょ?なら…」

 

あたしに続いてなのはがナハトに訴えかける。

 

「そうだよ、まだ終わった訳じゃない…ううん、わたしたちが終わらせたりしない!!必ずはやてちゃんもクロハネさんも…そして貴女も助けてみせる!」

 

「…無駄だ。この結末はだれにも…」

 

「なら、あなたはどうして泣いてるの?…泣いてるのはまだ諦めてない証拠じゃないの?!」

 

本人は否定するが、確かにナハトは涙を流していた。

 

「…えぇいしゃらくさい!シャブラニグドゥ・ナハトよ、我等の邪魔をする其奴らを始末してしまえ!」

 

 

「言われなくても解っている。…お前たちに罪がないのは承知しているつもりだ。だがもはやあの平穏な日々は戻る事はない…せめて苦しまないよう逝かせてやる。」

 

ナハトは左手を天にかざすと魔力を収束する…まさかあれって?!

 

「なのは、アメリア、全力で距離をとって回避…来るわよ!!」

 

あたしたちはカートリッジをロードしつつ距離をとった。と同時にナハトの魔力収束が終わり…

 

『…咎人に滅びの禍を。魔星よ集え、全てを呑み込む光となれ。…貫け、赭光!!』

 

膨れ上がった魔力は魔王の力を示す赭色。

 

『闇に…沈め! 赭光収束斬[ルビーライトブレイカー]!!』

 

ナハトから放たれた極太の収束砲撃をあたしたちはなんとか回避する。でもそれより今の砲撃は…

 

 

「今のはわたしのスターライトブレイカー?」

 

そう、なのはの言う通り今の砲撃は星光集束斬[スターライトブレイカー]が基になってる。

 

なのはほど集束技術が無い分威力は下がってるけど、その代わり広域殲滅能力が付加されてる。

 

「夜天の書は吸収した術者の呪文を使うことができるわ。なのはやフェイトは1番最初に蒐集されたから…」

 

「そう言うことだ。ナハトはお前たちだけではない、騎士たちや魔王シャブラニグドゥの力も操れる。もはやお前たちに勝ち目はない!」

 

 

なぜか威張り腐った態度を取るグラウシェラー。…あんたなにもしてないでしょうが…。

 

「それに忘れてない?!あたしやアメリア、プレシアさんは魔力を蒐集されてない…すなわち、あたしたちの呪文は使えないのよ!」

 

最悪の事態を想定して、あたしとプレシアさんは魔力蒐集を後回しにしていたのだ。

 

さらにアメリアは騎士の為やはり蒐集していない。吸収されない限りは大丈夫なはず。

 

「ぬぬぬっ…しかしお前らだけで何が出来る?」

 

「ちょ~っと待ちなさい!」

 

「わたしたちも手助けするよ!」

 

そこに現れたのはアリサとすずかだった。「アリサちゃん、すずかちゃん!!」

 

「あんたたちいったいどうして…フェイトたちはどうしたのよ?!」

 

あたしが尋ねるとアリサは自慢げに答える。

 

「あっちには最凶の魔導師ママと常識外れのあんたの自称ライバルさんが助っ人にいったわ!」

 

「わたしたちはリナちゃんたちのサポートを頼むって。」

 

「…というわけだ。助けに来たぞアメリア。」

 

 

「ゼルガディスさん!!」

 

さらにゼルガディスまで助っ人に?!となると…

 

「みんな!ナハトはあたしとなのは、ヌクヌクとくおんで闘うから、アメリアとゼル、アリサ、すずかでグラウシェラーをお願い。…でもってアルフはフェイトたちの援軍に行ったげて。」

 

あたしはみんなに指示を飛ばす。

 

「フェイトたちはリニスさんと闘ってるんでしょ?…ならテスタロッサ一家でかからなきゃ…ね?」

 

「うん、わかった!それじゃ行ってくる!」

 

アルフはそういうと転送魔法でフェイトの元へ向かった。

 

アメリアたちもグラウシェラーと戦い始めたし…あたしたちも始めようか…なのは!!

 

「うん、絶対に助けなきゃ…はやてちゃんたちも、あの子(ナハト)も!」

 

「僕たちもがんばるよ。ねっ、ヌクヌク?!」

 

「リナはあたしが守る!」

 

よ~し、みんな準備はOKね!あの利かん坊とKY覇王倒してはやてたちを取り返すわよ!!

 

NO SIDE

 

こうしてリナ・なのはチームVSシャブラニグドゥ・ナハト戦、アメリア・ゼルチームVSグラウシェラー戦という組み合わせが出来上がり、闘いが始まろうとしていた頃より少し前、フェイトとアリシアはリニス率いる軍勢と相対していた。

 

SIDE:フェイト

 

「やっぱり来てしまったのですねフェイト、アリシア…」

 

「リニス…どうしても闘わなくちゃいけないの?!」

 

リナたちと別れてすぐ、リニスがデーモンの群れを連れて現れた。その数50…いや100近いかも。

 

「げげっ?!なんでこんなにこっちにくるのよ?」

 

「落ち着いてアリサちゃん。冷静にならないと勝てるものも勝てなくなるよ…。」アリサとすずかも動揺してる。

「もう一度言います、降伏して覇王様に隷従してください。そうすれば命だけは助けて…」

 

リニスの降伏宣告をわたしたちは拒否する。

 

「…それはできないよリニス。わたしたちは友達を…はやてを助けるって決めたから。」

 

「そーそー、それにリニスの事もね!!」

 

わたしとアリシアの返事にリニスは落胆しつつも納得した表情を見せる。

 

「…仕方ありませんね。では手加減はしませんよ?!…行きなさい、デーモンた…」

 

「ほ~ほっほっほっほっほっ!…そこまでよ、猫耳娘!」

 

…今の高笑い、もしかして…

「「「「ナーガさん?!」」」」

 

「私もいるわよ、フェイト、アリシア。」

 

「母さん?!」「ママ?!」

 

声のした上空を見上げるとそこには魔導師のローブを着た母さんとあの棘つきのビキニアーマーを纏ったナーガさんの姿。

 

「…ねぇ、あの2人の方が悪役に見えるんだけど…」

 

「しっ!それをいっちゃダメだよアリサ。」

 

小声でぼそぼそ話してるアリサとアリシアを母さんはジロッと睨んで呟く。

 

「何か言ったかしら、アリシア、アリサさん?!」

 

「「いえ、何にも!!」」

 

「それなら良いのだけど…それはそうと久し振りねリニス…」

 

母さんが声をかけるとリニスの顔色が険しくなる。

 

「そうですねプレシア…こんな形では会いたくありませんでしたが。」

 

「今からでも遅くないわリニス、戻ってきなさい。フェイトやアリシアには貴女が必要なのよ。」

 

「…申し出は嬉しいですが、今の私は覇王グラウシェラー様の配下です。その話きくわけにはいかないです。」

 

リニスの拒絶の返事に母さん、そしてナーガさんの目からハイライトが消えた。こ、これは…

 

「アリシア、アリサ、すずか、大きいのが来る、早く逃げて!」

 

わたしが叫んだのと同時にわたしたちは散り散りに散開する。と同時に…

『サンダーレイジッ!』

 

『冥王降魔陣[ラグナ・ブラスト]!』

 

母さんとナーガさんの無差別殲滅呪文がデーモン達を消滅させた。

 

「す、すごい…」

 

これにはわたしたちも驚きのあまり声も出ない。

 

「…相変わらずのバ…ふざけた魔力ですね、プレシア。それにそちらの露出狂の方も…」

 

「誰が露出狂よ?!…どうして誰もこのセンスが解らないのかしら…」

 

「「「「「「いやいやいやいや。」」」」」」

 

わたしたちだけでなく、母さんやリニスまで否定の素振りをとる。…母さんは人の事は言えない気がするけれど。

「何をやってるのリニス!さっさとそんな奴ら始末しなさい!」

 

そこに現れたのは更なるデーモンの群れを連れた覇王将軍シエラだった。

 

「ふぅ、懲りずにまた出てきたのね…アリサさん、すずかさん、ここは私たちに任せて貴女たちはリナさんたちをサポートしてあげて。…お願いよ。」

 

「えぇ!」「任せてください!」

 

そういうと2人はリナたちの元へと向かった。

 

「さぁ行くわよフェイト、アリシア。なんとしてもリニスを取り戻すわよ!!」

 

「うん、母さん!」「全力でいくよママ!」

 

たとえ覇王将軍が相手でもわたしたちと母さん、ナーガさんがいれば負ける訳がない!必ずリニスを取り返すんだ!

(一方その頃夜天の書の中では…)

 

SIDE:夜天の書の意思(クロハネ)

 

…くそ、油断した!…まさか騎士達を覇王の魔力で支配した上で取り込ませ、更に不足分をも自らの部下を吸収させて暴走を誘発させるとは…救いは主はやてが無傷のまま吸収された事。しかし…

 

「こんな近くにいるのに…どうして?!」

 

今主はやては魔王の赭い結界に阻まれた向こう側で眠っておられる。しかしナハトの防衛プログラムによって強化された結界は今の私ではどうすることもできん…

 

外でナハトと戦っているリナ殿やなのは殿に全てを託すしかないのか…不甲斐ない。

 

リナ殿、なのは殿、どうか主はやてを助けてやってくれ、頼む…NO SIDE

 

こうして各所で激闘が繰り広げられる中、最初に動いたのはリナたちとナハトの戦場だった。

 

SIDE:なのは

 

「アクセルシューター!」

 

「獣王操牙弾[ゼラス・ブリッド]!」

 

わたしとリナちゃんが同時に放った誘導弾がナハトさんに向かって襲いかかる。でも…

 

「そんな攻撃が通じるものか!」

 

ナハトさんは手に持った杖でその全てを凪ぎ払ってしまった。

 

「…こいつルークの時より強くなってる?!…なのは、フォーメーションX(クロス)で行くよ!」

 

「うん!…くおん、ヌクヌク、ナハトさんを撹乱して!」

わたしの言葉に使い魔たちは頷くとナハトさんの回りを飛び回る。その間にわたしとリナちゃんは彼女を挟み込む位置にポジションする。

 

「コンビネーションX、バスタークロスシフト…いっけ~!獣王操牙縛[ゼラス・バインド]!」

 

リナちゃんの放ったバインド弾がナハトさんの両手を拘束する。今だ!

 

「「シュート!!」」

 

互いに当たらないよう射線をずらして放った砲撃がナハトさんに向かって一直線!これなら…

 

「…むん?!」

 

ふえっ?!バインドを壊してすぐ片手ずつのシールドで防御した?!しかも周りに射撃魔法を展開してる!

 

「…貫け…ブラッディダガー!」

 

襲ってくる無数の弾丸をわたしとリナちゃんは必死で回避!でも…

 

「…無駄だ。」

 

突如現れたバインドに手足を拘束されてしまう。しかもこれは…

 

「わたしとフェイトちゃん、それにアルフさんの魔法…」

 

「もう何でもありねこりゃ…」

 

「…協力してくれたお前たちの力を使うのは気が引けるが…これで…終わりだ!」

 

ナハトさんは餓骨杖に魔力を充填させ、魔力弾を放つ。

 

わたしとリナちゃんはバインドを無理やり破壊すると魔力弾を回避した。

 

「言っても解らないんだったら愛の鞭しかないわよ、覚悟しなさい!!」

リナちゃんが叫ぶと同時に、辺りの地面がひび割れあちこちから岩の柱がにょきにょきと…これは?!

 

「…思ったより早いな、もう崩壊が始まったか…夜天の書は確実に赤眼の魔王に侵食されつつある。じきに私も意思を奪われる。覇王はともかく、主の願いだけは叶える…この私の手で!!」

 

ナハトさんは再び自らの前に無数の魔力弾を展開する。

 

「頼む…静かに眠ってくれ。」

 

言葉と同時に放たれる魔力弾がわたしたちに襲いかかる。

 

「えぇ~い、この利かん坊っ!…翔封界[レイ・ウイング]!!」

 

リナちゃんは高速機動の呪文を唱えるとナイトメアハートを剣型に変形させた。…本当に思い通りなんだね、L様…

 

あ、そう言ってる間にリナちゃんがナハトさんに斬りかかった…けど様子がおかしいの?!

 

「…まさか君に心の闇が存在するとは思わなかったよ…」

 

「なっ…これは…?!」

 

えっ、リナちゃんの身体が…消えていく?!

 

「リナちゃん?!」

 

「…大丈夫よなのは、あたしは必ず帰ってくる…だから、ナハトなんかに負けんじゃないわよ?!… … …」

 

『吸収完了。』

 

無機質な声と共に夜天の書が閉じられリナちゃんの姿は影も形も無くなっちゃった…。

 

「…我が主もあの子も、永遠の夢の中で終末の時を迎える…生と死の狭間でな…。」

「永遠なんて…ないよ!リナちゃんもはやてちゃんも必ず帰って来る!!」

 

わたしはレイジングハートを構え臨戦態勢に入る。

 

「いくよ、レイジングハート。」

 

「はい、なのは。貴女の事はわたしが絶対に守ってみせます!」

 

…さぁ、いくよ!全力全壊の第2ラウンド!!

 

SIDE:リナ

 

夜天の書に吸い込まれたあたしが目覚めたのは、見覚えのある場所だった。

 

「…ここは…まさか…」

 

ふと自分の身体を見ると、年の頃は16、7ぐらい。自分なりに胸もあった。

 

(あたしがないんじゃない、廻りが巨乳だらけなだけなんだい!!)

 

「よっ!…やっと目が覚めたかリナ…もう昼前だぞ?!」

 

「…ガウリイ…」

 

そう、ここは前世の世界のあたしの故郷、ゼフィーリア・シティのあたしの家。そして扉から顔を覗かせたのは…

 

あたしが前世で1番好きだった相棒であり旦那だった、ガウリイ・ガブリエフだったんだ…。

 




リナが吸収され単騎(使い魔´Sはいるけど)でナハトに挑むなのは、家族を救うため結束するテスタロッサ一家、主はやてを目の前にして手を出せないクロハネ(夜天の書の意思)…

そしてリナは夢の世界でまさかの再会…

次回「五十、夢のなか 迷いを断ち切る 光の剣」

それでは次回もみてくんないと…

「…なぁリナ、見ないとどうなんだ?!」

「…知るか、このクラゲ頭!」

(BY ガウリイ&リナ)

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