代わりをさせないで 作:つぶれ梅
ふふ
ではよろしくお願いします!!!
彼女との出会いは特に特別じゃない。彼女が編入してきた、それだけだ。でも彼女は変わった子だ。外国人? だからなのかもしれないが変わっている。でも可愛いし綺麗である。思わず見惚れてしまうくらい。彼女は綺麗だった。だけど考えればどうして僕だったのだろうか。僕は疑問で仕方がない。カッコいい男の子は僕なんかよりいっぱいいるだろう。しかしそれは彼女にとっては当然、いや、必然であった事は事実だ。何故って? それは……僕が同じクラスの高町なのはさんに似ているから、ただそれだけの理由。
「こ、これ着て? これかぶって? ……っ!? ふへ、あへへ〜なのはそっくり〜」
「あの……さ、フェイトちゃん? この格好……いつまでしなきゃいけないの……かな? 」
「え? 私と2人でいる時はずっとその格好してて貰わないと。うへへ〜なのは〜なのは〜」
この子……フェイトちゃんはある日突然僕の手を取り、誰もいない校庭の隅にある小屋に連れて行くと、そこで壁ドンをされた。え? 逆じゃないですか? と思えるが、フェイトちゃんは真剣な顔で言うのだ。貴方はなのはに似ているね? と……。特に仲のいい友達じゃない同じクラスの高町さんと似ている。そう言われてもピンとこなかった僕だが、その放課後、どこから持っていたのかカツラと女子の制服を着せられた。するとそこからの日々が大変。この子はこんな子だったのかというくらい精神崩壊していた。顔が崩れ、にやけながら危ない目で僕を見ている。おまけにヨダレまで垂れている始末だ。
「僕はその……男で、こんな格好嫌なんだけど…………」
「嫌なの? でも可愛いし、けん太はなのはの代わりになって貰わないといけないから」
「いけないって……僕いいよ。なんて言ってないよ? ……え、ちょっ!? うっ!? 何……するの…………」
フェイトちゃんは僕を押し倒す。誰もいないからいいようなものの、こんな所を誰かに見られたら妬まれそうで怖い。でもフェイトちゃんはやめてくれないのだ。それどころか僕の両手を凄い力で床に押さえつけ、息を切らせながら危ない目をする。今にも襲いかかってきそうなその顔に、僕は恐怖を覚えた。フェイトちゃんの顔が段々と近くなり、女の子となんか全然接してこなかった僕には刺激が強い。
「やめてよ……フェイトちゃん…………」
「……あ、ああ……凄い……ゾクゾクしちゃうよ! 今のなのはが言ったみたい! はぁ〜はぁ〜、もうダメ! いいよね? いいよね? ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから!! 」
「あ!? やめっ!? やめてよ!? 脱がさないで!? 」
「なのは〜なのは〜……っ!? ……う、うん……やっぱり男だから興奮するのはここまでだよね。裸は見ちゃいけないんだ。冷めちゃうから。はぁ……どうしてけん太、男なの? キモイよ」
「ううっ……こんなにしておいて……そんな言い方酷いよ、フェイトちゃん…………」
フェイトちゃんは蔑むように僕を見下した。酷い、あんまりだ。僕は今フェイトちゃんにあられもない格好にされている。なのに最後にはキモイと言うのだ。僕が望んでこんな格好したわけじゃないのに。ならフェイトちゃんの方だって女の子なのに女の子を好きなんてキモイじゃないかと言ったらグーで殴られた。痛い……頬がジンジンとする。僕は絶対に悪くないと思うのだ。
「けん太? 今度同じ事言ったら……分かるよね? 私だってけん太の事……殴りたいなんて思ってないんだ。でもけん太がそんな事言ったら仕方がない。仕方がなく殴るんだ。だから……けん太も許してくれるよね? 」
「っ!? ……嫌だ……」
「え? 」
「嫌だ!! 誰がこんな事されて許すもんごはっ!? 」
グーだ。またグーで殴られた。酷い、本当に酷いと思う。僕の言ってる事は間違ってないはずだ。嫌な事を嫌だと言って何が悪い。無理矢理こんな事をさせるフェイトちゃんが悪いんじゃないか。でも僕がそう言うとフェイトちゃんは僕に馬乗り、光の消えた目で殴る。無言で……何度も何度も何度も。イジメじゃないのか? そう思うのだ。しかも僕はもう泣いていた。泣かされた。女の子に力尽くで。
「うっ……ひぐっ……えぐっ……ごめんなさい……ごめんなさい…………」
「うん! もう怒ってないよ? だから泣かないでけん太。でもけん太……これからもなのはの代わり、やってくれるでしょう? 」
「ひぐっ……やる……僕やる。うっ、うっ……やるから……殴らないでぇ…………」
フェイトちゃんはまるで悪気がないようだった。そもそも殴ったのはフェイトちゃんじゃないか。こんなのは横暴だ。そんなにも高町さんの事が好きなのか。でも僕は嫌いだ。フェイトちゃんも、僕と似ていると言う高町さんも。みんなみんな嫌いだ。
「じゃ、じゃ〜大人しくしててね? なのは〜んちゅ! 」
「んっ!? あんんっ……ちゅっ……んあっ……ん…………」
これはなんだ。僕は高町さんじゃない。高町さんじゃないのに……フェイトちゃんは僕の唇を奪った。なのは、なのはと高町さんの名前を呼びながら、僕にディープな口づけをして楽しんでいる。僕は本当に高町さんの代わりだ。きっと、こんな事をしたら本人に嫌われると思って、似ている僕で満足しているのだろう。だけど……僕は嫌だ。誰かの代わりにこんな事されるなんて。凄く嫌だった。
「けん太? 今日はもういいよ、ありがとう」
「…………」
「それじゃ……また明日ね! 」
「……こんな事……いつまで…………」
僕は嫌いだ。彼女が高町さんの名前を呼ぶとき。それを僕に向ける時。僕に高町さんの格好させる時。そして……僕が高町さんを見るのも。もう嫌だ。僕は僕だ。他の誰でもない。僕なんだ。でもフェイトちゃんはいつまでも僕を……僕を高町さんにしたがる。いつからだろうか。僕は彼女が嫌いだ。いや、最初から嫌いだ。けど最近……そんな感情も持つのもバカバカしくなり始めている。できる事なら……僕はフェイトちゃんの顔なんか見たくない。しかしフェイトちゃんは僕がどこにいても見つけて僕のところに来る。どこに隠れても……無駄だった。
「きょ、今日はこれ着て!? これも! これも!! 」
「あ……うん…………」
「あへへ〜いい〜凄くいい〜。なのはと同じ〜。似合う似合う〜」
「フェイトちゃん? もう……いいかな? 」
「え、ダメだよ!? まだしてほしい事あるんだ」
今日は放課後の教室。誰もいないからやりたい放題。フェイトちゃんは僕にメイド服やナース服。女の子が着るような服をたくさん着せて興奮している。これではいつ襲いかかって来てもおかしくない。僕は怖いがもうなれてしまった。
「けん太、ぎゅってして? 」
「うん…………」
「あ……へへ〜なのはに抱きしめられてるみたい〜。もう死んでもいい〜」
これからしばらくして、フェイトちゃんは満足した。けど僕を一方的におもちゃにしたフェイトちゃんが帰った後。教室を出ようとした僕は1人の女の子にとんでもない勢いで教室に押し戻された。最初は何事かと思ったのだが、その子の顔を見た瞬間。一気に嫌気がさした。何故ならその子は同じクラスでなおかつ、僕がいつも代わりをさせられている高町さんだったからだ。涙目で怒っているようだったが、勿論僕には全く見に覚えはないのだが。
「どういう事? フェイトちゃんとどういう関係なの? 」
「……どう言う関係って言われても……」
「答えてよ!! 」
一体どうして僕は責められているのか。僕とフェイトちゃんとの関係なんて単純に僕が高町さんの代わりをしているにすぎない。ただそれだけの関係だ。でも高町さんは涙目で怒っている。正直理不尽だ。いっそ説明してあげればいいのでは? と思ったが、フェイトちゃんの……あそこまでの高町さんへの気持ちを考えると、とても僕にはできなかった。それで嫌われてしまってはちょっと悪い事をした気分になる。しかし目の前の高町さんはそんな事関係ないとばかりに僕の肩に乗せている手の力を強くする。だから僕は決めた。高町さんになんて言うかを。どうせ何を言っても、高町さんは納得しないだろう。なら僕が1つ嘘をつけばいいだけだ。それで丸く収まる。どうして僕がこんな事までしなければならない。勿論納得などしていない。でもダメだった。
「フェイトちゃんにはちょっと協力してもらってるだけなんだ」
「協力? 」
「うん、僕……お、女の子の格好するのがす、好きなんだ! だからフェイトちゃんにその……」
「なんだ、そうだったんだ。分かった。ごめんね」
まだ全部説明してないのに驚くほど上手く納得してくれた高町さん。僕は安堵する。でもそう物事はいい事ばかりじゃない。僕はそれを思い知らされた。何故なら高町さんが僕の肩から手を放し、教室から出て行こうとした瞬間だった。高町さんは足を止め、一言僕に言うのだ。それは僕の心を容赦なくエグった。
「翠田(みどりだ)くんって……キモイね」
ショックだった。自分で言ったので何も言えない。でも僕にそんな趣味もなければそんな事嬉しいとも思わない。変態なのはフェイトちゃんであって僕ではないのだ。しかし次の日、僕は珍しくフェイトちゃんには呼ばれなかった。代わりに……高町さんに呼ばれた。理由はわかるわけない。けど誰もいない。来るはずもない校庭の隅にある小屋。その裏に連れて行かれた。一体どういうつもりなのか。するとまた僕は……壁ドンされた。もう女の子に壁ドンされる僕の心情は複雑。普通逆でしょ? と言いたいのだ。
「翠田くん? 私に協力してくれないかな? 私のお手伝いしてほしいの」
「な、何……を? 」
「フェイトちゃんと恋人になりたい……」
「は……い? 」
「で、でも!? い、いきなりは恥ずかしくて……だから、予行練習! 翠田くんにフェイトちゃんの代わりをして欲しいの! 」
僕は頭が痛かった。また代わり。僕は? 僕の存在意義はなんだ。何故こうも人の代わりをさせられるのか。不満だ。こんな事受けてたまるか、そう高町さんに伝える。伝えるのだが、僕は断る事ができない。最低だ。フェイトちゃんも……高町さんも……こんな事して心は痛まないのか。僕は……もう嫌だ。
「そ、それ…………」
「やらないって言うなら……この写真ばら撒くから。そしたら大変だよ? 翠田くんの変態な趣味がバレちゃうの! それでもいいかな? 」
「いつの間にそんなの撮ってたの!? と言うか酷いよ、僕が高町さんに何したっていうの!! 」
「うっ……何もされてないけど……でも……でも……うぅ〜!むぅ〜!! うにゃぁー!? う、うるさいの!!! 翠田くんは黙ってフェイトちゃんの代わりをしてくれればいいの! も、もししないなら……」
そう言いながら高町さんは写真をチラつかせる。そしてヤケクソになっているのか意地の悪い悪代官のような顔をし始めた。さらに写真でペチペチと僕の頬を叩く。抵抗できなかった。あんまりだ。そう思うが僕は代わりをする事になった。フェイトちゃんのおもちゃにされた後は高町さんにおもちゃにされる日々が続く。僕の存在意義がどんどん薄れている気がする。2人は相思相愛だ。なら2人で好きにすればいい。僕を巻き込まないでくれ。そう切に願う。
「けん太くん、今度はこれかぶってこれ着て? それで私と見つめ合いながら……ふぇ、フェイトちゃん……好きです!! 」
「…………もういい? 」
「違いでしょ!? 私もだよなのは! って言ってくれないと! けん太くんは馬鹿なの? アホなの? はい、もう一回だよ」
「もう許してぇ…………」
言わされる。行動させられる。言いたくもない恥ずかしい事を言わされるのだ。許して欲しかった。いくらなんでも毎日はキツすぎる。僕に安息の時間は家しかない。それにしても放課後がっつり夕方過ぎまで付き合わされるのだから精神的にキツイものがある。しかしそれ以上に僕はきっと……呪われている。厄病神でもついているの違いない。どうしていつもいつも僕の始まりは……壁ドンだ。
「あ、あの……何……かな? 月村さん? 」
「翠田君……アリサちゃんと幼馴染なんだよね? 」
「え? う、うん……そうだけど」
「私に協力して! 」
そしてどうしていつもいつも校庭の隅にある小屋なのか。どうして僕のクラスの女の子は……変なのが多いのか。疑問だ。誰か……誰か教えて欲しい。いや、何より。僕を巻き込まないで欲しい。誰か……助けて。誰か僕を、僕を自由に、自由にしてくれ。そう願う僕の名は…………
「わ、私……あ、アリサちゃんが好き!! だから……だから……だからアリサちゃんとエッチな事したいの! お願い、協力して! 」
「……もうかんべんしてぇ…………」
翠田 けん太。
取り敢えず1話はツンデレとヤンデレは誰がなるかは内緒です。
1話は流れとヒロインと主人公の関係と言ったところですかね。
次回もよろしくお願いします。