俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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中三の始業式が平和に終わると思った?

 かつかつと音をたてながら一人廊下を歩く。やはり寝てないからか、物凄く怠い。怠すぎてやばい。何が怠いって、もう学校っていう存在自体が怠い。怠すぎてもう怠い。いやぁ、怠いですね!テンション上げても変わらなかった。むしろ怠い怠い言いすぎて怠いがゲシュタルト崩壊気味。おー、君のその服怠いねー。服が怠いってどういうことよ。ほんと日本語って難しい。英語を見習え。丁寧語とかフランクとかそういうのあまり無いんだぞ。日本語がおかしいだけ。感謝を伝える時の言葉も多いんだよ。サンキューでええやん。部長、おごってもらってサンキュー。確実に首スッパーンされるな。

 

「ふぁぁ……ねむ……」

「あ、植里くんおはよー」

「うぇ? あ、うーっす」

 

 横を通りすがった女子生徒に挨拶をされたので、出来るだけ平静を装って返す。ちなみに名前は知らない。というか覚えてない。いや、聞いたらピンと来るんだろうけど。それなのに何故話し掛けられたかと言うと簡単なことで、一夏と一緒に居ると嫌でも有名になるからだ。あと時々一夏情報バラまいてたから。これでも近くに男子がいれば吃りを極力減らせる精神構造をしてるんだぜ。勿論一人と大勢だったり一人と一人だったりすると途端に話せなくなる。いや、男子が居ても殆ど会話の体を成さないんですけどね……。うーん。ネガティブ。やめだやめ。ポジティブに行こう。ポジティブシンキングこそが正義だ。花粉症もそれで何とかなるらしいし。いや、俺花粉症ちゃうんですけどね。

 

「……あれ、でも一夏がああだとすると……」

 

 俺氏、女子生徒全般から盛大な手のひら返しを喰らう可能性大。一夏くんが女の子になったぁ? じゃあ植里とかいう奴にも関わらなくてジューブンね、的な感じ。うわぁ、想像しただけでテンションがた落ちしたよ。ちくしょう、女心っつーか女性との付き合いは難しいのです。野郎だったらふざけて叩いて殴りあってれば仲良くなれるけど。決して堀り合っても仲良くはならない。何を掘り合うのかも聞いてはならない。分からなかった純粋なそこの君。阿部さんで検索検索ぅ! で、その当の本人である一夏はというと、先程下駄箱でクラス名簿を確認した折に。

 

『私、えっと、学校側との話があるから、また後でね』

 

 と言って職員室に向かった。千冬さんが色々と手を回したんだろうなぁ。世界最強がここまでブラコンもといシスコンだと一体誰が想像できようか。一部の人間にはとてつもなくバレてそうだけど。いや、弟のために試合放り投げてくる立派な姉ちゃんやで? 正直身内にあんな人が居たら安心感半端ない。さらわれても名前を呼んだら例え時空を超えてでもやってきそう。凄いなちっふー。負けるなちっふー。千冬さんが負ける? そんな時には多分人類史終わってるからへーきへーき。とか下らないこと考えてたら教室の前についた。ちなみに一夏とは同じクラス。弾とも同じクラス。数馬? 居たような居なかったような……多分居た。居たと思うんだけど。居たら居たで居なかったら居なかったでいいや。がらりと引き戸を開ける。

 

「おは──」

「蒼テメーこの野郎ッ!!」

「よぶはッ!?」

 

 入るなりいきなり頬に衝撃。痛い。地味に痛い。この絶妙な力加減で悶えるほど痛くないけどしっかり痛みを感じるパンチ。知っている。知っているぞ。俺はこの痛みを知っているッ! つーか弾。なにこいつ。え、俺別に何も悪いことしてないよね? 蘭ちゃんの件で今更殴られたとか? ははっ、そんな馬鹿な弾に限って──いや、こいつ地味にシスコンだから分かんねぇな。周りに気付かれにくいタイプだけど。

 

「なーにすんだ弾コラ」

「すまん。つい衝動的に……」

「ぶっ殺すぞお前」

「男性器もぐぞテメェ」

 

 一人の命と一人の棒って対等ですかね。弾は死ぬのに俺はナニが無いまま生き延びる。死ぬことよりも酷いですねそれ。やめて欲しい。全国の男性器を欲している人たちに謝れ。満足したい人たちに謝れ。チームサティスファクション。こんなんじゃ……満足できねぇぜ……。

 

「で、なんでお前は殴った」

「朝から美少女と登校とか裏山」

「それは事情を知っていて煽ってんのか?」

「まぁ、クラスでもその話題で持ちきりだし。植里が見知らぬ美少女連れて登校してきたって」

 

 やばい(確信)。そっか、そうだよなぁ……一夏ちゃん普通に可愛い部類に入るもんなぁ……。千冬さんがあんなことになるくらいだもの。その影響力をさっぱり忘れていた。つまりパンツ。間違えたパンチ。ちげーよピンチだよ。なんでピンチからパンツまでいった。俺の脳内ピンク色過ぎない? 思春期の男子中学生なのかは知らんがもっと自重しろ。ついクラス内でパンツとか言ってみろ。視線が刺さるぞ。物理的に。なにそれ怖い。

 

「どーすんだよ蒼。バラすのか?」

「いや、後でアイツ自身から挨拶がある……はず」

「ほほー。しかしなぁ、これは大事件だぞ」

「大事件どころじゃない。世界崩壊レベルだろ」

 

 女子からしてみればって話だが。野郎共からしてみれば嬉しいだろうな。イケメンが美少女に変わったおかげで女子と付き合える可能性が増えるんだから。弾くんがニヤニヤしているのがその証拠。こいつ顔に出やすいなー。もしかして秘密とか教えちゃいけない人種かね。バリバリ教えちゃったんだけど。あれ? フラグ? いいや、フラグじゃない。フラグじゃないんだよそうなんだよ。絶対、多分、恐らく、きっと、だといいなぁ……。

 

「それより、数馬は?」

「寄り道してくるらしーぞ」

「あぁ……なんとなく察したわ」

「ま、本当人生分からんもんだなー」

 

 ぼうっとした様子で呟く弾。そろそろ廊下に倒れてるのも疲れてきたのですくっと立ち上がり、弾の横を抜けて教室に入る。席は番号順らしいので、廊下側の後ろから二番目がそうだろう。……やっぱりというかなんというか、随分と配慮されてますなー。前だったら宿題移せるしラッキーとか思ってたんだろうが。俺の名字の頭文字はう。そのあとに続く語順から考えて、分かるだろ? あいうえおだよ。あい()()。とにかく荷物を置こうと歩き出したその時。背後からその呟きは響いてきた。

 

「──まさか、一夏が女になるとは」

 

 ぴしっ、と教室の空気が固まる。は? いや、え? 嘘だろお前何言ってんだこの馬鹿。信じられなさすぎて弾の方を振り向けば、あっという風なリアクションのあとにグーを作った片手で自分の頭を小突いた。

 

「やっちゃったZE☆」

「貴様ァァァァァァ!!」

 

 許さない許せない。むしろこれを許せる奴がいるの? いたとしても残念だったな。俺は許せない。今日この時以上に弾のことを消えればいいのにと思ったことはない。ふざけて下衆発言して真面目にしないくせに本気で不味いときは地味に支えてくれる心優しいコイツの事をマジで地獄に落ちろよと思ったことなど、十回や二十回程度はあれどそれもおふざけのうち。今は全力で頭にきている。ぶち殺し確定ね☆

 

「女のいる空間では暴力を振るわないと言ったな。あれは嘘だ」

「すまん、マジですまん蒼。だからちょっと落ち着いて周りを見てみよう、な?」

「ハァ!? この期に及んで何を──」

 

 がっしと肩を掴まれる。あっ、これ駄目な奴。

 

「ちょっと植里くん!? どういうこと!」

「えっ、いや、その」

「織斑くんが女になったって本当なの!?」

「えっとだな、ちょ、ま」

「どうなんだ植里!! はっきり言え!」

「だから、あの、い」

「嘘でしょ!? ねぇ、嘘なんでしょ!?」

 

 ちょっとやめなよ女子! 植里くん嫌がってんじゃん! つーかそんながっつくんじゃありません。マジで怖いからやめて。女の子に耐性が無い恐怖と鬼気迫る表情の恐怖とで怖さがマックス。どれくらい怖いかと言うともうマジで怖い。膝は笑ってないけど表情が引き攣ってる。多分口の橋がピクピクしてるでしょう。

 

「織斑が!? 女に!?」

「マジかよおい、マジかよおい!」

「うぉぉお! これで、これで彼女ができる……っ!」

「青春を謳歌できる……ッ!!」

「織斑が女? これはたまげたなぁ」

「女体化とかこれもうわかんねぇな。お前どう?」

「とりま女子は落ち着け。暴れんな、暴れんなよ……」

 

 男子も落ち着けやオイ。一部の人間が嬉しすぎてなのかガチ泣きしてるんですけど。どんだけイケメン一夏と一緒になるのが嫌やったんや。確かにクラス入ったときに暗いなーとか思ったけど、まさか一夏と同じクラスになったから沈んでたのかこいつら。ハッン。馬鹿め。一夏と同じクラスになろうがなるまいが彼女なんて出来ねーんだよ。何年も幼馴染みやってる俺が証明する。

 

「どうなの!? 植里くん!!」

「だから、あの」

「答えて植里くん!!」

「ちょ、ま」

「さっさと言え植里!!」

「言うから、まず」

「嘘って言ってよ植里くん!!」

「えっと、あのな」

 

 こんなにも多くの女子に言い寄られるなんてぼくはモテモテだなぁ(白目)呼吸困難で死にそう。というよりなんで話せと言っているわりに話させてもらえないんですかねぇ……。取り敢えず落ち着け。そして落ち着け。じゃないと俺も落ち着けない。もうそろそろ発狂するぞ。女子に囲まれて発狂するとかそれどんな変態。いやだ、中学三年を変態扱いされてすごすなんて、俺はいやだぞ!

 

「あー……本当に一夏女だぞ」

「弾!?」

「いいじゃねえか。どうせバレたんだし」

 

 バレたのお前のせいだけどね。

 

「そんな……ッ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

「馬鹿な……嘘だ……」

「あれ? てことは朝の光景は……」

「まさか織斑くんと植里くん?」

「スイーツですねぇ……」

 

 中学生活最後の始業式。俺が教室に入って僅か三十秒で混沌とかしました。なんなの、どれだけこの世界はカオスなの。男子は狂喜乱舞して服を脱ぎ出す奴まで出る始末。女子は項垂れる婦女子とにっこり笑う腐女子に別れてるし。やめろ、そんな目で見るんじゃない。死にたくなってくるだろ。死にたい。むしろ死に体。




私は純愛が大好きなので、純愛を書くことにしました。
(訳:1で決定ですよ皆さん!)
ただ、もぅまぢ無理……となった場合は唐突な場面転換からの「お前のことが好きだったんだよ!(迫真)」そして幸せなキスをさせて終了します(ネタバレ)

TS一夏ヒロイン流行れ(懇願)

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