俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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前回が遅かったからと言って、今日も遅いとは限らない。投稿してから即効で仕上げたからクオリティ低めだオラァ!


不幸中の幸い中の不幸。

 目が覚めた。知らない天井だ。まぁ、当然の如くお約束ですよね。はい。でもって、ここはどこだろう。肌に当たる感触からして俺はベッドに寝ているようだが。まさかあれも全て夢だったのか? 夢オチ。ギャグとしては定番の、けれど打ち切り方として忌み嫌われる手法の一つ。夢オチエンドはう~んが多いからしゃーない。でも、今だけはそれで良かったと心底思う。よっしゃ! 夢オチやんけ! せや、事故なんて起こってなかったんや。それならなんで腕に違和感があるんでしょうかねぇ……。

 

「……病院……か?」

 

 周囲を見渡してみるが、どうも視界がぼんやりとして見え難い。形が安定しないというか、霧でもかかったみたいにぼけて見えるというか。ふむ。何故だろう。何が原因かは分からんが、物凄く不便だなこの状態。何があるのかさえ詳しく把握出来ない。ただ、近くのものは辛うじて確認できる。それで分かったのだが、着ているものが見慣れない病衣っぽいものという時点でほぼ確。

 

「……はぁ。馬鹿だろ俺」

「んっ……、」

 

 ぼそりと呟けば、すぐ近くから小さな息遣いが聞こえてきた。なんだなんだ、敵襲か? さてはニンジャだな。弱ったところを狙ってくるとは許すまじ。ニンジャ死すべし慈悲はない。さて、真面目に誰だろうか。確認のためにそちらへ視線を向けるが、ぼやけて顔がよく見えない。ええい、めんどくさい。ぐっと近寄る。と同時にその人が顔をあげた。

 

「っ! ……ぁ、あ……」

「……ん?」

 

 この声。この匂い。なによりぼやけているがこの顔。間違いはない。多分だけど。正直言ってよく見えないから自信が無い。けど、長年一緒の時間を過ごしてきた植里蒼としての勘が告げている。目の前でふるふると震えているように見えるこいつは、友人である織斑一夏がTSした姿だ。そのはず。そうだと願っておこう。というわけでその確認。

 

「……一夏か?」

「あ、お……?」

 

 お互いに数秒見つめ合う。目と目が合う~瞬間~好k違います。目があっただけで惚れるとかラノベだとスッゴイチョロインですね。現実だと割とそういう恋の仕方もあるらしいから分かんないけど。というか何時までこの膠着状態を続ければええのん? なんて思っていたら一夏ちゃんの瞳がじわり。わぉ、ぼくこの流れ知ってるよ。流れ変わったな(確信)。

 

「あお、アオ、蒼、……」

「おう、お前の命の恩人蒼さんだぞー」

「……ぅ……蒼ぉ……」

「ファッ!?」

 

 泣いた。え、嘘やろお前。ちょっと待てやちょっと落ち着けやあんた。こ↑こ↓がどこか分かってんのかい? 俺は未だに分からないよ。恐らく病院だってことは予測してるが、確実とも言えないので断言はしないでおくよ。これで実家とかだったら笑える。ぷふー、車に撥ねられたのに怪我軽すぎなんですけどー。ついに俺まで人間をやめてしまったら一夏の周りから普通の感性を持つ人間がいなくなりますよ。唯一の常識人枠を潰してはいけない(戒め)。

 

「良かった……良かったっ……」

「うぇぇ……あの、どゆこと?」

「ぐすっ、ひぐ……蒼、蒼ぉ……」

「ちょ、おま、泣くな馬鹿色んな液体がっ!?」

 

 色んな液体ってどんな液体ですかねぇ(暗黒嘲笑)。これは酷い。一夏ちゃんの顔がもうぐっしゃぐしゃ。髪の毛もぐっちゃぐちゃ。ちなみに服とかもはだけそう。やだ、こんなときに何考えてんだクソヤロウ。煩悩退散心頭滅却精神統一天上天下唯我独尊! それは仏教のお方です。うむ。心頭滅却すれば火もまた涼し。同じくして一夏も泣き止んでくれるだろう。俺が心頭滅却するから殆ど意味無いんだけどな!

 

「ごめん……でも、良かった……良かったよぉ……」

「あーもう分かった、分かったから落ち着けよオイ」

「うん……ぐずっ……」

「ったく、混乱してるのはこっちもだってーのに」

 

 いきなりぶっ飛ばされて意識トンで起きたら知らない部屋にぼやける視界と泣き出す友人。正直発狂しても良いんじゃないかと思ってきた。キェェェェッエーイ☆

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「──だから、足は殆ど擦り傷や軽い捻挫くらい。でも腕は直接地面に打ちつけてボロボロ。特に右は全治一ヶ月とか」

「なるほどなるほど」

 

 ふむ。よく生きてたな俺(白目)。どうりで腕に違和感があるわけだよ。マジで感覚すらちょっとあるかどうか疑わしいレベル。そりゃ叩き付けられたらそーなりますわな。足が助かったのは本当奇跡。普通ならバッキバキに折れてますよ。普通なら。……ちょっと脳内にうさみみが通りすがったのは気のせいですかね? あれの差し金ならマジで許さないんだけど。妹さんでも千冬さんでも動かして復讐すらしてやる覚悟。復讐は何も生まないって? ははっ、何を言っているんだ。そいつの死体が生まれるに決まってるダルルォ?

 

「それで、他に異常は無いか起きたら確認してくれとか……」

「あー……えっと」

「……あるの?」

「いや、あるにはあるけど、そんな大した事無いというか、なんというか……」

 

 うぐっ、視線を感じる。ちらりと横目で確認すれば、ぼんやりと映る一夏の顔。これって一応は異常なのかなぁ……。別に見え難いだけで異常じゃないとか、そういうのじゃありませんかね。だから、うん。これは別に異常でもなんでもないんだ。オーケー。隠すことに決めた。この事は一夏に言わず心に閉まっておこう。慣れたら案外見れるもんだし。

 

「いいや、別に。何もないぞ」

「…………」

 

 視線が強くなった、だと(困惑)。そんな馬鹿な。完璧にバレないよう頑張って平静を装ったというのに。まさかこいつ読心術とか持ってねーよな。読唇術なら使えそうだけど。流石は織斑家。無限の可能性を秘めてますね! その行き着いた成れの果てがちっふー。あれは全ての可能性という可能性を超越した可能性の獣ですわぁ……。可能性言い過ぎて可能性が可能性に可能性。えっとそれどういう可能性?

 

「……蒼、今何時か分かる?」

「は? いや、時計無いのに分かんねーだろ」

「そこ、ベッドの向かいの壁にあるじゃん」

「お、ホントだ。……七時半か」

「まだ六時半だよ」

 

 Oh……自ら墓穴を掘っていくスタイル。やべぇ、言い逃れが一切思いつかない。むしろ何か言えば言うだけ状況が悪くなりそうな予感すらする。逃げ場なんてないさ。うーそもむじゅーんも、のみほすつよさーとともにー。ここは黙っておくのが吉だな。私は黙秘権を行使します! 黙秘権って言葉便利だよな。今の俺の目と比べるとその便利さがより分かってくる。こんな便利な言葉がこの世には存在していたんですね……!

 

「…………」

「……目、悪いの?」

「いや、そういうわけじゃ」

「正直に言って」

 

 黙秘権? あぁ、奴は死んだよ。こんな真剣な一夏を見たのはいつ以来だろうな。イケメンオーラがバリバリ溢れ出てきてる。美少女なのにイケメンとか何それ光と闇が合わさって最強に見える(中二病)。カオスは最強。でも中二病患者は最弱。最弱無敗なのかな? ちなみにクリエイターは中二病じゃないとやってられん。作家も漫画家も中二病全開じゃねえとな。センスの光る中二は好きです。オサレ師匠ホントオサレ。

 

「……大丈夫。ぼやけるくらいだから」

「ぼやけるって、殆ど見えてないじゃん」

「心配すんな。むしろ腕や目くらいで一夏が無事なら良かった(・・・・)ってもんだ」

「ッ……」

 

 実際そうだと思う。たかが俺の腕が使い物にならなかったり、ちょっと目が悪くなったくらいで一夏は無傷という結果を生み出せた。そう考えるなら安い買い物だろう。方やイケメンでモテモテな女子になっても美少女でマスコット的扱いを受ける勝ち組人生な人間、方や童貞のモテない非リアな冴えない男子の負け組人生な人間。どちらの方が良いかなんて聞かなくても分かる。絶対に一夏だ。

 

「……それで」

「ん?」

「それで蒼が死んだら、どうするの」

 

 ピタリと、体が固まった。

 

「……さぁ、知らん。死んだら死んだでそこまでだろ」

「蒼はそれでいいかもしれない。けど」

 

 視線がぶつかる。ぼやける視界でも捉えられるまでの距離に近付いた一夏の瞳が、今の己をそのまま映していた。その奥に隠れるようにして、僅かだが激情の炎を感じ取る。マジか、頭にキテんのかよオイ。ちょっと怖い。え、なに。俺なんか悪いこと言った?

 

「置いてかれる人の気持ち、考えたことあるの」

 

 衝撃。まるで稲妻にうたれたみたいな、強い衝撃だった。ビリビリと肌が痺れる感覚まで引き起こしそうなくらいの。そんなこと、考えようとしたことすらない。何故なら今の今まで、自分にはそんなことを思ってくれる人など居ないと思っていたから。所詮非リアな俺はひっそりと死ねれば本望だと、そう願っていたから。

 

「私は、蒼がいたから頑張れた」

「……それは──」

「違わない。蒼がいたから元気でやれた。笑顔を振り撒けた。いつも通りの『俺』として意識を保てた。ずっと、ずっと、頭がどうにかなりそうだったけど、でも。それでもっ……」

 

 信じられない。こいつがまさか、そんなことを思っていたなんて。いつも普段通りにしていたから、てっきり割り切ったものだとばかり思っていた。普通に考えてそんな簡単に割り切れるものでもないのに。

 

「……二度と」

「え?」

「二度と、こんなことするんじゃねえ」

 

 明確な怒りの籠った瞳。向けられて初めて気付く。怖い怒りなんかではない。優しい、暖かい怒りだ。

 

「若い友人の死に顔なんて、俺は拝みたくない」

「…………おう」

 

 ……やられたな、こいつは。

 

 




イチャコラはもう少し待ってくれ。なんか感想欄が本編の一歩どころか三歩ぐらい先を行ってるけど、まぁそのままの勢いでオナシャス。

一夏ちゃんはまだ自覚症状無しでっす。いや、この子ホントならめっさ鈍感野郎ですし。

察しの良いホモは多分わかってるだろうけど、事故から助けてくれた人が片腕使えなくて、それまで夫婦まがいの生活をしていたらどうなるか……ね?

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