俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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蒼色眼鏡はとっても素敵。

「へぇ、眼鏡ってこんなに種類があるんだ」

「正直どれでもいいんだけど……」

 

 話しながら一夏は適当なフレームを手に取り、じろじろといろいろな角度から眺める。午後から特に用事の無かった俺達は、早めにしておいた方がいいとの事で早速眼鏡を買いに来ていた。ちなみに視力はさっき測りましたよ。ええ、勿論散々な結果ですとも。以前までは結構下まで見えてたのに、今では上から二番目すら危うい。一番上は流石にぼやけていてもギリギリ見えるが。道理で躓いちゃう訳だよ。そんな訳でレンズの方を用意している間、お好きなモノをと物色しているのです。

 

「蒼はテキトーだね……。ほら、これとかどう?」

「んー? あー、いいんじゃね?」

「真面目に考えようよ……」

「でもなぁ……奇抜じゃなければ何でもなぁ……」

 

 ファッションセンスとか皆無って自覚してる地味系男子としては選ぶ時間が勿体無い。ある程度普通な感じだったらもうそれでいい感じ。妥協のライン低すぎィ! あんまりそういうのに興味ないからしょうがないね。時間かけて服とか選ぶ間にどれだけゲームが出来ると思っているのか。こんな思考だからモテないんだろうなぁ、ちょっと辛いなぁ……。つーか最近ゲーム触ってねぇ。入院生活も辛かったなぁ……。

 

「なんかこだわりとか無いの?」

「普通でオナシャス」

「本気でどうでも良さげだね……」

 

 実際どうでも良い。普通に使えて普通に眼鏡してる普通な眼鏡で普通に普通。うん。普通だな。やっぱり普通が一番普通。普通ほど普通なものってないよな。結局色んなものに行くけど一周回って普通が良くなるよね。ビバ普通。ヒャッハー普通。あれ、普通ってなんだっけ。

 

「……はぁ、そこまで言うなら一夏が決めてくれ」

「へ?」

 

 きょとんと首をかしげる一夏ちゃんかわいい。略していちかわいい。目の保養って素敵ですね、これだと残り一週間くらいで腕の骨折も完治しそう。いや、絶対完治してる。この自信はどこから来ているのだろうね。確証なんてねーよ馬鹿野郎。しいて言うなら一夏ちゃんがいちかわいいから魔法の言葉でぽぽぽーんなんだよ。いちかわいいは全ての怪我を治癒する魔法の言葉。あらやだステキ。

 

「私が決めたので良いの?」

「おう。お前普通にセンスいいからな」

「うっ……なんか責任重大じゃない?」

「何なら適当なのでおk」

 

 実際一夏なら変なものは持ってこないだろうし。こいつに任せておけば安定だろ。弾だと明らかにネタ要素満載なやつ持ってきそうだし、数馬は幼女に似合うやつを探し始めて持ってこない可能性がある。あれ、もしかして俺の周りにまともな人って居ない? 巫山戯る馬鹿にロリコンの馬鹿にTSしたイケメンに指名手配される天災に妹を溺愛する最強。わぁ、なんてカオス。

 

「……うん、よし。蒼に一番似合うやつ探す」

「なんでやる気出してんの……」

「頼まれたからには精一杯やらないと、ね?」

 

 真面目か。いや、真面目だったな。なんせ苦労しているであろう姉貴のために青春を放り投げてアルバイトし始める奴だ。真面目じゃなければやってられない。昔から一夏はこんな奴だった。正義感に溢れてて、イケメンで、クラスどころか殆どの女子にモテモテで、町を歩けばナンパされるのを鈍感ですり抜けていく馬鹿。マジでこいつヒロインじゃねえか。男の時からあまり変わってねぇな。いや、女性から狙われなくなったのは結構でかい。

 

「これ……はちょっと派手。これは……逆に暗すぎるかな……」

「マジモードかよオイ」

「当たり前だよ、全くもう……」

 

 はぁ、とひとつ溜め息をついた後に再度物色し始める一夏。ぶつぶつとあーでもないこーでもないと呟いている。マジで真面目なまじまじめ。流石はイケメンと言った方がいいか。こういう時に真剣に選んでくれると女子は嬉しいんだろう。君にはこういうのが似合ってるよ、キリッ。きゃっ、織斑くんセンスも良くてカッコイー、ぽっ。チョロい(確信)。俺には絶対出来ないだろうなぁ……だから童貞なのかね。ふふっ、死ねる。

 

「あ、これとかどう?」

「……それはどちらかと言うとお前に似合うような」

「えー……そうかなー?」

「ほら、ちょっと貸してみろ」

 

 さっと一夏の手元からフレームを取って、試すように此方からかけてやる。片手で眼鏡のフレームいじるのは疲れるな。はてさて、その苦労の結果は。……Oh、びゅーてぃふぉー。眼鏡美少女ってこういう子の事を言うんですね。これは新しい扉を開けそうですわ。眼鏡属性、イイネ! 今まで眼鏡とかぷーくすくすなんて馬鹿にしてすいませんでした。眼鏡最高ですね、両手で挟むようにくいって上げる動作とか凄くイイと思います。多分こいつが一夏じゃなかったら既に恋に落ちてる。

 

「いいな、似合ってる」

「………………」

 

 ぽけーっと口を開けて呆ける一夏。やめろよ、そんなに見詰められると照れちまうだろ。テレテレ。普通にキモいな。あと別に照れなかった。一夏ちゃんの容姿には既に慣れたのだー、ふははー。と言っても完全にじゃありませんけどね。まだまだ耐性は低いです。別に俺は悪くない。世界最強さえ骨抜きにしてしまう美少女一夏ちゃんのチートボディがいけないんや……。なんて思っていれば一夏ちゃんがいつの間にか復活してた。じとーっとした視線。

 

「……買うのは蒼のやつだよ?」

「知ってる知ってる」

「……もうっ。新しいの探してくる」

「……顔赤くないかお前」

「気のせいっ」

 

 ちょっと強めに言い放ってくるりと踵を返す。イケメンのくせに意外と褒め言葉に弱いんですねぇ……。ほんまチョロい(確信)。顔真っ赤にしちゃってバレバレですよ一夏ちゃん。必死に隠そうとしても無駄ってやつだな。ただあまり弄りすぎても此方がでかい反撃を喰らうだけなのでここは追い討ちをかけないでおく。学習するかしこいかっこよくないアオーチカですよ。まだセルフ罵倒してるよこいつ。もうそろそろドM認定されそうだな。違う。ぼくせめるほうがすっきゃねん。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「熱っ……」

 

 ぱたぱたと手で仰いで頬に風を送る。しっかりと暖かくなってしまった頬が冷めるのには少々時間がかかりそうだ。本当熱くて堪らない。理由は分からないけど。これも何も全部蒼のせいだろう。いや、蒼のせいに違いない(反語)。最近の蒼は絶対におかしいと思う。聞くだけで恥ずかしくなるような台詞を平気で言ったり、かなりの頻度で自然に笑ったり。元々そんな笑う方では無かったと思うんだけど。……その顔が妙に脳裏に焼き付いてるし。

 

「なんなの、あれ。なんであのタイミングで微笑むのかなぁ……」

 

 似合ってるとか言いながら普通にいい笑顔を向けないで欲しい。思わず固まってしまった。蒼のナチュラルな笑顔なんて一年に一回見れるかどうかくらい貴重だから仕方ないとも思うけど。大体笑わない蒼が悪い。私は悪くない。蒼が悪い。

 

「……あ、これとか良いかな?」

 

 ふと目についたそれを手に取って見る。彼の名前と同じ蒼色のシンプルなフレーム。特にこれと言った理由は無いけれど、何となくいいって思えた。直感的というか何かを感じ取ったというか……蒼風に言えばティンと来たって感じ。うん。少し別のことに思考を割いたからなのか、いつの間にか頬の熱は冷めている。くるりと振り向いてその姿を確認し、今度は直ぐに渡しにいく。

 

「ねえ蒼、これとかつけてみてよ。はい」

「ん? え、いや……まぁ、別にいいけど……」

 

 ちょっと驚きながらも、蒼は差し出されたフレームを受け取る。流石に二度目は無いか。ちょっと安心。それにこれは絶対私より蒼に似合ってると思うし。当の本人はマジで似合うのかこれ……なんて呟きながら、恐る恐る顔に持っていく。スチャリと掛けて、どうかと言いたげな視線をこちらに──

 

「……えっと、どうっすかね?」

 

 ──あれ?

 

「……あの、一夏? オーイ?」

「……あっ、えっと、その……うん。凄くいいと、思うよ?」

 

 ただ、眼鏡かけただけだよね?

 

「なんか嘘くさいな。実は似合ってないんじゃね?」

「いや、本当似合ってるよ。とっても」

「フォロー必死すぎない……?」

 

 なんか。

 

「……ま、これで良いならこれにするけど」

「う、うん。それで良いと、思う」

 

 なんか、ちょっと。

 

「……どうした一夏。なんかおかしいぞ」

「えっ? い、いや、なんでもないよ?」

 

 ちょっと、ほんのちょっとだけ──。

 

「……なーんか不安になる言い方だなオイ」

 

 蒼が、カッコイイ?

 

 




凄く……(感想が)荒ぶってます。みんな己の欲望をぶちまけ過ぎなのよー。もうちょっと自重して(建前)もっと裸になれよオラァ!(本音)

ただ、この小説は健全な。そう、とっても健全な作品なので、18歳以下の方に優しい言葉でお願いします。おっぱい? え、それってエロワードなの?(すっとぼけ)

何となく着地点は決まったので、そこまで突っ切りたい所存です。私の脳内では福音さんが二人に祝福のベルを鳴らしていたのでそれでいいでしょう。いいよね?

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