俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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ネタなし。つまらない注意。めーでーめーでー!


夏の数ほど青春は。

 夏休みに入って少し経った頃。部屋の中でパソコンを弄っていた俺──御手洗数馬の元に、友人である織斑一夏は突然訪れてきた。お陰で今日も元気にロリ画像を集めようと思っていた予定がパーである。生きる糧とも言える時間を潰されては、例え俺でなくとも機嫌が悪くなるのは必然だ。蒼のやつなら許しそうだが。あいつは根本的におかしい。マジで酷い事以外はふざけて許すような馬鹿とも言える。将来は下手な女に引っ掛かって暴力とかに耐えながら結婚生活送りそう。一人の友人として優しい奴と結ばれてほしい。

 

「麦茶しかないが、大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫」

 

 ……蒼の情報ならこういう場面になるとせがまれて結局熱いお茶を出すことになると聞いた。なるほど、これが心の距離の差ってやつか。かれこれ二年ちょっとになるが、たかがそれほどでは幼馴染みに追い付けるわけも無い。何だかんだでかなり仲の良い奴等だ。信頼し合っていて、ほどよくお互いの事を理解していて、例を上げるのなら名前を呼ぶだけで何を求めているのかさえ察する事ができる。なんだこいつら。

 

「それでまた、唐突にどうした」

「えっと……少し、相談があって……」

「ほう」

 

 ぐいっと冷たい麦茶をあおる。こいつが俺に相談。家同士の距離ならば他の二人に比べて遠く、付き合いに関しても蒼より薄く弾と同等レベル。そんな俺に対してこいつが相談事とくれば、考えられる要因は幾つかある。その中で現在のこいつの状況を加えた上で選択肢を絞るのなら──大方、あいつに関することか。

 

「蒼と何かあったのか」

「!? な、なんで……?」

「普通の相談事ならあいつにするだろう。態々俺のところまで来たということは俺の得意分野関連、またはあいつに言い難いこと……蒼自身に関係することだ」

 

 付け足すなら今の一夏がロリに興味を持つ可能性はその性格的にも限り無く低い。もし目覚めていたのなら奇跡か天啓か神の所業だろう。何よりロリコンに目覚めるやつは一目見ただけで分かる。直感的に分かってしまうんだ。あぁ、こいつは俺と同じ道を歩むのかと。この人は俺よりも険しく厳しい道を進んできたのかと。ロリコンは先ず第六感に目覚めないとならないからそこら辺気を付けておけ。センスの無いロリコンはロリコンと呼べないのだよ。

 

「よ、良く分かったね」

「普通だ。蒼でもこれくらいならやってのける」

「そうなの?」

「ふざけて誤解されがちだがな。あいつはあれでかなり頭の回転が早い」

 

 その分、緊張したり焦ったりすると働かせ過ぎて回路がショートする欠点付きでもある。だからあいつは女性の前で冷静な思考が出来んのだ。いつも通りなら頼り甲斐のあるクールで優しさも持ち合わせる男子として少しは女子に目を向けられるだろうに。吃り癖も少しは直ったとはいえまだまだ少しの会話も苦しい。本当なんというか、人間的弱点の分かりやすいことで。

 

「まぁ、案外色々考えてるもんね、蒼」

「生来のお人好しも合わさって尚更な」

 

 内面だけを評価すれば中の上くらいには行くだろうけれど、外見が良くも悪くもない普通だからどうにも言えなくなる。それも男子目線での評価なので、女子からすれば悪い方なのかもしれないが。……少なくともそこまで酷いとは思えない。実際にあいつを心底毛嫌いするような奴は少数だ。同じくして恋心を抱くのも少数。後者の少数がかなり面倒くさいのは内緒だ。恋に恋する中学生とは思えないくらいの愛情とか意味分からん。

 

「それで、内容は?」

「あ……うん。えっと、ね……最近なんだけど」

 

 出した湯呑みを両手で包み込みながら、若干顔を俯かせて一夏は言う。すっかり女性の動作が染み付いているな。実際に女性の体になっているらしいから、ホルモンによる影響なども少なからずありそうだが。僅か数ヵ月でここまでとは……一夏が恐ろしいのか、それとも蒼が恐ろしいのか。

 

「なんというか、変……なんだよね」

「変? なにが変なんだ」

「その……こう、えっと……あー……」

「……」

 

 言い難いのか、歯切れの悪い様子を見せる一夏。それとも自分ですらはっきりと分かっていないのか。どちらにせよ、思ったより簡単な問題ではないらしい。流石に蒼ほど上手くやれるとは思わないが、俺に出来る限りはしてやろう。これでも大切な友人だ。性転換しても見た目はJCなので恋愛感情など沸かんが。

 

「蒼の近くにいると、熱くなる……というか、暖かい……というか」

「……ふむ」

「その、変なんだよ。熱くて、暖かくて、でも汗を大量にかいたりはしなくて」

「……はぁ、そうか」

 

 一つ息を吐き、頭を手で抑える。さっきまで真剣に悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。確かに簡単な問題ではないけれど、同時に至極単純な問題でもある。というよりこれは重症じゃないか。手遅れだ手遅れ。あいつを理解して長く付き合ってきた異性は絶対惚れると何度弾と話したことか。確かに理解している。長く付き合ってきた。そして性転換を成し遂げた今、こいつは蒼にとっての異性だ。スリーアウトチェンジ。織斑一夏なんてこの世には存在しない。そいつは既に一夏ちゃんへと変化済みだよ。

 

「凄く、やる気が失せてきた……」

「えぇっ!? ちょ、なんでっ!?」

 

 当たり前だろう。誰が好き好んで人の惚気話を聞くというのか。相談は相談でも恋愛相談とは予想も出来なくて当たり前だわ。数か月前まで男だった奴が恋するとか普通に思い付かねえって。蒼、マジでやばい。下手なハーレム主人公より質が悪い。しかもそれを本人が自覚していないから余計に。あいつにだけは異性の幼馴染みを与えちゃ駄目なんだよ。

 

「数馬は、これが何なのか分かるの?」

「……はぁ。いいか、それは──」

 

 ──いいや、やめよう。

 

「……いや、違うな。すまん、俺も分からない」

「そ、そっか……数馬でも分からないんだ……」

「俺だって何でもは知らない。知ってる事と幼女の事だけだ」

「ソ、ソーナンダー」

 

 幼女の事は知ってる。今週末にデートする彼女の好きなキャラクターとか、趣味とか、どんなものが好みなのかとか。さらっと聞き出して気付かれないように調査済みですので。策士策に溺れる? 溺れるとしてもそれは幼女にだから無問題。

 

「しかし、そうだな。助言はしておこう」

「助言? 分からないのに?」

「確かに分からないが、分かってるんだよ」

「??」

 

 適当なことを言えば、一夏は頭上にクエスチョンマークを乱立させながら首を傾げる。こういう時にこの口調は便利だ。変なことを言ってもどこか知的に受け取ってもらえる。実に使い勝手が良い。素の俺なんて馬鹿で阿呆などうしようもないロリコンだと自覚するレベルだ。こうでもしないと世の中生きていけない。主に警察の目が怖くて。

 

「いつか多分。お前はその答えに辿り着いて、選ばなければいけない時が来る」

「選ぶ……? なにを?」

「知らん」

「えぇ……(困惑)」

 

 俺は知らない。別に一夏がどんな選択肢をどれほど用意されているのか、そして結果的にどれを選ぶのかなんて全然知らない。一切知らない。全く知らない。これっぽっちも知りはしない。いいね? 俺は知らない。はい復唱。……さて、ちょっと真面目にやってみるか。

 

「だから一夏。一度こうと決めたら、自分が選んだのなら、決して迷うな」

「へ?」

「迷いは、それが他者に伝染する」

 

 一夏の調子が乱れれば、必然的に蒼の調子も乱れる。そうなった時に不測の事態などが起きてしまったら、俺と弾でどうにか出来るのかも怪しい。つい先日にあった交通事故だって誰一人何も出来なかった。何かを成し遂げたのは事故に遭った植里蒼のみ。あいつは身を挺して織斑一夏を助けた。

 

「選んだら進め、進み続けろ」

 

 恐らく、その道が一番正しい。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「ただいまー……」

「おー。お帰り」

 

 玄関でそう言えば、奥の方から蒼の気怠げな声が返ってきた。言ってくれるのは嬉しいんだけども、もう少し何とかならないのか。ちょっとそんなことを考えながら靴を脱ぎ、さっさと歩いていく。

 

「結局、お前どこ行ってたんだ?」

「うん? あー……ちょっと数馬の家」

「ほう……珍しい。俺も行けば良かったか」

「そう、だね。あはは……」

 

 なんだか直感的にだけど、あの会話を蒼に聞かれたらいけない気がする。分かんないけど。うん。分かんないけど、でも脳内で何かが必死に警鐘を鳴らしてる。これはヤバイ(確信)。絶対開けたりしたら駄目な奴だよ。大事な何かがパリンって壊れるよ。

 

「それより、夕飯まだだよね。待ってて、今から作るよ」

「おう、いつもごちそうさまです」

「喜んで貰えるなら満足だよ」

 

 殆ど料理をここでするために買っておいたエプロンを身に付けながら答える。結構無理矢理始めた事だけど、蒼が良いのならそれで良いや。私も別に嫌って訳じゃないから。ほら、やっぱり友達のことは心配だし、健康は毎日の食事からって言うし。

 

「……あ、そういえば、さ。一つ聞きたいんだけど」

「ん? なんだよ」

「──蒼って、私と居るときに何か感じる?」

 

 問い掛ければ、彼はきょとんとした表情を見せる。これは滅多に見ない珍しいものを見れた。なんだか少し得した気分。顔で心境が丸分かり。最近表情の微細な変化まで読み取れるようになってきたから、こんなにオーバーじゃなくても分かるけど。

 

「……また急だな、お前は」

「あ、あはは……」

「しかし、一夏と居る時ね……あぁ、そうだ」

 

 そこで蒼はふと思い出したように虚空を眺め、此方を真っ直ぐに見据えてくる。最近買った眼鏡を通して視線が交錯し、少しの間を置いて一言。

 

「お前と居ると、なんか安心するわ」

 

 柔らかな笑みを浮かべながら、そんなことを言った。

 




イチャラブをご所望の方々、ごめんよ。もう少し待ってくれ。熱さにやられて作者はちょっと中二をぶり返しているんだ。やだ、ハズカスィ。ぽっ。

ちなみに分かる人には分かることを言っておきます。今後も私はアレのように前触れ無く、そして告知もなく、隠れるようにあんなものをやります。こう、プレゼント的なモノですよ。ええ。あと、羞恥心が堪えきれないのであまり駄目なんです。本当。いやァン、馬鹿ァン。

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