はてさて長かった体育祭も残すところあと一種目。最後の団対抗リレーのみである。これまでに男子の騎馬戦だったり女子の小綱引きだったり野郎共の組体操だったり淑女たちのダンスなんてやった訳だが、それらを押し退けて一番の見所と言えるかもしれない。いや、ごめん嘘。普通に女子のダンスとか見てる方がいいよね。誰とは言わないけどまたあの子は揺らしてた。誰とは言わないけど。何なのあれ。もうゆっさゆっさ本能を刺激してくる。まぁ、俺の理性って結構強いから大丈夫ですけどね。うん。さんきゅーりっせ。りっせってなんや。兎も角として基本的に高得点が設定されているこのリレーな訳だが、ここで一つアクシデントが発生。
「あぁぁん♡」
「!? おいお前! どうした!?」
「アシクビヲクジキマシター」
「……なん……だと……」
出場予定の生徒の霊圧が消えた。しかも俺たちが率いている側。相手の方だったならどれだけ良かったことかと悔やむ
「補欠のやつは!?」
「午前中の競技でアシクビクジいてる」
「なにやってんだてやんでぇッ!!」
「ヤーレンソーラン」
凄く……
「くそっ……一体どうすれば……」
「そういえば午前中に凄く早い奴がいたよなー、チラッ」
「女の子に応援されて本気だした奴がいるなー、チラッチラッ」
「馬鹿ップルみたいなことしてる奴がいたなー、チラッチラッチラッ」
おい馬鹿こっち見んな。この時点でたっぷりと嫌な予感がしていた、というか的中率九割は軽く越えてたと思う。この流れ、もう誰にも止められない。もしも俺に母さんみたいな強さと父さんみたいな優しさがあったのなら別だろうが。普通は逆なんですけどね。うちの家庭は本当少しおかしいぜよ。これが普通とか言われた暁にはIS世界ってこえーとか言ってテノヒラクルーする機械に成り果てますけど。
「んだよ、俺はやらねーぞ」
「頼むよ蒼ぉ! おねがぁい!」
「やめろ男がやんじゃねえ。そういうのは女子がやるもんだろうが!」
「お前ら女子持ってこい」
「やめろください」
女子にそんなこと言われたらやる前にやられる気しかしない。一夏と接し続けて少しは慣れたとはいえ、やはり前世からの苦手意識はそうそう克服できるものではない。女の子はマジで苦手なのよ。嫌いじゃなけど。嫌いじゃなけど。きらーいじゃないけど精神的にむりぃ。ギャグふっる。
「ほいほい一夏ちゃん持ってきたぞ~」
「ナイス」
「Niceboat」
「ナイスよナイス! ヴェエエリィィイイナイス!」
「えっと……なにこれ?」
ドゥヒン☆なんだ一夏か(安堵)。こいつなら慣れてるし特に問題ないな。適当にささっと済ませて早くこの
「織斑、頼みがあるんだが」
「あ、うん。なに?」
「そのだな……ごにょごにょ……」
「うんうん……え? いや、それは……」
少し戸惑った様子を見せる一夏。若干恥ずかしそうなんだけどお前一体なに言われたの? お兄さん凄い気になるんだけど。おっぱい? それともいちぱい? いちぱいは大きいからね、仕方ないね。触り心地も最高だと思う……んだけど、一夏の胸……触る……うっ、急に頭痛ががががが。今日はちょっと頭の調子が悪いな。よって俺はリレーなんて出ない! 終わり! 閉廷! 以上! みんな解散!
「頼む、俺たちを助けると思って」
「お願いだよいちえもーん」
「お願いします何でもしますから」
「ん?」
「今」
「なんでもするって……」
その無駄な連携やめーや。男共に頭下げられてなにかを頼み込まれた一夏は、少しして諦めたようにため息をつく。まぁ仕方ない。こいつら諦めの悪さだけは一級品ですから。ぐっと覚悟を決めたような表情で、一夏がくるりと此方を向く。視線がぶつかる。目と目が合う~しゅーんかーんすーきだーと(ry ふぅ、自重自重。
「ねぇ、蒼」
「あぁ~ん? んだコラァ」
「──私、蒼のカッコイイ姿見たい……かも」
ぽっと頬を染めて、胸の前で人差し指をつんつんしながらそう言う一夏。ふっ、馬鹿め。お前の可愛さなんぞとうの昔から知っておるのだ。その程度でやられる俺じゃない。甘い、甘いんだよぉ! かき氷のシロップ原液で飲んだ時くらい甘いなぁオイ! 返答。
「ちょっと走ってくる」
「うん、頑張って」
『うおっしゃぁぁああああッ!!』
やっぱり一夏ちゃんには勝てなかったよ……。
◇◆◇
つーわけで植里リレー出るってよ。全くやってらんねぇよこんちくしょう。運動は大事。それは分かってる。板東は英二。それも分かってる。でも運動は苦手なんだって察して。あれだけ早く走れたのも偶然に偶然が重なっただけですし。こんな展開で活躍できるの転生チートオリ主くらいだぞ馬鹿野郎。転生してもチート持てないカスオリ主では相手にもならんのです。戦闘力たったの五……ゴミめ、展開しか待ってない。
「頼むぞアンカー」
「マジでおかしいっしょ……俺だよ?」
「大丈夫。織斑が応援してくれる」
「いや、それ普通に関係ねえよオイコラ」
行っちゃった……。既にあらかた走り終え、残すはラスト二人のみ。やっぱリレーだからはえーよ。つか地味にうちのクラストップ走ってんだけど。え、あ、これガチでマジにヤバイやつだ。プレッシャーとかそこら辺凄まじいやつだ。どうしよう。どうにか教師に掛け合って出場権利もぎ取ったあいつらの苦労も今まで走ってくれた走者の努力も全部水の泡とかあり得ねえぞ。冗談じゃねえ。こんな大役俺につとまるか! 馬鹿馬鹿しい! 帰るぞ(死亡フラグ)。ぶっちゃけふざけないとやっていけない。はわわわわ、やばいのです。そうこう言ってるうちにもう出番。ちっくしょ。マジでちっくしょ。
「蒼ー! 頑張れーっ!!」
「頑張れよ蒼ー。正直女子じゃねえし興味ねえ」
「頑張れ蒼。正直ロリじゃないので興味ない」
「……」
一夏からの大きな声援。弾からのふざけた声援。数馬からの変態的な声援。そして最後に母さんからの無言の視線。はは、死んじゃいそうだZE☆ 真の英雄は目で殺すって言うけど、母さんってまさか英雄なの? 少なくとも違うと思いたい。安心して。あの人は魔眼なんて持ってないし人格も一つだしごく一般的な普通の女性ですよ多分。男っぽい女性を普通とするのか否かで変わっては来るが。
「植里ォ! お前マジ頼むぞ!!」
「うっせぇ余計なプレッシャーかけんなっ!!」
叫びながらバトンを受け取って走る。うん。そうだ、風になれ。風になるんだ俺。なにも考えるな。ただ感じろ。すべてを投げ捨てて風になれば、必然的にゴールテープは切られているのだ。
「──これが、モノを殺すっていうことだ」
様々な外的要因により植里蒼の精神状態が悪化したため意味のない言葉を喋りますが基本的に無害なので聞き逃してもらって結構ですはい。自分から忠告出来てるところとか凄い冷静なんて言っちゃいけない(戒め)。
「くそっ、植里はええっ!」
「フゥーハハハァ! 待っていたぞジョジョォ!!」
繰り返しますが様々な外的要因により植里蒼の精神状態が悪化したため意味のない言葉を喋りますが基本的に無害なので聞き逃してもらって(ry
「追い、つけ、ねぇっ! 俺じゃ足りないってのか!?」
「ああ、足りないね! 全然足りないッ!!」
「な、にっ!?」
「お前に足りないものは、それは──」
すうっと息を吸い込み、叫ぶ。
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! そして何よりもォォォオオオオッ!!」
「なっ!? 速く、なっただと!?」
「 速 さ が 足 り な い !! 」
「ちくしょおおおおおっ!!」
三度目となりますが様々な外的要因により植里蒼の精神状態が(ry
「勝ったっ! 第三部完ッ!!」
たびたび申し上げますが様々な外的要因に(ry
◇◆◇
──体育祭、優勝。
こう……さ、我慢できなかったんだ。色々と溜まっていたんだと思う。最初の頃の勢いとか、滞る進捗状況とか、生意気な後輩とか。はい。本当にすいませんでした。次からはきちんと真面目にイチャラブするんで許して下さい何でもしますから。
あ、そうだ(唐突)なんか主人公の両親が感想欄にて凄まじいことになってるけど本編とは関係ナイデスヨ。ええ。てか型月脳多くないっすかね……?