俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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実り始めた青い果実。

 朝ちゅん、というモノを皆さんご存じだろうか。その名の通り朝に鳥がちゅんと鳴く様子を表しているわけなのだが、この単語の本質はそこではない。漫画やら小説やらの創作で朝ちゅんというシチュエーションが使われた場合、大体というか九割方というか殆どというか九分九厘というか限り無く高確率で事後である。事前でも事中でもない。事後である。R15、もしくはそれ以下の作品で男と女が性行為をした事柄を簡潔に伝え、また読者の想像をかきたてるこの表現方法は素晴らしいの一言につきる。さて、ここからが本題だ。

 

「……すぅ……すぅ……」

「」

 

 相手が織斑一夏(♀)(自分の友人)だった場合、それは朝ちゅんに入りますかね? え、入る? 入らない? どっちなんだい! なんて冗談も程々に現状の理解に努めよう。昨日は確か体育祭の祝勝パーティー的な感じで迷惑にならない程度にどんちゃん騒ぎをして、流石に遅くまではいけないとのことで9時には解散をした。母さんと父さん、ならびに千冬さんとはそこで別れた記憶がある。なら一夏とは?

 

「……うぐぉ……思い出せ……」

「くぅ……すぅ……」

 

 そう、多分一夏とはその後、後片付けを手伝ってくれるとのことで散らかったマイルームの掃除を一緒にやっていた。かなり時間が掛かってしまい、終わったのが十時過ぎだったはず。うん。ここまではおk。そっからは夜分遅いとかなんとかでうちの風呂を貸してやり、十数分後に出てきたところで──。

 

「……あ」

「うぅん……すぅ……」

 

 電話だ。千冬さんからの電話があった。内容的に詳しくは覚えてないけれど、夜道は危険だから俺の家に泊まれ的なことだったと思う。告げられた瞬間の衝撃はかなりなものでしたけどね。ふざけてんのかと。ここから一夏の家まで歩いて五分とかからねえぞ。どんだけ溺愛してんだこのシスコン。てか溺愛してんなら先ず男の部屋に泊めようとすんな。心臓に悪いわ。

 

「……よ、良かった……」

「すぅ……ぅん……」

 

 マジで心臓に悪い。あやうく勘違いして一夏に土下座かますところだった。最悪切腹する覚悟までしてた。俺みたいな奴がヤったとしても良い結果には繋がらないのよ。強姦罪で訴えられてアウトですね分かります。実はあなたのことが好きだったの、責任とってよね……? みたいな展開はイケメンにしか来ない。つまりイケメンじゃない俺には来ない。完璧だな。自分の頭の良さに思わず震えちゃいそうだぜ。ぷるぷる。

 

「ったく、こいつは暢気に寝やがって……」

「くぅ……ぁお……」

 

 本当に幸せそうな顔で寝てんなこの馬鹿。時々頬が緩んでるし。一体どんな夢を見てるんですかねぇ……。ちょっとだけ気になる。だってこの幸福オーラはかなりヤバイでしょ。出来ることならその幸せを俺にも分けてくれませんか。転生してからというより最近はマジで不幸の連続だと思うんだ。不幸だって叫びたい。別に右手に幻想を殺せる力なんて宿ってませんけど。でもマジでやりたくないことやらされたりめちゃくちゃに巻き込まれるわで不幸なのは事実。はっ。まさか俺って今流行りの巻き込まれ転生者ってやつか……? なるほど、どう足掻いてもマキコマーレ。

 

「おーい、一夏。起きろ」

「ぅうん……むにゃ……」

 

 つんつん。ほっぺぷにぷに。んほぉぉおおお! いちかちゃんのほっぺやわらかいのぉぉおおお! これはクセになりそうな柔らかさ。けれども我慢できる中学生としてここは自重。幾多もの性的欲求を捩じ伏せてきたこのチキン理性は最強なんだ!(雁夜感)いつかこの腐れきった最後の砦を本能がぶち壊してくれることを願っておく。その時が多分卒業の日。

 

「一夏。起きろって……」

「んっ……ふぁ……」

 

 ゆさゆさ揺すれば、くぁっと布団の中であくびをする一夏。未だ意識が覚醒していないのだろう。目をしぱしぱとさせながらぼうっと此方を向いている。見詰め合うこと数秒。もぞもぞと動き出した一夏は、寝ぼけ眼をごしごし擦りながらゆっくり体を起こした。

 

「……あお……」

「おはよう一夏。良い朝だぞ」

「うん……んー……」

 

 次いでぐぐっと伸びをする。おっふ。こいつまたおっぱい強調してんだけど。どんだけ自分のそのふくよかな胸を自慢したいのん? あと視覚的に大ダメージ不可避なんでやめろ下さい。俺のTシャツぶかぶかなんだから色々と考えろよ……起きたばっかりだからしゃあないのか? いやそれでもなぁ……うむ。

 

「おふぁよ、あお……」

「……まだ眠いか」

「うん……」

「まぁ、昨日は遅かったしなぁ……」

 

 寝たのは十一時過ぎてたし。俺としては別にまだ早い時間帯な訳だが、毎日真面目に規則正しい生活をしている一夏からすると遅いに違いない。生活リズムは狂うと結構キツいものがあるからな。ソースは俺。今となっては懐かしい不健康時代に散々味わいましたよ。世話焼いてもらってる現在では絶対あり得ないんだけど。

 

「……あお」

「おう、なんだ」

「ちょっと……」

「え? なに?」

 

 くいくいと手招きされて、仕方なく近付く。なんかまだ完全に目が覚めてないっぽいし嫌な予感がするんだけど気のせい? 違う。よーうーかーいーのー、せいなのね。すでのなうそ。電なら笑顔で許せる不思議。

 

「……」

「あの、いや……ち、近くない?」

 

 近距離でじっと見られて思わずたじろぐ。たじたじ。今の一夏が何を考えているのかさっぱり分からない。てか近い。マジで近い。鼻の先がぶつかるじゃねえのと思うほど近い。何ならキスも出来ちゃうレベル。普通一夏とキスするのは原作ヒロインですけどね。まぁ、そこんとこ俺は男なので関係ない。いやぁ、TS転生しなくて良かったぜ。

 

「……ううん。やっぱなんでもないや」

「へ?」

「ご飯作ってくるね。早く食べて一旦家に帰らないといけないし」

「お、おう……」

 

 そのまま一夏は立ち上がってたたっと駆けていき、直ぐ様いつも通りの朝が始まる。あいつが飯を作って、起きてきた俺と一緒に食って、可能な範囲で同じ時間を過ごす。

 

「……なんだったんだ一体」

 

 ただ一つ、疑問はあるけれど。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「何やってんだろ私……」

 

 先ほど至近距離にまで迫った彼の驚く表情を思い出して、ちょっとだけ恥ずかしくなる。あんなに近くまで寄って何をしようとしていたのか。自分でもぼんやりとしてて分からないけど、でもあそこで頭が冴えて良かったんだと思う。多分。

 

「はぁ……。本当分かんない……」

 

 ただちょっと、今日は不思議な夢を見た。最初はなんてことのない普通の日常。蒼と話して、ふざけて、歩いて、一緒に過ごすだけ。別にいつも通りなのだから何も感じないと思ってたんだけど、意外なことに少しだけ心地好かったり。意外なことに。ただ、そのあとに続けざまで見た夢はちょっと居心地が悪かった。蒼が誰か(・・)と話して、ふざけて、歩いて、一緒に過ごすのを見てるだけ。誰かが誰なのかは知らないけど、多分女の子だった気がする。こう、なんとなくだけど。

 

「……はぁっ」

 

 駄目だ。なんかもやもやする。蒼の隣に誰がいようと彼の自由だと言うのに、それを面白くないと感じてしまうから不思議だ。特に女の子だと。自分の居場所を取られたみたいで嫌だからなのかな。そんな子供でも無いと思うんだけど。だって今や立派な中学三年生だよ? 流石に友人が他の誰かと話してるだけで嫉妬するほど単純な思考回路は持ってない。ハズ。

 

「もういいや。さっさとご飯作ろ」

 

 考えても無駄というやつで、恐らく蒼にそんな状況が来るとは思えない。失礼だけど。未だ女子を前に時折吃ってしまうところを見ていれば尚更。今回の活躍で多少は見直されるだろうとは言え、そう簡単に手のひら返しなんて起こらない。誰かが彼に近付く可能性は結構低めだと予想する。

 

「蒼の隣は私のモノなのに……って、そうじゃないでしょなんでそうなるのっ」

 

 どこをどうしたらその考えになるのか。自分でも理解できない不思議思考が展開されるあたり、まだ私は寝ぼけているようで。うん。少し気を付けよう。包丁で指を切るなんて真似はしたくない。

 

「さっさと起きろ私」

 

 ぱしんと両頬を叩いてそう呟く。蒼にはいつも支えてもらってるんだから、少しでも返していかなきゃ。

 




ネタが……ネタが足りないよぉ……ネタを挟まないと死んじゃうよう……あう……いち……かわ……。

マジで恋愛描写は苦手です。せっかちな私はせっかちな展開にせっかちしてしまうのでせっかちです。D・Pのライバルかな? あれはマジせっかち。

同じくしてせっかちな私は我慢できないのでこれ一ヶ月も連投してんだぜ。笑えよベジータ。本当に良くやれたと思いました(小並感)

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