俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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ちょっとキーボードの調子が悪くて遅れますた。


しかしまわりこまれてしまった。

「一夏、十五歳の誕生日おめでとう。乾杯」

「か、かんぱい」

「かんぱーい……」

 

 順に千冬さん、一夏、俺。大人はお酒の未成年はジュースでコップをかちんと打ち鳴らす。いやぁ、誕生日って本当にめでたいですね! こういう大事な日は家族で過ごすに限る。尤も俺の場合は独り暮らしなんでそうはいきませんけど。べ、別に悲しくとかないんだからねっ! 久々にお袋の味を堪能したい(本音)。そんな自分と違って千冬さんとの家族団らんを楽しむそいつへとちらり視線を向ける。うん。にこにこしてんな。世界のYAZAWAくらいのにこにこじゃねえか。にっこにっこにー。可愛い(真理)。千冬さんと無事に過ごせて良かったね。で、なして関係のない俺はここにいるの?

 

「どうした植里。元気が無いな」

「いや、その……ですね。えっと」

「蒼? どうかしたの?」

「うん。まぁ、率直に言うとだな。どうして俺はここにいるんだろうなーって」

 

 言った瞬間一夏にはきょとんとした表情で首をかしげられ、千冬さんからお前は何を言っているんだと言わんばかりの冷めた視線が突き刺さる。なんでさ。え? 俺なんか悪いことしたっけ? 全然身に覚えがありませんのですが。勘弁してくれ。織斑家の連中に凡人が勝てるわけ無いだろ。察しろ。つーか察しろ。早く察しろ。何がなんでも察しろ。いいや察してくださいお願いします。千冬さんと一夏を敵に回すのは世界中の軍隊を敵に回すより恐ろしいんやで。ソースは白騎士事件。

 

「千冬姉が呼んだからでしょ?」

「そうだな。私がお前を呼んだんだ」

「いやいや、ちょっと待ってください」

 

 ステイステイ。ステイナイト。それフェイト。テスタロッサの方でもありません。兎にも角にも少し考える時間を下さい。あとこの部屋から飛び立つための翼を下さい。マジで自由な空へ飛んでいきたい。一瞬天災の顔が脳内を横切ったけど多分気のせい。気のせいなんだ。気のせいじゃなきゃ(使命感)。ISは人類にとっての翼。はっきり分かんだね。分かりたくなかった。

 

「えっと……俺が居て良いんですか?」

「私は別に」

「逆に植里以外なら叩き出してるところだ」

 

 マジかよ(戦慄)。何なんですかね、俺ってば織斑家にとって特別な存在だったりするの? おいおい、転生者だからってそんな持ち上げんなよ。死にたくなってくるだろ。転生オリ主は早く死ななきゃいけないんだ! 異物は排除される。それもまた運命。フェイトって奴だね。今度は菌糸類のとも違います。

 

「……帰ったら駄目っすかね」

「出来れば居て欲しいなぁ……」

「ほう。植里貴様、一夏の誕生日を祝わないとは良い度胸だな。表に出ろ」

「盛大に祝わせて貰いますッ!」

 

 いつの間にか床が地雷原になってたんですけど。しかも知らずに踏み抜いたら一番でかい奴。もうどうしようもねえなこれ。俺みたいな一般人に拒否権なんて用意されてる訳もなかった。やはり織斑家は魔窟。魔王いちかと大魔王ちふゆが二段構えで同時に相手取らなければいけない模様。勝てない(確信)。どう足掻いても絶望。しらなかったのか。まおうからはにげられない!

 

「よし。なら植里、さっそく仕事だ」

「おっふ……」

 

 仕事。たった二文字で構成されるこの言葉は人によって酷く嫌な言葉になる。特に社畜とか社畜とかあと社畜。全部社畜じゃねえか。まぁ、日本人の大体七割は社畜って言われてるからしゃーない。最早日本人=社畜の式が出来上がっちゃうのも時間の問題。働いたら休むんじゃなくて休むために働くんだよなぁ……。

 

「一夏を祝え」

「祝えって……具体的には?」

「ここに切り分けたケーキとお皿、フォーク一本を用意してある。さて、あとは分かるな」

 

 ふんふむ。理解したぜ。こくこくと頷いて千冬さんからケーキの乗ったお皿を受け取る。仕事と聞いた時には反射的に蹲りたくなったがなんてことはない。実に簡単な仕事じゃないか。中退入社一週間の新人でも出来るほどイージー。くるりと一夏の方に向き直り、ことんとゆっくり皿を置く。

 

「ほらよ、ケーキ」

「あ、ありがと」

「違うわ馬鹿者」

 

 え、違うの? 目で千冬さんに問うとスッゴイ睨まれた。死ぬ。居心地が最悪すぎる。まるで心臓を掴まれたみたいな感じだ。なるほど、これが蛇に睨まれた蛙ならぬG級ダラ・アマデュラに睨まれた下位のテツカブラという奴ですね。噛み付きとブレスで即死不可避。もしくはディオ様とモンキーでも可。千冬さんにとっての俺はモンキーなんだよォ!! 件の蛇に手招きされたので恐る恐る近付く。

 

「植里、お前何をやっている」

「何って……一夏にケーキ出したんすけど」

「馬鹿が。馬鹿者が。よく考えろ。今日の主役に態々ケーキを食べてもらう(・・・・・・)気か?」

 

 ケーキ食べさせたら駄目なのか。そう聞けば違うわ大馬鹿者と首を横に振られる。着実にグレードアップもといグレードダウンしていく俺の評価に草。このままのペースだと一時間後には超ハイパーウルトラストロングネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング大馬鹿者とかになりそう。完成度たけーなオイ。

 

「率直に言う。食べさせろ」

「……はい?」

 

 え、なんだって?(プリン感)。今だけはあの難聴が羨ましい。小鷹さんその耳片一方だけでも分けてもらえませんか。もう二度と汚いプリン(笑)なんて言わないんで。賞味期限切れのプリン(嘲笑)とかも言わないんで。心改めてプリン大先生って呼ぶから。全然心改めて無いんだよなこれが。結局あいつはプリンってことだ。プリン……しんかのきせき……フレンドガード……うっ、頭が。

 

「……マジっすか」

「マジだ」

「千冬さんじゃ駄目なんすか」

「駄目だな」

 

 えぇ……(困惑)。一体それどういうことなの。さも当たり前のように言われてもまるで意味が分からんぞ。無駄にキリッとしても無意味です。関係無いけどこう見ると千冬さんの格好良さがよく分かる。つり目だし凛としてるしスタイルは良いしで完璧じゃないか。やだ、なにこの人。そこら辺の男よりイケメン。俺なんか目じゃない。それは殆どの男性にも言えるか。う~ん、ネガティブはやめましょうねー。

 

「どうか御慈悲を」

「逃げられるとでも?」

「あっ……(察し)」

 

 そうだ、最初から分かりきっていた。簡単なことさ。今時小学生でも答えられる理由に他ならない。さてここで問題です。世界最強を相手に「にげる」を選択した場合どうなるか。二度目なので分からない人は居ないだろう。だいまおうからはにげられない!

 

「分かったか? 分かったな。ならさっさとやれ」

「イエスマム」

 

 くるりと振り向いた。不思議そうにこちらを見ている一夏の手元からケーキの乗った皿とフォークを奪い、一口サイズに切ってそれを掬う。問題はここから。何気に緊張しちゃってるよ。大丈夫大丈夫。お遊び感覚だお遊び感覚。ただ一夏を面白おかしく弄ってるだけ。そう思えば幾分か気楽だ。

 

「一夏。ほら」

「へ?」

「だから、ほら。……あ、あ~ん」

「!?」

 

 これはヤバイ。主に俺の精神が。なんと言ったって恥ずかしすぎる。もう顔から火が出るんじゃないかってほどだ。この部屋ちょっと暑くないっすかね! もう九月も終盤なのにこの暑さはおかしいな! 多分地球温暖化ってやつのせいやろな! ふざけんなCO2! 酷い八つ当たりを見た。

 

「あ、蒼? ちょ、いや、えぇ?」

「さっさと食えよほらあくしろよ」

「ま、待って、あの、心の準備が……」

「しなくて良い」

「んむっ!?」

 

 強引に、それでいて優しく丁寧にケーキを突っ込む。本気でぶち込んだら幾ら一夏と言えど死んじゃいますわ。とはいえ一夏の顔がめっちゃ赤くなってるけど特に気にしない。若干涙目になってたりするのも関係ありません。別に喉の奥ぶっ刺した訳じゃあるまいし大袈裟な。あとプラスチックの奴だからあまり痛くもない筈。

 

「お、お味の方は」

「……お、おいしい、です」

「…………」

「…………」

 

 うわぉ、気まずい。ここ最近こいつと気まずくなることが多くなってきてる気がする。全くもってやりにくいことこの上ない。形勢逆転も簡単にされてしまうし。弄られキャラ織斑くんはもういない。いるのはこわかわキャラいちかちゃんだ。尤も怖いのは俺に対してだけですけどね。何という理不尽。

 

「ほら、さっさと続きをしろ」

「マジかよオイ……」

「当然。はぁ、照れる一夏も良いなぁ」

 

 駄目だこの人、早くなんとかしないと。

 

「……もっかい口開けろ。ほら、早く」

「や、やらなきゃ駄目?」

「ダメです」

「うっ…………あ、あ~ん」

 

 今度は一夏の方から口を差し出してくれたのでやりやすい。同じように一口サイズを掬い、すっとそちらの方へ持っていく。なんか餌付けしてるみてーだな。少し調子に乗ってきたところでふと思い付く。不意打ち。

 

「はむっ」

「……美味しいですか、お嬢様」

「ッ!? げほっ、ごほっ!」

「 計 画 通 り 」

 

 むせる一夏に飲み物を渡してやる。引ったくるようにしてそれを受け取った一夏は、ぐいっと一息に飲み干してコップをテーブルに叩き付けた。ギロリと向けられる冷たい視線。反対に千冬さんの方からは何故だか暖かいモノを感じる。はて。

 

「むぅ……」

「気に入らないか? お嬢様(・・・)

「恥ずかしいんだよっ!」

「ははは、そっかそっか」

 

 うん。何だかんだでいつも通り。これで良し。変に気まずかったりするのは生憎と好きでない。誰しもそうだとは思うけど。ちなみにこの後、一夏がお腹一杯と言うまでは俺はフォークを動かし続けた。あたふたするこいつは実に面白かったとだけ言っておこう。




最近感想欄のカオスさが増している件について。本編がネタしかないからって感想までネタまみれになるとはたまげたなぁ。

素敵なイラスト書いてくれる絵師さん達もありがとうございます。あぁ^~執筆意欲がわいてくるんじゃあ^~

本当にありがとナス!

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