「それで」
ことりと置かれる食器。これにて我が家の夕飯の準備は整った。文化祭も無事に全日程を済ませ、加えてうちのご奉仕喫茶も大繁盛で終了。なんと言ったって小さい子キラーのカズマ・ミタライと、黙ってればイケメンというのが接客の言葉遣いによって遺憾なく発揮されたダン・ゴタンダによるものが大きい。俺も何故だか極少数の人から高い評価を貰ったけど。しかも全員が昔ちょっと関わってたような奴。所謂お世辞。
「なにか、言いたいことは?」
「ひぇっ」
とまぁ、その極少数の一人である束さんの一件をここまで引きずられました。一夏ちゃん怖い。ヤバイ。マズイ。飯は美味いけど。うむ。美味いのに不味いとはこれイカに。イカ。スプラトゥーンかな?
「あ、あのですね、一夏さん」
「うん。なに? 蒼さん」
「あれは、その、本当に何もないのよ?」
「ふぅん。そうなんだぁ……」
にこにこ。表情は完璧に笑ってるのに殺気が向けられる不思議。やめて! もう植里のライフポイントはゼロよ! 織斑家から送られる殺意の波動とか慢心しないAUO並みに怖い。イメージしろ。お前の目の前には殺意を滾らせた千冬さんがISを身に纏って佇んでいる。その時君は思うだろう。「あ、これ死んだわ」と。
「ならさ、どうしてあんなに近付いてたのかな?」
「ぇ……。いやっ、あの、それは……」
「ん?」
「ひぃぃ……」
オーラが増した。嘘だと言ってよ、バーニィ。思わず情けない声なんて出しちゃう。全く自分のことながら不甲斐ない。男ならどっしり構えてろってんだ。変に動揺なんかしたりするから嘘も隠し事もバレるのよ。男って本当馬鹿。そら、しっかりしろ植里蒼。
「なに、もしかして言えないの?」
「い、いや、言えない訳では無いんだが……」
「じゃあ話してよ」
「……、」
「言えないんだね?」
男ならどっしり構えてろ? 無理に決まってんだろ阿呆か。怖いものは怖い。だって人間だなも。たぬきちさんはさっさと村にお帰り下さい。ははっ。冗談でごまかそうと思ったけどマジで怖いです。膝の上に置いた手がめっちゃ震えてる。ふるふるゼリーかっつーの。
「じゃあ質問を変えるよ。あの人は誰? 蒼とどんな関係?」
「え、えっと……」
「えっと、なに?」
「……」
一体どう答えろっちゅーねん。束さんだと言うことは直々に本人から頼まれた為に教えられない。天災だろうと変態兎だろうと一応は知り合いだからね。約束くらい守ってみせますよ。俺だって男の子だ。女性に頼まれちゃあ死んでも守り通すしかねぇだろ。とか格好いいこと言いましたけど理由としてはそれが五割くらいしかない。残りの五割はばらした時の報復が怖いからです。
「……だ、誰かは、言えない」
「どうして?」
「ひ、秘密にしてくれって、言われてな」
「……じゃあ、関係は?」
関係。俺と束さんとの関係。実はこれ、簡単そうに見えて意外と複雑なんだよなぁ……。俺からすると束さんは畏怖の象徴。束さんからすると俺は世界に一人しか居ないイレギュラー。簡潔に述べるなら研究者とモルモットが良い例かもしれない。尤もそれほど酷くはないが。蒼くんがモルモットにされて束さんとイチャラブセックスする展開はよ。来るワケねーか。ねーっすね。まぁ、そういう面倒なものを全部排除して考えるとすれば。
「し、知り合い……」
「へぇ。本当にそれだけ?」
「お、おう。当たり前よ」
「ふふっ。そう、そっか……」
くすくすと笑う一夏。や、やったか?(フラグ)この激マズ状況を遂に切り抜けたか!?(二重フラグ)そうであってくれ。もうそろそろ限界が来そうなんだ。ヤバイ。胃がキリキリする。てか何で俺はこんなにも尋問されてんの。ただ女の人と接しただけだよね。ちょっと密着して。
「ただの知り合いが、どうしてあんなにベタベタするのかなぁ……」
「い、いや、それは……ほら、えっと、スキンシップが好きな人で……」
「嘘だよね。だって蒼、嘘つくときに一回下向くんだよ」
「ッ!?」
マジか。直ぐ様目線を前の方に固定する。俺にそんな癖があるなんて知らなかった。これも生活を共にしてきたことの弊害か。まさかこんなところで出てくるとは思わなかったけど。ちくせう。
「ふふ、やっぱり嘘じゃん。そんな癖ないのに」
「なっ──だ、騙したのかよ……」
「先に騙したのはどっちかな?」
「うっ……」
してやられた。こいつにそんな策士的思考があると予想すらしていなかっただけに驚く。いつからこうも頭の回転が良くなったんだこいつ。男の時はもっと馬鹿みたいな性格してたろうに。何気に酷いこと言ってんな。女になったからって頭のよさも変わるの?
「すまん。それは謝る。だから、その、許してもらえないでしょうか」
「何を許せば良いの? まだ話は終わってないよ?」
「……お、お前の作った飯が冷めるだろ」
「そんなの温め直せばいいし」
逃げ場なんて無い。一夏、嘘も矛盾も飲み干す強さを持ってください。つーかマジでなんなのこれ。何で俺怒られてんの。冷静に考えたら普通におかしいよね。俺と一夏はただの友人。友達が綺麗な女性と接しただけでこんなに怒るか? 明らかに過剰ってやつだ。なに、美人と接して羨ましいとかそういう気持ち? てめぇの方が美人と接してるでしょーが。
「てかさ、何でそんなにキレてんだよ」
「別にキレてないよ?」
「……言い方を変える。何でそれを聞きたい」
「気になるから」
気になるだけでこうも執着するかよバーカ。
「どうして気になんだよ……」
「知らない。ただ、無性に気になるの」
わたし、気になります。えるたそ~。なんて巫山戯てる場合ではない。直感が告げている。今は俺のターンだと。俺のターン! ドロー! エクゾディア特殊勝利! 確率ひっく。
「あーもう。あれだ、知ってる人に眼鏡ない顔見せただけだ」
「……本当?」
「これはマジ」
「……そう。なら、良いんだけど」
呟いてやっといつもの一夏に戻る。ふぅ、何とかなるもんだな。実際束さんに眼鏡ない顔見せただけだから嘘は言ってない。親戚のおばあちゃんが言ってた。嘘つくときは所々真実も混ぜると効果的よって。その知識が役に立ちました。ありがとう親戚のおばあちゃん。健やかな老後を願っております。
「でも、それならいつ知り合ったの」
「子供の時に偶然……な」
「偶然……ね」
「なんだよ」
「別に」
素っ気なくそう言ってから手を合わせていただきます。ようやく一夏の変な状態はおさまったらしい。これにて一件落着。ひと安心。束の間の休息ってやつだ。束の間なのかよ。兎も角として俺も腹が減っている合掌&いただきますコールをして早速ご飯に手をつける。うむ、美味しい。満足したところで落ち着いた思考回路を働かせる。今の……というより最近の一夏について。
「……お前、なんか夏休みから変じゃないか」
「そうかな? 別に普通だと思うけど」
「ほら、スキンシップの頻度は高いし、今みたいに訳も分からずキレるし」
「だからキレてません」
それ絶対キレてる奴の言うことだからな。ソースは長州力。または東方仗助。キレてないですよ。別にきれちゃあいませんよ。うん。絶対キレてるわ(確信)。どれくらいキレてるかって言うと本気でうったヲタ芸くらいキレッキレだわ。ちょっと大閃光持ってこい。
「……まぁ、別にいいけど。なんか悩んでんなら言えよ。相談くらい乗るから」
「そうだね、気が向いたら」
「向かずとも話してくれ。これでも長い付き合いだろうが」
「……うん。そうだね」
こいつは本当幸せなのやら不幸せなのやら。あれだけ女子に好かれておきながら一番近い場所に座るのが俺という男。不憫だな。はっ、まさかこいつはホモ……だとすれば美少女になって正解じゃん。ほら、正式に男とお付き合い(意味深)出来るし。
「つってもあんま無理なのは勘弁だけど」
「格好良さが台無し」
「いいんだよ。俺が格好良いとか似合ってねえ」
「あ、自覚あるんだ」
お前って案外毒舌になったよな。
私の名前は4kibou! 趣味で二次創作を書いてる普通の作者! でも、ひょんなことから作品の評価が凄いことになっちゃって……これから私の作品、どうなっちゃうの~!
はい(真顔)
一夏を『ひとなつ』と読むか『いちか』と読むか『いちかわいい』で読むかで汚染度が分かるらしい。一体何の汚染度なんですかねぇ……