俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

45 / 95
サクシャモクルシミマス。


メリークルシミマス。

「……さっむ」

 

 思わずそう声を漏らす。そりゃ当然。時期はそこかしこで雪が降る十二月も終盤。ちなみに言うと冬休み真っ只中というやつでもある。いやぁ、二学期は強敵でしたね。春休み夏休み冬休みと来れば秋休みもあってしかるべきだと思うの。ほら、季節の変わり目って体調を崩しやすいから。子供達の健康を維持するためにも長期休暇をもっと取り入れてですね。え? 勉学もきちんとしなくちゃならない? 家で授業受けられるようにすればええやん(適当)。ほら、モニターとマイクで何とかなるでしょ。ならないか。束さーん。

 

「そりゃ、こんな天気だし」

「だよな……。雪とか勘弁してほしいわ」

 

 子供の時は雪が降るだけでお祭り騒ぎだった。手袋はめて外に飛び出してはよく雪合戦なんてしたものだ。勿論前世だけでなく此方でも。いや、こう……さ、少年の心が疼いちゃったというか。男はいつでも少年の心を忘れないものだろ? うん。周りがあんなにも盛り上がってたらついやっちゃうってもんだ。しかしながらやはり歳を重ねると雪はマジで怠くなるのだから悲しい。学校のある日は大雪警報やらで自宅待機ヒャッフー! だが微妙な積もり具合だと自転車は滑るし歩いても滑るし車も怖いしで良いことが無い。結論。雪は怠い。

 

「良いと思うけどね、ホワイトクリスマス」

「良くない。いいか、こんな日にただでさえリアルが上手く行かずに仕事に没頭していたら雪が降って交通手段に困る社会人の皆さんにあやまれ」

「妙に的確すぎない……?」

 

 本当おつかれさまです。

 

「つーか、一つ聞くぞ」

「うん。なに?」

「どうして俺はクリスマスイブにまで一夏(お前)と出掛けなきゃならんのだ」

 

 そう、今回一番の問題点はそれである。なんとこいつはあろうことか俺にクリスマスイブ&クリスマスの予定が無いのを良いことに一緒に出掛けようと誘ってきやがったのだ。勿論前述の通りに調べられていたので言い逃れは出来ない。つーんだつーんだ。どれくらいつんでいたかと言うと某ラノベ原作ギャルゲーの初見あやせルートくらいにはつんでた。badendスゴイッすね。

 

「嫌だった?」

「嫌ではない。が、今は少し嫌だ」

「え、なんで?」

「視線が酷すぎんだよバーロー」

 

 ほら見てみろこの同志達による容赦のない人を殺す眼差しを。視線に明らかな殺意が含まれてる。おまけで凄まじい嫉妬の念も。やめろ。これはお前らが思ってるような甘い展開ではないんだ。至っていつも通りの普通なノリなんです。許してヒヤシンス。こいつら全員直死の魔眼でも持ってんじゃねーの。

 

「……? そうは感じないけど」

「お前はな。俺の場合は凄く感じる」

「へぇ~……」

「体に穴が空きそう……」

 

 あれ、前にもこんなことがあったような。

 

「別に気にしなければいいのに」

「自意識過剰だからな。仕方ない」

「あ、認めちゃうんだ……」

「出来れば否定して欲しかったなぁ……」

 

 親友にまで自意識過剰認定された俺参上。最初から最後までクライマックスだな。べ、べべべ別に悲しくなんかないし。な、なな泣いてなんかねえし。これはほら、あれだから。目にゴミが入っただけだから。ちょっとCMの真似しようとして失敗しただけだから。キターとかやってみたかっただけなの。くそがぁ……(号泣)。

 

「あ、うん。蒼は別に自意識過剰じゃない……と思うよ?」

「なに手のひら返してんだふざけんな顔面にアーモンドケーキ叩きつけるぞ」

「え、えぇ……(困惑)」

「お前マジなめんなよ。あれ地味に痛いんだからな。アーモンドの破片が刺さって痛いんだからな」

「しかも実体験なの!?」

 

 弾は絶対に許さない。あれは二年前のクリスマス。クリぼっちを満喫していた俺の部屋に上がり込んできたあいつは唐突にアーモンドケーキを構え、全力で振りかぶりながら俺の顔面にぶち当ててくれやがった。決め台詞は「ハッピーメリークリスマス!」馬鹿さ加減が滲み出ていた。ついでにお返しで俺はカップ焼きそば(作りたて)をスパーキングしてやった。どちらも当てられた側が責任をもって美味しく頂きました。

 

「ちなみに焼きそばを顔面にあてられると焼きそばパンの気持ちが分かるらしい」

「な、なにそれ」

「それ以降三ヶ月。やつは焼きそばを食べられなかったらしい」

「あ、弾のことか……」

 

 俺も一時期はアーモンドケーキがトラウマでしたけどね! あの恐怖は本気で忘れられない。痛いのなんの。あんな甘ったるいものが刺激的だなんて生まれて初めて知ったわ。別に知りたくもなかった。

 

「その点ショートケーキはいい。甘いホイップクリームと酸味のある莓のハーモニーが調律してシンクロンサーチからのデッキシャッフル後に上から一枚墓地に送れる」

「なにいってるの?」

 

 はっ。しまった。もう少しで光差す道となるところだった。ふぅ、危ない危ない。こんなところを決闘者(デュエリスト)に見られては只じゃすまない。大方あいつらは目を合わせた瞬間にこう言ってくる。おい、決闘(デュエル)しろよ。蟹! なぜ蟹がここに……逃げたのか? 自力でd(無言の腹パン)

 

「とにもかくにも、だ」

「うん」

 

 よくよく考えてみれば、こいつが女になってざっと九ヶ月。半年以上。そんな長い期間を織斑一夏は諦めることなく生き抜いてきた。多分俺には無理。部屋に引きこもって精神安定剤飲んで寝る毎日だと思うわ。むしろ普通に生活できてるこいつの方が異常。いや、これが正常ではあるんだけど。なんたって原作主人公だし。この程度で心が折れるほど弱かったらやってらんねーよな。

 

「お前、ホント良く頑張ったよな」

「なっ……なに、突然」

「別に。ただ、慣れない女の体でここまでやれてるってスゲーじゃん。普通に尊敬する」

「そ、そう……かな」

「おう。少なくとも俺には真似できねぇ」

 

 並んで歩きながらそう言う。男の時から既に分かりきっていたことだ。一夏は凄い。身体能力は勿論のこと、考え方や行動力だって凡人とは段違いの領域に達している。加えてイケメン力はカンスト間近。更にプラスαで家事も出来るとくればモテるのも致し方なし。イケメンがモテるのはモテるべくしてモテるからなのだ。モテるってどういう意味だろう(錯乱)。

 

「……あ、そういや忘れるとこだった」

「ん? どうしたの?」

「えっと……確かここだっけ……ん、あった」

「??」

 

 ごそごそと衣類のポケットを探って目当てのそれを見つけ出す。うん。きちんと忘れてはいなかったみたいで安心。つっても忘れてたらどうせ家に一旦帰るのでその時に渡してたと思うが。どちらにせよこれはサプライズというやつなので、折角なら綺麗な雪景色を背景にやってみたいじゃない? やだ、植里くんったら以外とロマンチック。

 

「ほら。クリスマスプレゼント」

「…………え?」

 

 差し出したのは綺麗に包装されている長方形の箱。用意したのはつい最近。つーか三日ほど前。案外簡単に送ろうということは決まったのだが、そこから買うか否かで物凄く悩んだ。それはもう悩んだ。悩みすぎて納屋に入り込もうとしたほど。

 

「えっと、私……に?」

「当たり前だろ。お前以外に誰がいる」

「……あ、ありが、とう」

「どうも。つっても良いもんじゃねーけど」

 

 ちゃっかり保険かけてますよこのヘタレ。

 

「……これ……ネックレス?」

「イエス。どうよ、綺麗だろ?」

「うん。とても綺麗……だと思うけど」

 

 一夏にあげたのは小さく雫の形を模したようなものが付けられているシルバーのネックレス。選んだ理由は特にない。しいて言えば直感。シックスセンスというかセブンセンシズというかフォックスセンスというか。分かりやすく纏めると適当。こう書くと途端に俺が屑野郎に見えてくる不思議。一人称怖い。

 

「……これ、幾らしたの?」

「二万二千円」

「にまっ……!?」

「HAHAHA、金ってマジ飛ぶんだな!」

 

 あれだけの大金。多分ゲームのハードとか簡単に買える。少し安いものだとソフトもプラス出来るレベル。つまり何が言いたいかというと大破産DEATH☆正直ちょっとだけ後悔してる。

 

「ど、どこからそんなお金を……」

「以前行っていた不摂生。そのお金って実は使ってなかったんだぜ」

「それでも中学生のプレゼントじゃないよコレ」

「そりゃあな。本棚の仕返しも兼ねてるし」

「あれ七千円くらいなんだけど!?」

「七千円も結構な大金だと思うんだ」

 

 金銭感覚麻痺しそう。

 

「……さすがにこれ受け取れない、かな」

「いいから。黙って受け取れ」

「いや、でもね……」

「しつこい。ちょっと貸りるぞ」

 

 するりとネックレスを奪い取ってから一夏の前に移動する。意地でも貰いそうにねーからこっちは意地でも貰ってもらう。大金はたいて買ったんだから受け取ってくれないとそっちの方が悲しいわ。全く、俺の豆腐メンタルを理解してねぇのかこの馬鹿は。

 

「ちょ、蒼!?」

「ほい完成。うん、やっぱ綺麗だわ」

「わ、悪いよ蒼。こんな高いもの……」

「良いって。ほら、めちゃくちゃ似合ってんじゃん。お前」

 

 予想通り。いや、予想以上と言った方がいいかもしれない。確かに似合うかもとは思っていたがここまでなんて誰が想像した。凄い。ヤバイ。美少女が輝く美少女にランクアップしてやがる。容姿が良いってマジ得しかねぇよな。

 

「……あ、あり、がと……」

「どういたしまして」

 

 なんて言い合ってふと、目についた時計の針がいつの間にやら0を回っている。つまりイブから本当のクリスマスへと切り替わった訳だ。引き続いてのホワイトクリスマス。 まぁ、悪い気もしなくない。リア充共は潔く死んでしまえと思うが。

 

「お……メリークリスマスだな、一夏」

「う、うん。メリークリスマス……蒼」

 

 さて、ともかくさっさと帰らなければ。こんな場面を先生に見られようものなら大変極まりない。しかも中三のこの時期とか結構冗談抜きでマズイ。急ぎながら、でもゆっくりと一夏を隣に帰路へついた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

『あっくんといーちゃんへ。

 

 やぁやぁあっくん、いーちゃん。元気にしてるかな? 尤もいーちゃんに至ってはちーちゃんがいるから大丈夫だとは思うけど。はてさて、今回こうして手紙を君の部屋に置いたのは大切な理由があってね。さながら天災兎によるクリスマスプレゼントってやつだよ。その内容? 聞くまでもないよ。

 

 ──いーちゃんをいっくんへ戻す方法さ☆』




疲れたのでレタス食べたい。どうでもいいけどレタスが食べたい。ゴマドレッシングをかけたレタスが食べたい。ポン酢をかけたレタスが食べたい。

……はっ、私はなにを(混乱)

もうこの作品今月いっぱいで終わりまで持っていってやろうかと思い始めた駄作者です。現実的に無理がありましたけど。早く完結させなきゃ(使命感)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。