俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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シャルルさんは魔女っ子だった……?


シャルンルシャルンル。

「……ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 ラウラさんとのちょっとした出来事の直後、ぱんぱんと手を叩いて千冬さんが行動を促す。俺としては色々と聞きたいこともあるのだが、状況的にはそうも言ってられない。理由。このままクラスにいると女子の着替えをばっちり見ちゃうから。ええ、社会的に抹殺されること不可避な事案発生ですよ。さっさと出よう。そうしよう。

 

「おい植里。デュノアの面倒を見てやれ。同じ(・・)男子だろう」

 

 妙に同じの部分を強調してんなこの人。知ってるよ。同じじゃないよ。男だとしてもイケメンは死すべしなので違っており、なによりこの子本当は物凄い美少女なのである。本名はシャルルォッ↑ト。

 

「君が植里君? 初めまして。僕は──」

「あ、ちょっとすいません」

 

 ぱしっと優しくシャルルさんの手を掴んでそのまま教室を出る。その際に一夏と目が合ってふりふりと手を振られたので此方も振り返しておいた。マジでみんな気付かないもんなんだな。なんか凄い。さっきから握ってるこの手とか完全に女子のものにしか思えないのに。……男の娘の可能性が微レ存?

 

「いや、ないな。ないない」

「ど、どうしたのいきなり」

「なんでもないっす。いやほんと」

「?」

 

 こてんと首をかしげるシャルルさん。うーん、やっぱりこれただの美少女だよなぁ……。胸が無いからバレてないんすかね? そうなら本当に酷い世界だ。ちっぱいが泣いてしまうのも頷ける。女の価値は決しておっぱいだけではない。ソースはうちの嫁。いやあいつ十分にでけーからな。

 

「ああっ! 転校生発見!」

「いたっ! こっちよ!」

「者ども出会えい出会えい!」

 

 あ、やべ。

 

「いいわね金髪。とても良い匂いがしそうで」

「しかも瞳はアメジストときた」

「冴えない男子とイケメン男子の逃避行……はっ」

「日本に生まれてよかった! ありがとうお母さん! 今年の母の日はBL雑誌二冊買ってあげるね!」

 

 愚腐腐腐腐……なんて聞こえそうな声に思わず耳を塞いでしまいたくなる。どうしてこうなった。最近というか今日までは特にこんなこともなかった。スムーズにアリーナの更衣室にまでたどり着けていたのだ。シャルルさんが来た瞬間に起きたということはつまりそういうことである。イケメン、死すべし、慈悲はない。世の中が不平等なのは転生しても変わらない。

 

「な、なに? なんでみんな騒いでるの?」

「あなたがイケメンだからっすよ」

「そ、そうかな……?」

「そうっす。俺から見てもかなり綺麗な部類だと思いますケド」

 

 実際シャルルさんはクラスでも言われたようにかなりの美形だ。美少女なのだから当たり前。おっぱい無くしたらイケメンになるのも仕方ないってことだ。もしこの人が百合百合してたら学園の秩序が乱れていたに違いない。数多の少女の純潔を貪り喰らう美少女。言葉にすると凄いなそれ。

 

「まぁ、そんな訳でよろしくお願いしまっす。植里蒼、呼び方はなんでもいい感じで」

「じゃあ、蒼で。僕のこともシャルルでいいよ」

「うっす。シャルルさん」

 

 偽名って分かってるとこうもスラスラ呼べるものなんだね。原作知識があって良かった。うんうん。そのせいでシャルルさんが美少女にしか見えないという欠点は抱えてしまいましたが。フィルターかかってるからしゃーない。どうにかして外せませんかね。

 

「あ、時間やべぇ。さっさと着替えねえと……」

 

 第二アリーナ更衣室に到着すればかなりマズイことにギリギリだった。鬼教官ちっふーの制裁をこの身に受けたくはない。頑張ろう。今ならギリギリまでがんばってギリギリまでふんばれる気がする。とりあえずは迅速かつ効率的に着替えなくては。俺のためにも、シャルルさんのためにも。

 

「わあっ!?」

「……」

 

 き、着替えづれぇえええ。これが知る者への試練だとでも言うのか!? ふざけんな。よく二次創作の転生オリ主さんたちはこの場面を切り抜けられましたね。一体どんな手を使ったの。まさか最初っからホの字だとか昔に会っていて攻略済みとか? あいにくと俺にはそんな行動力もイケメン力も皆無だ。

 

「ど、どうしたんすか。そんな声だして」

「いや、その、な、なんでもないよ?」

「なら良いんすけど。じゃあ、俺は先に行ってるんでシャルルさんも急いだ方がいいっすよ」

「あ、うん。分かった」

 

 我、決して後ろを振り返らず。言葉だけかけてそそくさと更衣室を出てから一息ついた。一緒に行ってやらないとか最低? ヘタレにそこまで求めるのは酷じゃありませんか。死ぬぞ。精神的に死ぬぞワイ。

 

「……行かなきゃな……」

 

 ああ、うん。憂鬱だ。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 その後、一夏が原作通り山田先生を受け止めたり鈴とセシリアがフルボッコタイムされたりしたが特に問題もなく授業は終わった。訓練機へとだっこで運ぶ地獄の作業なんて無かったんだ。イイネ? そもそもそんな大事なことを忘れるほどアホではない。一夏? あいつは元からちょっと抜けてるんだよなぁ……。

 

「ほら、蒼。あーん」

「この中で食べろと? 羞恥プレイじゃねえか」

「別に良いでしょ、これくらい」

「良くねぇよ馬鹿」

 

 という訳で昼休み。天気が良いのもあって屋上を使うことにしたのだが見事に俺たち以外いない。貸し切り。やったぜ。ちなみにメンバーは植里くん、一夏、箒、セシリア、鈴、シャルルさん。これ、実はイジメなんじゃ無いかと思うくらい鈴が不憫。主にその一部男性には人気が出そうな胸において。

 

「さっさと食べろ蒼。せっかく一夏が作ってきてくれたのだぞ」

「いや、でもな──」

「はいはいそういうの良いから。アンタは黙って幸せでも噛み締めてなさい」

「ちょ、待って──」

「あら、遠慮しなくて結構ですわよ?」

「え、あのマジで──」

「僕も全然大丈夫だよ?」

 

 逃げ場なんて無かった。特に幼馴染み二人からの断ったらお前どうなるか分かってるよな的オーラが酷い。箒の言う通り、一夏は弁当を作ってくれていたのだ。どうりでチートボディのお前が腕痛いとか言う訳だよ。そりゃあ弾とホッケーしたくらいで限界は来ませんよね。

 

「はい、あーん」

「……ま、マジすか一夏さん」

「……早くしてくれないと私も恥ずかしいんだけど」

「い、いただきますっ!」

 

 ぱくりと食べて咀嚼。もぐもぐ。

 

「どう?」

「久々すぎてヤバイ。美味い。泣きそう」

「そんなに!?」

「うん。やっぱ一夏の飯は美味いよ」

 

 料理は愛情。ちょっと前までならくそくらえだったこの言葉も今なら少し分かる気がする。一夏の料理ってなんか他とは違うあれがあるんだよな。食べたくなるというかずっと食べていたいというか毎日作ってほしいというか。告白かよ馬鹿野郎。

 

「私たちは購買で買ったものを食べているというのにコイツらは全く……」

「甘いわね。さっき買ってきたビターチョコが何故か甘いわね」

「素敵な雰囲気ですわね」

「えっと、僕たちはこの場にいて良いのかな?」

「推しすすめたのは誰だコラ」

 

 睨みを効かせればしらっとした様子で目をそらす幼馴染みーズ。自白してるようなもんだぜ。セシリアとシャルルさんが女神に見えてくるのも頷ける。あ、いや、一方は男性デスケドネ。うんうん。シャルルさんは立派な男性ですよ? さっき教室で群がる女子に『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』とか言ってたし。いやイケメン。イケメンすぐる。

 

「あとシャルルさんはいてもらわないと何のために屋上へ来たのかって話になりますし」

「へ? 天気が良いからじゃないの?」

「それもありますけど、あの……飯の時も大勢からの視線は辛くないっすか?」

「あぁ、うん。まぁ……ほんの少しは、ね」

 

 困り顔もイケメン。

 

「ここなら自分ら以外居ませんし。騒ぎになることも無い……と思うんだけど……」

「最後までしっかり言いなさいよヘタレ」

「思いますっ!」

「その力強さを戦闘でも発揮できたら良いんだが」

 

 鈴と箒の波状攻撃に心が折れそうです。なんなの? 的確に俺のことを潰しに来てるの? やめろよ、明日から登校したくなくなってくるだろ。引きニートの誕生である。

 

「ありがとう。蒼って優しいんだね」

「いや、別にそんなんじゃないっす。本当」

「正直に言ったら? 嬉しいくせに」

「うるせぇよ一夏」

 

 余計なことを言わなくてよろしい。




うぃー

あー



おっぱい

いえあ

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