俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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駄目ですね、ええ。まーた中二病ぶり返してますよこの作者。眼帯つけて闇の炎に抱かれてMO☆GA☆KEとかボンバヘッ! とか言い出しますよこいつ。


おっ3.14



君が凡人だから。

『駄目だね』

「……あー、マジっすか」

『マジもマジ。束さんはいつでも大マジだよーん!』

「はは、やっべーなこれ……」

 

 向こう側から聞こえてくる如何にも元気そうな声音に思わずため息をつく。いらない時はうざったらしいほど絡んでくるくせに、肝心な場面でこの態度。本当に読めないというかなんというか。故に天災だというのは十分理解してるつもりだけど。今回ばかりはちょっと驚いてなにもいえない。何も言えねぇ。この人なら受けてくれるとほぼ確信してたんだけど……それが盛大なフラグだった訳ですね、分かります。

 

『いくらあっくんとは言え、その隠してる知識だけで束さんを動かそうだなんて失礼しちゃうよ。天災の腰はそう軽くないってことさ』

「……じゃあ、どうすれば動いてくれますか」

『簡単だよ。“お願いします束さん動いてください何でもしますから”って言えば──』

「お願いします束さん動いてください何でもしますから」

『ん? 今なんでもするって言ったよね?』

 

 てめぇが言わせたんだろうが。

 

『じゃあねーじゃあねー、うん! あっくん! 君は何もしなくていいよ!』

「…………は?」

『だ☆か☆ら、何もしなくていいってば』

 

 何もしなくていい? それはつまりあれですかね。生命活動すらするなとかいう意味ですか? 要するに死ねっつーことか。冗談にしてはキツすぎるぜ、束さん。冗談じゃなくともキツすぎる。なんなの。この人動かすためには命すら捧げなきゃいけないの? 生贄召喚みたいなものか。アドバンス召喚とも言う。

 

「死ぬのは厳しいですよ、束さん」

『え? いや、どうしてそうなるの?』

「え? いや、息すらするなってことでしょ?」

『いやいやいや』

 

 いやいやいや。え? ちゃうの? 天災だからそれくらいのモノを吹っ掛けてくると事前にある程度は予測してたんだけど。違うの? お前心臓も動かすんじゃねーぞオラさっさと死ねやぁ! みたいな感じの脅し文句じゃないの? え?

 

『気楽に過ごしてなよ、ってこと。あっくんは何もしない。けれども私が特別に動いてあげるって言ってるんだよ』

「……ほ、本当ですか?」

『本当本当♪ この私がタダ働きだよ~? こんなこと頼めるの世界であっくん入れて数人だよ~?』

「あ、いや、その……ありがとう、ございます」

 

 束さんが何の交換条件もなく動いてくれた。その事実は嬉しいのだが、如何せん不安になる。なんと言ったって天災だ。何か裏があるんじゃないかと疑ってしまうのは仕方がないことだろう。なんというか、気味が悪い。理解できない。読めない読めないと散々言ってきたが、それらの中でも一番分からない。これならむしろ死んでくれと思っていた先程の方が信頼できる。

 

『というかだねあっくん。私は今の今までやろうと思えば君の記憶を覗き込むことくらい何時でも出来たんだよ。なら、どうしてそれをやらなかったと思う?』

「……え、いや、えぇ……?」

『私は君の記憶だけでなく、君自身にも興味を持っているんだよ』

「俺にって……ありえねぇ」

 

 ぼそっと呟く。過大評価しすぎてむしろ別人レベルなんですけど。俺はそんな興味を持たれるような人間じゃありません。そもそも転生を経験しただけのたかが一般人。本当なら原作介入なんてする気もなかった最近流行りの巻き込まれ転生者である。自分で巻き込まれ転生者って言っちゃうのかよ。今のところ巻き込まれずに回避したイベントだってあるんですが。

 

『確かにあっくんは凡人だしつまらないし特別飛び抜けた才能も得意といえる事柄も皆無だけどさ』

「あれ、なんで罵倒されてんの俺」

『こうやって時々ネジが外れたような面白い行動をするから、やっぱり目を外せないんだよねー」

 

 外れてないです。至って正常です。

 

『それにあっくん、私を普通の人と同じ目で見てるからねー。なかなか居ないよ、天災篠ノ之束のことを知って尚そんな目を向ける奴』

「勘違いじゃないっすか? 俺って束さんのこと結構特別視してますし」

『そんな奴等は先ず本気で私に頼ろうとしないよ』

 

 真面目に違うと思うんだけど……。だってこの人見てみろよ。おっぱいでかい。顔が整ってる。身体能力は人間越えてる。世界に一人の大天才にして天災。こんなスーパー人間を他と同列に見るなんて到底無理ですよ。もしこの人の本性を知らなかったら一目惚れする可能性もゼロではない。

 

『さて、それじゃ束さんは少しフランス旅行へ行ってくるよ! お土産楽しみにね!』

「……最初から全部知ってたんですね」

『んー? なんのことかなー?』

 

 別にあっくんのISに盗聴機能とかついてないから安心してねーと言いながら電話が切れる。それ完全についてるフラグじゃないですかやだー! うん。どうにかして除けられないか試してみよう。生憎と器用な方じゃないから上手くやれる自信はないけど。しっかしまぁ。

 

「……こ、怖かったぁ……」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「──まぁ、そういう訳でどうやったかは言えないっすけど、なんとか手段は確保できたんで。あとは向こうが終わるまで隠し通せれば多分」

「そ、そうなんだ、本当に……。蒼って、何者?」

「ちょっと変わった一般人です」

 

 どやっと思いっきりドヤ顔をかます。どきっ! 天才と二人っきりの通話! ~死ぬ可能性【大】~を乗りきったから安心感がぱない。ぱないの! シリアス? 真面目? そんなもんは犬にでも食わせておけ。弾けるパッション! 溢れるセンセーション! 飛び出すネゴシエーション! 今こそフェアにクリエイティブ精神に則ってプランのメイキングをトゥギャザーしようぜ。意味分かんねぇな。

 

「もう一般人じゃないよ、それ」

「それが本当に一般人なんだよなぁ……」

「なんか、蒼って変なところで頑固だよね」

「俺のアイデンティティですからね」

 

 なんか頼りないアイデンティティですね。もっと格好良いアイデンティティが欲しい。一刀修羅的な。全力で自分を使い尽くす的な。れっつごーあへっど!

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「え、上手くいったの!?」

「おう。しかも条件なし。凄くね?」

「凄いも何も……大丈夫? それ」

 

 教室でひっそりと一夏へ事の顛末を語れば、返ってきた反応がそれだ。うん。当たり前。特にあの束さんがとなれば一段と跳ね上がる。結局気になってメールなどで再三聞いてみたが、今のところ全て返事はノーセンキュー。何でも知ろうと思えばいつでも知れる記憶よりも俺が現状に四苦八苦する姿を見ていた方が楽しいだろうとかなんとか。訳が分からん。

 

「大丈夫だと思いたい。大丈夫じゃなかったらその責任をとって俺は死ぬぞ」

「やめてよ、縁起でもない」

「バーカ、彼女がいるのに死ねるか」

「もっと良い雰囲気で言うもんでしょ、それ」

 

 実際ガチで未だに不安。この拭いきれない気持ち悪さもあの人が仕組んでいるんじゃないかと思うほどである。だって天災なんだもの。予測可能回避不可能。むしろ予測すら不可能な時があるので怖い。どれくらい怖いかというと満員電車で周囲全員女性に囲まれた時くらい怖い。痴漢冤罪ふっかけられる希ガス。

 

「というか、束さんに任せて良いの? あの人絶対何かやらかすって」

「ははは、なぁ一夏。束さんって誰だ?」

「現実から目をそらすの早いって」

「ワタシ、タバネサン、シラナイ」

 

 困ったときはこれで解決。秘技、自分とあの人は一切の関係がございません。ちなみに携帯を見られたら即アウト。携帯壊してもメモリ復元されたらアウト。あ、これは詰みましたわ。

 

「とりあえず今は今度の学年別個人トーナメントに向けて訓練しないとマズイ。全員強制参加ってなんですか」

「あはは、しょうがないよ。色んな人が見に来るらしいしね。練習、一緒に頑張っていこうよ」

「……だな。今日もよろしくお願いします」

「うん。それに、心配しなくても良いよ。蒼は十分強くなってるから」

 

 だと良いんだけどなぁ。この時期になってもまだ瞬時加速(イグニッション・ブースト)は安定せず、代表候補生の皆さんには一度も勝てず、全くと言っていいほど強くなってる気がしない。うん。やべぇなこれは。




前話で反応したデュエリストが多すぎて驚きました。どうしてここに。まさか、自力で脱しゅ(ry


正直真面目に考えると色々ありすぎて疲れるからシリアスって苦手です

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