俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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女性って怖いですね。

「やっぱ、そう簡単にはいかないよね」

 

 くっそ吃って一夏の誘いに頷けば、苦笑されながらそう言われる。そりゃそうだろ。簡単にいったら自分一人で直せてら。むしろ直るまで全力を尽くした。今まで直そうという努力もしてなかった奴の台詞とは思えないですねぇ……。後からはどうとでも言える。つまりこれは言い訳って奴なんだ。言い訳は良いわけよ。……今日はなんだか寒いな、やっぱり春と言ってもまだぽかぽかにはほど遠いか。気のせいか地球温暖化の進み具合も低下したような。影響力強すぎィ!

 

「あっ、ああ当たり前だろお前。なな何年これとつつ付き合ってると思ってんだ」

「何年なの?」

「……う、生まれた時から」

「アホでしょ」

 

 アホちゃうねん転生者やねん。じっとーとした視線を向けてくる一夏から目をそらし、虚空をぼんやり覗く。こうでもしてないと耐えられん。心臓が。心臓が破裂しそう。鼓動が半端じゃねぇぞこれ。ドッドッドッドとかそんなもんじゃない。()いらない。ドドドドドドドなんて速さはホンマに久々やで。音だけ聞くと凄い悪役の登場シーンっぽい。俺は人間をやめるぞーッ!! やめたとしてもこの吃り癖は直らないだろうが。どちくしょう。てか、そもそもの原因はこいつなんだよ。目の前にいる女口調に切り替えた超絶美少女なイケメン男子。男なのか女なのかはっきりせえや。女ですね、はい(洗脳)。

 

「えと、やっぱやめるってことは……」

「ないよ?」

 

 にっこり笑いながら言うのやめーや。怖いでしょうが。ちょっとワイの息子も元気無くなってるし。女の子の笑顔なんて素敵とか思っちゃいけなかった。こんなにも怖い女の子の笑顔が存在するなんて思いもしなかったぜ。それともなに、一夏ちゃん固有のスキル? もしかして宝具? 植里蒼特攻でも付いてんの? やばい、やられる(確信)。セイバー枠の一夏ちゃんとか絶対雪片弐型生身で振るいますやん。いや、女になっても専用機が白式なのかは知らんけど。多分白式なんじゃない(曖昧)知らんけど。

 

「折角蒼が乗り気なんだし、この際に克服しないとね?」

「ももももういいです。かか勘弁してください。マジで駄目なんだよ女の人は駄目なんだって」

 

 本日三度目の土下座。女性に対して高圧的に出られる男などこの世界には殆ど居ないのです。世の結婚男性の八割はこんな気持ちなのかなぁ……。世間一般的にそれを尻に敷かれていると言うらしい。一夏ちゃんのお尻に敷かれているのか。ふむ。中身にさえ目を瞑れば最高やな(錯乱)。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるガールズ一夏ボディはボーイズ植里殺し。やっぱ特攻付いてるじゃないですかやだー! 貴様俺に何の恨みがあってこんなことを。いや、全ては天災のせいだったな。これもあれも天災のせい。一夏が女口調に切り替えたのも天災のせい。決して俺のせいじゃない。全部が全部何もかも天災のせいなんだ(暴論)。さっきも言ったが自分から自分の首をしめるなんて自殺行為(オナニー)したくないんですよ。え? ルビが変? 気のせいじゃないか。あなた疲れてるのよ。

 

「……はぁ。蒼はさ、一生このままでいいのか?」

 

 ぴきゅいーん(ニュータイプ)……はっ。この感じ、いつもの一夏だ。

 

「そりゃ、良くないと思う……けど」

「別にいきなり慣れろって訳じゃない。ただ、女みたいな俺と話せるようになれば、他の子とも話せるようになるだろ?」

「……意識の持ちようで違ってくるんじゃ」

「なるだろ?」

「はい」

 

 ふぇぇ……一夏ちゃんが怖いよぉ……。

 

「……ま、俺も無理強いはしない。ゆっくり慣れていけばいいんだしさ。三年間もあるんだぜ。時間はたっぷり残されてる」

「その間たっぷり一夏は一夏ちゃんなんですね」

「やめろ。凄いブーメランになるから、やめろよオイ」

 

 うん。どれだけ外見が美少女でも、服装が女の子っぽくても、一夏の口調そのままなら話せるんだよなぁ。多分認識の差だとぼくは思うんです。この状態だと織斑一夏(♂)のパーツがしっかりと分かるから大丈夫なんだ。口調変えるともう駄目。あれは一夏じゃない。織斑一夏じゃねぇよ。いや、織斑一夏なんだけど。ああもうどういうことだ。まるで意味がわからんぞ!

 

「よし。じゃあ実践を続けよう?」

 

 ぴきゅぃいーん(ニュータイプ)……はっ! この感じ、女口調の一夏だ!! 逃げなきゃ(使命感)。蒼はにげだした! ノーモーションで立ち上がり、流れるように足を踏み出す。ふっ、これは決まったな。流石の一夏でもこの動きにはついてこられまい。とにかくここから出るんだ。一旦思考を落ち着かせて、一夏を普通の口調に戻した上で説得を試みる。完璧な作戦じゃあないか。さすがは俺。伊達に学年トップを競い合ってないぞー。一夏なんかには負けんのやぞー。頭のよさでは原作メインキャラの六割に勝ってる自信がある。スッゲェ微妙じゃねえか。ふふ、ポジティブシンキングは良いことだらけって生物の先生が言ってたからな。無理矢理にでも前向きに捉えるんや。

 

「どこへ行くの?」

 

 しかしまわりこまれてしまった(無慈悲)。なんでや。おいちょっと待ておかしいやろ。完ッ全に油断したタイミングを狙ったんやぞ。どうして俺の目の前にいる。やばいやばい、顔は笑ってるけど依然怖いし足が震えてもう走れそうにないし油断も隙も見当たらないしなにより逃げたら殺される(確信)。一体いつから一夏が凡人だと錯覚していた……? まともに考えて初見のほぼ初乗りで代表候補生を追い詰めた奴が凡人な訳ない。しかもブレードオンリーな機体。人間じゃねえ、こいつ人間じゃねえよ! 百歩譲ったとしても超能力者(レベル5)とかじゃねぇの。あ、フラグ回収乙。

 

「いいい一夏、はは、話をしよう。そう、あれは今から三十六万……いや、一万四千──」

「蒼?」

「なんでございましょう」

 

 嘘だろ、体が勝手に(調教済み)。気付いた時には目の前に一夏ちゃんのくびれが見えた。何が言いたいのかっていうと、一夏ちゃんのスタイルが良いってこと。じゃなくて。じゃなくて(大事な事だからry)、俺が正座をしているってことなんだ。理性とか、意識的にとか、そんなもんじゃねえ。本能が必死に警鐘を鳴らしたような感覚だった。うぇぇ……怖かったよぅ……。誰だよISさえ無かったら女性なんて弱いとか言ったやつ。知らねーよ。強いよ。女の人強いよ。勝てない。

 

「一緒に直していこうって、はいって、言ったよね?」

「た、高いってことじゃね?」

「はいって、イエスって言ったよね?」

「い、いいや、イエスとは言ってないぞ?」

「言ったよね?」

「あの、いや、だから」

「さっさと頷けよオイ(言ったよね?)」

「一夏。逆、逆」

 

 本音と建前って大事。逆になっちゃうと途端に悲惨な出来事が起こるからね。一夏TSとかふざけてんじゃねーぞ元に戻せやオラァ!(建前)ナイスゥ!(本音)そんなこと言ったら一夏ちゃんがぼくにドロップキックぶちかましてくる未来しか見えない。背骨が逝っちゃうよぉ。女の子に蹴られて骨折るとか、そこまでドMちゃうわ。つーかドM違うし。ワタシドエムチガウヨホントダヨ。度重なる自業自得な行為のせいで誤解される方もいるかもしれないが、俺はどこまでもブレないノーマルなんだ。Sっ気とMっ気を両方持つごく一般的な人間なんだ。攻めるのも好きだけど、攻められるのもよ……くはない。よくはないぞぉ。なんだろう。その発言をした瞬間には最後、後戻りできない気がする。あはは、なんでさ。泣きたい(冗談)。

 

「自分から言ったよね? 責任、とらなきゃね?」

「な、何の責任をとるんですかねぇ……(震え)」

「ね?」

「ね、ねるねるね?」

「ね?(威圧)」

「イエス、マイプレジャー」

 

 泣きたい(本気)。割と真面目に涙腺が崩壊しそう。こんなのって、こんなのってねぇよ! そうだ、全てはあの日(昨日)から始まったんだ。あの時一夏が俺の部屋に来た瞬間から、俺の人生はめちゃくちゃだ! 長年仲良くしてきた友人がいきなり可愛くなって、頼りになるとすがった友人の姉がリミットブレイクして、解決するために知人の天災と電話をすればナチュラルに罵倒されて、やっと開放されたと思ったら逃げられなくて友人がもっと可愛くなってやがる! なんて日々だ。なんて日常だ! くそっ、ふざけてやがる。こんなのって。こんなのってねぇよ、ちくしょう! 思ってたより最高の展開じゃねえか馬鹿野郎ッ!! うおぉ……なんか、なんか悔しいッ! なんか悔しいぞぉッ!! 決壊。

 

「うぇぇ……」

「嘘だろあの蒼が泣いたぁ!?」

「一夏ぁ……俺の人生幸せだよぉ……」

「なら別に泣かなくていいよな!?」

 

 人には意味もなく泣きたい時があるのです(悟り)。男の涙なんてどこに需要があるのかと疑いたくなるが。女の子ならいいんです。女の子なら。よし、脳内変換してくれてかまへんぞ。泣いているのは決して残念スペックな俺ではない。君の思い描く美少女の泣き顔にすり替えてくれ。そしてもう一度画面を見たとき、既に俺はその美少女になっているだろう。いつの間にだって? ふふ、すり替えておいたのさ!(強引)だからいつの間に。

 

「よしよし、ほら、大丈夫だから。ね?」

「昨日まで男だったくせに母性溢れすぎだよぉ……」

「うるさい」

 

 ふっふっふ。そう言いながら赤くなってやんのー。恥ずかしいんか、お? 恥ずかしいんか? ねぇねぇどんな気持ち? つい先日まで男だったくせに母性溢れすぎとか言われてねぇねぇ今どんな気持ち? NDK、NDK。しかし俺自身もかなり恥ずかしい。一夏ちゃんに頭撫でられてるんやで。俺が。もう一度言う。俺が。やめろや、ちょっと気持ち悪いだろ。

 

「ふふっ」

「……え、なんで笑ったの?」

「いや、だって……」

 

 ほら、なんて続けながら一夏はまた笑う。

 

「普通に話せてるじゃん」

「………………あ」

 

 マジや。

 

「やったね、これで一歩前進だよ」

「いや、慣れただけじゃね?」

「それでも、慣れるって分かっただけ十分だと思うけど?」

「……まぁ、そう……なの、か?」

「そうだよ、きっと」

 

 くすりと怖くない笑顔をつくる一夏。いやぁ、イケメンスマイルは性別が変わると美少女スマイルになるんですね。眼福や。削られてたSAN値も回復していくような気分。こいつが一夏だとは本当思えないんだけどなぁ……。昨日はまだしも特に今日だと。

 

「つーか、お前なんでそんなスムーズに女口調話せんだよ」

「え? いや、昨日練習してきたから」

 

 用意周到だなオイ。




感想欄が半ばホモの巣窟になっている件について。一応言っておきますけど、この作品はオリ主と一夏ちゃんのイチャラブ物語になりますよ(暴露)。ええんか?

つーか作者はホモじゃないって言ってるだろ(かたくな)

ここまで言って信じないとか、やはりホモは疑り深い(確信)

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