俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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最後に立ちはだかるのはお姉ちゃんだと相場が決まっている(確信)


抹殺のラストお姉ちゃん。

 合宿二日目。今日は午前中から夜まで丸一日ISの各種装備試験運用やデータ取りなんかに追われるのだが、勿論のごとく乱入してきた兎さんが居た訳で。

 

「やあやあ皆の衆! 待った? え、待ってない? ふふん。そんな嘘つかなくてもいーよ☆ 待ったんでしょ? 本当は待ちに待ってたんでしょ? というわけでお待たせ! いつもニコニコ貴方の隣に這い寄る天才篠ノ之束ですっ☆」

 

 帰れ。

 

「帰れ馬鹿(天災)

「酷いなぁちーちゃん。あっ、あれだね! 出会い頭にハグしてあげなかったから拗ねてるんだね!」

「違う」

「よぅし、なら早速! ちーちゃぁぁぁ──」

「死ね」

「あががががっ!?」

 

 ハグしようとした束さんは女性が上げてはいけないような声を上げて悶える。その頭にはしっかりと千冬さんの五指が食い込んでおり、あれは痛いだろうなぁと他人事のように思いました(小並感)。もう一度言うが食い込んでいるのだ。おーけー? 当たってるんじゃなくて食い込んでる。あの人頭大丈夫かよ……(戦慄)。

 

「ひ、非常にっ、熱烈な、愛情表現、だねっ!」

「まだ可笑しな事を言う元気があったか。ならばもう一段階ギアを上げるとしよう」

「ひえっ。ち、ちーちゃん、やめ」

「確かあいつらの友人がこういう時に言う台詞があったな。なんだったか……そうだ、確か」

 

 ぐぎっという嫌な音がした。肉が抉れるとか、骨が砕けるとか、そんなモノじゃあない。もっと恐ろしい何かが起こりそうな音だ。束さんが僅かに呻き声を漏らす。千冬さん、それ本当に大丈夫なやつですか。スプラッターとかありませんよね。みんなにトラウマを与えるシーンじゃありませんよね。

 

「抹殺のォ……」

「ちょ、ま、カズ君! あ、いやちーちゃん!」

「ラストブリットォォオオ!!」

「うぎごげぇあがっ!?」

 

 ぐちっという音と共に束さんの四肢がだらんと垂れ下がる。あー、これは逝っちゃいましたね。残念無念、いやはや惜しい人を亡くしたものだよ。ISなんて凄いものを開発する人だったから、もっと多くの発明を残すだろうと思っていたのに。結局彼女も力には勝てなかったという訳か。後で供養してあげよう。

 

「……さて、それでは再開するぞ」

「篠ノ之博士スルーって……」

「やはり世界最強は伊達じゃない……」

「流石は織斑先生! 私たちにできないこt」

「そこにシビレる憧れるゥ!」

「タイミング早いよ!」

「すまない。本当にすまない」

 

 なんだこの茶番は、たまげたなぁ。ところで砂浜の上に放り捨てられている天災はノータッチで良いんですか? 良いんですね。はい。というか先ず触りたくないんでノータッチ不可避。だって……ねぇ? あの天災に触るなんてもう恐れ多くて。

 

「フッフッフ……甘い、甘いなぁちーちゃん」

「……束」

「この私がこの程度のちっぽけな力でやられるなどと思っていたのか! フゥー↑ハハハァ!」

「束さん、頭から血が出てますよ」

 

 どばどばと溢れ出るその光景に女子の何人かがすっと目を閉じた。どうやらスプラッターの苦手な方はいたようです。山田先生がおろおろとしながらも救急箱を持って近寄るが、束さんはそれを片手で制した。ごそごそとポケットに手を突っ込んで取り出したのは一粒の変な錠剤みたいなモノ。

 

「ごくん。……かぁっはぁ~……効くぅ……」

「み、見る見るうちに傷が……」

「スッゲェなあの人……」

「だね……」

 

 上から山田先生、俺、一夏。隣で同意の声を漏らしながら唖然として見詰めている。あの人はいつの間に仙豆みたいなもんを作ったんだ。飲むだけで傷口が塞がるとかそれやべぇな。是非とも俺たち一般人でも使えるよう改良を施して提供してもらいたい。なんて思っていればちらっと視線を向けられてふりふりと手を振られる。

 

「あ、あっくんも飲みたいー? なんか飲みたそうな顔してるねぇ! ま、私以外が飲んだらちょっとアレなことになっちゃうんだけど」

「あ、アレってなんすか」

「インポテンツ。EDってやつだね」

「それ絶対同じモノじゃないっすよね。俺専用に作ったやつっすよね」

「てへっ☆」

 

 死ね。糞が、ただでさえヘタレなのに勃たなくなったらもっとヘタレちゃうでしょうが。昨日千冬さんに貰ったアレを一生使うことなくなりますよ。え、昨日使わなかったのかって? 勿論使いませんでしたよ。あ、生でとかそういうのじゃ無くて先ずヤってねーんだよちくしょう。

 

「……あれ、そういや一夏。箒は」

「あと三秒。二、一……出るよ」

「えっ?」

 

 ずびゅんと砂を巻き上げて束さんの背後に現れたのは二人の少女だった。一人は鞘に納めたままの日本刀を構えたポニーテールのおっぱい。もう一人は手にグローブをはめているツインテールのちっぱい。どちらも知り合いである箒と鈴だ。紹介に悪意がある? 気のせい気のせい。

 

「姉さん死すべし慈悲は無いッ!!」

「ごめんなさい篠ノ之博士ぇッ!!」

「ほへ?」

 

 ぼっふぉーん。あれ、ISとか使ってないよね。なのにどうしてああも砂煙が舞い上がっているのか。煙幕並みじゃねぇか。人間じゃねえ。あいつら人間じゃねえよ。怖いので一歩後退っておく。心臓に悪いぜ。

 

「──いやぁ、甘い甘い。私を倒したくば先ず時を止めることからだね。箒ちゃん。チャイニーズ」

「姉さん。口から血が出てるぞ」

「これ、一応モロに直撃したら意識落ちるレベルなんだけど……」

「だから言っただろう、鈴。姉さんを倒すには心臓を止めるくらいでも足りない」

 

 足がったがたなんですけど。束さん足がったがたなんですけど。やっぱ効いてるんじゃありませんかね。細胞レベルでオーバースペックとか聞いてたけどそうでもないような気がしてきた。しらけた目を向けているとまたもやそれに気付いた束さんがサムズアップしながら此方に呟いてくる。

 

「こ、この薬の駄目な所はね、使用後一分は著しい身体能力の低下に襲われるんだ……」

「馬鹿じゃないっすか。それくらい束さんなら無くせるでしょうに」

 

 つか著しく身体能力低下してそれかよ。基礎スペックどれだけ高いんだ。ごめんなさい。束さんは細胞レベルでオーバースペックです。はい復唱。

 

「ふっ……良いかいあっくん。天才はね、天才故に完璧から遠ざかるものなのさっ……ごくん」

「また飲んでる……」

 

 直後に箒は刀を振るった。頬に当たったそれはごすっという鈍い音をたて、束さんを二メートルほど飛ばしてきた。うわ、こっちにやるんじゃねえ。一夏の肩を掴んでさっと避ける。ずさーっと顔面で砂の上を滑って天災はぱたりと倒れ込んだ。

 

「や、やっほーあっくん。いーちゃん」

「死に晒せクソ野郎(お久し振りです束さん)」

「蒼。逆、逆」

 

 しまった。でもまぁ良い。どうせ束さんだし。この人は基本的自分の中だけで完結させるので何を言っても意味がない。つまり何を言っても良いのだ。やーいやーい、束さんのバーカバーカ! 小学生か。

 

「つーか何しに来たんすか束さん」

「ふ、ふふ、みーあーげてーごらんー」

「?」

 

 刹那、ずどーんという凄まじい音と共に大きなナニカが飛来してきた。箱かな? いいえISです。銀色の壁らしきものがバタリと倒れれば、中から現れたのは真紅の装甲に包まれた紅つば──げふんげふん。束さんお手製であろうIS。良いなぁ、まともに戦える性能。俺のISもどうにかして欲しいなぁー。

 

「じゃっじゃじゃーん! これぞ我が愛しの妹に贈る最高のプレゼントにして最大のサプライズ! 箒ちゃんの専用機こと『紅椿』! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

 そうやって妹は贔屓して、私とはお遊びだったって言うの!? 酷い! 束の馬鹿! 最低! なんて思いながらぼうっと赤椿を見ていれば、ツンツンと頬を突付かれる。犯人は束さんだ。皆が紅椿の方に集中しているので勿論この一連の流れに気付いている人はいない。隣の一夏ですらそうなのだから当然である。

 

「……なんすか」

「ふふん。あっくんにもプレゼント、あるんだよ?」

「嫌な予感しかしないっすね」

「マトモだって、はい」

「!?」

 

 ぐにゅっとおっぱいの間に手を突っ込んで引き抜けば、その手には携帯電話ほどのサイズの小瓶があった。すすっと手に取るよう促されるが、これを手に取るのはぶっちゃけ躊躇うというか何というか。ええい、変な場所から取り出すんじゃないよ!

 

「……こ、これは?」

「篠ノ之印の特性媚薬。いーちゃんに盛るんじゃなくてきちんと自分で飲むんだよ?」

「いや、なんてもん渡してくるんすか」

「初めての性行為。男の子なら……自分から行きたいものでしょ?」

 

 確かにそうですけど。

 

「大丈夫。ちゃんと記憶に残るやつだから」

「それなら安心……いや待て。いやいやいや」

「それに無害だし。うん。ゆー、やっちゃいなよ!」

「ああもう、どうして俺の周りの女性は……」

 

 やれってのか? もうやっちゃえってことなのか? 周りからのアレとか気にせずやれってことで良いのかこの野郎。ゴムは用意できてますし? 二人っきりの空間は確保できましたし? 主導権を握るためのアイテムも貰いましたし? ……あれ、これもうやって良いんじゃね(混乱)

 

「さあ! 箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか! 私が補佐するからすぐに終わるよん♪」

「誰か別の人はいませんか?」

「残念! 私しかいないのだ!」

「……なら仕方ないですね。やれやれ」

「ねぇ、箒ちゃん。私お姉ちゃんだよ? ちょっと扱い酷くない……?」

 

 どよんと落ち込みながら歩いていく束さんを余所に渡された小瓶を見詰める。強いて言うなら色々とやらかしたアンタが全部悪いので自業自得っていうやつだ。今までのツケが一気に回ってきましたねー。

 

「? 蒼? なにそれ」

「あ、いや、大したもんじゃない。束さんから貰ったなんつーか……薬的な?」

「だ、大丈夫なのそれ……」

「おう。無害みたいだし」

「ふーん」

 

 それで興味を無くしたのか、一夏は紅椿の方へ視線を戻した。その横顔をじっと見る。俺は一体どうすれば良いのだろうか。前世含めて長年生きてきたが、何分こんな状況に陥ったのは初めてで困惑するばかりだ。ぶっちゃけると少し怖い。ふと視線に気付いたのか、一夏がこっちをちらりと向く。

 

「……そんなに見られると、その、ちょっと恥ずかしいだけど……」

「す、すまん」

「あ、いや、別にやめてって訳じゃ無いよ?」

「お、おう。そっか」

 

 ……案外、これは使えるかもしれない。




二人が一歩前進するためのアイテム②

『篠ノ之印の不思議なドリンク』×1

保持者:植里 蒼
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