俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

88 / 95
銀の福音。

「見えたぞ!」

 

 箒の言葉で前を注視する。居た。その名の通り全身が銀色のIS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』さんです。決してシルバニアファミリーとか銀の戦車(シルバーチャリオッツ)ではない。前者の方は全くもって関係ないな。後者も後者だが。うん。この程度のくだらない事を考える余裕は戻ってきてるっぽい。これなら緊張することなくやれそうだ。シリアス? いいえ僕たちが欲しているのは尻アスです。あとおっぱい。

 

「蒼さん、準備はよろしくて?」

「一応大丈夫っす。まぁ、あいつらが決めてくれると思うんですけど(大嘘)」

「それが一番ですわね」

 

 ロッドを構えて何時でもオーケー状態。高速戦闘だから五秒は意外と長く感じたり感じなかったり。やっぱ全然感じねぇな。おまけに高速戦闘用の超高感度ハイパーセンサーとかいうのは使う時に一瞬世界がスローモーションに見えるのだとか。なにそれ、やっぱ使うと同時に世界(ザ・ワールド)ッ!! とか叫んだ方がいいの? あっちもシルバー繋がりでちょうどいいな! 時よ止まれ。お前は美しい。

 

「加速するぞ! 目標に接触するのは十秒後だ。一夏、準備は良いな!」

「勿論、箒」

 

 箒はさらにスラスターと展開装甲の出力をあげる。その速度たるや凄まじいの一言だ。どんどん此方と距離を空けていき、高速で飛んでいる福音へと近付いていく。やれーやったれー幼馴染みどもー。くそヘタレに重圧かけんじゃねえぞー。お陰でロッドをきつく握り締めている始末。どんだけ心配なんだって話よ。

 

「はぁぁああっ!」

 

 一夏が零落白夜を発動させ、同時に瞬時加速でも使ったのか一気に間合いを詰める。や、やったか!?(フラグ)いや、これはやったに違いない。そう信じよう。現実から逃げたい俺はそっと目を閉じる訳にもいかないのでより一層ロッドを握り締める。やったって下さい一夏さん!

 

「なっ!?」

「敵機確認。迎撃モードへ移行。《銀の鐘(シルバー・ベル)》、稼働開始」

 

 あ、福音さんが最高速度のままこっちに反転&後退の姿になって身構えた。うむ。嫌な予感は良く当たるものですよね。良い予感は当たらないって言うのに。迫る刃を福音さんはぐりんと体を一回転させて避ける。零落白夜外れたー! マジワロエナイ。つーかなにあの変態機動。

 

「行けますか蒼さん!」

「むしろ無理矢理にでも行ってやります!」

「良い心意気ですわっ!!」

「モチのロンでジョーダンですがねっ!?」

 

 無理矢理には行かねーって。逝く羽目になるからね。二度目の人生をまだまだ謳歌したい植里くんの存命に清き一票を、清き一票をお願いします! 選挙で生死が決まるとかそれやべぇな。生きたい。生き抜きたい。そのために戦わなければ生き残れない。ファイナルベント的なあれで。

 

「接触まで残り三秒!」

「うっす!」

「二、一……今ですわっ!」

 

 ──エネルギー解放、刃生成。残存時間5秒。

 

「シャオラァァアアッ!?」

 

 避けられた。

 

「何をやっているんですの蒼さん!」

「いや待ってマジで何あの変態機動!? 本当に人間乗ってんのかよ!」

「仕方ありませんわ! ここは一旦体勢を立て直さないと──」

 

 そうさせてくれると有り難いんすけどねぇ。どうも福音さんはうちらにデレてないご様子。ツンデレだとしたらまだツンツンの時期である。デレないツンデレとか意味あんのかよ! それを最早ツンデレとは言わないことにこの時の僕は気付かなかった。そう、あの時までは。あの時ってどの時だ。

 

「うおぉっ!? 危ねぇっ!? エネルギー弾丸とかやべぇって!」

「ウイングスラスターに砲門が……」

 

 とりあえず避けきれなさそうなのを率先してロッドで叩いていく。おっほー、こりゃ凄い。エネルギーがどんどん溜まっていく。まるで健全な男子中高生のアレくらい溜まっていく。みんな、くれぐれも学校で抜いたりしちゃいけないんだゾ☆ トイレ掃除の人が困っちゃうからね。

 

「箒、左右から攻めるよ。左をお願い!」

「了解した!」

 

 なんて考えてる場合ではない。一夏と箒がガンガン攻めているがその一切の攻撃が掠りもしない。福音さんの避けること避けること。俺とセシリアも協力してみたが全然駄目すぎる。当たんねぇ。しかも同時に攻撃まで行ってくる。なぁにこれぇ。

 

「当たらないし攻撃来るしで嫌になるわ!」

「大丈夫、箒とセシリアが動きを止めてくれてる」

「おおぅ、一夏。……マジで止まってんのか」

「うん。あと少しで隙が出来る筈──」

 

 あ、全方位に向けて光弾撃ってきた。しかも同時に密漁船を発見。グッドなのやらバッドなのやら分からんタイミングやな。

 

「蒼!」

「しゃあねぇなオラァ!」

 

 言われてさっさと船に当たりそうな光弾へ向かう。白式のエネルギー的に考えて残り一回は余裕で零落白夜を発動させられるだろう。対して俺のアレは冷却時間があって使えない。どちらが助けに行くかなんて明白だ。何よりこいつの凄いところは俺が船に気付いたのに気付いたところだろう。流石俺の嫁。

 

「そぉい!」

 

 ぶぉんとロッドで殴れば光弾は跡形もなく消える。エネルギー攻撃って良いですね。そのままこいつが吸収してくれるので効率が半端じゃない。物理攻撃だと溜まるにしても遅いんだよなぁ。使ってて気付いた。……地味にこれすごい技術じゃないの?

 

「やるなっ……! だが、押し切るッ!!」

 

 声が聞こえて振り向けば、セシリアの援護で箒が光弾の雨を掻い潜り、福音さんへ追撃を叩き込んでいた。そうなれば隙が発生する訳で、今その場所に居るのはアイツ。となればもう決まったようなもんか。

 

「零落──」

「決めろ! 一夏!」

「決めてください! 一夏さん!」

「決まっただろ、アレは」

 

 最小限に振りかぶって、一閃。

 

「白夜ぁぁああッ!!」

 

 盛大に切り裂かれた福音は、真っ逆さまに海へと落ちていく。つーかこっちに来る。えっと、あれって一応受け止めた方が良いの? ナターシャさんだっけ、乗ってるんだよね。受け止めた方が良いよなぁ。よし、こういう時こそ言うべき台詞だろう。親方! 空から銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が!

 

「終わり、か?」

 

 ぼうっとゆっくり落ちてくる機体を眺めながら少し考える。ほぼ役立たず転生者が一人居てこの結果になるものだろうか。ぶっちゃけ上手く行きすぎてなんとなく怖い感じだ。よく考えてみよう。以前千冬さんから俺の長所は冷静な思考力だとか言われた記憶があるような無いようなやっぱり無かったような気がする。……つーか今気付いたんだけど、IS解除されてなくね?

 

「──思い……出した!」

 

 残されてる。まだあと一つ、こいつは変身を残しているんだッ!! フリーザか。変身ちゃうわ。その時不思議な事が起こらねーわ。マジで勘弁して欲しい。さっと福音さんから逃げるように遠ざかる。巻き込まれ転生者もこれには巻き込まれたくないんだよ。

 

「来るだろ。いや……来ない方がマシだけど」

「? 蒼、何を──」

 

 ぼんっと海面が爆発した。つーか吹き飛んだ。球状に蒸発したみたいだ。不思議なことにそこだけ時間が止まっているかのようにぽっかりへこんでいる。中心には青い稲妻を纏う福音さん改(銀の福音 第二形態移行)が自らを抱くようにしてうずくまっていた。これ、ヤバくね?

 

「せ、『第二形態移行(セカンドシフト)』……?」

「そんな……信じられませんわ」

「信じるしかないだろう。現実になっている」

「……うっわー。ありえねー」

 

 ブーイング的な意味で。

 

「一夏、エネルギーはどのくらい残ってる?」

「もう殆ど無いも同然。だからこれは……」

「そっか。なら撤退しよう」

「うん……って、蒼!?」

 

 まだ動いてない今の時点で接近しておく。そうすれば俺へとターゲットが向いてくれる筈だ。多分。自信ないのかよこいつ。確か第二形態移行の攻撃性はかなり高かった記憶がある。もうヒロインズボッコボコにしてたよね、福音さん。流石は一期のラスボス。

 

お前らは(・・・・)、だけど」

「馬鹿じゃありませんの蒼さん!」

「昔からだあれは、馬鹿に違いない」

「ああもう蒼の馬鹿……」

「ヒッデェ……」

 

 正直なところ、勝てるかどうかだったり生き残れるかなんてのは関係無い。多分、こうしないとあの人が満足しなさそうなんだよなぁ。自分から出なかったら無理矢理にでもやってきたに違いない。……俺の性格っつーかなんつーか、そういうの見抜いてやってきてるし、コレ。

 

「一夏」

「……なに」

「これが終わったら覚悟決める。俺だっていつまでもヘタレてる訳じゃないからな」

「へ、ちょ、蒼──」

 

 動いた、来るか。

 

「来いよ。銀の福音? はっ、銀の鐘だのなんだのと言うんなら俺たちに対する祝福の鐘でも鳴らしてろっつーんだクソ野郎が」

 

 煽っていくスタイル。機械に意味はありませんがね。




二人が一歩前進するためのアイテム④

『揺るぎない覚悟』×1

保持者:植里 蒼(予定)織斑 一夏(予定)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。