ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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3周年企画の募集は5月30日、木曜日までです。
応募した方はお急ぎ下さい。
既にメッセージを送って下さった方々は31日の当選者発表をお待ち下さい。


ヤンデレ師匠

 

「んー? なんだこれ?」

 

 ヤンデレ・シャトーに到着して直ぐに目の前の扉に目を凝らした。

 

(おかしい。扉しかない。

 エドモンにはサーヴァントが2騎だって聞いていたんだが……)

 

「て言うか毎回毎回、態々危ない入り口を俺に潜らせるのは一体どんなホワイダニットがあるんだ……」

 

 ドアノブを掴んで回した。夢に動機を求めるのが間違っているのだろうか。

 

(――っ……!)

 

 扉が開くと同時に頭の中に何か流し込まれた様な感覚。どうやら、何かの認識改変を喰らった様だ。

 

 改変された内容までは分からない。だが、改変されたと分かるのは何故だ。

 普段なら此処がヤンデレ・シャトーだと言う事すら忘れる程なのに……

 

(態々、大半の記憶がある状態にしたんだ?)

 

 随分怪しい攻撃だったが、行き先は変わらない。俺は扉の中へ入った。

 

 その部屋は神代の魔術師の部屋だった。

 

 魔術的機材や触媒、書物。

 そして、その雰囲気に似つかわしくない文明の利器もある。冷蔵庫とキッチン、電子レンジの置いてある台所が同じ部屋に机で分けられ置いてある。

 

「あ、来たね」

 

 当然、扉が開いているなら人がいる。声の主は俺の良く知る人だ。

 しかし台所で屈んでいるので姿が見えなかった。

 

「ちょっと待ってて。今新作のキュケオーンが出来そうだから」

「いや、新作って……ご飯くらいなら俺が作りますよ、師匠」

 

「っ! いやいや良いよ、大丈夫!」

 

 何を慌てているんだろうか。俺は直ぐに師匠の様子がおかしい事に気付いて足を動かした。

 

「……失礼します」

「あ、こら! ちょっと待ってなさい!」

 

 台所まで歩いて中を覗き込むとそこにはボウルの中で玉虫色の色彩を放つ泥の様な物があった。その中に麦米らしき物が見え、キュケオーン……と呼んでいいのか分からなかった。

 

 師匠の顔は「あ、バレた」みたいにテンパったまま、ボウルに向けたスポイトから何かの薬品が1滴だけ落ちた。

 

 一瞬で玉虫色の何かは、俺も良く知るキュケオーンへと変色した。

 

「あ、あははは…………食べ、る?」

 

 俺は無言でゴミ箱を指さした。

 

 

 

「全く、何をしてるんですか師匠」

「うぐ……新作のキュケオーンだったのにぃ」

「あんな食欲の失せる色の物を良くもまあ食べ物として出そうとしましたね。オケキャス師匠は暫く料理禁止です」

 

「な、なんで弟子の君に師匠である私の研究を禁止されなければならんのだ!」

 

 本当に、この人に威厳は無いのだろうか……いや、弟子入りを志願したのは俺だったので余り強く言えないけど。

 

「な、何だその可哀想な奴を見る目は!?」

 

 そう、俺はカルデアのマスターとして魔術を身につける為にオケアノスのキャスターに弟子入りさせてもらい、こうやって彼女の部屋に来ては魔術の研鑽を……している筈だ、多分。

 

(……むぅ、おかしいぞ? ……師と弟子って事で私が上の立場で優位に攻めるって話じゃ……)

 

 しかし、そうか。この悪夢の中に現れるという事は師匠もヤンデレの可能性があるのか……

 

 でも、この人は素で怪しい行動をするからなぁ。

 

「まあいいか。じゃあ、今日もこの大魔女が君に修行を付けてやろう」

「よろしくお願いします」

 

 と言ったが、師匠は正面から思いっきり俺に抱き着いて来た。

 

「ちょ、な、なんの真似ですが師匠!? 殴りますよ!」

「君は本当に遠慮がないな! 抱き着いて来た女性に愛の言葉より先に脅し文句とは……師匠がいなくなっても良いのかい?」

 

「っ……!」

 

 頭の中に、金髪の少女の笑みが浮かんで来た。特異点で共に旅をした彼女の寂しげな顔が――オケキャス師匠の顔と重なった。

 

(……あれ? 意外と効果ありかな?

 ふむふむ、特異点で出会った女を召喚できなくて落ち込んでいるのは本当みたいだね。全く、本当に嫉妬させてくれるんだから!)

 

「す、すいません師匠。それで、この体勢に何か意味が……?」

 

 密着し過ぎて、甘い匂いの香水が移らないか心配だ。

 

(……だけど、その何処の馬の骨とも知らぬ女には感謝しよう。お陰で彼の心の隙間に簡単に居座れるんだからね)

 

「ふふん! 素直なのは良い事だ!

 君は魔術師としては未熟だからね。万が一にでも事故が起こって君が傷付く様な事態を防ぐ為に君には最大限触れているのさ」

 

「安全に配慮するのは良いけど、せめて腕を握る位にして貰っても……」

「だーめ。さあ、ほら早く魔術を使ってみなさい!」

 

 オケキャス師匠に言われるがまま、俺は魔術回路を起動させ礼装の術式を発動させた。

 

「瞬間強化!」

 

 いつも通り、スキル発動に成功した。オケキャス師匠はそれを見て頷く。

 

「へぇ……なるほどなるほど」

 

 漸く体を離しながら

 

「うんうん、発動の手順は理解出来た。けどやっぱり君の属性は分からないね」

「属性……」

 

「うん。君の使う礼装が機能的すぎるのもあるけど、魔力の色が混ざっていると言うか同時に存在していて存在していない……みたいな感じかな?」

 

「よく、わかりませんね……」

 

 これは、悪夢の中だからなのか、主人公が無数に存在するからなのか……それとも本当に属性が無い……? そこらへんの話はよく分からない。

 

 熱くなる額に手を当てた。

 

「うーん、分からないままなのは気持ち悪いけど、調べる方法も無いし、まぁ良いか」

 

 弟子の才に関係しそうな事なのに随分適当な師匠だ。

 

 近くの机に手を置いて体を支えた。

 

「君だって生粋の魔術師って訳じゃないんだし、そこまで興味は無いだろう? 現代の魔術は対価の割に見合っていない物が多いそうだし、まあ使い慣れた礼装の魔術の方が有用さ」

 

 服をなぞりながら語った師匠は俺の顔を見た。

 

 触れて来た手が冷たい……いや、俺の顔が熱い。

 

「もう出来上がってきたかな?」

「はぁ……はぁ……な、何が……!?」

 

「術式が解かれば魔女である私なら簡単に書き換える事が出来るんだよ。

 君が使った瞬間強化はいま、君の体から力を奪う魔術に変更されたのさ。

 まあ、体が熱いのは私の香水に混ぜた媚薬のせいなんだけど」

 

 オケキャス師匠……行き遅れたからって弟子に手を出す気ですか。

 

「師匠として恥ずかしくないんですか!?」

「何言ってるの? ああ、そうか。君と私とでは逆なんだね」

 

「逆……?」

「弟子にしてから好きになったんじゃなくて、好きだったから手元に置く為に弟子にしたのさ。まあ、君が師匠師匠と慕ってくれるのも悪くはなかったけど、私はそんなに君に遠慮して欲しくないなぁ……と」

 

 最早立っている力も無くなった俺は膝を折り、机に置いていた手も地面に着いた。

 

「まあ、これで君は本当に私の物さ。力は入らないけど体は敏感だろ?」

 

 首を指でなぞられ、その動きに快楽が背中をゾクゾクと上ってきた。

 

「ふふ、まあ私の魔術工房内だから力を奪わなくても逃げらないから本来必要ないんだけど、まあ師匠に歯向かわない様に君を少し素直にしてあげよう」

 

 

 

「ほーら、キュケオーンだぞー」

 

 あれか何日か経った。

 俺は未だに脱出どころか、拳を握る力すら戻っていなかった。

 

 師匠によって書き換えられた術式は自動的に発動し、俺の魔力を糧に俺自身の弱体化をしていた。

 

 勿論、それでは魔力は尽きて俺が死んでしまう。

 

 なので師匠は俺に笑顔でキュケオーンを食べさせる。

 なんでも、それは魔力を回復させるだけでなく一時的に師匠の工房内の魔力を吸収出来るらしく、燃費に関しても師匠が改良を重ね続けた結果、僅かな魔力しかない俺でもこうして何日に渡って発動できる様になったらしい。

 

「ねぇねぇ、何時になったらその指輪を嵌めてくれるんだい?」

「は、嵌める……嵌める、から……」

 

 そして、俺の手に横に置かれたと指輪。それを薬指に嵌める事が師匠の出した術式を解く条件だ。

 

 しかし、力を奪われ指が震える状態の俺では、指輪を上手く嵌める事はできない。

 薬指にギリギリのサイズのそれに揺れる指を入れるのは困難で、掴む力も無い俺では不可能だ。

 

「うーん、なら早く嵌めて欲しいなぁ」

 

 だけど、師匠は手伝ってくれない。

 

「ちゃんと薬指に嵌めて、私に見せてね? そしたらその魔術も解いてあげるから、ね?」

 

 笑顔で師匠はこう言った。これも修行だと。

 

「私に立派になった弟子の姿を早く見せてね? それまで私も、こうやって君にキュケオーンを沢山作ってあげる」

 

 そして皿一杯分のキュケオーンを食べさせてから師匠は出ていった。

 

 

「良い顔だなぁ。ふふふ、今日も私を求めて鳴いてくれる。でも、まだまだ……

 君にはもっとちゃんと、師匠におねだり出来るダメダメな弟子になって貰わないとね?」

 

 

 

 

「…………ん?」

 

 目が覚めると俺の前に1つの扉が置かれていた。

 

「……あー……ヤンデレ・シャトー、か?」

 

 少し気分が悪い。体にダルさを感じるが、少ししたらそれも抜けていった。

 

「うんっ……寝る時はそんなに疲れていた筈は無かったが……と、そろそろ行くか」

 

 エドモンに急かされるかもしれない。俺は扉を開けて中に入った。

 

 そこは海だった。

 

「………え、どこでもドア?」

 

 見れば、握っていたドアノブを残してドアは既に消えていた。

 

「今回の舞台は海かぁ……」

「全く、私を差し置いて新たな師が欲しいなどと、よくも抜かせたものだな」

 

 後ろから聞こえて来た声に思わず体が竦んだ。

 

「す、スカサハ師匠……!」

 

 しかし、その水着姿を見たと同時に俺の思い描いていた師匠ではないだろうと思った。

 

「魔術の師が欲しかったのか? ルーン魔術は勿論、魔境の叡智がある私なら現代の魔術の知識を手に入れ、お前に教鞭を振るう事など造作もない」

 

 そう言ったスカサハは何処から取り出したビーチパラソルを取り出し、いつの間にか敷かれていたシートの中心を貫いて地面にパラソルを突き刺した。

 

「さあ、座れ。私がお前を一人前にしてやる」

 

 有無を言わせない姿勢でそう言った彼女に従い、俺はその場に座った。

 

 意外な事に、本当にスカサハによる魔術の授業が始まった。内容は魔術の扱いを重視する内容であった。

 

 普段、礼装のサポート有りきで行っている魔術回路のオンとオフ、一工程の簡単な魔術の行使等、彼女の真面目さが全面に押し出された物となっていた。

 

 しかし、この授業には大きな問題があった。

 

「それで、答えは?」

「え、えっと……」

 

 水着姿の彼女の胸である。嫌でも目を奪われる瞬間があり、だんだんそれに気付いた彼女も無駄に腕を組んだり前屈みになったりと俺をからかう様な動きが多くなった。

 

「ふむ、流石に長時間座っていると疲れるな……」

 

 生足も十分凶器であったと重ねて述べておく。

 

 しかし、それで理性が溢れる事はない。て言うか、例えヤンデレでなくてもこちらから手を出すなんて恐ろし過ぎて出来る筈がない。

 

「よし、今日はこれ位で終わりにしてやろう」

「ふぅ……っ!?」

 

 だが、終わると同時にスカサハ俺の方をしっかり掴んだ。

 

「……ふぅ……ふぅ……ふぅ……!」

 

 先まで普通だった筈の表情は赤く染まり、呼吸が乱れている。

 

「ちょ、師匠……!?」

「はぁ……これはお前が……師である私にあんなに嫌らしい視線を向けるからだ…………お前も、見ているだけでは辛かろう?」

 

 スカサハ師匠の腕が俺を引っ張る。

 近付いた体同士は触れ合い、布越しでも彼女の柔らかな双山の中央が主張しているのが分かる。

 

 その刺激に触発された師匠は更なる快楽と接触を求め俺を引っ張る。

 

「……マスター。分かっているだろう? 私はもうお前が欲しくて止まない」

 

「師匠、待って」

「我が弟子ならば、迫る女くらい容易く抱いてみせよ」

 

「だけど、俺の師匠はそんな軽い女じゃないでしょ?」

 

「……その言葉は」

 

 その時、師匠の力が急に増した。顔も妖しい雰囲気が消えて、怒りが顕になった。

 

「私が軽い女だと? お前の口からそんな言葉を聞くとは思わなかったぞ」

「し、師匠……!?」

 

 肩を掴んでいた手が首まで来た。親指が呼吸を難しくする位置でめり込んでいる。

 

「私の目的はお前だ。お前が欲しくて欲しくて、私の体は疼いている。

 ――だと言うのに、今の言葉は私の想いを踏み躙った」

 

 身の危険を感じて両手でスカサハの腕を引き剥がしにかかるがまるで外れない。なんて力だ。

 

「安心しろ。少々苦しくなるだろうが体で教えてやろう。英雄になるのであれば女の扱い方は必須。先ずは私の心の痛みから刻み付けてやろう」

「うぐっ……!」

 

 地雷を踏んだなんて今更口に出さなくても十分に理解したがこのままでは本当に殺される。いや、そのつもりはないだろうけれど。

 

「がぁ、はぁはぁ、はぁ……!」

「ふふふ、お前の言葉が刺した私の痛み、少しは理解出来たか?」

 

 俺はそれでも、彼女が劣情で迫る姿がお世辞にも美しいとは思えなかった。

 

「ガンド……!」

「何……!?」

 

 普段の師匠なら例え至近距離でも当たらない攻撃だが、発情と怒りで視野の狭まった彼女に当てるのは簡単だった。

 

 動きの止まった師匠の腕を掴んで、自分に強化を掛けて師匠を引っ張ると、一緒に海へと落ちた。

 

 

 

「むすーっ」

 

 可愛い。けど怖い。

 古典的ではあるが、水のお陰で冷静さを取り戻した師匠はそれでもやはり彼女を抱かなかった俺に怒り、むくれている。

 

「私は決して軽い女などでは……弟子大好きだし……一筋だし……監禁……」

 

 何かまだブツブツ言っている。

 

「師匠」

「調教……媚薬……感度3000」

 

「し、師匠!」

 

 いかがわしいタグみたいな単語を並べるスカサハ師匠を正気に戻そうと声を張り上げる。

 

「……なんだ」

「いつまで怒ってるんですか? いい加減機嫌を直して下さい」

 

「お前が言うか……」

 

 師匠は立ち上がり、こちらに歩いてくる。

 思わず身構えるがそれより早く師匠は俺の額にキスをした。

 

「だが、お前の中に理想の私がいた事は喜ばしい事だ。

 私を拒んだなら、他の者にも好き勝手させるな」

 

「師匠……」

「まぁ、また今度あった時はしっかりと相手をして貰おう。ふふふ、骨抜きになる日を楽しみにしておけ」

 

 怖い事を言い残して、師匠は去っていた。

 その時の顔が、いつしかの特異点で出会った師匠の別れ際と被った気がする。

 

 

 

 

 

「ふ〜んふ〜ん……さあ、我が愛弟子よ。今日もキュケオーンをお食……ん!? あれ、いない!?」

 

 オケキャス師匠は慌ててキュケオーンを近くに置いて牢屋を見渡す。

 しかし、そこに力を抜かれた俺の姿は無い。代わりに彼女が術式を弄った礼装が脱ぎ捨ててある。

 

「そんな馬鹿な!? 一体、何処に……!」

 

 牢屋の鍵を取り出し、彼女は中に入った。

 

「ガンド!」

 

 俺はその瞬間を見逃さず、死角から彼女の動きを止めると手の中の鍵を奪った。

 

「な、なんで!? 体の自由は奪った筈!」

「別の師匠のおかげかな?」

 

 俺は髪を上に上げ、おでこから消えかけているルーン文字を見せた。

 姿を消すルーンとレジストの効果が発揮された様だ。

 

「な……そんな物いつの間に!? き、君は私の弟子だったじゃないか!」

「使える物は何でも使う。師匠を倒す為なら尚更だ」

 

「だけど、君は逃げられないよ! こんな牢屋、体の自由さえ戻れば直ぐに破ってまた捕まえてあげる!」

 

「なるほど……所で、この礼装の瞬間強化って確か力を奪う術式になってるんでしたっけ」

 

 俺は掴んだ礼装を見せびらかす。

 

「……これ、師匠の力を奪えるのかな?」

 

 俺は魔力を流し師匠に対してスキルを発動させた。

 

「うっぐ……! や、やめろぉ……!」

 

 麻痺する体から力も抜けて、自分の体を支えられていられなくなったオケキャス師匠の上にそっと礼装を被せて袖で体を巻いてあげた。

 

 発動した礼装は最初こそ対象である師匠に効力が発揮されていたが、次第にその効果を礼装を着用した者に変える。まあ、それも今は師匠自身を苦しめている訳だが。

 

「とっ、取ってよ! 弟子、師匠の頼みだぞ!」

 

 この人はわざとやっているのだろうか。こんなに虐めたくなる人が他にいるのだろうか。

 

「取りません。俺にしたイジメの数々をお忘れですか?」

「ち、違う! あれは本当に君の成長を祈ってやったんだ! 信じてくれ!」

 

「そうですか……」

「ご、ごめんね! 謝るよ! お願い!」

 

 それでも流石はオケキャス師匠だ。俺はしゃべる力も奪われていたのに口が良く動いている。

 

「師匠、もうちょっと可愛くお願い出来る?」

「う、うん! ご、ごめんなさい。もう二度と悪い事しないから、許して下さい」

 

 うーん、可愛いか? 力が入らない状態で笑顔が引き攣ってるけど……可愛いなぁ。

 

「ね、ねぇ……先から君、性格変わってないかな?」

「そうかもね。でも、今の師匠、可愛いね」

 

「そ、そうかなぁ……じゃあ、この可愛い師匠を出してくれても良いんだよ?」

「うーん、まだ駄目かな。

 あ、そうだ。師匠は俺にこのまま閉じ込められたくない?」

 

 そうだ。元々師匠は俺を閉じ込め飼い慣らそうとしていたんだし、逆にそうすれば師匠は喜ぶだろう。

 

「そ、それは駄目だよ! だって、私が君の師匠だよ!

 あ、そうだマスター! 君に飲ませた媚薬が何か妙な作用をしたに違いない! 解毒剤をあげるから、此処から出して!」

 

 あー……なるほど、媚薬のせいで……そうか、オケキャス師匠を虐めて楽しくなっているのはそのせいか。

 

「じゃあ、遠慮はいらないか」

「……え?」

 

 だって、媚薬は師匠から投与された物だし、それのせいでこうなったのなら俺が遠慮する理由はない。例え多少師匠を傷つけてもそれは自業自得だ。

 

「安心してよ。何時もの鬱憤の半分くらいで勘弁してあげるから」

「……い、何時ものって……?」

 

「ああ、ヤンデレ・シャトーの分だ」

 

 俺は半笑いのまま気絶したオケキャス師匠に被せる水と、彼女が退屈しない様にと玩具を探す為に部屋を出た。




今更ですがライネス師匠が引けなかった記念。
師匠って立場の難しさを再確認する話となりました。


さて、次のイベントは新サーヴァントが引けると良いなぁ!

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