ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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新しいサーヴァントを書こうとして途中でよく分からなくなった話です。
鬱耐性無いのに鬱ゲー紹介なんて見るから……


ブラックヤンデレ

 

 

「誰かぁ、助けてくれぇ!!」

 

 俺は早速悲鳴を上げていた。いや、上げざるを得なかった。

 

 何故なら、刻一刻と俺の首を狙う彼女がこちらに迫っているにも関わらず俺はベッドから立ち上がる事も出来ないからだ。

 

「ますたぁ……ますたぁ……ふふふ、体動かせないお寝坊さんになっちゃった……私、ちゃんと寝かし付けたね?」

「いや、寝てないから! 金縛りみたいに体が動かせないだけで目はバッチリ覚めてるから!」

 

「もう……寝言であんまり騒いじゃ、だ・め」

「こんなに叫び倒している寝言があるかぁぁぁ!」

 

「これでマスターも……ヨカナーンと一緒……私だけの、マスターになるの」

 

「れ、令呪を持って命ず――んっ!?」

「いーや……ごめんなさいマスター。私もう、貴方の首が欲しくて欲しくて仕方がないの!」

 

 

 

 俺の生存の為にも、話を少し前の時間まで戻させて欲しい。

 

 未だに高レアのアヴェンジャーを余り引けていない俺は、そういえばアントニオ・サリエリはどんなシャトーを作るのかと聞いてみた。

 

「何を期待しているか知らないが、私は唯の凡人、神に愛された男を殺すだけのサーヴァントだ」

 

「……まあ、たまには良いだろう。作曲家、こいつのシャトーを奏でてみろ」

「む……仕方あるまい。だが、余り私の演奏に期待をするなよ」

 

 そう言って突然現れたピアノで曲を弾き始めた。

 

「あれは……?」

「シャトーの構成はその者の最も扱い易い物で行われる。あのピアノが奏でる音色こそお前の今日味わう監獄塔となるだろう」

 

 軽く軽快な音が響き続けるが、だからこそなのか、フワフワとまるで行く宛の無い旋律に不安を煽られる。

 

「……奇妙な物だな。音楽で塔を作るというのは……」

「シャトーは簡単に設定できる様に既に基準が設けられている」

 

 エドモンの説明と同時に音階が変化した気がする。延々と始まりを繰り返していたメロディーが漸く歩み始めたようだ。

 

「なるほど……少女の嘆きを演出するか」

 

 不穏な言葉と共に、音階が下がった。だがテンポは上がる。

 

「…………!」

 

 やがて、彼はその両手をピアノから離し、自分の前に置かれていた楽譜を取ってエドモンに渡した。

 

「早いな」

「お陰で雑な音楽になったがな……」

「弾きたくなったか?」

 

「……まあ、機会があれば再挑戦するのも良い。手応えはある」

 

 満足げなサリエリ俺に簡単な説明をした。

 

「私よりも後にカルデアに召喚された少女達の憎悪を弾いた。基準値自体は本来の物をなぞった筈だ。マスターなら、私程度の音楽、軽く超えていけるだろう」

 

 

 

(とか言ってたのに、サリエリ先生の嘘つき!)

 

 目が覚めた時、俺は既にベッドの上だった。上半身を動かそうとしたが、上から押さえつけられ出来なかった。

 

 同じ部屋にいた、最近召喚されたばかりのバーサーカー、サロメが俺の上に座ってこちらを見下ろしたのだ。

 

「ふふふ、マスター……こんな時間に目を覚ましちゃ駄目よ」

「いや、まだ夢の中なんだけど……」

 

「ふふふ、私に馬乗りにされる夢が見たいなんて……マスターって情熱的なのね?」

 

 俺の言葉を前向きに捉えた彼女はドクロの形をした水晶……ヨカナーンを撫でながら「ヨカナーンとは大違い」だと笑った。

 

「じゃあ、その夢がもっとぉ……気持ちいい物にしてあげる……ふぅー」

 

 彼女の顔が近付き、右耳のすぐ側で息を吹き掛けられた。

 

 愛する者の首を欲する彼女の性質を知っている俺は恐怖と共に敏感な部位を刺激され、ゾクゾクと背中を震わせた。

 

「あっはは、マスター、ちょっと震えたて可愛い……んっ?」

 

 サロメの唇がこちらに近付くのを見て、思わず掌で防いだ。

 それを見て、彼女は分かりやすく顔をふくらませる。

 

「むー……口付け、嫌いなの?」

「いや、嫌いではないけど……」

 

「そうよね。マスターは眠りたいのよね……ヨカナーン」

 

 ドクロを俺の近くに持ってきた彼女は、そこから怪しい魔力の光を放つと、言葉を発さずに口を動かした。

 

『聞こえる?』

 

 否、サーヴァントとマスターの繋がりが薄いヤンデレ・シャトーで、俺と自分を念話可能にしたのか。

 

『好き』

『これでマスターに、ぐっすり眠って貰うの』

『首』

 

 彼女の声が聞こえてくる。

 心の声が漏れているのか、所々で本音が響いている。

 

『心地良い? 私もね、マスターの中に私がいるんだって、嬉しくなっちゃう』

『好き』

『口付けしたい』

 

 度々聞こえてくる本音にビクビクしつつ、念話と共に俺の体に頭を預け、視線をこちらに向ける彼女警戒する。

 

『鼓動が聞こえててくるのドクンドクンっ

て』

『好き』

『あ、今大きく跳ねた』

『好き好き好き』

『ふふふ、私の気持ちに頷いてくれてるみたい……』

 

 こちらは一切喋っていないのに、彼女に心を見透かされ始めている。

 

『じゃあ、そろそろ……寝ましょうね?』

 

 そう言って彼女は俺の視界を覆う様に手の平を被せると、そのまま心の声で歌い始めた。

 

『〜〜♪』

 

 彼女の母国の歌なのか、歌詞の意味は分からないが心地良い音色が耳ではなく内側に響く。

 

 直ぐに緊張がほぐされ、視界を塞がれたせいもあり外の情報が入ってこないので、不安は薄れていく。

 

『〜〜、〜〜♪』

 

 だが、やはり俺はヤンデレ・シャトーの中で完全に寝ていられる程の度胸等無かった。

 

 なので、視界を塞ぐ手を退かそうとして――漸く、彼女の魔術に掛かっていた事に気が付いた。

 

 

 

「――んー!!」

「ふふ、暴れないでね……動かないでね……出来るだけ、綺麗に切ってあげるから」

 

 ヨカナーンの口が開き、中から大きなナタを取り出し握り締める。

 

 ちゃっかり俺の分の銀の皿まで用意している……いらないが。

 

「じゃあ、行くよー!」

 

「――させません!!」

 

 ――来た。

 ――来たぞ!

 ドアを突き破り、黒の水着とマフラー、そして腰に装着されたSFチックなジェットの推進力と共に、天才剣士がやって来た!

 

「マスターは、私が、お守りします!」

 

 オキタ・J・ソウジ、長いのでオキタさんと呼ぶが、彼女はジェットの力で扉を突き破りベッドの上にいた俺を引ったくりの様に掠め取ると、そのまま壁に激突し、破壊した。

 

「どうですがマスター! これがオキタさんの新能力、監獄塔の壁すら破壊して突き進むぶれいくしーるど、を常時展開する土方さんモードです!」

 

「こ、これ何処まで行く気だ!?」

「勿論シャトーの外です! これで悪夢とおさらば! オキタさん、マスターを独り占めで大勝利です!」

 

 そう言ったオキタさんだが、次の瞬間、俺達は黒い霧に包まれ、気付けばヤンデレ・シャトーの中に戻されていた。

 

「……ですよねー」

「あ、あれ、おかしいですね……ジェットが……」

 

 いつの間にか黒いビキニとマフラーは消え、白色に緑のフチの水着に変わっていたオキタさん。

 何処からともなく紙が落ちてきた。拾って見てみるとそこには簡単な文が1つ。

 

“シャトーからの脱出は認めない。罰としてジェットは没収する”

 

「なんですとー!?」

 

“病弱無効はそのままだから安心しろ”

 

 不幸中の幸いか、まあオキタさん自身は無事だから良しとして貰おう。

 

「ま、まぁ、正直便利ではありますがイロモノ感しかなかったので別に良いんですけど……あ、それよりもマスター! ご無事ですか!?」

「あ、ああ、助かったよ」

 

 両手を肩に置かれ、こちらをじっと心配そうに見つめるオキタさんだが、すぐにその目には良くない感情が宿った。

 

「……ですが、何であんな状況だったんですか? あの新顔が、マスターにもっとイヤらしい感情を抱いていたら、一生癒えない傷を……死ぬより辛い傷を庇っていたかもしれないですよ?」

 

 徐々に肩を掴んだ腕の力が増していた。

 

「それは良く理解出来たんだけど……そもそもサーヴァント相手にどうすれば……」

「令呪やお得意のガンドがありますよね? 私以外のサーヴァントが現れたら、それらを使って即座に対処して下さい!

 特に! 令呪で私を呼んで頂ければ直ぐに、処理します!」

 

 物騒なオキタさん。そろそろ肩が悲鳴を上げているので力を緩めて貰いたい。

 

「あ、あぁ……すいません。私とした事が、つい熱がこもってしまいました」

 

 そう言って漸く肩を離した……が、そのまま押し倒された。

 

「ま、待て待て! いま自分でした説教を思い出せ!」

「ふふ、何の事でしょうか? 心の奥からマスターを愛している私が、マスターの御心を傷付けるなんてあるわけ無いじゃないですか」

 

 今にも泣きそうだ。

 仕方ない。此処は助言通りガンドを――

 

「使わせませんよ?」

 

 そう言って彼女は俺の手を握り、床に押さえつけた。

 

「そうそう、XXさんからこれを拝借していたんでした」

 

 そう言ってオキタは胸元からワイヤレスイヤホンを取り出して俺の耳に付けた。

 

「これはですね――」

『はっんむ……んん、っはぁぁん……』

 

 聞こえてくるオキタの声に耳をくすぐられている様だ。唐突な耳舐め音声に驚きつつもなんとか拘束から抜け出そうと手を動かす。

 

『っちゅんん……れろぉっはぁ……んん』

 

「ははは、あんまり暴れちゃ駄目ですよマスター?」

「っく、この……」

 

 令呪に魔力を込めようと、オキタを睨むと唐突に視界がぼやけて見えてきた。

 

「っ……?」

「おや、そんなに瞬きして、どうかしたんですか? この指、何本に見えます?」

 

 すぐにこちらの異常を察した彼女を見て、耳に付けられたイヤホンが原因だと分かった。

 

「そんなに睨まなくてもいいじゃないですか。XXさんが言うには、このイヤホン、特殊な環境でも酔わなくなる様に三半規管を調整してくれる音波が流れるそうなんですが、ちょっと弄ると逆に悪影響が出るそうなんです」

 

 そう言われ、なんだか気分が悪くなって来た。

 

「泥酔状態に似た感覚に陥るみたいですが、ご安心下さい! 沖田さんがしっかりと面倒を見てあげますから!」

 

 視界が歪み、とても目を開けられていられない。

 流れてくる唾液音が不快感を掻き立てる。

 

「因みに、その音声は音波を切ったらすぐに眠れる様に催眠効果が含まれていますので!」

 

 要らない気遣いだ。そもそも、こんな状態で頭に響く音声で眠れるモノか――

 

 

 

「最初に聞いた時は愛を込めればしっかり効果が出るとか、訳の分からない説明でしたがそこはイロモノサーヴァントのトンデモ技術ですね、しっかり効きました」

 

「う……っぐ……」

 

 未だに軽い不快感が脳裏で渦巻いていて気持ち悪いが、目を覚まさなければならない程状況が悪かった。

 

 気を失ったのか、あるいは本当に眠ってしまった俺はオキタの部屋に連れて来られ、畳に敷かれた布団の上で手枷と足枷で拘束されていた。

 

「あ、起きましたかマスター。なら、今度はこれでっと……」

 

 オキタが端末を操作するとイヤホンから音は聞こえないが耳を通る音波を感じた。

 

「……はぁ……はぁ…はぁぁ」

 

 3度呼吸をすると、すぐに酔いの感覚は消え去った。

 

「これが本来の使い方です。もう大丈夫でしょう?」

「っく……オキタ……!」

 

「そんなに睨まないで下さい」

 

 オキタは困った様に笑っているが、こちらはどう考えてもまな板の上の鯉、包丁を向けられても誘惑されても逃げられない。

 

「私、これでも嬉しいんです。この霊基、変なジェットもつけられましたけど健康な体にもなれて」

 

 オキタは動けない俺の上に覆い被さる様にして、視線を合わせた。

 

「ずっと、私は悩んでいました。

 サーヴァントとして、私はマスターのお役に立てていないんじゃないかと」

 

 彼女の顔に影が差した。

 

「生前は人斬りとして新選組の旗の元で戦えました。それでも、病弱な体では結局それを貫く事も出来ませんでした。

 マスターの元にサーヴァントとして召喚されても、それは変わらなかったです」

 

「ですが、そんな私も必要だと沢山のサーヴァントがいるマスターは私を頼ってくれました。何の由縁も無かったノッブやその仲間達と気付いたら親しくなって、土方さんにも会えた……ずっと、マスターには感謝しているんです」

 

 笑ったが、その瞳は暗い。俺しか映す必要が無いとばかりに、濁りきっている。

 

「だから、この体が健康な内に、マスターに捧げます。私の全てを」

 

 彼女の顔がゆっくり近付き、避けようのない彼女の唇が重なった。

 しかし、口付けは意外にも数秒も経たずに終わった。

 

「マスターは……嫌ですか?」

 

 俺の拒絶を感じてか、彼女の頬に汗が見えた。偽れないと察した俺は言葉を選んで返事を返した。

 

「……受け取れない、な」

 

「そう、ですか……」

 

 俺の上から退くと、彼女は涙を右手で拭いた。

 

「仕方、ないですよね……」

 

 このまま、嘆き悲しむ彼女に拘束されたまま殺されてしまうのか……と言う僅かな絶望を感じながら、無言でその時を待って――

 

「――仕方ないので! 沖田さん、ギャグモードです!」

 

「……え?」

 

「取り出しますはこの苦々しい抹茶色の薬!」

 

「はい?」

 

「これは怪しいキャスターさんから頂いた物でして、効果に関しては絶大で肌に触れよう物なら……ふふふ、マスター……是非是非現代社会の闇に精神を蝕まれちゃって下さい」

 

「いや、全然効果が分からないんだが……」

 

(本当は茶々さんの様な母性が欲しかったのですが、そこは流石怪しいキャスターさん、マスターが誰彼構わず母性を求めれば良い、とこの薬を開発して下さいました)

 

「さあさあ、休日出勤、三徹当たり前のブラック企業に3年働いた位の丁度いい病みに蝕まれちゃって下さい!」

 

「何その具体的な闇! やめろ! 本当にやめて!」

 

 動けない俺に迫る沖田。

 

 もはや一刻の猶予も無いと、俺は令呪を使用した。

 

「令呪を持って命ずる! 沖田総司は俺に近付くな!」

 

 しかし、令呪は発動しなかった。

 

「な、なんで!?」

 

「私今は沖田じゃなくて、オキタ・J・ソウジなので効きませんよー?」

 

 そう言って俺の口はまたしても塞がれた。ぐだぐだ時空にやられた!

 

「さあ、たっぷり塗り込んで差し上げますからね……?」

 

「あー! マスター、みーっつけた」

 

 嬉しそうな声が扉の方から聞こえてきた。

 サロメがこちらに入ってきたのだ。

 

「ふふふ、乱入者にだって、この薬をかけてしまえば!」

 

 そう言って薬の中身をサロメに向かってぶちまけた。

 

「っきゃ!? な、何これぇ? ネバネバする……?」

 

「サロメ!?」

 

 瞬間、彼女はその場に崩れ落ちた。

 

「うっ……!?」

 

 布団の上で捕まったままの俺では彼女の顔は見えないが、苦痛の声が聞こえてきた。

 

「や、やめて……還して……もう、一昨日も昨日も今日も……休まないでヨカナーン使ってるから……や、やだやだ! 魔力が有ってももう嫌……! 首、首、もう首なんていらないからぁぁ……!」

 

「な、なるほど! これは絶大ですね……マスターもこんな風に病んでしまえば人斬りの沖田であってもバブみを感じてくれちゃう訳ですね? ふふふ、待ってて下さい、今すぐ癒やしてあげますから」

 

「……癒し……?」

 

 サロメが突然、ゆっくりと起き上がった。さながら映画の死者がゾンビとなって動き出す様な……

 

「癒して、くれるの……? 癒やして……癒やして欲しい……!」

「え……あ、あの……沖田さん、マスター専用の癒しママなので女性の方は……!」

 

「ママ……! ママなのね…! ママ、ママ!」

 

「元よりもバーサーカーみたいになってませんかこの人!?」

 

 思いっきり抱き着かれ、甘えるサロメを相手にオキタはなんとかそれから逃れようと暴れる。

 

「ママ、嬉しい! この暖かさ……!」

「な、なら少し待って下さい! マスターび塗った後に貴女も纏めて癒やしますから! ……よーし、取り敢えず指に付けて……」

 

「おいバカ」

 

「へ……あ」

 

 瓶の口から指に薬が付いた瞬間、オキタの体中から力が抜けた様にその場に倒れ伏した。

 

「沖田さん……大勝利…………あはは……単騎宝具持ちの私で……周回しないで……どれにしようかなって私一択じゃないですか……もう無理です……病弱スキル無いですけど発動してます……すやぁ……」

「ママ……? ママ……?」

 

 こうして、オキタもサロメも現代社会の闇に飲まれたのでした。めでたしめでたし。

 

「……俺は縛られたままなんだけど」

 

「……マスター…………?」

「……マスター……?」

 

 え、何? なんで俺を見て顔を見合わせてるの?

 

「「マスター(上司)が居なくなったら、私達還れる……?」」

 

「わーお、ヤンデレ何処行った?」

 

 唯の病んでるOL(約してヤンエル、って馬鹿か俺は)と化した2人は互いに宝具を持ち寄りこちらに向けてきた。

 

(ヤンデレの愛すらも飲み込む現代社会の闇、深過ぎでは……?)

 

「残業代はマスターの首が良いわ……」

「ふふふ、マスターを殺して、マスターに家族サービスしなくちゃ……」

 

 支離滅裂な発言。だが、殺意だけは本物だ。

 

「くそ、今度こそ! 令呪を持って命ずる! 2人共、元にもどれ!」

 

 

 

「……この薬は封印します……」

「もう使わないでね? ……全然思い出せないけど良くない物だったのは覚えてる……怖い夢みたい」

 

 令呪の力で、2人は元に戻った。

 

「あの……本当にそろそろ、俺の拘束解いてくれないかな……」

「あ、はいはい直ぐに解きます」

 

 漸く自由になった……よし、逃げよう。

 

「じゃあ、2人共ゆっくり休んでよ」

「ええ……なんか、まだ疲れてるような……」

「私も、お婆ちゃんになったみたい……」

 

 そして俺は、そっと扉を閉じた。

 

(よっし、後は逃げるだけ……!)

 

 こうして、俺は逃げ切ったのだった。

 

 

 

「アイス」

「はい」

 

「肩もみ」

「はい」

 

「もっと力を込めんか」

「はい……」

 

 

 現実世界で目覚めた筈の俺をスカサハ・スカディが待ち構えていた。

 

 彼女は、例の薬の瓶を突き付け俺に言った。

 

「この原材料は、あらゆるカルデアにいる私の周回疲れだ」

 

 これを製造停止にしたければ私を持て成せ……それが彼女の要求だった。

 

「良かったな、お前は運がいいぞ」

「え?」

 

「もし孔明やらマーリンを召喚していたら、そちらも纏めて持て成す事になっていたぞ」

「う……それは流石に……」

 

「さあ、今日は休み倒すぞ。マスター、存分に私に仕え、私に尽くせ」

 

 ……とは言え、現実的に考えれば彼女の要求は当然の物だ。せめて、気分を損ねないように最大限持て成さないと……

 

「……ふふ、次の戦いも存分に私を使役して良いぞ。私は、どれだけ酷使されようと、お前を愛してるからな」

「え……? 良いんですか?」

 

 

「ああ、だからその儚い命で、存分に私に尽くせ。甲斐性のあるマスターは大好きだ」

 




ハロウィンですね。今年はどうなる事やら……

サーヴァント×物の怪をまた書こうかな……

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