ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
「今宵、ヤンデレ・シャトーを牛耳るのは他でもない、わしじゃ!」
不安しかない。不安過ぎて夢の中で眠れぬ夜を過ごしそうだ。
「……」
見た事はあっても召喚した事は無い真っ赤で黒い女性を睨み付ける。
今年のイベントでエクストラクラスのアヴェンジャークラスを獲得したのにぐだぐだなままの困った戦国武将である。
「なんじゃその目は! さてはマスター、わしに愛憎を操る才が無いと思っておるな!」
「……まあ、そうなりますね」
「見くびるでない! こう言うドロドロした物は得意だ! なんせ、わしの家臣のミッチーとか愚弟もそれっぽかったからな!」
やっぱり駄目だ、あんた最終的に殺されてるじゃん。
「まぁあれだ、記憶がなければ愛憎が芽生える事もないだろうと思ってな。今回は英霊の記憶を消してみる事にした!」
記憶喪失……確かに、そうなれば病まないかもしれない
「まあ、記憶を取り戻さないと出れないけど是非もないね!」
おいノッブこら。
「折角だし、わしもアーチャーで参戦するかのう!」
「まじ?」
「なーに、これも経験じゃ! さあ、行くぞ!」
背中を思いっきり押されながら、俺は別の場所へと飛ばされたのだった。
「此処は……俺の部屋?」
にしては広いな……と思ったが、直ぐに異変に事に気が付いた。
「アパートになってる……」
俺の部屋……にトイレと台所が追加されていたのだ。
だが、サーヴァントの姿は見えない。
「ん? この押し入れも見た事ないな……」
中にサーヴァントがいたらどうしよう、とか考えてしまったが思い切って開くと中には布団が敷き詰められていただけだった。
「じゃあ、サーヴァントは一体何処に?」
と、考えているとチャイムが響いた。
「……来たか」
覚悟して玄関に向かうとそこには普段とはベクトルの違う様子のおかしい織田信長がいた。
「……ん?」
しかし、俺は首を傾げた。
同じ名前の別クラスのサーヴァントは見た目で簡単に判断する事が出来る。
だからこそ、アーチャークラスでくると言った信長がパーカーとバスターシャツでやって来た事に驚いた。
「お主がわしのマスターか!
わしの真名は織田信長! ……じゃが、どういう訳かそれ以上の事は曖昧でな……なんでわし、ギター持ってバーサーカーなんじゃ……? まあ、気分が高揚して楽しいゆえ、良しとしよう」
彼の御人の場合、アーチャーとバーサーカーの両方が来るのか、バーサーカーに間違ってなったのか判断しかねる。
「でだ! 記憶は無くともわしはお主を大層気に入っておる! 余程の功績を立てたのじゃろう、この織田信長のマネージャーに任命してやろう! この髑髏の盃はその証じゃ!」
記憶無いのにグイグイ来すぎじゃありませんか?
「い、いえ……遠慮しておきます……」
「なははは! 遠慮は無用じゃ、お主とわしの仲であろう! どんな仲だったかは思え出せぬがな!」
記憶は無いのに背中を気安くバンバン叩かれる。
「よし! 先ずは町に繰り出す故、案内を頼むぞ!」
「え、ぇ……」
無理矢理引っ張られ形で俺と信長は外へと出ていった。
「では、記憶を取り戻す旅に出発じゃ!」
「そうはいうけど、宛でもあるの?」
「無い!」
ですよねー。
「じゃが、こうしてると嬉しいのは分かっておる!」
そう言って意外にもある胸を押し付けながらはにかんできた。
「ん! あっちから香ばしい香りが!」
「あ、ちょっと!」
ゲーム内のQPが入った財布を確認しつつ、俺は駆け出した彼女の後を追いかけた。
「――んーまぁ! いやはや、現世は最高じゃな!」
「そーですか」
ボリューミーなクレープを頬張る第六天魔王を横目で見つつ、記憶が関係しそうな場所を頭の中で考える。
(と言っても俺の街にそんな都合の良い場所なんて……)
「マスター! あそこじゃ、あそこに行こう!」
信長はゲームセンターを指差していた。
どうせまた引っ張られるのだから、大人しく従っておこう。
「はいはい」
「よし、出陣じゃ!」
突撃すると早速UFOキャッチャーのヌイグルミに食い付いた。
「おー! これだ、これが良い!」
そんなに欲しいのか、狐のキグルミを着た猿。
「よっし!」
流石アーチャーのサーヴァントと言うべきか、2回目でコツを掴んで3度目であっさり手に入れた。
「よしよし、愛い奴よの! 何処ぞのミッチーや猿もこれくらい可愛げが有れば良かったんじゃが……」
なるほど……家臣達の事は覚えてるんだ。
「ん……? ミッチー……? そう言えば、召喚されてからも出会った様な……」
「そうだよ。帝都の特異点で一度戦った」
「む……お、おお! なんか、思い出したぞ! そうそう、あやつ生前と変わらず面倒臭かったのぉ!」
などと仰って頷いている信長も中々面倒だったけど。
「良し、この調子で記憶を取り戻すぞ!」
「案外、簡単な事で思い出せそうですね」
「……」
UFOキャッチャーから離れて奥へ歩き出したが、振り返ると彼女は何か考えながら立ち止まっていた。
「どうかした?」
「……いや、何でもない」
少々深刻そうに見えたせいか、嫌な予感はあったがそれを言及して刺激する必要はないだろう。
「うむ! 次はあっちだ!」
「――A・TSU・MO・RI!」
ゲームセンターでダンス、シューティング、レースとゲームに興じてその度に記憶を取り戻していく彼女は、遂にバーサーカーとしての象徴であるギターテクニックを手に入れた。
それをカラオケボックスで見せ付けられた俺は、イロモノなのにそれはそれは素晴らしいロックに手を叩いた。
「――凄い」
「当然じゃ、これが渚の第六天魔王のロック! 夏盛じゃ!
……え、いま秋だって? 是非もないよネ!」
ソファに腰掛けてご機嫌そうにもう一度ギターを鳴らす彼女はだいぶ落ち着いていた。
確か、そもそもギターは魔王の危険な魔力を発散させる為の手段だった筈だ。
つまり、それをあんなに披露したって事は割と危ない状態だったんじゃないか?
「ん? わしを見つめてどうした? さては、わしのギターに惚れ直したな! マネージャーの席なら何時でも開けておくぞ!」
「いや、遠慮しておきます」
「ははははは!」
なんて、俺の心配を他所にめっちゃ笑っている。
「よーし、わしもっと歌っちゃうぞぉ!」
まあ、発散しているんだったら問題ないか……
歌いたい気分でもないし、マイクを独占されてしまった俺は大人しく合いの手でも入れて彼女の美声を浴びていよう。
「――ん?」
突然ドアをノックする音。
歌うのに夢中で信長は気付いていない様だ。
定員かもしれないし、俺は席を立ってドアを開いた。
「はい、受け取りま――」l
「――おう、漸く会えたのう、マスター」
忘れた頃になんとやら……今度こそ、黒と赤の衣装のアーチャーの織田信長が俺の前に立っていた。
「まさか、水着のわしに先を越されるとは思わんかったわ……じゃが、本物のわしが迎えに来たんじゃし、あやつはほっぽってわしの案内役となれ。ほら、わし今記憶無いし!」
確かに脱出を優先するならそうなんだが……バーサーカーの方は記憶がかなり戻っている気がする。もし機嫌を損ねて病む様な事になれば……
「――それじゃあ、コヤツは貰って行くぞぉ!」
「わ、わしぃ!?」
この信長公が俺の言う事を聞くわけがなかった。
引っ張られ、連れ去られる俺。
後ろを見ればバーサーカーの信長は……ギターを思いっきり床に叩きつけた。
「ぶっこ――」
「――三千世界じゃぁ!」
だが、アーチャーの信長は狭いカラオケの廊下に無数の火縄銃を出現させるやいなや、一斉に発泡した。
「案ずるな! わしじゃし、多分死なん!」
俺が何か言う前にそう言った。
「それよりお主、何もされとらんじゃろうな?」
カラオケ店を脱出した後に、信長は抱えた俺にそんな質問をした。
「されてないけど……」
「あやつはわしのノリとか勢いを凌駕しておるからなぁ……まあ、なんもされとらんならいいんじゃが……」
……ところで。
「何処に向かってるんですか?」
「ん? ラブホ」
おい、ノリと勢いどころか理性ないじゃねえかこの魔王。
「いや、こう……記憶を失くしたわしに色々法螺を吹き込んで都合の良い女にするって、定番のしちゅえーしょん、じゃろ?」
「あんたもう記憶あるだろ」
「……そ、そんな訳ないじゃろ!? あー、ココハドコ、ワシダレ?」
「なに、最初から失ってなかったって事?」
「いや……実は最初は本当に記憶が無くてマスターの部屋に向かってたんじゃが……バーサーカーのわしと一緒にいるし、記憶無いから様子を見ようと後ろから尾行しておったらじゃんじゃん記憶が戻って……」
つまりアーチャーの信長もバーサーカーと同じ分の記憶があるって事だろ。
「で、いっそ清々しい位密室に入ったお主らに激おこになって攫いに来た訳じゃ!」
「そんな誇らしげに言う事か」
「いやいや、これでも腸が煮えくり返る位の嫉妬に焦がれてなぁ、正直わし自身が引くくらい怒っておる」
不思議じゃろ? と彼女は愉快そうに笑った。
「だから恐らくあのわしも同じ思いじゃろ。追い付かれたらわし、骨も残らんかも――」
縁起でもない事を、そう思ったと同時に俺達は影に覆われた。
「あ、アレは――!?」
「ぶ、V6天魔王号!?」
青と金色の家紋。丸い宇宙船の様なそれは今では懐かしいとすら思えた、一夏を走り抜けたマシン。
『許さん、許さんぞわしぃぃぃ!!』
「やばっ!? この角度は――! 突っ込んでくるぞ!」
「あれポンコツな様で無駄に高性能じゃからな! 撃ち落とせんし、追跡してくるぞ!」
火縄銃を喰らっても傷一つ付かない。これは――終わったか。
『ロックンッ、ロォォォォォルッ!!』
「き、【緊急回避】!」
衝突寸前、咄嗟に発動させたスキルで俺達は爆発の余波で数m吹っ飛ばされる程度の被害で済んだ。
「か、間一髪じゃったな……肝が冷えたわ」
「まだじゃあぁぁぁ!!」
なんと、V6天魔王号は爆発しても操縦者であるバーサーカー信長は無事だった。勢いよくコクピットから脱出した彼女は熱気放つ魔力を纏って、ビキニ姿に変化した。
「これが渚の第六天魔王、織田信長の敦盛じゃぁぁぁ!!」
「うぅ、えらい張り切り様じゃな……」
ギラギラした瞳でこちらを睨んだ彼女だが、俺を見た瞬間、不敵な笑みを浮かべた。
「……確かにわしは記憶を取り戻した。
だが、思い出せば出す程、虚しさが増していった!」
ギターを肩に担いでこちらに近付いて来る。
「本能寺? 明治? 帝都? ファイナル?
マスターの側にいたのはいつもそっちのわしじゃ! この霊基にはなんも残っとらん!」
遂に飛び掛かって来た。
振り下ろされたギターは俺とアーチャーの信長を分断させた。
「っく、この怒気は……!」
「じゃから、こやつだけはわしが貰う! マスターは、一生わしのマネージャーじゃ!」
「っ、例えわしとて、譲るつもりはない!」
火縄銃の銃撃はギターで弾かれる――と、同時に後方で爆発が起きた
どうやら弾かれた銃弾がマシンのエネルギーに引火した様だ。
「のわぁ!?」
同時に、バーサーカーが信長の首根っこを掴んだ。
「忘れとらんか? 渚の第六天魔王は肩書きではない。わしの能力の一端じゃ」
! 炎上していれば力が増すスキル!
「安心せい。同じ信長の好じゃ……」
「な、ななななななななぁー!?」
掴んだままの信長を振り回してるぅー!?
「ギャグで済ましてっ! やるわーい!!」
その勢いで天高く放り投げたぁ!?
「のじゃああああぁぁぁ……」
やがて、姿も声も消えてなくなった…………
「はっはっは! 見たか見たじゃろ! わしこそ、おぬしの織田信長じゃ!」
「そ、そうっすね……」
勝利の宴、そう言って彼女は俺を近くの居酒屋に連れて行った。
先の鬼神の如き怒気は何処へ消えたのか、ビールを飲んで良い気分のようだ。
「ぷはぁ!! まっこと、良き時代じゃ! 酒も飯も美味い! そして何より、そなたが一緒にいるのじゃ、これに勝る肴もあるまい!」
めっちゃ酔っ払ってる……あと背中叩かないで下さい。
「わし、いまヤンデレじゃろ? おぬしが隣にいるのが本当に嬉しくてのぉ!!」
(本当のヤンデレは多分自分の事をヤンデレじゃろとか言わないと思う)
その後も古今東西の酒を飲み干し、完全に出来上がった信長と共に俺は店を出た。
酒瓶を片手にフラフラと覚束ない足取りの彼女と共に家へと帰る事になった。
「頭がぁ、高いぃ……余は織田信長じゃぞぉぉぉ……!」
「大人しくしてくれよ」
「…………」
急に大人しくなるのも怖いなぁ……
彼女はすぐに口を開いた。
「……わし、やっぱり変かのぉ」
「変だよ」
いつも通り変だ。
「いや、そういう意味じゃなくて……わし、マスターの事、好いてるんじゃが……どうやってそれを伝えれば良いのか分からん」
今言った……って黙っておこう。酔っ払ってるんだろう。
「普段通りおちゃらけて言うても真に受けてくれんし、面と向かって言うのは……恥ずかしい……」
「ヤンデレってなんじゃろ……わし、別に縛りたくないし、傷付けたくない」
ん……
「離れたくないし、奪われたくない……」
ん……?
「そうじゃ! 恋敵殲滅すればヤンデレになる必要ないじゃろ。そうしよう」
「それがヤンデレの考え方だろ」
「ええい! マスターは黙っておれ! 見ておれ、今すぐこの渚の第六天魔王が有象無象を葬ってくれよう!」
フラフラなのに暴れるな!
あ、変な所に足が――!
「おわぁ!?」
地面に転び、慌てて両手で体を支えた。
「あ、危な――っ?」
そして、その間には信長の顔があった。
「……信長」
「……酔っておるぞ」
頬を赤めてそっぽを向きながら彼女はそう言った。明らかに素面だった。
「わしは、今、酔っとるぞ」
「…………」
「…………」
「……いったぁ!?」
なんか待ち望んでたらしいのでデコピンを喰らわせてやった。
「ドラマの見過ぎだって」
「もー、おぬし本当に空気読まんな! 今ので襲わんとかありえないじゃろ! 戦国美少女じゃぞ!」
「自分で言うなって……全く、先までの酔ったふりか?」
「……本当にデリカシー無いのぉ……わしめっちゃ辱められてる……!」
いや、そんな一生懸命頭を振っても信じられないよ。
「あー! やっぱ恋愛とか無理じゃ無理! こうなったら力尽くで……ん?」
【瞬間強化】で全力ダッシュ! 一目散に逃げ出した。
「逃さんぞマスタ――ん!?」
「……ふふふははははは!! 魔王再臨じゃあ!!」
俺が逃げ出したのは迫り来るアーチャー信長が見えていたからだ。
「渚の! 今度は簡単には行かんぞぉ!」
「しぶといのぉ! じゃが、アンコールには一度位答えてやるのが魔王の度量よ!」
「……さて、信長2人が記憶を取り戻しても終わらないって事は俺の部屋に、いるんだろうなぁ」
扉の前で溜め息を吐いた。
「ただいま……」
ゆっくり扉を開け、誰にも聞かれたくないけど確認の為に小さく挨拶をした。
「……いない?」
返事はなかった。
多少は気を抜いたけど、すぐにサーヴァントの姿を見つけた。
と言うか、部屋の中心に正座で鎮座していた。
(忍者だ……)
ピッチリとした黒いスーツとかより、一目で忍者と分かるその衣装の与える印象に目を引かれる。
それに、彼女が人間ではないとわかる黒鉄の手と足も素晴らしいの一言だ。
「……ん? 待てよ?」
彼女はアサシンクラスのサーヴァント、加藤段蔵だ。それは間違いない。
しかし、今回のシャトーのお題とは噛み合わない点がある。
「……だ、段蔵さん?」
「――待機状態を解除。マスター、どうかご命令を」
「えーっと……君を召喚したのって何時だっけ?」
「3日前の午後15時34分29,02秒と記録しています」
答えが細かいがそう、つまり記憶喪失になるほどの思い出が無いのだ。
「記憶は失くしてる?」
「いえ、段蔵のメモリに欠損は御座いません」
「そっか……」
「ええ、忘れておりません。貴方様はからくりにしか興奮出来ない特殊な性癖をお持ちであり、ワタシとの結婚を誓った変態様、でしたね?」
何で平然と嘘吐くの?
何で最後嬉しそうなトーンで言ったの?
こっちの視界がブルースクリーンになりそうな程の情報をぶつけられ、目眩に襲われている間に彼女は近付いた。
「ですが……女性の体臭、香水を感知しております。今日は具合が悪いのですか?」
「えー、えっと……」
彼女の記憶だと俺は機械にしか興奮しないのが通常だから、他の女と一緒にいたらそれは異常扱い……なのか?
「段蔵はからくり故、あまり女性らしい感情に乏しいのですが……複数の女性と関係を持つのは子を持つ者として恥すべき行為では御座いませんか?」
「え、俺子供いるの?」
「当然です。我が子、小太郎は間違いない貴方の子です」
(……ふ、複雑ぅ! 今めっちゃ複雑だと思ってる俺以上に小太郎君が複雑!
俺が父親とか、絶対暫く廊下で擦れ違っても、「あ……ど、どうも」みたいな会話しか出来なくなるだろ!)
世の為人の為小太郎の為に自害すら視野に入れていると段蔵が思い切り抱き着いてきた。
「洗浄開始」
密着した箇所が動作し、風を起こした。
いや、風に紛れて男物の香水の匂いもだ
「……これで良いでしょう」
ま、まぁ……他のヤンデレと違って感情的にはならないし安全……か?
「では、朝食にしましょう」
「あ、ご飯作ってくれたの?」
「ええ。貴方様の妻として、予め一日の行動を設定してありました。さぁ、お食べになって下さい」
「お約束の如く、捕まった」
「マスター、お覚悟を」
俺のヤンデレセンサー、遂に壊れたか?
先まで朝食食べて、一緒に掃除して洗濯して……気が付いたら柱に両腕を背中に組まされて捕まっている。
「マスターに他の女性との接触以外の罪状も過失も御座いません」
「罪状扱い……」
「段蔵は、忍びの潜入手段として読心術の機構を備えております。マスターの警戒心を解くのは難しく御座いません」
なるほど……あれ? でもどうやってここまで連れて来られたっけ?
「大変申し訳ありませんが……手刀で」
「物理かい!」
しかし、俺のツッコミは意にも介さず、目の前で彼女はこちらを見下ろした。
「マスターの会話中にメモリーの改変を発見しました。マスターはからくり好きの変態では無い、ですね?」
「まあ、そんな局地的な性癖は無いけど」
「……ですので、この偽情報を頼りにマスターの嗜好を修正いたします」
そう言って彼女は怪しげな、目を覆うゴーグルの様な機器を取り出した。
「そ、その洗脳モノに出てきそうな奴は……一体?」
「その奇妙なワードに関しては後に追求いたします……これを装着したモノは直ぐにからくりの虜となるでしょう。暴れても無駄です」
これは本格的に不味い。
くそ、令呪で信長を……!
「因みに、信長公の御二方は激しい戦闘の末に相打たれました」
「ノッブ!?」
何やってんだよ、大名!?
「では、お覚悟を――」
怪しげなゴーグルを装着された俺は――
――侍戦隊の良さを今一度理解しながら朝を迎えた。
自分はテンクウシンケンオー派です。戦隊ロボは翼装備するだけでカッコ良さが増すのズルいです。
次回の更新はクリスマスかその前に1つ更新できるのか……そして第5異聞帯は年内に来るのか……来るとしたら走るのが大変そうですね。