ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今回は そこら辺のだれか さんの話です。

毎度お待たせして申し訳ないです。


あの3人が未来の娘と相対する……さてさて、どうなる事やら。


彼らの家庭未来図 【4周年記念企画】

 公園の様な場所で目を開き、目の前にいる2人の人物を見て半分程度の事情を察した不良高校生、玲。

 

 その横には彼にひっつく小さな子供がいた。

 

「……おいおい……いつから此処は託児所になったんだ?」

 

 そう言った玲は小さな黒髪で白いセーラー服姿のメガネ美少女の手を握りつつ、山本と陽日の前まで歩いた。

 

「いかにも洋画で言いそうな台詞だ」

 

 その台詞に既視感を覚えた山本もまた、ベンチに赤いドレスの少女を座らせていた。

 

 左右で三つ編みを揺らしたロングヘアーのその子は、両手を膝に乗せて玲へ頭を下げた。

 

「お、分かってんな」

 

 山本に返事をしつつ、少女には手を振って返事を返した。

 

「……呑気すぎない?」

 

 陽日は普段通り、だだっ広い公園の何処から用意したのか一切不明なベッドで寝ており、その横には銀髪の少女が寝ている。

 

「一番呑気な体勢なお前がそれを言うか?」

「そうだよ。……これで、後1人かな?」

 

「残念だが今回はお前達3人だけだ」

 

 普段通り最後の犠牲者である切大の到着を待とうとした3人の前に、復讐者であるエドモンが現れた。

 

「なんだ? アイツだけ休暇か?」

「そんな所だ」

 

 実際は切大だけもう体験した悪夢なので参加させず、普段通り複数のサーヴァント達に襲われる悪夢を味わっているのだった。

 

「それで、今日はなんだ? ちっこくなったサーヴァントの世話でもすりゃあいいのか――あだっ」

 

 膝を抓られた玲は少女を少し睨む。

 

「誰がちっこいですか、お父さんのバカ」

「悪かったなXオルタ。でも普段と比べりゃ――ん? お父さん?」

 

 今度はエドモンを睨んだ。

 

「そうだ。その娘達はお前達とサーヴァントの間に出来た娘だ」

「…………娘?」

 

 流石の陽日も顔を少し上げて言葉を繰り返した。

 

「そうだ。今回はこの公園を親子で散歩してもらう。好きに周ればいいが、最低でも4つのポイントに行ってもらう」

 

 そしてエドモンは設置されていた地図で簡単にポイントを説明しつつ、ウォーキングエリアに入ったら母親のサーヴァントが現れる事を告げた。

 

「あ、じゃ、じゃあ僕は先に……!」

 

 その説明を聞いて山本は足早に去っていた。

 

「あいつ……推しとイチャイチャ出来るからって浮かれてんな」

 

『ギャァァァァァ!!』

 

 響き渡る大絶叫。

 

 その声に玲と陽日は顔を見合わせ、呆れ合った。

 

「さあ、お前達も疑問が無ければ向かえ」

「よーっし。流石に誰かは分かるが、こいつの母親に会いに行ってやるか」

 

「もう少し……寝る……」

 

「やはり、貴様は直接呼ぶしかあるまい」

 

 エドモンが陽日に強制手段を取る中、玲は絶叫が聞こえたウォーキングエリアへと向かう事にしたのだった。

 

 

 

「マスター! 今日は親子でお散歩ですね!」

「なんでだよぉぉぉ!!」

 

 階段を登った先の舗装された道には、山本の野郎と一緒に白いドレスのサーヴァント、セイバー・リリィがいた。

 この組み合わせはいつかの温泉ぶりだな。

 

「よくもまあ、あんな可愛い女の前であんだけ残念そうに叫べんな……またか?」

 

 抓られたので再び横を見てやると、Xオルタによく似た子供に抓られた。

 

「平気で他の女性を見過ぎるお父さんは嫌いです」

「俺はまだ結婚してないからな」

 

「結婚してても続いているのでもっと質が悪いです」

 

 そんな会話をしつつウォーキングエリアへ入って倒れ込んだ山本の肩を叩いて励ましてやった。

 

「ほら、さっさと立ってて。見苦しい」

「酷い!? 励ましくれてない!!」

 

 うるさい野郎だ。こんだけ元気なら問題ねぇだろ。

 

「モーさんが来てくれないなんて――」

「――またモードレッド卿ですか、マスター?」

「この時もこんな感じなんですね、父上?」

 

 正面の俺を見ていた山本の両側をセイバー・リリィとその娘が顔を近付けて挟んだ。

 

「そんなにモードレッドさんが良いんだ……ふふふ、持って来ておいて良かったです」

 

 父親の趣味に合わせたであろう赤いドレスのスカートのポケットに手を入れると、真っ赤なヘアゴ厶を取り出した。

 

「……はは、いい趣味してる」

 

 察した俺はこれ以上山本の公開処――家族団欒を邪魔するのは悪いと思って背を向けた。

 

 謎のヒロインXオルタが待っていましたと言わんばかりの目で俺を見ていた。

 

「よう」

「部長、私より先にその娘とイチャイチャしてますね」

 

「おいおい、自分の子供に焼き餅か?」

 

 俺は見せつける様に娘の頭を撫でてやる。

 

「……はぁ……」

 

 一度溜め息を吐いたXオルタは俺達に近付いて、娘の手を握った。

 

「なら今日は部長が謝罪しない限り、触らせません」

 

 拗ねた。そうは言ったが、ヤンデレなコイツがそれに耐えられるのか?

 

「取り敢えずあっちの池にでも行ってみるか」

 

 俺の提案に2人が頷いた。

 3人で会話しながら歩くが、やはりXオルタの関心は娘のいる未来の話だ。

 

「お父さんは何も変わってない。何時も女の人にちょっかい出されてる。おでん屋の人や、着物を来た人、仕事疲れのOLに、定時に帰ってくるお母さん」

 

「おいおい、その言い方だとXオルタも邪魔みたい――睨むなよ」

「邪魔です」

 

「「え?」」

 

 2人して同時に疑問の声が漏れた。

 

「そういう所です。普段はそっけなく喧嘩ばかりなのに、変なタイミングで息が合ってるんです」

 

「そんな事言われてもなぁ……流石に本当に嫌いな奴と結婚する訳ないだろ?」

 

「…………」

 

 おい、この程度で照れんな。顔逸らすな。

 俺も恥ずかしくなる。

 

「……お父さんは、私の事は好きじゃないの?」

 

「勿論、大好きに決まってんだろ。

 俺とこいつが本当に結婚して生まれた娘なら、死んでも守ってやる位にはな」

 

 その台詞に、Xオルタは無言で顔を両手で隠して、娘は呆れた様に溜め息を吐きやがる。

 

 その姿が面白いので思いっきり悪い笑みを浮かべた。

 

「はぁ……だから、お父さんウザいです」

「おいおい、傷付くぞ?」

 

「いっそ粉々に出来たら良かったのに……」

 

 我が娘ながら口が悪過ぎる。

 

「……娘はそんなに私達が嫌いですか?」

「違います。お父さんは好きですけど、お母さんは嫌いです」

 

 そう言ってるけど今も手を離さない娘。

 Xオルタは少し俯いた。

 

「だって、お父さんと結婚するのに一番邪魔ですから」

「……え?」

 

 いや、睨まれても俺もわかんねぇよ。

 

「いやいや、そもそも娘と親じゃ結婚出来ねぇだろ?」

「出来ますよ? サーヴァントユニバースには多種多様の惑星とそこに住む生命体がいますので、近親を許す場所ですれば良いんです」

 

「……」

 

 だから睨むなって。

 

「結婚って言われてもなぁ……」

「それについては運が悪かったなと自分でも思います」

 

 頬を染め、繋いでいた娘の手が動いて指同士をカップルの様に絡ませた。

 

「私もバーサーカークラスのサーヴァントなので……趣向が理性よりも本能を重視する事が多くなってるんです」

 

 体を擦り付ける様に密着する娘。俺が引き剥がすより先に、Xオルタが首根っこを掴んだ。

 

「くっつかないで下さい」

「お母さん、私に嫉妬してる? こんな小さい娘に?」

 

 俺の煽りもしっかり引き継いでるのか。

 

「なるほど。どうやら私はとんでもないエネミーを生み出してしまった様です。ならば、貴女を止めるのも親である私の役目」

 

 そう言って制服からフードを被った甲冑姿へと変わった。

 

 互いに手を放し距離を取る。

 

「私に勝てるとでも? 誰が父親か忘れたんですか?」

 

「母親の偉大さを教えてあげます」

「まだ学生気分のくせに」

 

 そして、魔力を高まらせ開戦と同時に公園ごと吹き飛ばす威力の攻撃を放とうとする2人。

 

「…………ふんっ!」

『あっう!?』

 

 流石に止めるべきかと、2人のおでこにデコピンをくれてやった。

 

「公園散歩しようって時に周囲を吹き飛ばす気か! 全く……ん?」

 

 見ると2人揃って気絶してる。

 魔力を目の当たりにして少し手加減が狂ったらしい。

 

「……しょうがねぇ、運んでいくかぁ」

 

 背中にXオルタ、両手で娘を持ち上げた。

 

 池の側にある大きな木を目指す道中、運んでいる2人が同じ笑顔を浮かべている事には一切気づかなかった。

 

 

 

「母上、父上が一切動きません。置いて来ましょう」

「そんな事言わないで……マスターは私が運んで行きます」

 

 セイバー・リリィと自分の子供。

 

 僕が愛したモードレッドが相手じゃない事もショックだが、それ以上にこの子が恐ろしい子だった。

 

 モードレッド限界オタクの僕から見ても完璧な髪型と、血縁的に親しい事もあり違和感の無い“こどモードレッド”になっている。

 

 なっているが……

 

「“母上の手を煩わせるなんて、ロクでもねー野郎だなぁ?”」

 

「うっ!?」

 

「“何キモい声出してんだ? 自分の娘にこんな事言われて、恥ずかしくねぇのかよ?”」

 

 耳元で囁かれるCVモードレッドの罵倒は僕に効果抜群だった。声を聞いて思わずうめき声が出てしまう。

 

「マスター? その子のモードレッド卿の真似、そんなに気に入ったんですか?」

 

「い、いや別に……」

「“マスターはオレの事なんか好きじゃねぇよな? ……好きじゃない、のか?”」

 

「好きですっ! ――あ」

 

 瞬間、セイバー・リリィのカリバーンと子の剣が首を挟んでいた。

 

「父上、この声に反応して答えては駄目って言いましたよね?」

「マスターのそれは、やっぱり呪いかもしれませんね? 一度マーリンに見せた方がよろしいかもしれませんね?」

 

「ご、めんなさい……」

 

 命の危険に素直に謝るしかなかった。

 

「はぁ……父上、いいですか?

 父上はどう頑張っても、どんなに足掻いても、どんだけ泣き崩れても母上と結婚するんです」

 

「なんでそんな未来に……」

「捕まったからです」

 

 それなら結婚じゃなくて監禁じゃないか!

 

「毎日牢屋に閉じ込めれ、子供も成したのにモードレッド卿を渇望する父上を不憫に思った母上が与えたのが私の教育への選択権です。

 モードレッド狂の貴方が私を全身真っ赤コーデにするのに時間は掛りませんでした。声すら真似できる英才教育でしたね」

 

「…………」

 

 つまり今、僕は未来の自分からの自爆テロで苦しんでいるのか。

 

「そんな子供に趣味趣向を押し付ける父上と過ごした私の心には、憐れみを含んだ同情と、それに等しい愛情があります」

 

 立ち上がる様に手を握って引っ張ってくれる。

 

「“なわけあるか! お前にんなもんねぇよ、くそ親父!”」

「えっ!?」

 

「当たり前じゃないですか。母上の方が不憫で報われなくて悲しいです。何十年間檻に引きこもった父上を世話してると思ってるんですか?」

 

「え、えぇ……?」

 

 普通不幸なのは監禁され続けている僕なのでは……?

 

「そうなんですか……今と変わらないんですね……」

 

「別に今はまだ捕まってないよ」

 

「母上、心中お察しします。ですが安心して下さい。私の時代では父上はもうすっかりラブラブですよ」

 

「そうなんですか!?」

 

 え、何その嫌な未来。

 

「はい。数年掛けてこの声真似で毎日毎日罵倒してあげました。最初の1年は嬉々として聞いていましたが、段々私の事を娘だと認識した結果、罵倒されて喜ぶ自分に嫌気が差して、父上は母上の魅力に屈したんです」

 

 魅力にどうのじゃなくて心が折れただけじゃないかな?

 

「そうなんですか。良かった……」

「良くないよ⁉」

 

「未来にすら希望がないのなら今ここで心中してしまおうかと思いましたから……」

 

 やっぱり良かった。生きるって素晴らしい。

 

「では父上、此処で犬死したくなければ歩きましょう」

「は、はい……」

 

 小さな子に脅し、引っ張られる形で僕達は公園の散歩を漸く始めた。

 

 

 

「マスター、どういう状況ですかこれ? この娘は……私? にしては随分魔力の質が……?」

「ふぁぁ……お母様……」

 

「だ、誰がお母様ですか!? あ、ちょっと引っ張らないで下さい!」

 

 マントの人……エドモンが消えて直ぐに、以前も会った気がする小さいサーヴァント……カーマ? が歩いてきた。

 先から隣で寝てる子供は近付いて来た彼女を布団の中へと引っ張った。

 

「えへへ……小さいお母様と一緒……」

「ちょ、っと!? マスター、どうにかして下さい!」

 

「ん……あと5時間……」

 

「待てませんよ!?」

「一緒に寝よう? お父様も一緒だよ?」

「そ、そんな事ではなくて……!」

「お母様、お父様の隣で寝たいでしょう?」

 

 娘にせっせと詰め込められ、毛布と布団に挟まれたままカーマは陽日の顔を直視した。

 

「あ――」

 

 すぐ隣で暴れられて迷惑そうに少しだけ目を開いて自分を見る陽日に、普段は見れないその近さに愛の女神はときめいた。

 

「――じゃなくて!?」

 

 しかし、そこで飲まれる程不用心でもなかった。

 

「んー……普段のお母様なら今ので大人しくなるのに」

「私と同じ力ですね……なんのつもりですか?」

 

 自分と同じ愛の魔力を不快そうに払って目の前の子供を睨んだ。

 

「だって、こうしないと一緒に寝てくれないんだもん」

「娘がいるとは聞いていましたが、私は見知らぬ娘を信用したりしません。

 マスター、取り敢えず起きて下さい」

 

「……ふぁ……うるさいなぁ……」

 

 流石に真横で騒がれては堪らないと、陽日も目を覚ました。

 

「この娘、ヤバイですよ。

 私の能力とマスターの睡眠欲が合わさって、起こそうとする周囲すら怠惰の渦に巻き込む恐ろしい存在になってますよ」

 

「ふーん……じゃあ、結婚しなければそうならないかな?」

 

「な、なんて事言うんですか!?」

「お父様、それは良くありませんよ!」

 

 究極的な回答をした彼に2人は同時に狼狽え、叫んだ。

 

「マスターさんみたいなダメ人間は、私のような完璧な女性と結婚して漸くまともな人生を歩めるんです!」

 

「お母様と結婚すれば将来安定、一生寝ててもお世話してくれるんですよ! もったいないです!」

 

「2人とも俺を要介護人物として認定しているんだね」

 

 地味にショックだったのか、陽日は2人から顔を反らした。

 

「そういう訳でお母様。私はお父様と寝てますのでベッドを引っ張って運んで下さい」

「はぁ? なんで私が運ばなきゃいけないんですか?」

 

 カーマの言葉は最もで、本来ならヤンデレ・シャトーから脱出したい当人が頑張るべきだ。

 

「良いんですか? あんまり遅くなると、お父様へのペナルティとして他のサーヴァントがやって来てしまいますよ?」

 

「それは……仕方ない、ですね……」

 

 観念した表情でベッドの縁に繋がれている紐を掴んで歩き出した。

 

 引きずってはいるが苦ではない。

 手に端末を持った娘の指示にしたがってカーマは歩いていく。

 

「全く…………そう言えば、なぜ最初に私を眠らせようとしたんですか?」

「ごめんなさい……寝起きでつい何時もの癖が……」

 

「貴女も睡眠欲に素直なんですね……はぁ」

 

 未来の自分は何処で育て方を間違えたのかと言う溜め息は、空へ消えていった。

 

 

 

「マスター、食べ物を買ってきますので此処で暫くお待ち下さい!」

「分かった……」

 

 セイバー・リリィと辛辣な娘に挟まれながらも、なんとか大きな木やベンチ等のポイント3つを通ってきた山本。

 

 しかし、姿形と声がモードレッドそっくりな娘に迫られ彼の価値観は大きく揺らいでいた。

 

(モードレッド、うう……好き……好きな筈…………推しだ、推しなんだ……)

 

 最早自分に言い聞かせて無いと不安になるレベルだった。

 

「父上? 大丈夫ですか?」

「もう勘弁してくれぇ……」

 

「はぁ……反省している様ですし、虐めるのはこれくらいにしておきますね」

 

 そう言って山本の体を抱き締めた娘は、耳元でそっと囁いた。

 

「“ごめんな、マスター? オレ、マスター相手に辛く当たっちまったよな?”」

「だから、もうやめーー!?」

 

 驚く事に、そこには娘の小さな腕では無く本物のモードレッドの腕があった。

 否、本物のモードレッドに抱きしめられているのだ。

 

「な、なんで――」

「もう、オレの事、嫌いになっちまったか?」

 

「そ、そんな事無い!」

「本当か?」

「勿論!」

 

 当然、これはセイバー・リリィの娘である彼女の能力なのだが山本は気付かない。

 

(アンノウン・キング・ストーリー……母上が父上と共に騎士王の悲劇を乗り越えた事で私に生まれた宝具ですけど……この父上はまだ知らないですよね)

 

「うぉー! モードレッドの抱擁ぉ!」

 

(このモードレッド好きが全てを塗り替えたのが複雑ですけどね……)

 

「クンカクンカクンカ……!」

 

 段々と本物のモードレッドの前にいると思い込み、タガが外れていく。

 

(あ、やばい。飴が過ぎましたね。理性を失ってます)

 

「モード、レッドぉ……」

 

 娘に対して甘えた声で呼び掛ける。呼びかけられた娘も、それを聞いて少し顔を綻ばせる。

 

(うーん、でもこのまま母上のいない内に父上を頂いてしまっても良いんじゃないでしょうか?)

 

「へへへ――あだぁ!?」

 

 娘が禁断の関係に乗り出そうかと考えていると、山本の後頭部に何かがぶつかった。

 

「え……靴?」

 

 落ちてきた物を確認した娘が慌てて父親の後ろを見ると50m程離れた位置に片足だけ靴の無い男、玲が立っていた。

 

「ったく……」

 

 ピョンピョンと片足飛びであっという間に距離を詰めて自分の靴を拾い上げた。

 

「自分の娘に此処まで良い様にされやがって、全く」

「痛っ……はっ⁉ モードレッドは!?」

 

 慌てふためく父上に少し呆れながら、娘は玲を睨んだ。

 

「別に親子だろうと恋路は邪魔しねぇよ。けど、他人の皮で付き合うなんざ、お前の望みじゃねぇだろ?」

「……そうかもしれないですけど、何も知らない他人に言われたくないですね」

 

「そうかい。

 じゃあ過ぎたお節介だったわ」

 

 遠くから自分の子供と謎のヒロインXオルタの呼び声が聞こえて来たので振り返りつつ、山本の頭を軽く叩いた。

 

「痛ったぁ!!」

 

「その程度で騒ぐなよ。ほら、嫁さん来てるぞ」

「いや、だからセイバー・リリィは別に嫁じゃ……っひぃ!?」

 

 大量の食べ物が入った買い物袋を片手に持ったリリィにカリバーンを向けられて、地獄の住人の如く震え上がる山本を背に玲は去っていった。

 

「また他の女をナンパですか?」

「お父さん、やっぱ今の内にその癖を直しましょう」

 

 目が座っている2人を見て、こっちも中々地獄だなと玲は不敵に笑った。

 

「うっわぁ……皆さん活動的ですね。ちょっと羨ましくなってきました」

「お母様、休憩します?」

 

「そうですね、ずーっと休憩中の貴方達と違って私はちょっと疲れました」

 

「寝ます?」

「寝・ま・せ・ん! 私が寝たら、誰がこのマスターさんを運ぶんですか?」

 

「うーん、流石に馬車馬の如く働かせ過ぎましたね……お父様がもっと励ましてくれれば簡単に働いてくれるのに……」

 

「誰が簡単ですって?

 ずっと気になっていましたけど、私の娘の癖に私の事舐めてますよね?」

 

「……ち、違うんです……私、本当にお母様を愛していて……」

「愛の女神の私にそんな泣き落としが通用すると思ってるんですか!」

 

「……あのさ、先から親子っていうか姉妹みたいだよ」

 

「これはマスターに合わせてこんな姿になっているだけです! 

 その気になれば、ほら!」

 

 カーマは霊基を変え、大人の姿に成って胸を強調する様に両手を広げる。

 

「どうです? 以前は胸枕など散々な言い様でしたが――」

「――へんしーん」

 

 やる気のない声で娘が叫ぶと体が発光し、娘の姿もカーマ同様大人の姿に変わる。

 

「……どう?」

「そのスキルまで持っているんですか!?」

「うん! 私、お母様とお父様が大好きだから、2人の望む姿を見せられるの!」

 

「……寝にくそうだ」

 

 子とカーマの上半身を見て同情の色を含んだ声を出す陽日。

 

「これを見てそんな感想が出るのはマスターだけですよ!」

「お父様は見境なく欲情する様な方じゃないですからね。

 まあ、お母様はそれで苦労したとは聞きましたけど……」

 

「子供にする話じゃない……うぉ」

 

 カーマが陽日の手首を握り強引に引っ張り上げた。

 

「さぁ、マスター? 寝起きの運動です」

「………………しょうがないか」

 

 十数秒の間の後に陽日の口から出た言葉を聞いて漸くカーマは笑みを浮かべる事が出来た。

 

 怠そうに、手を握られてアクビをしながら歩く父親の姿に娘は何処か満足そうな表情を浮かべて後を追った。

 

 

 

「……眠ってます。疲れたんでしょうね」

「だろうな」

 

 ベンチに腰掛けて互いにボロボロのままXオルタと言葉を交わす。

 

 辺りは木が倒れ、草が焦げ、しまいには地面がえぐれ散らかしているので此処くらいしかろくに座れなかったが。

 

「まさか……お前と組んでたとはいえこの歳の娘に傷を負わされるとはな……」

「部長と私の娘ですから当然ですね」

 

 誇らしげな……いや、完全にドヤ顔で言い切るXオルタ。疲れてなかったら叩いる位に顔がうざい。

 

「あ、怪我した所を見せて下さい」

「治療ならもうしたぞ」

 

「……舐めようと思ったのに」

「ばっちぃからやめとけって」

 

 現実に戻ったら鍛え直すかと考えつつ、俺は娘を見る。

 

「……幸せそうだな」

「私もですよ」

 

「そっか……なら、いいだがな」

 

 その言葉を最後に俺達は夢が覚めるまで、今の時間に体を預けた。

 

 

「……あ、お饅頭の屋台があるので買ってきますね」

「やっぱり、お前なら言うと思った」

 

 

 

「マスター……逃しませんからね……ふふふふ」

 

「寝言が怖い……」

 

 魔力を消費し、草原で寝るアルトリア・リリィに恐怖心を抱いて後退りした。

 

「父上」

「……何?」

 

 この子も怖いけど。

 

「私、聞きたい事があったんです」

「何、を?」

 

「私が産まれて、幸せですか?」

 

 そう聞かれて、僕は言葉に詰まった。

 

 産まれて来た彼女に罪は無い。

 モードレッドへの気持ちとか、セイバー・リリィへの恐怖はあるけどこの子の存在自体にそれは関係無い。

 

「えっと……正直、上手くは言えないんだけど……娘に会えたのは、良い事だと思ってるよ」

「そうですか」

 

 娘がそう言うと、段々周りの空間が薄らいでいるのが分かる。目覚めの時間だ。

 

「そういえば……自己紹介がまだでしたね」

 

「私は、モードレッド。

 母、アルトリア・ペンドラゴンと父の間に生まれた、山本・モードレッドです」

 

「……え?」

 

 その顔を待ってましたと言わんばかりの笑顔を最後に、僕は夢から弾き出されたのだった。

 

 

 

 

「――推しの父親ぁぁぁぁぁ!?」

 

 その日最初に叫んだ言葉は、街中に響き渡って陽日すら起こしたとか起こしてないとか。

 

 




爆死が続いております。武蔵ちゃん、スカサハ師匠、魔王ノッブ。
大人しく水着を待ちたいと思います。

次回はハーメルン側の 陣代高校用務員見習い さんの話です。
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