ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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最近、ライトノベル大賞に応募する為の作品を書き始めました。異世界召喚モノです。今の所ヤンデレのヤの字もありません。
書いていて二次小説がどんだけ書きやすいか改めてよく分かりました。5日経ったのに5000文字もいかないって……


ヤンデレ未来家庭図 4

 

 マタ・ハリの部屋の前で、女の子と1人のサーヴァントが話をしていた。

 

「此処がママの部屋なんでしょ?」

「なんと! あやつの娘なのか?」

 

「うん!」

 

(……嘘は吐いてなさそうだが、マタ・ハリの奴が嘘を教えた可能性もある。そもそも、アイツは今は英霊だ。子供など成せる筈が無い……だが、神秘は感じる……この娘は、宝具の類なのか?)

 

「まあ、此処で考えても仕方あるまい」

 

 扉に近づき、少し声を上げる。

 

「荊軻だ、入るぞ」

 

 

「あら、荊軻さん? なんの御用かしら?」

「あ、荊軻。こんばんわ」

 

 マタ・ハリと2人で話していた部屋の中に、荊軻がやって来た。

 

「む、主も一緒か。実は――」

「――ママ! パパ!」

 

 荊軻の後ろから茶髪の女の子が飛び出し、マタ・ハリに抱き着いた。

 

「あら? マスター、もしかして……」

「多分、先話した俺の娘だ」

 

「んな!?」

 

「ママ! 知らないお姉さん達が怖かったよー!」

 

 涙目で頭をマタ・ハリの胸に埋める娘。その頭をマタ・ハリは優しく撫でる。

 

「よく頑張ったわね。偉い偉い」

「うん!」

 

「あ、主……マタ・ハリと、子供を……?」

 

「パパ! ただいまのキスして!」

「いや、流石に……」

「マスター、してあげて下さい」

 

 娘が抱き着きキスを強請るが、俺は必死に断った。

 

「あ、主! う、嘘であろう? 嘘だと言ってくれ!」

 

 その間に放置していた荊軻が涙目で不安になってきたので、キスをしなかったせいか頬を膨らませる娘をマタ・ハリに預けて、荊軻に事情を説明した。

 

「――という訳で、あくまであの娘は俺とマタ・ハリが結婚した未来で産まれた娘であって、今はまだ本当の娘じゃないんだ」

 

「理解したぞ、主。なるほど、そういう事だったか」

 

「キリッとした顔でそう言うけど、涙目可愛かったよ」

 

「か、からかうな!」

 

 照れて赤くなる荊軻を笑っていると、後ろから俺の服の右袖を掴まれた。

 

「むー」

「むー」

 

 見れば親子仲良く怒り顔で頬を膨らませたマタ・ハリと娘が袖を引っ張っていた。

 

「妻の前で他の女と笑い合うなんて、イケない旦那様ね?」

「ママも私もほっといて他の女の人とずーっと話してるパパなんて、大嫌い!」

 

「っぐは!?」

 

 意外にも未だ結婚も確定もしていない筈の娘の『大嫌い』が、胸にナイフの如く突き刺さった。

 

「ご、ごめん……」

 

「むぅー!」

 

 手を合わせて頭を下げる俺の謝罪に、娘は頬を膨らませたままそっぽを向き、俺が視線を動かしてマタ・ハリを見るとニコニコ笑っている。

 

「だーめ♪」

 

「勘弁してくれぇ〜」

 

 だが、内心安心している。どうやら荊軻とは結婚していない様だ。それなりに近づきそれなりに喋ったのに娘が現れないから、娘がいる可能性はほぼ無いのだろう。

 

「じゃあ、パパが私にキスしたら許してあげる!」

 

 そう言って娘は唇をこちらに向けてくる。

 

(おい、未来のマタ・ハリ!)

 

 先まで話していた家庭図が見事に実行されているらしい。いや、絶対しないけどね? 娘と結婚なんて。

 

「ん」

 

 俺は娘の唇に指を当て、同時に頬にキスをした。

 

「……むぅー! パパ! 唇にしてよー!」

 

「キスはしたから。ほら、約束通り許して、ね?」

「いーや!」

 

 娘はまた怒ってそっぽを向いた。

 

「パ・パ? 私にもキスして? もちろん、唇に、深いのを、ねぇ?」

「いや、その悪ノリはやめてくれるかな? わりと本気で」

 

 マタ・ハリのキスを断るが、娘はまだ騒いでいる。

 

「パパ! 私とキスしてよ! ママとは毎日10回以上もしてるのに!」

 

「えっ」

 

 引いた。娘の発言に本当にドン引きした。

 そんな俺とは対照的に、マタ・ハリは頬を両手で抑えながら微笑んでいる。

 

「夜なんか、凄い音立てて凄い激しく……」

「娘の性教育に悪影響がぁぁぁ!」

 

 未来の俺がまるで想像できない。どんだけ娘に夜の営みを見せてんだよ。もっと隠せよ。

 

「ママは、12歳になったらやり方を教えてあげるって言ってたけど……」

「そうね、それくらいがいいわよねぇ」

 

「良くないよ! っは!?」

 

 俺は大分放置していた後ろの荊軻が何かしてこないか不安になり、後ろをチラッと見た。

 

「……いいな」

 

 寂しげな顔で、荊軻はそう呟いた。

 

 

「母上!」

「嘘だと言ってくれぇぇぇ!」

 

 パッと現れた女の子は、荊軻同様の黒髪に白い衣に身を包んでいた。そして、荊軻を母親と呼んでいる。

 

「は、母上!? 私がか!?」

「母上は母上です! 他の誰でもありません! あ、父上!」

 

 まさかの二股ルート解禁。正直今までで一番精神的ダメージがでかい。

 

「マスター!?」

「パパ!?」

 

 そんな俺を問い詰めようと娘と一緒に近付くマタ・ハリ。

 

「浮気、ですって? 私とこの娘を裏切るんですか?」

「パパの嘘つき……愛してるのは、ママと私だけだって言ってたの……」

 

 ハイライトの消えた目と溢れる涙に、背負うにはまだ早い筈の罪悪感が重くのしかかる。

 

「父上! 今日は一緒に過ごす日なんですか!? 私、父上のお帰りを楽しみにしていました!」

「娘……! 私と、主の……娘」

 

(何故二股した、未来の俺!! 幸せな家庭があっという間に崩壊一直線だよ!?) 

 

「許しません! 私はともかく娘を裏切ろうだなんて!!」

「パパのバカー!!」

 

 マタ・ハリの殺意が高まっている。魔力を右手に、何処からか手錠を取り出して左手を俺に向けて構える。

 

「は、母上! 父上がピンチです!」

「ああ、分かっているさ、娘よ! 今すぐ母上が助けてみせよう」

 

 逆に荊軻は母親になって完全に舞い上がっている。ナイフを構えてはいるが、いつもの冷静さは無く、何処かウキウキしている。

 

「……ど、どうすれば……」

 

 正直に言えば、此処まで来ると簡単(?)なのは令呪か逃げるの2択のみ。

 だが、令呪はあと1画だけ。まだ何人かサーヴァントがいるので、出来れば使いたくない。

 もし此処で逃げればヤンデレ捜索隊に本物のアサシンが加わる事になってしまう。逃げても直ぐに見つかってアウトだ。

 

「ま、マタ・ハリ! 落ち着いてくれ!」

「マスター? 当事者ではない貴方は黙っていて下さい。この女を殺せば貴方も私達を裏切る真似はしないでしょう?」

 

「だけど、戦いを始めればその娘は消えるぞ!?」

 

「勝てば戻ってくるでしょう?」

「そうとは限らない! だから、今すぐやめてくれ!」

 

「……うぅ……ままぁ……」

 

「……この娘を泣かせた、それ相応の罰をマスターが受けるのであれば、引き下がりましょう」

 

 良くは無いが、これで収まるならば……

 

「主、それを受ける必要は――」

「――何をすればいい?」

 

「簡単です。荊軻さんとの未来を消して下さい。本当に私達を愛しているなら、出来るでしょう?」

 

 笑っていない目で愉快そうにこちらを見るマタ・ハリ。

 

「あ、ある、じ……?」

 

 俺は頭を下げて、考える。

 マタ・ハリとの幸せな家庭を壊した原因は、間違いなく荊軻の呟きに同情してしまった事だ。なら、俺が固くその気持ちを否定すればいい筈だ。

 

「どうしました? やりませんか? なら――」

「よし、分かった」

 

「主!?」

 

 俺はマタ・ハリの娘の手を取る。

 

 そして、荊軻の前を通り過ぎてくるっと回ってから荊軻へ顔を合わせる。

 

「じゃあ、どうぞ戦って下さい」

 

 部屋のドアを出て俺は逃げ出した。娘も元の黒髪に戻った。

 

 

 後ろから何か大声で呼ばれた気がしたが知った事では無い。

 

「パパ、ママは何処なの?」

「……そう言えば、君のママは誰なんだ?」

 

 俺がそう尋ねると、娘は困った顔をする。

 

「えっと……ママがね。若いパパには教えないでって言ってた」

 

「むぅ……随分意地悪なママだ」

 

 しばらくして、俺は非常階段に入った。

 

「……ふぅ……参ったな。何処に行っても三股だの二股だの……」

 

「パパ、ママ以外の女の人と結婚しちゃ駄目だよ?」

「ああ、そうだよな。パパはそんな事をする気は無いよ」

 

 女の子の顔を再び見た。何回見ても今まで見てきたサーヴァントとは似ている所が無い。精々髪の色だけ。

 

「一体誰との子供なんだろ?」

 

「……うぁー」

 

「本当に教えてくれない?」

「うー……」

 

「うぉ!?」

 

 驚いた。いつの間にか2人のフランに囲まれていた。

 

「あ、フランの娘はフランって事ね。なんかマテリアルにもそれっぽいこと書いてあったし」

 

「うー」

「まーまぁ……」

 

 顔を合わせ、唸り声で会話する2人。どうやら、喧嘩はしないようだ。 

 顔も服すら全く一緒だ。正直、どれが娘かはまるで分からない

 

「そもそも、なんで非常階段に?」

「うー……あー」

 

「なるほど……此処が静かだからか」

 

「あ……こ、づく、り……」

「うん、ごめん。此処で子作りは出来ればやめて欲しい」

 

「あー……うー、あー」

 

 娘(?)が俺に子作りしないかと問い掛けてくる。

 

「しないよ?」

「じゃぁ……3、ぴー……」

 

「どっちも嫌だよ!?」

 

 フランも娘もホムンクルスなので、親だろうが構わず交わろうとしている。

 

「する……ここ、で……」

 

 だが娘は反抗期な様で、俺を掴んで服に手を伸ばす。

 

「え、いや……ちょっと待ってくれ!?」

「うー、ままぁ……ちゃん……すぅ」

「何が!? ま、マジで放してくれぇ! お父さん、怒っちゃうぞぉ!?」

 

「きもち、よく……して、あげる……」

 

「誰かぁ!? ヘルプミー!!」

 

 しかし、誰も来ない。

 

「うー……あー」

 

「なんで非常階段が防音なんだよ!? ちょっと!? カルデア設計者出てこい! 欠落だよ! とんでもない欠陥施設だぞ此処!?」

 

 このまま近親強姦にもつれ込むのはまじで駄目だ!

 

「フラン! 自分の娘を止めろ!」

 

 俺の叫びに令呪が輝き、フランはぎこちない動きで娘に向かっていた。

 

 娘も突然の母親の妨害に掴んでいた俺を放して、応戦し始める。

 

「よし! 今がチャン――」

 

 俺がガッツポーズを取ると同時に、重たい何かが地面を引っ掻く音が鳴り響いた。

 非常階段のドアが、開いたのだ。

 

 

「「「「ま」」」」

「「「す」」」

「「「「た」」」」

「お母さん!」

 

「……」

 

『……』

 

 沈黙。どうも気不味い。何かあちらに手違いがあった様だ。

 

「……(最後多分「ぁ」だったんだろうな)」

 

『……(最後「ぁ」って言っておいたんだけど)』

 

「お母さん!(お母さん!)」

 

 

「……テイク2! 次回に続く!」

 

「必要ないです! 先輩! もう逃しませんからね!」

 

 俺の気遣い等必要ないとマシュが強引に迫る。

 

「マスター、浮気は許しません。ましてや、三股や二股を4度も……」

 

「いや、逆に聞くけど! 俺にそんな度胸があると思う!?」

 

「……無いですね。そして、無理矢理迫られて断る度胸もありません」

 

「っく……だが、どうしろと言うんだ! サーヴァント相手じゃ抵抗なんか出来もしないぞ!?」

 

「先輩。なら此処で決めて下さい。誰と、結婚して、子供を、作るんですか?」

「誰と結婚すれば、浮気も愛人も作らないんですか?」

 

「……」

 

 そう問われて、考える。

 思えば、ヤンデレに追われるばかりで、誰がいいかなんて考えた事も無かったな。

 

 ゴルゴン三姉妹はアウト。姉妹丼三股確定だからだ。後あの姉2人の相手は嫌だ。

 ジャックも駄目。ロリコン確定しちまう。

 マシュは安定してる。メインヒロインだし。

 

 清姫はアウトだが、選ばなければそれはそれでアウトと言うのが面倒臭い。コレが選択を難しくしてる気がする。

 デオンはマシュより少し下。不満は無いが、あの両性体質が若干の不安要素。

 式は駄目だ。あの性格だし、なんかどっかから旦那がいるよーって聞こえてくるし。

 

 リリィもアウト。事あるごとにブリテン救済って言ってたし。あとエンゲル率的な意味で養えない。微妙にロリだし。

 荊軻は……デオンと同格だ。俺は個人的に酒嫌いだし。

 マタ・ハリ……うん、良いかもしれない。娘の教育以外は本当に文句無いな。俺が巨乳派だし。

 

 所で、なんで殺気が高まっているんでしょうか皆さん?

 

「ま、マスター! ようやく会えました!」

 

 そんな俺に皆の後ろから声をかけたのは、メディアだ。

 

「メディア!?」

 

「ま・す・た・ぁ? 面倒臭い女ですいませんね?」

「エンゲル率……ロリ……」

「お母さんは、ろりこんだよ!!」

 

「酒……嫌い……そんな、理由で……」

「大丈夫だよ、マスター。僕が開発してあげる。全て、ね?」

 

「どの姉が」

「嫌ですって?」

 

 殺意が止めどなく溢れている。怯える俺にメディアが説明した。

 

「マスターの心の声を、私の魔術で皆に伝えました。所で……マスターにとって私は?」

 

 論外デスネ。

 どうしようこれ。逃げる方法がまるで浮かばないんだが……

 非常階段で別の階に行きたかったのだが、何故かシャッターが降りていて出入り口の扉も開かない。

 

 そもそも、まだ娘を見せていないサーヴァントって誰だ?

 

「じゃあ皆さん、私がマスターを貰っちゃいます♪ マスター、今日は一杯癒やしてあげる♪」

 

 マタ・ハリは嬉しそうに俺に近づき、俺の手を取った。

 

「……マスター……考えを改める気はありませんか?」

 

 無理だな。だって、誰に変えた所で不満の声は止まらないだろうし。

 

「そうですか……良いですよ。マタ・ハリさんと一緒に行って貰って構いませんよ」

 

「え、本気で!?」

 

「はい♪ 私と子供さえ産んで下されば♪」

「え」

 

「ママ! ……このお兄さん、誰ですか?」

 

 何処からかマシュ似の娘が現れ、マシュに抱き着いた。

 

「……正直、腹立たしくて発狂しそうですが、私とも子供を成しましょうか、マスター」

 

「お母様……誰ですかこの人?」

 

 清姫と手を繋ぐ娘。

 

 おかしい。狂い始めた現状を、マタ・ハリが説明しだした。

 

「マスター……皆との約束でね。皆、マスターと結婚出来なくても、マスターとの子供が欲しくなっちゃったから、選ばれなかった皆に子供を産ませてあげるって約束なの」

 

「誰が選ばれても、皆が嫉妬に駆られて殺し合うんじゃ意味がないでしょう? だから、これが皆の妥協案」

 

 その後も、止まる事なく娘が現れた。

 

 

 

「私とも、お願いします……」

「オレとも」

「私も」

「「私達の分も」」

「私にも」

「お母さん、僕もー!」

 

「お母さん!」

「かーさん」

「メドゥーサ母さん!」

「ステンノ母さん」

「エウリュアレ母さん」

「母上!」

「お母さん!」

 

 そして、生まれてくるであろう娘達は――

 

『このお兄さん、誰?』

 

 ――生みの親()の顔を知らない。

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

(狂ってる狂ってる狂ってる!! 

 

 なんだよあれ!?

 

 あんな未来があるって!?

 あんな関係があるって!?

 

 おかしいおかしいおかしい!!

 

 あんな事があって良い筈が無い!!

 あんな未来が起こって良い筈が無い!!

 冗談なんだろ!? 冗談なんだよな!?

 終われよ悪夢!? 夢見が悪すぎるんだよ! 覚めてくれよ!! 覚めろよ!!)

 

 否定して否定して否定して否定する。

 

 未来から逃れる為に俺は何も考えないで走り続けた。あの場から逃げ出した。

 

 なのに不安は止まない。無様な俺を嘲笑う様に体を震えさせる。

 

 怖い。走り続けても、未来は刻一刻と迫ってくる。

 

 未来が、迫って――

 

「きゃっ!?」

 

 曲がり角で何かにぶつかった俺は、次にやってきた脳を揺らす様な振動に、意識が遠のいていった。

 




最近、書いてる時に「果たしてこれはヤンデレなのか」と自問自答する事が多くなりました。
別に読者様が楽しめるギャグ風味のラブコメが書けてれば何でも良いかなって楽観的に書いてるんですが、メンヘラになってるんじゃないかと心配で夜しか眠れません。

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