ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
原点回帰を目指しました。なお、原点のほうが文章量が多い。
二次小説内で三次小説を書くみたいなヤンデレ・シャトー
「お、今回はもうヤンデレ・シャトーが更新されたか。寝る前に読めるとはツイてるな」
俺はしがない学生。趣味はゲーム、漫画、ラノベ、ネット小説。
最近はFateシリーズの二次小説を良く読む。
今読んでいるこのヤンデレ・シャトーはFate二次の中でもギャグが強く、難しい設定文が無いので読みやすい。
まあ、作者がにわかを自負してる所もあるので難しい設定を練れないだけかもしれないけど。
今回は5000文字前後、あっという間に読み終わってしまった。
「毎回良く逃げるな主人公。捕まっても良い思いをしてから危なくなったら逃げられるんだから、本当に羨ましい」
ヤンデレに悪夢の中で追いかけられるのは一部の業界ではご褒美らしい。俺も、美少女に追いかけられるならいいじゃね? とか思ったりする。
「俺もヤンデレ・シャトーが夢で見れりゃいいんだけどなー。確か、第一話で主人公はFGOの最中に充電器刺したまま、携帯を持って……寝る」
自分でも苦笑いを浮かべ、内心呆れながらも真似をして見た。
「明日も早いし、もぉう寝ちまおう……」
面倒くさくなった俺は枕元に携帯を置いて眠りについた。
「先輩? 気が付きましたか?」
マシュ? アレ? 何処だ此処は? 何でマシュがいるんだ?
「夢の中ですよ、先輩」
「はぁ!?」
思わず飛び起きた。辺りは数ヶ月前にスマホの画面で見た監獄塔の牢屋の風景があった。
「ようこそ、ヤンデレ・シャトーへ」
「嘘、だろ……あ、夢だったな、そういえば」
否定しようとしたが、そもそもあの話でもヤンデレ・シャトーは夢の中の話だった筈だ。
「本物かどうかなんて疑うだけ無駄だな。あ、服装が……髪型もマスターになってる!」
「先輩はどうやら事情を知っている様ですね。では、補足だけさせて頂きます。
今回現れるサーヴァントの数は4騎で、クラスなどの縛りはありません。マスターの所持サーヴァントの中の4騎です。
そして、ペナルティがあります。もしサーヴァントが殺された場合、霊基降臨が1段階下がります」
ここらへんは最初の頃のヤンデレ・シャトーと同じか。だけど、クラス縛りは無いのか。俺は課金プレイヤーなのでサーヴァントが多いので予想が難しい。
ぐだ子設定じゃなくて助かった。
「知っての通り、サーヴァントは全員ヤンデレです。先輩が殺されると時間終了まで死んだまま感覚が残ってしまいます。ご注意を」
「なあ、サーヴァントも俺も全員が生き残ったらEXTRAとかあんの?」
「ええ、勿論です!」
そう言って微笑むマシュに、俺のテンションはダダ上がりだった。
(しゃあ! 断然やる気出て来た! 生き残ってみせる!)
「では頑張って下さいね、先輩」
そこそこ長いトンネルを通るくらいの時間が過ぎた後、俺は牢屋では無く廊下に放り出されていた。
「此処がヤンデレ・シャトーか……さて最初に接触するのは誰だー?」
若干わくわくしながら廊下を歩く。
(確かこの廊下は無限ループの廊下で、広場に出た後に階段を登るとスタート地点に戻る仕様だった筈だ。
そして廊下にはサーヴァントの数だけ部屋があるんだっけ……)
小説の内容を思い出しながら廊下のあちこちを注意深く見る。本当に1本道の様だ。
「っと、2つ目の扉はっーけん。って……開いてる!?」
もしや既にサーヴァントが部屋を出たとのかと身構える。
「……ま、マスター、でしょうか?」
すると扉の先から弱々しい声が聞こえてきた。
この声は間違いない。手に入れてから散々マイルームで突っつきまくったから確信できる。
「沖田……!?」
桜セイバーと呼ばれる侍のサーヴァント、新選組の沖田総司だ。
「す、すいません……ゴッホ! ご心配、なさらず……すぐに良くなりますから……」
見れば口から吐血している。彼女は病弱のスキル持ちで、症状がひどい時には吐血する。何時もはギャグで済ましているが、実際目の前で起こるとギャグでは済まない。
「何言ってる! 待ってろ!」
いてもたってもいられず、急いで沖田の部屋に入って彼女の肩を――
「あっは! つーかまえった!」
「っ!?」
だが俺にニッコリと笑った沖田は突然、手錠を俺の腕に掛けてそのままの勢いで俺を押し倒した。
「この臭い……ケチャップ!?」
俺の顔の左右には沖田の両腕が置かれ、沖田の顔が真上にあるのでお互いの視線が合わさる。
「んっぐ……ちょーっと水で薄めて口から溢せば、マスターなら迷い無く近寄ってくれると思いましたよ。因みに料理用の色素を使って濃い目の赤にしました」
嬉しそうにタネ明かしをする沖田。彼女は両腕を俺の頬にそっと置くと、顔を近づけて来た。
正直、期待しかしてない。
「ん……」
「……ん」
優しく唇を重ねて、目を閉じる沖田の顔をじっと見る。彼女の顔がドンドン火照っていくが、俺の顔もきっと初めてのキスにリンゴの如く真っ赤になってるだろう。
(あぁー……大人の階段をスキップしているようだ……)
「っちゅ」
「っ!」
沖田の舌が俺の歯をくすぐった。一瞬戸惑った俺は、歯を動かしてそれを受け入れた。
「ちゅ……ん……!」
「ん……っちゅ」
入ってきた舌をお返しにと舌で舐め、絡み合わせる。
息が出来ない。だが、止められない。
「ん……ふぅ……」
と、思ったが先に彼女の方から離れていった。
「マスター、沖田さん嬉しいです……こんなに積極的に求められて……もう限界です……」
そういて彼女は帯に手を伸ばす。
「私も、もうとっくに限界だ」
伸びた腕は帯を掴まず、刀を掴んだ。
「っ!?」
いきなり俺は突き飛ばされ沖田は俺に背を向けているが、様子がおかしい。後ろから誰かの声が聞こえてはいたが……
「私のマスターを汚すとは、許せん」
「っぐぁ……!」
嫌な切断音と水音を経てながら、赤い槍が沖田の心臓部から生えた。
「私のマスターを汚した報いだ。マスターの身を案じるのは当然だが、そのせいで刀を抜くのが遅かったな」
「っく……不覚……! すみませ……マスター……沖田さ、ん、此、こで……散り……」
刺さった槍を抜かれ、膝を屈し倒れ伏すとそのままの体勢で俺に謝ると同時に沖田は消滅した。
「う、嘘……だろ? 沖田がこんなあっさり……」
それを見送ったスカサハは今度は俺に槍を向ける。もう正直、恐怖で体がロクに動かない。
「っひ!?」
「マスター、お主は少し我の主であるという自覚が足りない」
「す、スカサハ……」
赤い槍の持ち主はランサーのサーヴァントであり、あのアイルランドの英雄クー・フーリンの師匠、スカサハだ。
出会った時に弱々しい演技をしていた沖田総司なんかよりもとんでもないプレッシャーを感じる。怒りと、次元の違う存在感が原因だ。
「色を好むのは結構だが女に誑かされない1人前の男にならなければ、私がお前を殺す」
滅茶苦茶だと叫びたかったが、そんな事が出来る気力は残されていなかった。スカサハは槍を下ろしながら俺に近付く。足は自由だが、両手は沖田の手錠で縛られている。
「ふむ、まずは汚れを清めよう。マスター、お主を私の部屋に案内しよう」
「ちょ、ちょっと待って!?」
スカサハはそう言って俺を担ぎ上げると沖田の部屋から足早に立ち去った。
「これくらいで良いだろう」
部屋に着いたスカサハはまず俺を部屋に放り込むと持ち前のスキル魔境の慧智で結界を作る陣地作成を発動させ、厳重な警備を敷いた後に俺の前に戻ってきた。
「っひ!」
その間、俺は部屋の中を眺めながら時計を見た。
ヤンデレ・シャトーは俺の起きる時間に終わるが体感時間は短い。確か6時間が1時間位になる筈だ。既に時計は1時45分を指している。1時から7時間までの筈だから、それまでなんとしてでも生存しなければならない。
「では、清めるか……んっちゅ」
「ん!?」
スカサハは座っていた俺に近付いて体を下げ、いきなり舌を絡ませるディープキスを始めた。
「んぅぅ……ん……っちゃ……ん」
「――! ん、っぅ!?」
慣れた動きで口内に侵入し、俺は圧倒されされるがままに貪り尽くされた。
そのまま数秒、十数秒と経ち続け、その間部屋の中には水音だけが不規則に響き続けた。
「……んっぐ」
「んー!?」
これで終わりとでも言うのかの如く、スカサハは俺の口に唾液を送って舌を動かし無理矢理飲まさせた。
「ふぅ……若輩の様に盛ってしまったな。だが、お主も用意が出来た様で嬉しいぞ」
先の沖田とはまるで違う獰猛さすら感じられる舌使いに俺は魅入られ、既に勃っている。
思い出した様に槍を手に取ったスカサハは俺の手錠を切り裂いた。床に手錠が落ちるが、そんな事は全く頭に入ってこなかった。
(こんなもん、どうやって耐えればいいんだ?)
「ふふ、すっかり発情しおって……」
スカサハが服を1枚、脱ぐ。
そこから現れた肌色がまるで強い光の様な刺激を俺の視界に放った。
「何を我慢している? 何を遠慮している?」
肌色の刺激に呆然とする俺に、スカサハは近付く。肌色が体に触れ、スカサハの声が耳元で響く。
「――これは全て、お主の物だぞ?」
(駄目だこれ……! 理性ヲ保ッテイラレナイッ!)
俺は、誘われるがままスカサハへと覆いかぶさった。
「こんなに沢山出しおって……ふふふ、だが、まだまだ行けるな?」
「ま、待ってくれ……も、もうむり……」
何度やった? 何度イった? 何時間過ぎた?
彼女も作らず童貞であった俺は長年の欲求を全て吐き出すようにスカサハと交わり続けた。だが、もうとっくに精も根も枯れ果て、疲労も限界だ。
「だらしないな。だが、直ぐに勃たせてやろう」
それなのにスカサハはまだ行為を続けようと、俺に近付いてくる。
そういえば、自分から行為をしてしまえば、サーヴァント達のスイッチが入ってしまうって、小説にもあったっけ……
ふとそんな事を思い出したが遂に体の限界が来たのか、俺は気を失った。
「……あれ?」
「気が付きましたか、マスター?」
気を失って、目を覚ました俺の目の前には裾も袖も大きな和服姿のサーヴァントが立っていた。
両儀式、セイバークラスで限界した姿だ。
だが、それよりも両手首と両足首の冷たい感触に気が行く。
「もうあんな目に遭わない様にしっかり拘束させて頂きました。
可哀想なマスター、あの影の女王に強姦されていたんですよ?」
同情するかのように俺の頭を撫でてはいるが、拘束した事に一切の悪意を感じていない様だ。
「そうなんでしょう?」
「っひ!?」
急に殺意が放たれ、返事を返さなかった俺を襲った。
「強姦されていたんですよね? でなければ、私以外の女と交わったりなどしていませんよね!?」
「は、はい! 強姦されました!!」
「……そうですよね」
俺の答えに満足したのか、彼女はニッコリと笑う。
「マスター、今何か精がつく物を用意しますね。すっかり元気が無い様ですし……」
そう言って俺の側を離れ、式は台所に向かった。
(……何が起こった? ……)
考えられるのは唯一、俺が気絶した後にスカサハは侵入してきた式に殺され、俺はこうして攫われたんだ。
「そうだ、時間!」
俺は首を動かして時計を見つける。
「……4時25分……」
もうかなりの時間が経った様だが、まだ長い。体感時間で30分と言った所か。
「マスター、うな重よ」
小説同様料理には全く時間がかからないらしい。どんぶりにはご飯が沢山入れられており、その上にはタレのかかった鰻が置かれている。
だが勿論、俺の両手は縛られたままだ。
「はい、あーん」
うな重を箸で掴んだ式は笑顔で箸先を俺の口に運ぶ。
「あ、あーん……ん、っうまい!」
鰻なんて久しく食べていなかった。それにタレも甘くて旨い。
「んふふ、もっと欲しいでしょう?」
「ああ! っ」
そう答えると式は笑顔で俺の口に指を当てる。
「ダーメ。妻である私の料理を食べていいのは、私を愛してくれる夫だけよ?」
「え?」
あれ? それはどう言う事だ?
「あっはは、マスターったらそんな悲しそうな顔をして……大丈夫よ、私はマスターを愛しているし、夫だと思っているわ。でも、貴方はどう? 私を愛しているのかしら」
質問をしている彼女の体から、殺意が放たれ、再び背中から嫌な汗が流れる。
「も、勿論愛してるさ!」
「その言葉が聞けて嬉しいわ、マスター」
そう言って式はもう一度箸を動かし、口にうな重を運んだ。
「ふふ、もっとよ。マスター、もっと欲しいでしょう? なら、私をもっと愛して……」
彼女の料理に何らかの中毒性がある事に気付いたのは、それに嵌った後だった。
「大好きだよ」
「ふふ」
「愛しているよ」
「フフフ」
「ずっとそばにいて欲しい」
「ふふ」
言葉を紡げば彼女は俺に料理を与え、遅れれば殺気が威圧する。
そして俺の言葉に、彼女の行為も激化する。
「ん……っちゅ、んぅ……ん」
「ん……大、好き……」
口移しで料理を運び、そのまま十数秒のキスへと変わる。
「それはうな重かしら、私かしら?」
「勿論、式だよ」
「あっは! マスター、私もマスターが大好きよ?」
料理にあったはずの中毒性がやがて式のキスへと塗り替わり、俺の脳はもはや思考が出来ない程溶ろけている。
「もっと、もっーと深ぁく……眠る様に、一緒に堕ちましょう。もっと奥へ……もっと、奥底へ……」
幸福感に抱かれて、もうこれ以上に無い程に幸せだった。
(っぅが! っだぁ!! っぐぅ……!)
漏れる事は無い悲鳴が頭に響く。肉が切られる度に水音が鳴り、骨が碎かれる度に水が跳ねる。
「許さない、許さない、許す訳がない」
黒い聖剣は、もはや切り刻む場所など無い程に俺の体を突き裂いている。
「マスターは私だけを愛すべきなんだ! 何故他の女が体を重ね、愛を囁かれた!? 巫山戯るな! 巫山戯るな!!」
(はぁ……ひぃ……っがぁ……)
息が出来ない。もう肺は形を失い止まっているのに、俺は数十分も呼吸困難に苦しんでいる。
(い、だぎ……ぐぶじい……ぅぐが……)
もう痛みを感じる筈が無い程繋がりを失われた筈なのに、体は切り裂かれた悲鳴を俺に届けている。
(ざぶい、っがあ……ざぶぎ……)
傷から血が流れ、また1つ、温度は床と同化する。まるで雪そのものになったかの様な寒さが全身を伝う。
天国が一転して地獄。観覧車に乗っている時に突き落とされたかの様な、希望に良く似せた絶望。
貰い、押し付けられた愛の色がピンクではなく、白と混ざった赤だったと気付いたのは、小説でみた風景とまるで違う展開の中だった。
ああそうか、関係を重ねれば重ねる程ヤンデレって奴は深くなるんだ。愛も、病みも。
受け入れるのではなく、無理矢理押し付けられた物をそっと地面に置くくらいの度胸と意思がなければ生き残れないのか。
天国だった肌の感触も、死を超えた殺戮劇の中で失われた。
「は、早く……目覚めて、くれ…………」
「っ!! っはぁ……っぁは……」
起きた時に最初に気付いたのは、異常な汗。そして、パンツどころかズボンまで濡らした生臭い臭い。
「……っくそ!」
親が入ってくる前に、俺はとっとと着替えることにした。
(……ヤンデレ・シャトーに行けたけど……酷い目に合ったな……)
登校しながらふと殆ど忘れてしまった夢を思い出そうとする。
(酷い目って……どんな目に……なんか、思い出せない……)
頭を振って気持ちを切り替える。思い出せない事はしゃーない。
「まあ、こんな話、オタク仲間にもできねえよな」
だが、夢精のし過ぎか体がどうもだるい。
「居眠り確定だな、こりゃ」
「あ、おはよう」
「おはよう」
後ろからクラスのオタク仲間から声をかけられた。
「なんかダルそうだな」
「お前も、なんか足フラついてるぞ?」
「いやー、なんかジャンヌに絞られそうになってさ、夢の中で!」
別に主人公交代とかじゃないですから安心して下さい。
なお、この物語はフィクションです。もしこの話を読んだ方が夢精でテクノブレイクしても、悪夢によってショック死しても、ヤンデレに迫られ監禁されても一切の責任を負いません。