ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
後書きも読んでね!
「さっさとしなよ……ほら」
「っがぁ……っがはぁ……!」
「アヴェンジャー!?」
日課の悪夢開幕早々、アヴェンジャーがくだ子に首根っこを掴まれて死にかけている。
だが、俺の声が聞こえたせいかぐだ子はクイッと首をこちらに向けた。
「あ、貴方が私の運命の人なのね!?」
アヴェンジャーを放しながら俺に近づくぐだ子。どうやらエナミでは無いらしいが、それより先に俺は致命的な事に気付いた。
「かっこいいな〜、私主人公なんだ、よろしくね運命の人」
目が可笑しい。狂気、と言う物なのだろうがヤンデレとは違い目の中に渦の様な見える。
「っごほ! ごほ!」
アヴェンジャーは無事な様だが、謎の人物に絡まれた俺が今一番危険である。
「え、えっと……君は?」
「私の呼び名!? うーんと、プレイヤーは私の事をリヨぐだ子って呼んでるよ!」
アウトである。
「えへへ」
「あは……はは、は」
現在進行形でリヨぐだ子に抱き着かれている。面倒なのでリヨ子で統一しよう。
「今回は…………そいつと、一緒に、ヤンデレ・シャトーに行ってもらう」
咄嗟にこの世全ての罵倒を浴びせたくなったが、アヴェンジャーが気まずそうにしている上に死にかけているので、勘弁して置くことにする。
「ヤンデレ・シャトーってなに? イベント? ピックアップは?」
「……ヤンデレのターゲットはお前だけ
だ」
どうやらこいつと一緒に俺を狙うヤンデレから逃げ回らないと行けないらしい。
リヨ子はFate/GOの解説漫画【よくマンガで分かる! FGO】の主人公……なのだが、解説漫画とは思えない程にヤバイ危険人物で、マシュや所長である故人オルガマリー氏を振り回す。
百合、ガチャ狂、解説対象ゲームのクレーマー……更にサーヴァントを圧倒する腕力で本編のラスボスらしき某魔術王を捻り潰した実績(エイプリルフール)を持つ。
(……何故、ミイラと一緒にミイラ取りに行かなければならないのか?)
「――待て、然して希望せよ………………いや、本当にすまん」
アヴェンジャーに本当にすまなそうに謝られながら、俺の体は何処かに飛ばされた。
「ありゃりゃ? 何処ですかここ? 愛の巣?」
「ヤンデレ・シャトー、監獄塔の中だ」
「先からヤンデレヤンデレって言ってますけど、まさか此処にいると……ヤンデレに!?」
いや、お前は最初からヤン(病んでる)デ(ストロイヤー)レ(ズ)だろうが。
「違う違う、此処にはサーヴァントがヤンデレになって俺に迫ってくるんだ」
「なんと!? ならば、主人公として運命の人を守り抜かなければ! 恋とは戦争なんだね!」
妙な気合を入れて鼻息を荒くしているリヨ子。そのまま猛牛の如く突撃して、壁に埋まってくればいいのに。
「……いました! 先輩!」
廊下の奥から俺を呼ぶ声が聞こえる。
「お、マシュだ!」
「一応言っておくけど、あのマシュは君の知ってるマシュじゃなくて、俺がマスターって感じになってるから」
「っ! そこの女性は誰ですか!? 先輩、浮気は許しませんよ!?」
「本当に別人みたいだねー……だけど、任せて! マシュの弱点は知り尽くしてますから!」
そう言ってリヨ子はマシュに近付く。
「先輩の為にも害虫は成敗させて頂きま――っひゃ!?」
マシュの前で残像が見える程の変態的スピードでリヨ子は背後に回り込んで、マシュの胸を撫で回し始めた。
「ぐへへへ……ここが弱いんやろ? 可愛いい声で鳴いて良いんやで?」
「あ、や、やめっはぁ……先輩以外に、そんな事は……あぁ!?」
オヤジのような言葉遣いと、手慣れた動きでマシュの喘ぎ声を引き出している。
数秒でマシュをノックアウトさせてしまった。
「ふふふ、ほらほら……」
「だ、めぇ……い、イッちゃいまひゅ……」
気まずいので目を逸らす。
(い、今の内に逃げようかな……マシュからも……リヨ子からも)
移動しようとその場から動き出そうとしたが、それより速く誰かに担がれ連れ出された。
「お母さん、みーつけた!」
「じゃ、ジャック!?」
小さな女の子に担がれ、俺はあっと言う間に2人の元から離された。
「う、運命のひとぉぉぉ! 必ず助けに行くから! マシュがイクまで待ってて!」
「も、もうひりゃっちゃから……りゃ、りゃめりぇーぇ……」
結構脳天気だなーとか思いつつ、俺はただただジャックに連れて行かれるだけだった。
「着いたよ!」
「おおう……もうピー○姫の事は馬鹿に出来ねえな……毎回攫われてるし」
ジャックの部屋の中にて漸く放された。否、手だけは繋いだままだ。
「おっかぁさん! おっかぁさん♪」
鼻歌を歌いながらグイグイ俺を引っ張ってご機嫌な様子のジャック。
到着した先は薄暗い手錠が壁に設置された牢獄の様な部屋。
「えぇっと……ジャックちゃん?」
「何? お母さん?」
「縛るの?」
「うん!」
「俺を?」
「お母さんを!」
「何で?」
「解体するから!」
おふぅ……天使の如き無邪気な笑顔でなんて事を……
「お母さん、解体するの?」
「する! 解体して、お母さんの中に還るの!」
無理だよ! 俺子宮ねぇし!
「良しジャックちゃん! 先ずが勉強しよう! おしべとめしべを通り越して保健体育(座学)を!」
「? お勉強?」
「そうそう!」
「やーだー! お勉強嫌いー!」
腕振って駄々こねだしたけど、解体は絶対阻止だ。最悪、お前は捨て子だったんだよとか、結構キッツイ事を言ってしまおうか。
……それしたら絶対死ぬな。俺。
「ジャックちゃん、ちゃんと勉強したらご褒美あげるから……」
「……ご褒美?」
良し! 釣れた!
「うん、ご褒美!」
「……わかった……お勉強頑張る!」
やった! 第三部完!
「じゃあ、先ずは――」
「――子供に性教育(実技)をしようとしている鬼畜はいねがぁぁ!?」
何を教えようかと考えていたら、突然ジャックの牢獄部屋の扉がぶっ壊れた。
(なまはげぇぇぇ!?)
ぶち破られたドアの向かいからテレビで見た事のある鬼の様な仮面と毛皮の様な衣装。
「ちょいちょい運命の人ぉ……イケメンだからって女の子に手を出して無事で済むとは思わないで下さいねー?」
予想通り……いや、色々と予測不可能だけどなまはげの中身はリヨ子だ。
「いやいや、危なかったの俺だし! 解体されかけてたからね!?」
こいつ俺の唯一の味方じゃなかったけ!? あ、バーサーカーだったなコイツ。
「お母さんは、渡さない!」
ジャックは2本のナイフを構えて迎撃する気まんまんだ。
「幼女には、これだぁ!」
「そ、それは! 星3の概念礼装!?」
リヨ子は服のボタンを外し胸から銀色のカードを取り出したが何故かなんの魅力も色気も感じない。
ポンっとコミカルな音ともにカードが音を立てるとライオンのぬいぐるみに変化した。
「これでも、くらえー!」
ジャックめがけて投げられたぬいぐるみ。ゲーム内では持っているサーヴァントが死亡すると他の全員のHPを回復する効果を持っている。
「わぁ! ライオンさんだぁ!」
ジャックはナイフを下ろし、ぬいぐるみをキャッチした。
「いい……なぁ……かわぃ……」
取った後、直ぐにジャックはその場で寝てしまい、リヨ子はジャックを抱えて、いつの間にか現れたベッドにジャックを静かに運んだ。
「いい夢見ろよ……」
「……」
正直、ツッコむタイミングが分からない。
「さぁさぁ、運命の人! レズな私を唯一孕ませる人!」
「いや、嫌だよ!」
右手の人差し指を左の親指と人差し指で作った穴に入れたり抜いたりの動作をするリヨ子。知ってたけど女子力皆無どころかオヤジ力が悪い意味で高過ぎる。
「やっと、2人きりになれたね……」
「えぇい! 来るな!」
マジで怖いのでジャックの部屋から逃げ出した。
「こういう事って砂浜でやるんじゃないっけ? まあいいか! 待ってよー!」
後ろから追い掛けてくるリヨ子に、過去最高レベルの危機感を覚えている。こうなったらヤンデレだろうとサーヴァントの力を借りるべきか!?
「ってドアが!?」
だが、何処もかしこもドアが閉まっている。
『ひゃぁぁぁ!?』
しかも中から喘ぎ声に似た悲鳴が聞こえてくる。
「触手が湧き出す気味の悪い本を入れときました!」
そう言いつつ見せびらかす様に振られている概念礼装は、装備サーヴァントのスター発生率を上げる魔導書だ。
「やっぱりお前の仕業か!?」
どうやらサーヴァントの力も借りれそうに無い。
あのバーサーカー、何で両手ブラブラしてるふざけた走り方であんなに早いんだよ!?
「待て待てぇ〜!」
サーヴァントじゃないのになんてバカげた速度だ。振り返れば徐々に距離を詰められている。
瞬間強化で振り切るタイミングを探しているけどそろそろ使わないと追い付かれる。
「むぅ、頑張るな〜……ならば!」
嫌な予感がして振り返る。立ち止まってまた何か礼装を取り出したようだ。
「へへへ、主人公特権はじゃんじゃん使わないと! かっこいいバイクよ! 現われろ!」
掲げたカードから現れるモータード・キュイラッシュ、白銀色のバイクだ。
「嘘だろ!? あんなの乗られたら……!!」
「へへへ、ツーリングと洒落込みましょうか!」
ゲームではライダー特攻という地味過ぎる能力だが、こういう使い方なら脅威以外の何者でもない。
けたましい音と共に後ろからバイクが走り出した様だ。
此処は一か八かだ。
「ヒャッハー!」
「瞬間っ!」
バイクが俺にぶつかる寸前、魔力を足に込めて地面を蹴り上げる。
「っ強化!!」
「ありゃ?」
バイクは俺を通り過ぎ、考え無しで加速していたリヨ子は俺から離れていく。
「ありゃりゃぁ〜?」
そして、リヨ子を乗せたバイクはバランスを保て無い。
操縦者が素人な上、ヤンデレシャトーの床は石造りでゴツゴツしている。バイクが転倒するのは当然だ。
「うああぁぁぁ!!」
破裂音、地面を擦る音、その後派手な爆発音が鳴り響く。
「……助かった……とは思わないぞ急げ!」
リヨ子の恐ろしさを知っている俺は、疲れた体にもうひと踏ん張りだとムチを打って、その場から離れた。
「……マスター、助かったよ。触手が漸く止まったのってマスターのお陰だよね?」
「まあ、自分でも何したかは分かんないんですけどね。それにまだ安全じゃないですよ?」
その後、ブーディカさんの部屋が開いていたので其処に逃げ込んだ。
「それにしたって概念礼装を使うか……マスターは出来ないの?」
「さぁ? なんか滅茶苦茶だったし、あいつだけの特権じゃ? もしくは……この魔術礼装が代わりって事じゃないですかね?」
ブーディカさんも俺にずっと抱きつく位にはヤンデレてはいるが、リヨ子相手ならヤンデレだろうとサーヴァントが必要だ。
「マスター……私の胸、汚されちゃったよ……」
「だから風呂に入ってきたんでしょう?」
着いたらそこら中体液まみれのブーディカさんがいたが、そんな事で動じている場合では無かったので風呂場に無理矢理押し込んだ。
「ねぇ……もっと、抱き着いていい?」
「ダメですって。動きづらくなったら逃げられないでしょう?」
未だリヨ子が現れない。だがアイツは縛られたまま過去にレイシフトされても生還するギャグ世界の化物だ。安心出来ない。
「……」
「……! 何か来た!」
ドアを開き、外を確認する。
「ひぇひぇひぇ……この私を本気にさせるとは、流石は運命の人ぉ!!」
見えないがそんな叫びが聞こえて来た。
「マスター!」
ブーディカさんが部屋から剣と盾を構えて飛び出す。
「ど、何処から……っ!?」
「嘘だろ!?」
まるで出来の悪いホラー映画だ。
火傷と傷跡が両手に刻まれ、頭から血が流れているのにリヨ子は、笑顔で歩いてきている。
その後ろからは無表情のアルトリアとすまなそうなジャンヌ・ダルクがこちらに歩いている。
「逃さないよぉ……こうなったら実力行使で……捕まえちゃうもんね……」
そう言ってまた2枚の礼装カードを取り出したようだ。しかも、1枚は金色のカード、つまりはレアな礼装だ。
「カレイドスコープ! ムーンセル!」
カレイドスコープがアルトリアに、ジャンヌにはムーンセルが吸収されていった。
どちらもNP関連だが、星5の最強と呼び声が高いカレイドスコープはムーンセルと役割こそ違うがその差は歴然だ。
「編成コストとか……面倒なんだよね」
そう言いつつタオルで血を拭いて、いつの間にか服と体の傷が綺麗さっぱり消えている。
「これでセイバーは宝具発射完了だ! さあ、エクスカリバーでぶっ飛ばしちゃって!」
「限界突破済み!?」
「マスター!」
距離を取ろうと慌てる俺とブーディカ。
「え? 何? NP80%? 同じ礼装を5つ合成しないと限界突破出来ない?」
そんな声が聞こえて来たので、慌てるのを止める。
「えぇー! 何だよそれ! 攻略サイト見たら100%って言ってたのに! まいいや! 何で髪の毛伸びてるから知らないけど、うちのレベルマックスセイバーならいけるでしょ!」
「マスター、どうする?」
ブーディカがそう聞いてくる。正直分が悪過ぎるから逃げ出したい。
だけど、セイバーは確かにレベルマックスだろうが、ジャンヌは紺色の衣装、つまり降臨は一度もしていないと見た。
「ムーンセルじゃあ宝具打てないし、ジャンヌはいいや。セイバー、一撃でやっちゃえ!」
こちらを指差しながらリヨ子はセイバーに支持を出す。
無表情のセイバーは剣を掲げてこちらに接近する。
(ムーンセル……一撃……!? それだ!)
弾かれた様に俺はブーディカに指示を出した。
「ブーディカ、
それを聞いたブーディカはなんの躊躇いも無く動き出した。
素早く動き、セイバーのがら空きの横腹を一閃した。
「っはぁぁ!」
「っ!」
まともに食らったセイバーは一度後ろに下がったが、今度は剣を体の真ん中に構えてブーディカに近付く。
「何やってんの!? 速くやっちゃって!」
「っ!
飛んでくる側面への攻撃を盾で受け止め、連撃だったであろう攻撃は最初の一撃の妨害で断たれ、盾で弾かれたセイバーの胴体へブーディカの斬撃が命中する。
「浅かった……!」
「大丈夫、まだまだだ」
「調子に乗って! セイバー! 反撃して!」
「反撃、
セイバーはブーディカの攻撃を見切って剣を構えるが、力の込められた盾での打撃に怯んだ。先のダメージが蓄積した結果、その隙はより一層大きくなる。
「
「悪いね! 貰ったよ!!」
3回の攻防を制し、ブーディカの攻撃は規格外の威力と連撃を放つ。
右へ一撃、左へ一撃、止めに盾の衝撃で鎧の内側へ衝撃を放った。
(EXTRAでの経験が生きてる! マスター同士の戦いなら、十分勝機はある!)
「あれれ!? セイバーさん、レアですよね!? こうなったら宝具で!」
「打たせるな!」
俺はブーディカにセイバーへの妨害を命じたが、そこでリヨ子はニヤリと笑う。
「ジャンヌ!」
「はいはい、どうせ肉壁ですよー……」
「っく!」
「切り捨てろ!」
放たれる
「
だが後方から放たれるアレは不味い。
俺は咄嗟に、ブーディカの部屋に飛んだ。
やがて、光が止む。
「よーやく倒しましたよ。全く、星3に負ける所だった」
「ブーディカ……!」
部屋を出たが、廊下に立っていたのはセイバーとリヨ子のみ。
ブーディカの姿は見えない。
「……」
「さあ、大人しく捕まりなよ、運命の人」
…………果たして、そう上手くいくかな?
「っ!?」
「つかまえた!」
天井からブーディカがセイバーへ落下した。
直感で剣を構えて迎撃に入るが、盾に剣を阻まれ、そのまま押し倒される。
「っなぁ!?」
「カルデア魔術礼装の緊急回避……そして!」
隠されていた機能、魔術礼装変更でカルデア戦闘服へ礼装をチェンジする。
隙ができたリヨ子へ俺は迷う事なく接近し、人差し指を向けて指鉄砲を作った。
「ホールドアップだ……!」
俺がリヨ子に向けているのは勿論ただの指鉄砲では無く、スタン状態にできるスキル、ガンドだ。
「えぇ〜?」
『よくあの化物から生き延びれたものだな。今回ばかりは本当に感心するぞ』
「アヴェンジャー、開幕早々ドラゴン○ールのヤムチャの如く首根っこ掴まれてたもんなー」
『それについては何にも言えん。もう二度と対峙したくないな、あんな化物……』
「随分と失礼だな!」
俺が目を覚ますまでのアベンジャーとの会話に、突然リヨ子の声が乱入してきた。
「っげ!?」
「運命の人! 運命の人と書いてライバルと読む人! 次あったら絶対負けないからな! 宝具演出スキップ機能が追加されたら、次はお前だ!」
(運営さん、負けないで下さい)
魔術と概念、2つの礼装を使いこなして人理救済に挑め!
「もっとマンガで分かる! Fate/Grand Order」は毎週木曜日更新中!
(本小説は不定期更新です)
さてさて皆さん、実はこの小説、【ヤンデレ・シャトーを攻略せよ】はもう1週間程前からUAが16万を超えています!
お気に入りはその10分の1くらいしか無いですが、それでも毎回温かいコメントに恵まれて、楽しく執筆しています!
結構前からUA15万位で何かお礼的な企画をしたかったのですが、確認を怠り若干ズレてしまったのです。
しかし、やりたいんですよ。
お礼企画的な小説。(押し付けがましさ全開)
詳細は此処では明かせませんが、活動報告でお礼企画の抽選を行います。
時間はそうですね……FGOでログインボーナスが貰える12日の午前4時位にそれらしき活動報告を書きますので詳細は其処で!
では、また次回!