ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
企画で送られてきたくずもちさんの意見が元となっております。
思いつきで書いたので低クオリティです。
「……」
じー。
「? …………」
じー…………
「………………?」
非難の視線を浴びせている筈だが、浴びせられている方はまるで堪えた様子は無く、むしろ喜んでいる様にも見える。と言うか実際に喜んでる。
いつもの如くヤンデレ・シャトーの中だと思われない様に自己紹介をしよう。
名前は伏せるけれど、僕のマスター名はボルル。ネーミングセンスについては触れないでほしい。
ヤンデレ・シャトーを最終日まで生き抜いたのだが、遂に終わりを迎えたかと思ったら夏休みにサーヴァントがヤンデレとなって実体化した。
ある契約により僕とは遊ぶ事しか出来ないらしく、スマホゲームの相手をしてもらっている。
しかし、僕が不機嫌な理由はそこではない。
「どうしました、マスター? 次は何に行きましょうか?」
(モードレッドはよ、モードレッドはよ、モーちゃんまじ天使、モードレッドはよ、モードレッド以外いらない!)
僕の好きなサーヴァントはモードレッド。それだけが今現在僕が不機嫌な理由である。
目の前にいるのは白いアルトリア、セイバーリリィと呼ばれているサーヴァントなのだが僕の一番心から愛しているサーヴァント、モードレッドの父上である。
リリィの場合は将来の、が付くが兎に角僕からしたらモードレッドはよ! と心の中で机を叩きつけている状態である。
しかも、ヤンデレ・シャトーでもそうだったがこのリリィ、人の話を聞かない。
都合の良い様に解釈し、最悪の場合殺してでも発言を撤回させようとしてくるのだ。
何でも、1日に経てばサーヴァントが変わるらしいので今日を耐えれば明日にでもモードレッドが来る。そうに違いない!
「マスター、何をしましょうか?」
現在リビングにリリィと一緒にいる。
都合の良い事に親は夏休みの間に海外旅行に行った。僕は来年から1人暮らしを始めるのでその練習に丁度良いと1人家に残った。
サーヴァントは僕に害を与える事が出来ないし、物を壊す事も無いのだが僕の部屋の無限とも言えるモードレッドグッズを見ればリリィがどんな暴走をするか分からない。
部屋には入れさせない様に、このリビングで彼女を足止めしなければならない。
「じゃあ、モンストでもしようか」
あえて此処は協力プレイしか出来ないモンストをプレイしようと誘う。先ずはダウンロードで時間稼ぎだ。
「はい! タブレット端末は持っています!」
どうやら聖杯も時代に合わせてテクノロジーすら与えているようだ。
笑顔で端末を取り出したリリィ。しかしこちらの心は依然としてモードレッドさんコールがやまない。
「あ、コラボやってますね!」
モンストが既にダウンロード済み……!?
しか不器用なリリィの事だ。同じキャラを99体合成させる運極なんか持っていないだろう。
(まあ、僕も少し前のコラボで漸く1体目の運極が完成した訳だが……)
「リリィ、じゃあ何をしに!?」
まさかの、ランク150。
ガチャ限キャラ33体。
運極キャラ30体。
「えへへ、ちょっと恥ずかしいのですが……玉藻さんや清姫さんに端末の使い方をお聞きして、マスターのご趣味のアプリをちょくちょくやってまして……」
まさかの展開! もう既に時刻は15時、モンストが長引くのは問題ない。まだガイガン周回しなきゃならないから正直助かるが……
「近いんですけど……」
「マスターの隣……特等席ですね!」
(そこはモーさんの予約席なんですが……)
「いや、お義父さんは向こうに座って下さいよ」
「マスター……マスターになら少女の様に扱われたいです!」
「じゃあお義母さんはあっちに座って下さい」
「お母さん……!? マスターの中ではもう私との間に子供が……! 何人ですか!?」
いや、何故お義母さんをお母さん呼びしないと行けないんだよ? あと俺の嫁はモーさんだから。
「いや、何でも無いですよ。ガイガンやりたいんですけど良いですか?」
「はい! 私もゴジ玉で出るキャラクターを運極にしたいので!」
そこからは奇跡の連発。
6回プレイし全てガイガンのゲージを吹き飛ばした。(3回削らなければならないボスの体力を1度で削り切った)
ガチャを弾けば運極に足らなかったキャラが10連で5体同時に現れた。
しかも、ゲームをプレイする為のスタミナが無くなればオーブ(ガチャ石)で回復して続行するレベルだ。
だがそれなら好都合と僕は部屋から布団を取ってくるとリビングに敷いた。
今夜はこのまま乗り切ってやる!
21時。夕食を食べ終わった僕は風呂場に移動した。
「ふぅ……疲れた……」
休憩はあったがモンストに次ぐモンスト。スタミナはあちらが回復してくれているので助かるが、もう限界だ。
「……っはー……さっさと出よう」
リリィの侵入を恐れた僕は普段より早めに風呂から出た。
「リリィ」
「マスター! さあ、続けましょう! 今度はゴジラ×13号機です!」
広場から出てリビングに着いた僕を出迎えたリリィ。もう嫌なのだが寝る前に少しだけ相手をしてあげよう。
「……やりました! 運極です!」
リリィの幸運のお陰でこちらも運極達成だ。
「じゃあもう寝よう――」
「ーーまだです! デストロイヤも運極にしましょう!」
「はぁ?」
随分間抜けた声が出たと自分でも思った。
いや、もう限界です。もう時刻は23時、良い子はとっくに寝る時間だ。
「ふふ……今夜は寝かせませんよ?」
「いやいやもう限界だ――」
「モードレッドさんとは0時までお楽しみするつもりなのにですか?」
戦慄。血の気が引いた。なぜそれを知っているんだ!?
「マスターの机の上の予定帳、見ちゃいました。モードレッドさんとデートする予定ですか……」
リリィは手に持った手帳をパラパラと眺める。
「8時から家を出て、映画を見てご飯を食べて服を買って、家に帰って、寝床まで自分の部屋のベッドに一緒ですか……」
静かに手帳を閉じたリリィは、それをそっと机に置いた。
「……私とは遊ぶのも嫌々なのに、モードレッドさんは凄い楽しみなんですね?」
「あははは……まあ、ね?」
「……ユルシマセン。今日は、寝れるとは思わないで下さいね?」
害を与える事の出来ないリリィはタブレットの音量を最大にし、リビングの電気を点けたままプレイし続けた。更にそれでも睡魔に落ちそうな僕の体を揺らす。
正直もう無理です。寝たい。
「あははは! 寝させませんよ!」
「止めてくれぇ……ね、眠い……」
悪夢の様な安眠妨害。それがしばらくするとピタリと止んだ。恐らくだが帰ったのだろう。
「ふぁ……も、もう無理……寝ようぉ……」
僕は電気を消し敷いてあったリビングの布団で横になる。
「お休みぃ……」
「マスター? む、睡眠時間か……ど、どれ……添い寝……してやろう……」
背中に当たる柔らかい感触を感じてモードレッドではない事を確信しつつ、涙を流しながら僕は睡魔へと落ちていった。
翌朝、馬に乗ってアルトリア(ランサー)と共にポケモンゲットの旅に出たのであった。
「モーさん、早くこぉぉぉい!!」
「マスター! コイキングがそこら中で跳ね回っているぞ!」
「モードレッド成分が、足りない……」
「マスター! ピカチュウだ! 捕まえたぞ!」
「モー……さん」
「ミニリュウだぞ、マスター!」
翌日の0時、アルトリア・オルタ登場。
その日はオセロニアでフルボッコにした。
「ええい! 竜属性に魔属で来るな! あ、罠か!?」
「へへへ、どうしたどうした? 角だぞ? 取れよ騎士王!」
「っく、なら此処で……カウンター!?」
「だから角取れば良かったのに……」
結局、モードレッドとアルトリアはゲームのイベントイラストが忙しい為、僕の家に来る事は無かったそうだ。