ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今年もなるべく早く投稿するつもりですが、今は親戚とかが来て少し投稿が遅くなるかもしれません。
って言うかいい加減来てくれよ、武蔵。


新年、初顔ヤンデレ

 

「……貴様、最近召喚を行い過ぎていないか?」

「何の事だ?」

 

 悪夢に来たというのに、アヴェンジャーから最初に小言を貰った。

 

「俺は無課金。引きたい時に石があれば引くだけだ」

「回転数に掛ける他あるまい、と言う事か……そんなにあのサムライが欲しいか?」

 

「バッカ、お前……欲しくなかったら引いてねえよ!」

 

 思わず地面を叩いた。

 欲しすぎて呼符も石も全て使い、ログインボーナスとフリークエストで手に入る石すら注ぎ込んでる位だ。

 爆乳では無い巨乳で日本の英霊。雰囲気的にお姉さんでは無く先輩位の距離の近さもポイント高い。あれでデレたらもう最高。

 課金しないのはタバコや酒を飲まないのと一緒。金がかかる事はハマると恐ろしい。

 

「……まぁ貴様の趣味思考は存分に理解していたし、今改めて理解した。

 ヤンデレ・シャトーで体験させてやってもいいが、今回はその引いた中でやって来た新たなサーヴァント共の顔合わせだ。

 今年最初の新顔だ。せいぜい頑張る事だな」

 

 それだけ言うとアヴェンジャーは消えていった。

 

「……今年も、愉快な悪夢をよろしく頼むぞ」

「いや、そろそろ終われよ!?」

 

 

 

 今年もやって来たぞ、ヤンデレ・シャトー。

 

 此処まで続くとは思わなかった。よく俺の脳はこんな夢を見ながら情報を整理出来ているなと感心する。

 

「別に年中ずっとだった訳じゃないが、1週間に1回のペースとか厳しいよな……」

 

 メタな独り言もそこそこに、前方を見る。

 もう見飽きた監獄塔のヤンデレシャトーだが、今回は両脇で既に部屋のドアが俺を挟んでおり、奥には微かに広場が見える。

 

 どうやらサーヴァントの数が少なかったのでそれに合わせて縮小されたようだ。

 

 

「2騎……ならまあ令呪も3画あるし問題ないだろう」

 

 そう言うが心の中では全くと言っていいほど油断していなかった。

 

「最近引いて当たったと言えば……ランサーのメドゥーサに、ライダーのマリーかぁ……」

 

 ドアを開ける前に広場に向かい、考えをまとめ始めた。

 

「ランサーはメドゥーサ……リリィ、なんて呼び方が付けられないのはアレがメドゥーサ(ライダーの方)の望む姿だからだろうな……あれは人見知り、と言うか自分が悪いとひたすら思い込んでるから、ヤンデレになったら依存系だよな……流石に不死殺しの鎌で襲ってきたりしない、よな?」

 

 なんでもあの鎌で傷を付けられるといかなる手段でも治せないそうだ。夢の中とは言えそんな事を知っていると怖くなる。

 

「次にライダーはマリー・アントワネット……多数から愛されるアイドルで、本人もそれを自覚して、笑顔を振りまいている。それがヤンデレ、つまり俺個人に愛を向ける事になる。ならば束縛系なのか?」

 

 姫様に縛られるとは……どうだ、モーツァルト? 譲ろうか?

 

「マスターさんったら、私の事を考えているのね! 嬉しいわ!」

 

 早速、咲き誇る百合の様な笑顔をこちらに向けてマリー・アントワネットがやって来た。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス! こんばんわ、愛しのマスター」

 

 白い肌に白い髪。赤色の服に身を包み、頭には巨大だが可愛らしい飾りの付いた帽子を被っている。

 

「……こんばんわ、マリー」

 

 壁に寄りかかっていた俺は背中を離して体を前に向けて逃げ出せる準備をしつつマリーに返事をした。

 

「ねぇマスター? 貴方の声が聞こえて来たのだけど、貴方は束縛がお好みなのかしら?」

「いやー……出来れば縛られたくないな、俺は」

 

「そうなの? 良かったわ。私、SMって言うのかしら? あんな酷い事、したくないもの」

 

 マリーは胸に手を当て安堵の仕草をした。

 

「それとマスター、もしかして私から逃げようとしてるかしら?」

 

 チラチラと階段の方に目を向けていたのでマリーも気付いたのだろ。

 

「……いや、そんなつもりじゃないけど」

「それじゃあ――」

 

 俺の答えを聞いたマリーはパッと俺の腕に抱き付いてきた。

 

「――こうしてもよろしいかしら?」

 

 かしこまって聞いてはいるが、当然と言った感じで抱き締めている。

 女の子特有のいい匂いが鼻をくすぐる。

 

 マリーは生前は愛して当然、愛されて当然な生き方をしてきた英霊だ。彼女に抱き着かれて、断れた男などいないのだろう。

 

「……駄目だ」

 

 その態度がちょっと面白くなかった俺は拒絶の選択をしてみたいと思ってしまった。

 

「え? マスター、今なんて仰ったかしら?」

 

「駄目って言ったんだ」

 

 本当に聞こえてなかったらしいマリーにやめておけばいいのにと思いつつもはっきりと拒絶した。

 

「……はぁぁぁ……!」

 

 ……何故かこの娘は先よりも頬を赤く染めて嬉しそうにこちらを見る。

 

「やっぱり、マスターを好きになって良かったって、今私は本気で思ってるわ!」

 

 拒絶したはずなのに何故かもっと強く抱き締められた。

 

「そうよ、そうなのよ! ただ愛される恋人(アイドル)じゃなくて色んな感情に揺れる夫婦(カップル)が愛の正しい関係だわ!

 生前の記憶はあるけど、この私はマスター、貴方を、貴方だけを全身全霊で愛します!」

「いや、普通にお断りなんだけど……」

 

 おかしい、今までのヤンデレとは全然異なるタイプ過ぎてついていけない。

 これヤンデレじゃなくてただの恋愛脳(スイーツ)だと思うんだけど……

 

「はぁぁぁ……マスター(最愛の人)の拒絶は私が愛に夢中になる為のお菓子よ、マスター!

 でも与え過ぎては駄目よ? さもないと太って醜くなってしまうわ!」

 

「じゃあ大好きだよマリー」

 

「私も大好きよ、マスター!」

 

 どう考えても適当に言っただけなのにマリーはギューと強く抱き締めた。

 ヤンデレとは違うベクトルで暴走するのがスイーツと呼ばれるものだと分かった俺は、どうした物かと頭を抱える。

 

 そして直ぐに自分の迂闊さに気付いた。

 ヤンデレにそれ(浮気)は禁句だったんだ。

 

「――っ!?」

 

 抱き付いていたマリーと共に地面に倒れつつ、首を狙った鎌の一閃を避けるだけでは足りなかったので、俺は戦闘服のスキル【オーダー・チェンジ】を発動させ、マリーと俺に襲い掛かってきたランサー、メドゥーサの位置を入れ替えた。

 

「――【ガンド】ッ!!」

 

 目の前から対象が消えて驚いたメドゥーサを斜め下からガンドを発射し、スタンさせた。

 

「ふう……なんとかなった……」

 

 令呪で拘束した訳ではないので直ぐに回復するだろうし、まだ少しくらい動けるので油断はしないがこれで話位なら聞いてもらえるだろうか。

 

「えーっと……メドゥーサ?」

「……」

 

「怒ってるんだよね? 俺が、マリーを好きだって言った事を?」

「……当然、です……!」

 

「マスター、この娘がメドゥーサちゃんなのね? 私はマリー! マスターとは婚約関係です!」

 

 この状況でもマリーは無邪気に爆弾を投下した。あまり刺激されるとただでさえ短いガンドの効果が――

 

「――っはぁ!!」

「魔術礼装カルデア、【緊急回避】!」

 

 メドゥーサの鎌が再び俺を襲う。ガンドの効果が完全に消えた様だ。

 

 直ぐに魔術礼装を変更してマリーを回避させたが、あっちはマリーとは違って戦闘が本業、一度の回避では駄目だ。どうにかして落ち着かせないと……!

 

「マスター! 先程からこの方を庇っていますが、まさか本当に婚約関係だとは言いませんよね!?」

「いや、そんな関係では無い。だからメドゥーサには一度落ち着いて欲しい」

 

 俺の言葉にメドゥーサは鎌をマリーの首元で止めた。

 

「……イヤだわ、この状況」

 

 首を動かしながら刃から離れようとするマリーにメドゥーサは油断無く刃を近付ける。

 

「今の俺には特別な相手なんかいないから……落ち着いてくれ」

 

 俺は鎌をマリーに向けているメドゥーサにハグをした。

 

「…………っは、はいぃ……!」

 

 若干トリップしながらもメドゥーサは俺に返事を返した。マリーの首を下から狙っていた鎌も力が抜けたみたいにぶらりと下がった。

 

 依存系は物理的な距離に弱い。抱き締めて温もりを感じれば頭が幸福で満たされて、怒りも思考も一時的に停止する。

 

「マスター、愛人は駄目よ? 貴方は王妃の私ではなく、マリーと言う名の少女を愛するの! 余所見はしないで、私を愛せばいいの、ね!」

 

「勝手な事ばかり言って……っ!?

 ぁぁ、マスター、撫でてる……私の頭を……暖かぃ……」

 

 猫耳のフードに腕を入れ、紫色の髪を撫でる。それだけで周りの雑音(マリーの声)が聞こえていないような、穏やかな表情を俺の体に預ける。

 

「マスター、聞いているかしら?」

「うん、聞いてるから」

 

 戦闘能力の高さ的にメドゥーサに注意を向けなくてはならない。

 だが、こうやって片方にかまってると絶対に何か仕掛けてくるので、マリーを手で誘う。

 

「はぁぁ……愛しい人の手が、私の頭を撫でてる……満たされていくわ。今だけ、乙女じゃなくて、大人しい女の子になってしまうわ…………」

 

 2人とも幸せの表情を浮かべている。どうやら病みが浅い内に鎮圧出来たらしい。

 

「……でも、愛の受け取り口が2つもあってはいけないわ」

 

 マリーがそう言うと水色の何かがメドゥーサへと襲い掛かった。

 それを感じたメドゥーサは素早く鎌を振るって防御した。

 

「――デオン!?」

 

 現れたのはマリーと縁のある英霊、シュヴァリエ・デオンだ。セイバークラスである彼女の刃を、メドゥーサは鎌で必死に防いでいる。

 

「……マリー・アントワネット……シャトーのルールを破りましたね……! 貴方はこのサーヴァントを隠していたんですね!」

 

「あら? 違うわよ?」

 

 マリーは微笑む。

 

「私のスキル、ご存知無いかしら?」

 

 その言葉を聞いて俺の頭に答えはすぐに現れた。

 

「そうか! 麗しの姫君!

 その場にいるだけで自分の騎士たる人物を引き寄せる!」

 

「正解だわ! 流石ね、マスター! シャトーはカルデアのサーヴァントを呼び出せる場所よ、スキルと高い運があれば呼び出すのは簡単よ」

 

「そういう訳で、今の私は彼女の騎士だ。君には悪いけど、此処で退場して貰おうか!」

 

 デオンは更に力を込めてメドゥーサの鎌を弾き飛ばす。

 

「あ――!?」

「トドメだ!」

 

「アトラス院制服、【オシリスの塵】!」

 

 メドゥーサを貫こうとした剣は魔術的な守りに防がれ、その隙にメドゥーサは鎌を拾う。

 

「っく、マスター!?」

 

「令呪を持って命ずる!」

 

「無駄だマスター! 彼女の騎士である私に、令呪は効かない!」

 

「マリー・アントワネット、デオンに抱き付いてベーゼし続けろ!」

 

 俺の命令に、マリーの目が点になった。

 

「え……? あ、あわわわわ……で、デオン! と、止めて止めてぇ!」

 

 両手をデオンの向けて抱き着く体勢のままに走り出したマリーにデオンも驚きながら受け止めようとする。

 

「カルデア魔術礼装、【瞬間強化】」

 

 俺のサポート(余計なお世話)がマリーに届いたと同時に、彼女の体はデオンへと飛んだ。

 

 予想外の行動にデオンは受け止めきれず倒れ込んだ。

 

「んっはぁ……ん、で、デオぉン〜……っちゅ……!」

「ま、マリー……っちゅ、だ、駄目だ! マスターも見ているんで――んんー!」

 

「分かっては、んちゅ、いるけど……ん! 令呪のせいで、んぐ……りょ、まらないのぉぉ……んん!」

 

 キマシタワーの建設完了だ。片方が両性類だから微妙だが、まあマリーが女の子だと思っているし、多分キマシタワーであってるだろう。

 

「……クイ、クイ」

「? うっ!?」

 

 服の裾を引っ張るメドゥーサに視線を向けると同時に意識を刈り取られた。

 

「……アントワネットは、一生そこにそのままいればいい」

「ま、まひゅたーに、ん、んん…………な何を……ん!」

 

「教えません」

 

 

 

「まさか助けたつもりだったのに仇で返されるとは……」

「いえっ! ……そんな事をしたつもりは、本当に無い、です……」

 

 メドゥーサは目覚めた俺の言葉に顔を俯かせ、涙がポロリと溢れる。

 

「うぅっ……情けないです……マスターに、助けて頂いたお礼をしようと部屋に招いたのに……料理1つこなせないなんて」

「招、いた?」

 

 俺の首の後ろを強打して強制的に気絶させて連れてきたにも関わらず、招き入れたらしい。

 

「……このままじゃあ、マスターが私から離れます……し、縛っておかないと……!」

 

 メドゥーサは小さな頭の中で最悪の事態を想定した。

 

 ジャラジャラと床を擦りながら、俺の足へと鎖が伸びてきた。蛇の様に動きながら、迫った鎖は俺の両足を縛る。

 

「……で、でもこのままだと転がりながら部屋から出ていくかもしれないし……! 扉も鎖で!

 あ、でもマスターが下手に暴れると鎖が足を傷付けてしまうかもしれない……! 暴れないように壁に貼り付けて無いと!」

 

 ドアを鎖が封鎖して俺の足を拘束した鎖が壁に刺さって、俺の両手も同じ様に縛っていく。

 

「き、キツく縛ると血液の流れが……!  で、でも緩くしちゃうと逃げられて……!」

 

 混乱するメドゥーサ。そろそろ部屋中が鎖でいっぱいになりそうなことに気付いて欲しい。

 

「メドゥーサ。

 ……おーい、メドゥーサ!」

「っ、っはい! な、何でしょうか……!?」

 

 拘束していると言うのに俺に恐れを感じている……否、恐れているのは俺の拒絶だろう。

 

 此処で下手な事を言うと、彼女が覚悟(心中)を決めたり、怒りが爆発してそのままぶち撒けるかもしれない。

 かける言葉は彼女に寄せないと。

 

「……大丈夫か?」

 

「あ、あぁあぁぁ……は、はい! 大丈夫です! ちょっと頭が混乱してて……!」

 

 メドゥーサは俺の言葉に気を楽にしたようで、慌ててウジャウジャあった鎖を消していく。

 

「だ、大丈夫ですかマスター!? 跡が付いたりしてませんか!?」

「うん、大丈夫だ」

 

 ポンポンとメドゥーサの頭を叩いて安心させる。

 

「……マスター……」

 

 落ち着いたメドゥーサは俺に抱き着き、スッと離れる。

 

「もう、私はマスターを縛ったりしません。マスターをこの鎌で守る従者として、サーヴァントとして頑張ります」

 

 そう言ったメドゥーサはフードを取って鎌を掲げる。

 

「だから、私にだけ魔力を下さい」

 

 フードだけでは無く、マントも取り、服にも手をかける。

 

「……戦力としては欠落があるかもしれませんが、これでも美の女神です……だから、マスターから沢山、魔力が貰えると思います」

 

 それ以上は駄目だ。

 そう口にしたかったが、精神が何か侵される。

 この感覚には、もう既に陥った事があった。

 

「……女神(エウリュアレとステンノ)の魅了……!」

 

「怪物の混じった私ですけど、マスターなら、相手にしてくれますよね?」

 

 どうやら少し甘やかし過ぎた様だ。

 今のメドゥーサは俺の優しさに依存して求愛すら貰えると思い込んでいる。

 

「安心して下さい。汚される宿命だった女神です、男の人を喜ばせる知識だけは豊富ですから……」

 

 メドゥーサは下着だけ穿いたまま俺に近付く。

 

 幼い体からはマタ・ハリの様な色気を感じ、高まる魔力が俺の目を釘付けにする。

 恐らくこれがメドゥーサの宝具の女神として正しい姿。

 

 魔術礼装を使わないと――!

 

「令呪を――」

「――遅いです。

 その指は鉄

 その髪は檻

 その囁きは……愛。

 貴方だけの私。女神の抱擁(カレス・オブ・ザ・メドゥーサ)

 

 宝具の発動と共に抱き締められる。

 髪が俺の体に鎖の如く巻き付き思考を桃色に染め、メドゥーサの声がはっきりと耳元から奥まで聴こえてきた。

 

「……マスター、私とこれからはずっと一緒に――」

 

 

 

「完全に魅了に堕ちる前にアトラス院の【イシスの雨】で弱体化を解除したか……女神の求愛まで弾くとは恐れ入ったぞ」

 

「お前、エウリュアレにボコボコにされたらしいもんな」

 

「……なんの事だか……」

 

 恍けるエドモンに俺もそれ以上の追撃は止めてやる事にした。

 

「今年ももっと恐ろしいヤンデレを用意してやるから覚悟する事だな」

 

「そういうセリフはジャンヌ・オルタにでも言わせてやるんだな」

 

 エドモンの不敵な笑みを最後に、俺は夢から覚めていった。

 

 




メドゥーサの中ではアヴェンジャーが一番好きですね。
悪ぶってる女性って最高だと思います。優しくなる時が一番可愛いですよね。

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