ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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まだ旅行中です。
水曜には帰ります。

そしてこのタイミングで来る復刻版の監獄塔。
思えばこのイベントから始まったんですよね、ヤンデレ・シャトー。


2人でヤンデレ・シャトー エナミ編

 

「そんな訳でして! 私も今日は参戦しますよ!」

 

「いや、なんでだよ……」

 

 出番が無くてエナ何とかさん化していた後輩、エナミハクツが何故か俺の悪夢にやってきた。

 

 リアルではどうだって? いつも通り俺の手作り料理を食べに朝に押しかけてきたり弁当を頼んだりしてますけど何か?

 

 ヤンデレらしい事と言えば最近通販サイトで手錠を買っただの、自白剤と媚薬って高いんですね、2箱ずつしか買えませんでした、等の報告だけだった。

 

「先輩がどれくらいサーヴァントに現を抜かしているか、抜き打ち検査です!」

 

「そういう訳だ」

 

「おいアヴェンジャー、このピックアップでお前引いたらこの悪夢は終わりだからな!」

 

「俺を引いても第一(アンリ・マユ)第三(ジャンヌ)第四(ゴルゴーン)のアヴェンジャーがお前を苦しめるだろうな」

 

「まさか、俺にアヴェンジャーをコンプリートしろって? 無課金の俺に?」

 

「精々、努力する事だな」

 

「せんぱーい! 頑張りましょう!」

 

 まさかの無茶ぶりである。よりによってアヴェンジャークラスの星5である2騎はピックアップ限定キャラだ。引くに引けない。

 

「今回は前回同様に通常のヤンデレ・シャトーだ。全員がお前達2人を求めて狂い果てている事だろう。飲まれぬ様に、足掻き続けてみせろ!」

 

 

 

 懐かしの監獄塔イベントが始まって直ぐにこれである。思えばアレが終わって直ぐだったな、ヤンデレ・シャトー。

 

(もしかして新規プレイヤーをこのヤンデレ・シャトーに引き込む気か?

 ……ご愁傷様だな)

 

 ヤンデレ・シャトーを楽にやり過ごす方法は唯一、霊基再臨素材を惜しまずさっさとサーヴァントを自害させてやればいい。

 

 それをせずに上手くやり過ごすとこの通り、エクストラとか言う終わりの見えない悪夢が始まってしまう。

 

「先輩先輩! 誰か来ましたよ!」

 

 エナミが指差す方向には盛りに盛られた派手な帽子を被った華奢な少女が見えた。

 

 王女、マリー・アントワネットだ。

 今日も笑顔で、腕を振りながらこちらに近づいてくる。

 

「はーいマスター、ヴィヴ・ラ・フランス! 今日は2人も居るって聞いたけど、本当なのね!」

 

 どうやら以前の清姫とは違いマスターが2人いる事には特に問題は無いようだ。

 

「……なるほど、この娘が最近先輩が引いたお気に入り……」

「いや、違うからな?」

 

「マスター……だとどちらもマスターなのよね? なんて呼んだらいいのかしら? よければ貴女のお名前、教えて下さる?」

 

「お断りです。先輩、早速私との仲をこの娘に見せつけて諦めさせましょう!」

 

「……! センパイ! そう、男性の方をセンパイって呼べば良いのね!」

「先輩を先輩って呼んでいいのは私です! 貴女は駄目!」

 

 話に入れない……エナミの怒りをマリーは微塵も気にせずに話を続けているからそもそも会話が噛み合ってない。

 

「うーん……でも先輩って先に生きている方に使うべき言葉よね? 私がマスターに使うのは、なんだか忍びないわ」

 

「何を悩む事がある! 奏者が2人いるのであれば、2人纏めて奏者と呼べばいい! 

 と言う訳で奏者達よ! 2人共私の部屋に参ろうではないか!」

 

 悩むマリーを差し置いて、現れたのは肩に黄金色の派手な装飾を纏った初参戦のセイバー、ネロ・クラウディウス。

 

「美少女も美少年も、余の前では些細な問題、選ぶ必要は無い! 余が平等に愛でてやろう!」

 

「うーん? 楽しく遊ぶなら女の子だけど、やっぱり恋愛は男性が良いわよ。それに、恋愛はやっぱり一途じゃないと」

 

「オリンピアの華である余が数多の者に好かれるのは当然の事! その中から選ぶというのは酷と言う物だ!」

 

「王妃だった私は、普通の乙女として恋愛がしたいの。ハーレムやアイドルなんて前世で幾らでも出来た事をやってもしようがないもの」

 

「先輩、何だか立場的に偉い人率高くないですか? ……あれ、先輩?」

 

 付き合ってられない。俺はエナミを置いて危険地帯を脱出した。

 

 

 

「…………」

「マスター……お会い出来て嬉しいです……!」

 

 エナミを置き去りにして王妃様と皇帝様から逃げ出した俺の前に静謐のハサンが現れた。

 そう言えばこの娘、新年始まってからまだ出番無かったな。

 

 こっちの方が危険じゃねえかと思いつつも、何とかやり過ごす方法を考えている。

 

「マスター……どうかされましたか?」

「……いやちょっと静謐が急に現れて驚いただけさ」

 

 この難易度の高いチョロインを相手にする時、気を付けないいけない事が幾つかある。

 

 接触、接近、接吻だ。

 

 本来なら全身毒の筈だが、ヤンデレ・シャトーでは麻痺毒や媚薬にチェンジ可能というチート性能を発揮する彼女とは会話すらも命取りになりかねない。

 

 マシュの加護(仮)のお陰で毒は効かないが媚薬はあっさりと体へ入り込むので近付く、触れる、キス、アヘ顔ダブルピースの順に即堕ちする事もある。

 

 なので会話する時には3mの距離を保つべし。クレイジーDやらスターPとか呼ばれてる悪霊もその距離なら拳は届かないから。

 

 そして、ヤンデレはこちらから攻めると暴走してアプローチが激しくなるのも忘れてはいけない。

 こちらからキスをするとそれを返そうと更に激しい行為に発展させてしまった経験がある。

 

 この娘の場合は頭を撫でたり、尻にセクハラするだけでアウトだ。

 なにせ今までずっと自分に触れられる人間を探していたのだ、暴走スイッチすらチョロい。

 

「えーっと、エナミ、もう1人のマスターならあっちだけど?」

 

 取り敢えずエナミを売ってみようか。

 

「そうなんですか? 良かった……それじゃではマスターは今1人なんですね?」

 

 しまった、静寂の狙いはあくまで俺か!

 

「ひ、1人だけど……」

 

 此処で後退るのは不味いが、距離を詰められるのも不味い。そもそも俊敏性の高い

静寂のハサンに3mの距離など無い様な物だ。

 物理的に逃げるのも不可能なので口先でどうにかしなければ……!

 

「静謐、急なんだけど……!」

 

 俺は着ていたカルデア魔術礼装を脱いだ。

 

「っきゃ!?」

 

 だが、決して突然露出癖に目覚めた訳では無い。これは立派な打開策だ。

 

 小さく悲鳴を上げた静謐は両手で顔を覆ってはいるが指の隙間から興味の瞳を覗かせている。

 

「悪いけど、コレ、洗濯して貰えるか?」

「え、ぁ、え……?」

 

 俺は礼装を静謐に差し出し、さっさと魔術協会制服の礼装に着替えた。

 

「ちょっとこれだけだと寒いから、着替えたかったんだけど洗わないとまた使えないし……お願いしてもいいか?」

 

「あ、いえ、か、構いません! ぜひやらせて下さい!」

 

 よし、掛かった!

 

「じゃあ、また取りに来るからゆっくりしてねー!」

「はいっ!」

 

 静謐が恍惚な表情で礼装を握り締めていた事を確認しつつその場から遠ざかっていった。

 クンクンされるであろうカルデア礼装を思うと少々複雑だが今度から1対1の時はこれで行こう。

 

「だけどこれで【緊急回避】も【瞬間強化】も使えないか……」

 

 カルデア礼装のスキルは使い易く、咄嗟とはいえそれを手放したのは地味に痛い。

 

「まあ良いか。それよりも次はどんなサーヴァントが来るか、だな」

 

 マリーとネロは年末年始の時期に俺のカルデアに呼ばれたサーヴァントだ。

 となればランサーのメドゥーサが来る可能性もある。

 

(だけどアヴェンジャーが果たして3回も同じサーヴァントを連続で使ってくるか?)

 

 マンネリ化やらいらん事を気にする奴だからなと思いつつ、メドゥーサの可能性を留意しながら前へと進む。

 

「せんぱ〜い? どこに居るんですかぁ?」

 

 暗闇の方からエナミの声が聞こえてきた。

 不味い。あちらもどうやら上手く切り抜けたらしい。確実に怒っているだろうな。

 

「むう……奏者と一緒に行動できるのは良いが、令呪の縛り有りきとは……ままならぬ物だな」

 

 ネロの声も聞こえる。以前のアルテミスと同様に令呪で従えている様だ。

 距離を取らなければ……

 

「っ! 先輩、そこにいますね!」

 

 バレたっ! 監獄塔の廊下は明かりが無く、数m程の距離しか目視できない筈だが、ヤンデレには関係ない話らしい。

 

「奏者よ、観念し皇帝の求愛を受けよ!」

 

 ネロが声と共に迫る。

 他に選択肢が無いので俺はすぐ隣の部屋を開けて飛び込むしかなかった。

 

「っく! ……やば!!」

 

 直ぐにその部屋が外れだと分かった。何せ黄金の壁に真紅のバラが飾られている。

 この豪華な部屋は間違いなく、ローマ皇帝ネロ・クラウディウスの部屋だ。

 

「ふふふ……余の部屋に入ってくれるとな! 奏者よ、余は嬉しいぞ!」

「もう逃しませんよ、先輩……このサーヴァントは私の能力、強化令呪によって私の下僕となって貰っています。逃げようなんて思わないで下さいね?」

 

 テンションの高くなったネロに、目から光が無くなったエナミに退路を断たれ、正直もう詰んでるんですけど。

 

「先輩をベッドへ」

「お安い御用だ!」

 

「うぉ!」

 

 ネロはベッドへと俺を放り投げた。

 

「……さて、リアルだと力の差で負けてしまいますがこうしてしまえばこちらの物です。

 たっぷり絞って、現実と夢の境界を曖昧にしてしまいましょう……」

 

「何それ聞いてないんですけどっ!?」

 

「だって先輩、夢の中だと現実と違ってチョロいじゃないですか? だから、先輩を攻略するなら夢の方かなって」

 

 俺がチョロいんじゃなくてお前が夢の中だと強くなってるだろうが!

 

 キングサイズのベッドでネロが頭を抑える。

 

「うー……マスターを前にして令呪、そして頭痛とは……」

「元々貴方と先輩を分けるつもりは微塵もありません。護衛を努めてください」

 

「ひ、酷いぞ奏者よ!

 余だって男の奏者とチョメチョメしたい! 美しい男女に囲まれて夜を過ごしたい!」

 

 駄々をこねるネロだが、エナミは一切容赦はしない様だ。

 

「駄目です。さあ先輩、脱がせてあげますね?」

 

「く、こっんの!」

 

 何とか迫るエナミの腕を掴んで脱衣を阻止する。

 

「抵抗しますか……先輩、放してもらえますか?」

「流石にこの状況で放す訳無いだろう……!」

 

 夢の中でも腕力は男と女だ。

 【瞬間強化】が使えないのは痛いが、素のままでも十分抵抗は――

 

「――夢幻召喚(インストール)!」

 

 エナミはカードを懐から取り出した。以前見たランサークラスの絵が描かれたクラスカード。

 

 インストールはサーヴァントの能力を身に纏う能力でエナミのカードはランサーのサーヴァント、ブリュンヒルデの能力が宿

っている。

 

「――って、そんなのアリかよ!?」

「変身完了……ああ、先輩ぃ……」

 

 先よりも狂気が深くなり、服は水色のセーラー服の様な物、髪は銀色に変化して筋力もサーヴァントクラスまで上昇した。

 こうなってしまっては例え【瞬間強化】があっても抵抗不可能だ。

 

「先輩ぃ……抵抗して下さい…………

じゃないと思わず殺してしまいそうです」

「ネロ!」

 

「い、行きたいのは山々だが……令呪の縛りが有っては……!」

 

 ネロは動けない。エナミは既に俺の両手を片手で抑え、武器を取り出すつもりだ。

 

 ブリュンヒルデの宝具である盾にすら見える巨槍は使い手の対象への愛に比例して重く巨大になる。

 正直普通の槍の一突きで死ぬがそんな巨大な物で体を真っ二つに貫かれながら死ぬのはゴメンだ。

 

「い、一か八かだ! 【コマンドチェンジ】!!」

 

 今着ている魔術礼装、魔術協会制服は今まで使わなかった。

 理由としてがスキルが全体回復と全体魔力補給、そして戦闘時の選択肢を変えるスキルと、ヤンデレ・シャトー内で使えないスキルばかりだったからだ。

 

 なので、【コマンドチェンジ】の効果は全く分からない。

 

「――あ……」

 

 エナミの動きが止まった。

 俺はエナミの片腕の拘束から何とか抜け出すと、ベッドから降りて距離を取る。

 

 部屋から出るにしてもネロが居ては難しい。

 

「……先輩、もっと愛を深めてから殺してあげますね?」

 

「何にも変わってない!」

 

 いや、恐らく“気が変わった”程度の思考操作能力なんだろうけどこれは酷い。

 

「ならこっちもインストール……カードが無い!」

 

「先輩のカード……2ヶ月ほど前から預からせて頂いてますよ?」

「っげ!?」

 

 打つ手なしか……

 今から静謐を令呪で呼んでもネロが居るので殺される可能性大だし、他にサーヴァントがいるならば今までの展開上、もうとっくに来ている筈だ。

 

「令呪を持って命ずる! ネロよ、我に従え!」

 

 令呪は赤い光を放ちながら消える。

 昨日2画使って1画だけ回復しているので、残りは1画。

 

「無駄ですよ……ネロに使用した強化令呪は2画。例えば先輩が6回重ねても上書きは出来ません」

 

「チート過ぎるだろ! 絶対服従は100の令呪があっても不可能じゃなかったのか!?」

 

「絶対服従ではありません。私達に許可なく近付くなと命じただけです」

 

「故に余はマスターに触れる事は叶わないのだ」

 

 それなら入り口へと走ればネロが勝手に退いてくれそうだが――

 

「ネロ、入り口をしっかりと守りなさい。先輩に触れてでも、ね?」

 

 させる訳が無い。

 

「――っ……! ま、マスター……!」

 

 突然、ネロが崩れ落ちた。

 

「……? どうしました?」

 

「っく! 毒、暗殺者か!?」

 

 苦い顔をしたネロは扉を開け部屋からと飛び出した。

 令呪の影響のせいか彼女の人生の大半を占めていた暗殺への注意が遅れたようだ。

 

「む、美しいむす――っん!?」

「妄想毒身――」

 

 曲がり角で転校生とぶつかった……なんてレベルではない。

 扉を開いた瞬間、ネロの唇を静謐のハサンが奪った。

 

「こ、これは……!? ね、眠気、が……」

 

 構えた剣を振るう事なく、ネロはその場で倒れた。

 

「……マスター……いらっしゃいますか? 服を届けに参りました……」

 

 カルデア礼装を持った静謐が部屋にやって来た。

 

「あ、貴女は以前の……!」

「もう1人のマスター……貴女だったんですね?」

 

 目が合った2人には何か因縁がある様だが、ブリュンヒルデと化したエナミに、果たしてアサシンである静謐に勝ち目があるのだろうか?

 

「先輩は、渡さない!」

 

 振るわれる槍。だが、大きさは変わらない。

 

「……」

 

 静謐はそれを避けるとスッとエナミに近付いた。

 

「……私の想い人は……マスターだけです」

 

 静謐はそう呟くと指をエナミの唇に当て、鼻をくすぐった。

 

「っ……! こ、この程度の、毒、っで……!」

 

「麻酔です……毒ではマスター達には効きませんので」

 

 エナミは眠気を振り払う様に槍を振るうが、静謐は難なく回避する。

 

「……効き目が薄かった様ですね」

 

 静謐はもう一度近付く。

 

「っ! こん、の!」

 

 エナミは槍の威力が変わらない事に気付いたようで、ルーン魔術で炎を槍に乗せて攻撃しだしたがその切っ先はおぼつかない。

 

「……、……」

 

 エナミの炎を右へ左へと躱しす静謐。

 動き回る炎が吹いた火の粉をかき分け躱し続けるその動きはまるで、蛍と踊るダンスの様だ。

 

「っ! っ! 当たれ!」

 

「終わりにします……」

 

 火の温度に晒され汗をかいた静謐は、腕を大きく振り始め、水滴を飛ばし始めた。

 

 しかし、少量の水分など炎の前では無力、届く前に蒸発する。

 

「効くわけ! ないでしょう!」

 

 静謐はそれでも踊るのをやめない。

 

 飛んだ水滴は床へ、壁へ、天井へ、炎へ……そう、部屋中に充満し始めたのだ。

 気付けば俺も額を手で抑え、今にも睡魔に落ちそうになっていた。

 

 室外ならともかく狭い部屋の中では睡魔に落ちるのも時間の限界だった。

 

「……っ、だ、め……! 眠っては…………」

 

 遂にエナミは堕ちた。

 俺ももうとっくに寝落ちして、例の金縛りに似た状態になっている訳だが。

 

「……燃えてる……急がないと」

 

 

 

「……マスター……マスター……」

 

 ペチペチと痛みを感じない程度に頬を叩かれ、目を覚ました。

 

 目の前にはやはり、今回の勝者とも呼ぶべき静謐のハサンが立っていた。

 

「……ん……おはよう」

 

 取り敢えず挨拶してみる。

 

「はい、おはようございます。マスター」

 

 辺りを見渡せば、マイルームの様な部屋にネロもエナミも床に寝かされており、ベッドの上にある俺の抱き枕を見て静謐の部屋だと理解した。

 

「マスター、礼装に何かおかしな所は?」

「ん? いや、別に……」

 

 寝ている時に服を脱がされた時は焦ったが、カルデア礼装に着替えさせられていた様だ。

 

「よかった……私、お役に立ちましたね?」

「ああ、ありがとうね。色々と……」

 

 静謐は俺からチラッと視線を外すとエナミを見た。

 

「……この人もマスターが好きなんですね。

 羨ましいです……現実世界でも、マスターと一緒なんて……」

 

「……静謐?」

 

「……所でマスター、そろそろお時間では?」

 

 静謐に時間、と言われたが何の事だと首を掲げる。

 

「何のこ、と……っ!」

 

 体に熱を感じた。

 完全に油断した。

 

「礼装を乾かす時に、お香も炊いておきました。

 無臭ですので、気付きませんでしたね」

 

「ま、待て……静謐……!」

「はい、待ちますよマスター」

 

 静謐は自分の服に手をかけ、脱いだ。

 

「私は……マスターが求めるまで」

 

 ゆっくりと俺の前に座り込んだ。

 

「何時までも何時までも……待ちますよ?」

 

 足をゆっくりと動かして、妖艶に、不可視と可視の狭間を演出した。

 

「優しく……求めて下さいね?」

 

 このままだと、間違いなくヤラれる。

 

 ……アレは、ネロの……剣……?

 

 

 

「…………」

 

 起きたが、何も覚えていない。

 恐らく夢の中で死んだんだろうなと思いつつ、ベッドから起きた。

 

 そして、ベルの鳴った玄関へと向かった。

 

「先輩……おはようございます」

 

「おはよう、何かあったか?」

 

「……覚えてませんか?」

「? いや?」

 

「そうですか……なら、良いんです! さあ、朝食ください!」

 

「全く……」

 

 俺は気付かなかったが、エナミはそっとポケットに、アサシンのクラスカードを閉まった。

 

 

 

《マスター、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい》

 

 忘れた俺の死に、仮面の少女の謝罪は止まず。

 




アヴェンジャーピックアップはどうだって?
かすりもしませんよ。

所で、聖杯使って清姫のレベル100するのってこの小説書いている作者に求められていますか? 星5に使うか清姫に使うか何時も悩みます。

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