ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
イベントではずっと新撰組で参加してます。タマモとカルマのお陰でアーチャーが楽で助かります。
「義妹と実妹、どっち派だ」
「……えっと、何で?」
アヴェンジャーに真面目に聞かれた俺はその勢いに押されつつも若干呆れながら聞き返した。
「さぁな、どっちか選べ」
「……どうせヤンデレ、ならば(倫理的に問題の少なさそうな)義妹だ!」
「なるほど……貴様はアレか、突然やって来た親の再婚相手の可愛い年下に好かれたい輩、という訳だな」
「遠回しにロリコンって呼ばれた……あと違うからな、俺はロリコンじゃないしそのシチュエーションは望んでない」
そもそもそんな状況、ギャルゲー位でしか起こり得ないだろうし……
「此処はヤンデレ・シャトーだ」
「そうでした……」
アヴェンジャーの言葉に項垂れながら大体何されるかは理解出来た。つまり、ヤンデレ義妹だらけのシャトーと言う事だ。
「ふん……果たしてそれほど単純なものかな?」
「……なんだこれ?」
「私の最高に素敵な部屋よ。どうかしら?」
振り返ると俺のカルデアにはいない筈の白いコートを来た桃色髪のサーヴァントが扉の前から俺を見つめていた。
ライダークラスにしてケルトの女王、型月の偉い人にスーパービッチとまで言わせる程に多くの男性と関係を築いたこのサーヴァントの名は、女王メイヴ。
部屋の中も本人の髪同様ピンクピンクピンク、ピンク一色である。
だが、それはあくまで部屋の壁や床、家具の事であって、そこら中に置かれた物は高級感こそ溢れ余る程の装飾が施されているが、お世辞にも趣味が良いと思えない。
「お姉ちゃんの部屋に入るのは初めてよね? ふふ、驚いたみたいね」
「……まあ、驚いたよ」
義妹じゃない事にな。
アヴェンジャーのあの前振りが完全に謎になってしまった。
「そして! 一度も入れて来なかった弟を部屋に入れた。この意味、分かるわよね?」
「いえ全く」
何だ、掃除でもして欲しいのか?
「むぅー、鈍わね? ……ふふふ」
微笑んだメイヴは俺へと駆け寄るとその勢いで俺をベッドへと押し倒――
「えぃ♪」
「おっと」
――そうとしたので、受け止めた。
サーヴァントと言えどもメイヴは唯の女王、勇者や兵士の多いケルト勢の中では珍しく、筋力は最低値のEだ。
「えへへ……
――お姉ちゃんと、良い事しない?」
抱きしめられて微笑んだ後に、耳元でそう囁かれた。
魅了の類の様だが、女神やらなんやらで最早慣れた。そもそも、俺は処女厨では無いがビッチは対象外である。
「お断りします」
抱き抱えてベッドに下ろしてから、俺はさっさと部屋から退散した。
「ちょ、ちょっと!」
「(設定上は)実の姉とそれは無理。あんまり笑えない冗談はやめてくれよ」
クー・フーリンの気持ちが分かる気がする。魅了に落ちなかったら本当に何やってんだコイツって感想しかない。
部屋から出た俺は家の構造が以前のヤンデレ家族と同様な事に気付いて自分の部屋へと閉じこもった。
「……前の時は中々広かったが、今回はメイヴとの2人暮らしなのか?」
だったらこの部屋にさえ侵入させなければ平穏じゃないか?
そう思った時、唐突にチャイムが鳴る。
「……出よう」
引きこもっている選択肢もあったが、ヤンデレ・シャトーの特性上、留まっていると絶対何かヤバイ事態になる。
「動いても大して変わんないけどな……」
身も蓋の無い事を愚痴りつつも俺は玄関までやって来た。
覗き穴から外の様子を見る。
「っげ……!」
最初に見えたのは頼光。その周りにはエレナ、マシュ、ハロウィン姿のエリザベートがいる。
『切大、早く開けて下さい』
頼光は俺の事などお見通しの様で、ドアの反対側にいる俺を呼ぶ。
「は、はい!」
慌ててドアを開くと覗き穴から見えていたサーヴァント達が家に入って来た。
「始めまして」
「その……お邪魔させて頂きます」
「まぁまぁ、悪くは無い家ね」
「切大、メイヴお姉ちゃんは居ますね? この子達は貴方達の新しい妹達です」
「ず、随分急ですね……」
立場的に俺は頼光の息子なんだろうけど、何の連絡も無くこの急展開には流石に苦笑いを禁じ得なかった。
「ふふふ、詳しい事は後で話しますからこの娘達の面倒をお願いします」
「いやいや、せめてこの娘達がどういう過程で此処来たか位教えて下さい」
「拾いました。それでは」
余計混乱するワードだけ残して頼光は家を出て行った。
「…………マジかぁ」
「あ、あの……本当に突然すいません!」
マシュが頭を下げる。
見た感じヤンデレって感じじゃなそうだし、俺はそれなりに対応する。
「いや、まあ詳しい話は母さんが帰って来てから聞くから、取り敢えず上がってくれ」
「お邪魔するわ!」
「お邪魔してあげるわ」
エレナ、エリザベートはマシュと違い一切怯えたりしている様子は無さそうだ。
「なによ、随分騒がしいわ――!? ちょっと、誰なのよこの娘達は!?」
玄関で騒がしくしていたら、メイヴが部屋から出て来た様だ。
「えーっと、母さんが連れてきてんだけど……」
「母様が!?」
「なんか……俺と姉さんの新しい妹だって」
「はぁ!?」
メイヴに事情を説明した。
俺の説明が終わる前から徐々に体が震えていたが遂に爆発した。
「な、何よそれ! 滅茶苦茶が過ぎるわよ!」
「そんなこと言われても……母さんの頼みだし、家から追い出すのも……」
(それもアリか。
……でもまだヤンデレじゃないみたいだし、そもそも追い出して頼光が帰ってきたらどんな目に合うか……)
「す、すいません……ご迷惑をお掛けします」
「暫くの間、どうかよろしく」
「追い出したりは、しないわよね?」
「はぁ……私は部屋で休むわ…………」
マシュ以外の態度が少し大きい気もするが、メイヴは溜め息混じりに部屋に入っていった。
「取り敢えず……荷物は無いみたいだし、トイレと俺と姉さんの部屋の場所は教えておくから、何かあったら呼んでくれ」
「……お兄ちゃん、って呼んでいいですか?」
3人を案内した後に、最初にマシュに頼まれたのが俺の呼び方である。
「……良いけど」
「あ、じゃあ私も!」
「うっ……! ふ、2人が呼んでるのに私だけ呼ばないなんて仲間外れみたいでイヤだし、私もお兄ちゃんって呼んであげるわ!」
エレナもエリザベートも俺をお兄ちゃんと呼び出し始める。
だが、伊達にヤンデレ・シャトーを体験し続けている訳ではない。
メイヴの部屋の扉が先程から少しだけ開いているのを俺は見逃さない。
「じゃあ、皆はちょっと1階で休んでて。ちょっと姉さんの様子見てくるから」
そう言って3人を1階に向かわせると、俺はメイヴの部屋をノックした。
「姉さん、入るよ?」
「っ! い、良いわよ!」
メイヴから返事をもらった俺は部屋へと入って直ぐに先の事を謝った。何も悪くない気がするけど。
「……姉さん、俺別に先の事で姉さんを嫌ったりして無いからね? 唯、いきなりだったし、常識的に不味いから断っただけなんだ、ごめん」
「っ、当然よ! 私は学校で全ての男子に告白された女よ! 私の誘いを断ったのは生意気な弟の可愛い反抗期って事で、許してあげるわ! さあ、姉さんに――」
「――じゃあほら、皆の面倒見て、優しいお姉さんらしい所、見せてきてよ。ね?」
「っう……な、なんで私が……」
「よろしくね?」
文句が有りそうなメイヴを遮る様に有無を言わせない口調で頼んで、俺は部屋から出て行った。
「……はぁ、どうも上手く行かないわねぇ? マスターが年上好きって聞いたから姉役を選んだのに……だけどちゃんとケアしに来たのは流石ね。そろそろ病んじゃおうかと思ったのに。
だけど、姉弟ごっこもそろそろ終わりね!」
「女王メイヴの力、たっぷり味合わせてやるんだから!」
「っ!?」
悪寒を感じて思わず振り返る。どう考えてもメイヴの部屋からだ。
(フォローが足りてなかったか? そもそも、ああいう自分の思い通りになると思ってる奴の心情ってのがイマイチ分からん)
考え事をしているとマシュが俺に尋ねて来た。
「……すいません、2階のお手洗いを貸して貰えますか? 1階のドアが開かなくて……」
「ん? 良いけど……」
マシュに2階のトイレの場所を教えて、俺は1階へと向かった。
リビングでエレナは本を読み、エリザベートはテレビを見ていた。
「あ、飲み物を貰えないかしら、お兄ちゃん?」
「私にもお願いね! ……お、お兄、ちゃん……」
あざとい、と言うか何処か年上オーラを出しつつ俺に頼みエレナと慣れてないせいか照れのあるエリザベート。
「分かった。2人共、紅茶で良い?」
「良くってよ」
「良いわ」
俺はキッチンでお湯を沸かし、ティーパックの紅茶を淹れる。
「ありがとう……そういえばマシュは何処に行ったのかしら?」
「お手洗いて言って2階へ行ったけど……」
確かに少し遅いかもしれない……と思っていたら、マシュはやって来た。
「え……エリザ……少し、来てくれませんか……?」
「え、ちょっとどうしたのよマシュ姉様? 顔赤いわよ?」
エリザの言う通り、マシュの顔は赤く、少し体も震えている。
「い、いえ……大丈夫です……ちょっと男の人には頼みにくい事なので、来てくれませんか?」
「なら、私も行くわ」
「お願いします……」
3人はリビングを出て、2階へ向かった様だ。
「……あーなんか嫌な予感……」
1人リビングに残って静かなまま時間が過ぎて行ったせいか若干不安になり始める。
「動くべきか……動かざるべきか……」
2階にはメイヴの部屋がある。
どう考えても彼女が関係あるのは間違い無いが、態々自分からあそこに行くのは気が引ける。
「……お兄さん」
「おわっ!?」
いきなり、背後からマシュの声が聞こえ慌てて振り返った。
「ど、どうしたマシュ?」
「ちょっと……来てくれませんか?」
どう考えても罠である。逃げるべきか。
「お姉さんが、呼んでるわ……」
「ねぇ……早くぅ……」
エレナとエリザにも囲まれた。逃げ場がない。
「さぁ……」
「「「行きましょう?」」」
「良くやったわマシュ、エレナ、エリザベート」
メイヴに名前を呼ばれた3人が嬉しそうに頬を赤らめる。
「ふふ、ご褒美はまだよ? ちょっと切大とお話させてね?」
メイヴの言葉に頷いた3人は部屋の奥へと消えていく。
「ふふ、どう? お姉ちゃん、3人が良い子になるほどやっさしーいお姉ちゃんになってあげたわ!」
「3人に何をした?」
「ほら、私の宝具って男性特攻だけどどんな相手にも一応効くでしょう? だからこの娘達も落としてみたの!
あ、もしかしてマスターの物を取っちゃったかしら?」
メイヴが俺をマスターと呼び、思わず舌打ちした。
「なるほど、メイヴはこれが設定だって知ってた訳か」
「ええ。だってこの設定、私が考えたモノよ? 本当は義妹に囲まれるマスターに嫉妬して鞭で調教しようとしたんだけどね? マスターが嫉妬させてくれないから……マスターからサーヴァントを奪っちゃう事にしました! ヤンデレじゃない上に初対面ってうっすい関係だから、案外簡単に落ちちゃってびっくり!」
メイヴは本当に楽しそうに笑っている。
「あ、なんで私がこんな事知ってるか、知りたい?」
「いや、別に――」
「――何故なら私がアヴェンジャー経験者だからよ!」※魔法少女イベント参照
今明かされる別に知りたくなかった真実。いや、これネタバレじゃないのか?
「だから、私は貴方の持ってないアヴェンジャー適正のあるライダー、つまり体験クエストにおいては無敵で素敵で至高な存在って事なの!」
メイヴは目を輝かせてそう言った。どうやら本気らしい。
「でね! 此処では私の知らない恋が出来るって教えられたわ!
ほんっとうにそうだった! 今の私はマスターが大好き! クーちゃんの時と違う、憎んだりする理由なんてない真っ直ぐな恋なの!」
自分自身を抱きしめて恋の感覚に浸る乙女(大学生)。
「でもでも……やっぱりマスターが見てくれないとつまらないから……周りにいた女の子は没収、私の宝具と体で骨抜きにしちゃったわ!
ねぇ、ますたぁ……こんなはしたなくてイケない娘は、キ・ラ・イ?」
高めのテンションで自分語りをしていたと思ったら急に耳元で色っぽく囁く。
「あはっ! マスター、やっぱり興奮してるのね!」
テントの立ったズボンをメイヴは嬉しそうに見て、笑う。
「まあ私の体を見てこうならない方がどうかしてるのよね。ふふふ」
気付けば俺の両手をマシュとエレナ、エリザが抑えている。
「放せ!」
「駄目駄目……マスターのサーヴァントだけどパスは繋がってないから令呪は使えないわぁ……大人しく、私の体で……」
「感じ――」
「ーーて、って!? 何よこれ!?」
「終了だ」
「終了って! 嘘、まだ1時間あるわよ!」
「体験ではマスターを追い詰めた時点で終了だと伝えただろ」
「ちょ、もう一回! もう一回やらせてちょうだい!
今度は手だけで骨抜きにするから!」
「ケルトに帰れ! お転婆娘!」
アヴェンジャーはその後、かなりの体力を使ってメイヴをガチャの海に帰したらしい。
1周年記念企画の当選者発表は今日中に行いますのでもう暫くお待ち下さい。
次回からそちらを投稿していくつもりです。
ガチャ? CCCコラボの噂があるので今の所は引かずに温存しております。男引いても小説で書かないからしょうがないし……ね?