ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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遅くなりました。待っていた方には本当に申し訳ありません。



ヤンデレ・シャトー……!?

 

 

「てへっ!」

 

 俺は速攻でチョップをかましてやった。

 

「痛っい! 何するんですか!」

「謝るどころか、巫山戯た顔して誤魔化そうとする後輩を殴っただけだが」

 

 昨日の悪夢の事はやはりあまり覚えていないが、エナミは済まなそうな顔を見せたと思ったらいきなりてへっとムカつく顔をした。

 何かやらかしたのは間違いなさそうだ。

 

「むー……別にぃー、悪い事は……しましたけど、不可抗力ですよ!」

「どうだか……」

 

「そんなに疑うなら、今日は夢の中で手伝ってあげませんからね?」

 

 拗ねやがった。拗ねたいのは俺の方だってのに……

 

「今日は本当に、滅茶苦茶嫌な予感がするんだよな……」

 

「べーっだ! もう、先輩なんて知りません! 今日の放課後デートまで、口も聞いてあげませんからね!」

「じゃあ、俺も今日は弁当抜きで良いな」

 

「……ひっぐ、ぐっす! 先輩のイジワル!」

「お前やっぱり俺の弁当がメインだろ?」

 

 

 

「……非常に不本意だ……!」

 

 悪夢の中で一番最初に聞いたのは、アヴェンジャーの苦虫を噛み潰した様な顔だった。

 怒りが滲み出ていた。

 

「貴様ぁ! 貴様が、BBとかいう女をさっさと召喚しないから、ヤンデレ・シャトーはやり放題だったぞ!」

「えぇ……俺のせい? 作者じゃなくて?」

 

「無事にカルデアに行けた様で、何よりです♡」

 

 そんなエドモンを嘲笑うかの様に、ムーンキャンサー、BBが現れた。

 

「これで首謀者から参加者にクラスチェンジですね? BBちゃん、アヴェンジャーとかと相性良いのでこれからはぜひ使って見て下さい」

 

 自分の宣伝を行いながらもBBは俺に近付いた。

 

「マスターさん、なるほど月の記憶もあるみたいですし、先輩と呼んでも良い感じですね? なら先輩とお呼びしましょう」

 

 1人勝手に納得して、アヴェンジャーへポカンとした顔を向けた。

 

「どうしました? 早く始めて下さい」

「っく……やはり人間では無い者は好かん……! 

 今回のサーヴァントの数はそいつを含めて6人だ!」

 

「そう言う訳で、先輩のハートは私がガッチリ摑んでしまうので、ご注意下さいね?」

 

 

 

「………」

 

 久しぶりにエドモンのダメージの無い気遣い溢れる転移に感動しつつも、辺りを見渡した。

 

「お、マスター発見! 幸先イイじゃん!」

 

 最初に聞こえたのは、最近の若者の如く軽い声と口調。

 

「鈴鹿御――」

「――マスター! 見つけましたぁ!」

 

 逆の方向からも若干テンションの高い声が聞こえてきた。

 

「っげ、まさかタマ――」

「――見つけたぞ、奏者よ!」

 

 鈴鹿御前の奥から響く別の声。

 

「ネロ――」

「居たわ!」

「仔犬、そこにいるわね!」

 

「エリザべートが2人!?」

 

 ハイペースで集まる5騎のサーヴァント。逃げ道がありません。

 

「私が――っぃた!?」

「私が――っぁた!?」

「余が――っなぬ!?」

「「私達が――っあだ!?」」

 

 5人同時に俺の3m前で倒れた。

 

「……はい?」

 

 何の覚えもない俺が一番困惑した。

 全員が大体同じ場所で吹き飛ばされているので恐らく見えない壁が存在するのだろうと予想は付いた。

 

「残念でしたね? 間抜けなサーヴァントさん方?」

 

 ラスボスの如く空中からフワッと、BBが降り立った。

 

「BB……!」

「行ったじゃないですか。今回はBBチャンネルスペシャル企画、先輩強姦塔だって」

 

「まだその巫山戯たタイトル続けてたのか……」

「ええ、作者さんがサブタイトルに入れ無かろうが関係ありません。と言う訳で先輩を皆さんの前で強姦して差し上げましょう♡」

 

「っはぁ!? 今時NTRとか、流行んないんだけどぉ!?」

「この小悪魔……どうやら一発かましてやる必要がある様ですね……!」

 

「ふふ、破壊不可の防音バリアをどう突破する気は分かりませんが、早速先輩を犯す為にBBちゃんの能力、発揮しちゃいますね?」

 

 そう言うとBBは手に持った棒を振るうと、俺にハートマークを飛ばしてきた。

 

「これが私のBBパニックです!」

 

 俺の右手の甲と左手の甲に桜のマークが刻まれた。

 

「発動条件は私の望んた時でーす!」

『ズルッ!?』

 

「という訳で……えい!」

 

 再び振るわれる指揮棒。ハートマークが俺を襲う。

 

「危なっ!?」

 

 咄嗟に回避した。

 

「……どうやら言う程単純な発動条件じゃなさそうだな!」

「ええ、このままだと大変そうなのでバリアの面積を減らしちゃいますね?」

 

「っげ!?」

 

 見えない何かが迫り始める。BBの仕掛けたバリアが徐々に縮まっている。

 

「っく! こうなりゃ壊すしかないっしょ!」

「それしかなかろうな!」

 

「ご主人様をお救いするのはタマモです!」

 

「「行くわよ、私!」」

「「ええ、勿論!」」

 

 どうやらバリアの外でサーヴァント達がなんとかしようとしているらしい。俺は再び飛んできたハートを回避する。

 

「おっとっと……こっちにも壁がー」

 

 ムニュ、なんて擬音が聞こえてきた。BBと密着したからだ。

 

「っちょ!?」

「これなら外しませんね?」

 

 外からの悪寒が増した気がするが、これを避けなけれ色々不味い。

 

「【緊急回避】!」

「へ?」

 

「恋愛発破! 天鬼雨!!」

「ラウス・セント・クラウディウス!!」

 

「日除傘寵愛一神!!」

 

「「バートリ・デュエット・エルジェーベト!!」」

 

 そして同時に放たれた宝具はBBのバリアを貫通し、回避状態である俺は回避出来たが、BBはその全てに巻き込まれた。

 

「ッキャァァァァ!?」

 

 

 

「なんちゃって♡」

 

 回避スキルで宝具攻撃を生き残り、全員から逃げようとしていた俺。その後ろに回り込んで来たのは先の宝具攻撃に巻き込まれた筈のBB。

 

「残念でしたね、先輩♡ 結構抵抗しちゃいましたけど、アレ全部BBちゃんのおふざけでして――」

 

 ――ほーら、先輩の大好きな私ですよぉ?

 

 あっさり、鍵を開けられ心の中がかき混ざられた気分だ。

 

 BBの顔が、声が、心の中で蜜の様に甘く、ベッタリとくっつく。犯したいと匂いに誘われるまま本性が剥き出しになる。

 

 それと同時に、彼女にそんな事は出来ないと、自信が消えて己の小ささを理解する。それと相対的に、彼女の存在が大きくなっていく。

 

「あ、サーヴァントさん達は邪魔しないで下さいね?」

 

「また壁!?」

 

「今度こそ本当の破壊不可能な壁ですので、ご了承下さいね?」

 

 BBちゃんはニッコリと微笑むと俺を連れて何処かに転移した。

 

「邪魔者がいなくなった上に先輩は私に夢中……やっぱり私みたいな万能AIに勝てる人なんていませんね?」

 

 BBちゃんは楽しそうに笑っている。

 

「先輩ったら、お預けされた犬みたいで可哀想……

 発情してるのに飛び掛かれないですから、当然ですけどね」

 

 BBちゃんは俺を見下ろすと嬉しそうに口を開いた。

 

「ほーら、可愛い後輩の絶対領域の中、先輩にだけお見せしますね?」

 

 そう言ってスカートをゆっくりとゆっくりと捲り始めるBBちゃん。

 鼻息が荒くなり、腕が伸びる。

 

「あ、先輩は手を出しちゃ駄目ですよ? ほら、BBパニックの理性(罪悪感)の方を高めて上げますから、我慢、我慢♪」

 

 本能を抑え、厚かましくもBBちゃんに触れようとする本能を止める。

 

「ふふふ、後輩のパンツでそんなに興奮しちゃって……先輩ったら本当に、ヘ・ン・タ・イ♪」

 

 ……なんだろう。罪悪感が増してきたせいか、徐々に冷静になってきた。

 そもそもBBに手を出そうとするのが可笑しい気が……

 

「っむ! 先輩の瞳に理性の灯火が!

 ならば、獣スイッチ、オン!」

 

 若干呆れの表情を浮かべていたがまたBBちゃんに対しての性欲が膨れ上がって来た。

 

「んー……焦らせるのも此処らへんで止めましょう。もう先輩を美味しく頂いてしまいましょうか」

 

 スカートを手から放したBBちゃんはこちらに近付いた。

 

「ふふふ、獣の様に盛ってる先輩……どうしました? ほら、襲いませ――きゃっ!」

 

 近づいて来るBBちゃんに我慢できなかった俺は彼女を押し倒した。

 

「思っていたよりも、乱暴ですね?

 でも先輩の愛を一心に受けられて私、なんだか嬉しくなって来ちゃいました……」

 

 見下ろしている顔は頬を染め、これから先の事に期待しているBB。

 

「先輩。

 先輩の中の狼さん、全部吐き出しても構いません。私に、今まで意地悪してきた分、BBちゃんをたっぷりお仕置きして下さい……」

 

 男殺しなセリフと共に、嬉しそうに微笑むBB。俺は手を伸ばし、掴んだ。

 

「〜〜」

 

 BBの握っていた指揮棒、支配の錫杖を奪い取った。

 

「っ〜〜……え?」

 

「お、BBパニックが収まった」

 

 指揮棒を握った瞬間、洗剤で油が落ちて綺麗になった皿の如くすーっと、抱いていた罪悪感も劣情も消えていった。

 

「取り敢えずこれは没収だな」

「ちょ、せ、先輩!? 返して下さい!」

 

「やだね、こんな危ない物は一生没収しておこう」

「今の流れで私を抱かないとか先輩の主人公力どうなっているんですか!? 恋愛漫画だったら次のシーンは事後の2人の会話な筈なのに!」

 

「残念ながら悪い方にカンストしてるんだよ」

「ですけど、サーヴァントな私に人間の先輩が勝てる通りなんて――あぅ!?」

 

 適当に念じるとBBの顔の前に見えない壁が出現した。

 

「……便利だな、これ」

「なんで使いこなしてるんですかぁ!?」

 

 やっぱり大事な物は奪われたりしない様にちゃんとロックを掛けるべきなんだろうなと思った。起きたら新しい星4サーヴァントにロック掛けておこう。

 

「そんな初心者用なアドバイスを言ってないで返して下さい!」

 

「奏者! 無事か! 今勝手に壁が崩れて……!?」

 

 ネロ、だけではなく先いたサーヴァントが全員集合していた。全員が驚いている理由は俺がBBを下しているからだろう。

 

「た、助けて下さい! 先輩に押し倒されました!」

 

「じー……誰か今のBBさんのお言葉、信じますか?」

 

 タマモの言葉に、誰も何も喋らない。

 

「BBちゃーん、流石に今の言い訳はキツいっしょ? 仮にマスターが押し倒してもBBちゃん全然困んないし」

 

「うぇーん! 乙女の大事な物を奪われた上にこの仕打ち、あんまりです!」

 

 泣き始めた。どうして後輩キャラってこんなに話すのが面倒なのだろうか。

 

「BBさんの権能である杖を奪ったんですねマスター……

 ミコーン! だったらそれで是非、この殺風景な監獄塔を私達2人の愛の巣に変えてしまいましょう!」

「むっ! 調子に乗るでは無いぞ、ラン狐! 奏者よ、早速黄金の部屋を!」

 

「いやいや、黄金とか赤セイバーとかオワコンだし。

 マスター、ここはJKセイバーと自室デートっしょ!」

 

「当然!」

「ライブ会場一択よね!?」

 

 全員が好き放題言い始めやがった。そんなに万能な訳が無いと思っていると、BBが立ち上がっていた。

 

「……まさか、杖を奪った程度で私に勝てるとでも……?

 さあ、来なさいリップ、メルト! 先輩を捕まえるんです!」

 

 BBは黒い箱を取り出すと、中を解凍しその場に2体のアルターエゴを出現させた。

 

 メルトリリスは地面に尻餅を付いたままトロけた表情で力無く倒れており、パッションリップは普通の少女の腕のまま、手を頬に添えている。

 

「ぁ、っはぁ……っ!?」

「マスターさん……私の事、もっと愛して……あれ?」

 

「ちょ、ちょっと2人共!? なんてザマですか!」

 

「ひょ、ひょうが……ないでひょう……貴方が、わたひ達をボックスひ保存した時のままなんりゃから……!!」

「マスターさーん……なんで、他の女と一緒にいるの?」

 

 メルトリリスに関してはどう考えても放送事故だ。

 リップに至っては――

 

「マスターから離れ――」

「良妻☆パーンチ!」

「あぅ!」

 

 武器だった爪が無いので脅威にならない。

 

「肝心な所で使えないですね……」

「チートアイテムが無くなって泣きついてくる様な貴女に言われたくないわ!」

 

 元々無かったチームワークも崩壊で、サクラファイブ(3人)は終わりだ。

 

「それではマスター、良妻タマモちゃんとイチャイチャしに参りましょう!」

「何を言う! 奏者の嫁は余、否、奏者こそ我が嫁である!」

 

「仔犬は私のマネージャーよ!」

「仔犬は私のパーティーメンバーよ!」

 

「何言っちゃてんの? マスターの今カノは私だしー!」

 

 まだ騒がしい奴らがいたか。

 俺は部屋を出て外側から壁を作った。

 

「……ふう、これでよし。封鎖成功だ」

 

 もしかしたら過去最高レベルで安心安全な状態かもしれない。

 

「ふぅ……危ないメンバーだったが、これが奪えたのは大きいな」

 

 支配の錫杖。便利アイテムではあるが俺が使うには荷が重すぎるアイテムだ。神様みたいに色々出来るが、これを使いこなせるのは圧倒的な演算能力を持つBBだけだ。

 壁を生み出すコマンドはどうやら簡略されているので俺でも振るだけで使えるが、それ以外の事は実行しようとするだけで頭が痛くなり、何も出来ない。

 

「まあ、壁作るだけでも十分便利だな」

 

 誰もいないであろう監獄塔を適当に歩いてから、広場で一息吐いた。

 

「ふぅ……こうなると暇だな……まあ、普段が慌ただしいだけだったんだけど」

 

「じゃあ騒がしくして上げましょうか、セ・ン・パ・イ?」

 

 思ったよりも早く賑やかそうなのがやって来た。

 

「っくそ……面倒なのが来たな……」

 

 BBが来れる筈は無い、と言うかBBの支配の錫杖を俺が持っている以上、それを持って現れたコイツはBBであってBBでは無い。

 

「どうやら理解出来た様ですね。

 私こそ人類の完全に管理する存在、BB/GO、此処に復活です!」

 

 こんな時になんと迷惑な存在だろうか。狙いは俺、それ以外ならば現在俺の手元にある指揮棒だろうか。

 どちらにしろ、俺には間違いなく手に余る存在だ。

 

「先ずはセンパイを監禁します。

 その後、言う事を聞く様に調教します。両腕を切って回復なんて生易しい物じゃありません。

 硫酸の中でずっとずーっと、自動回復させ続けて、従順になって漸く奴隷の様に扱い、食事、生活、性癖、生きる意味すら私が定義します」

 

 目の赤いBB/GOは徐々にこちらに迫っていく。俺は来た道を戻る様にその場から立ち去る。

 

「逃がす訳、無いじゃないですか」

 

 だが、俺の逃げ道を塞ぐ様にイータータイプのエネミーが棒立ちで現れる。

 

「っち! 邪魔だ!」

 

 躊躇無くガンドを発動させ、イーターの横を通り抜ける。

 

「サーヴァントを閉じ込めている部屋を開ければ、助かる筈だ……!」

 

 到着した部屋の前で、進行禁止の壁に向かって指揮棒を振った。

 

 

 

 

 

「……先輩、いい格好ですね?」

 

 十字架に貼り付けにされた俺はお茶を飲んでいるBBに眺められていた。

 

「あんなフェイクに引っ掛かって私の大切な物すら簡単に渡す先輩、本当に愚かで愉快ですね?」

 

 結論から言えば、BB/GOはBBの仕掛けた罠だった。

 

 閉じ込めた部屋の中でBBはメルトとリップの2人を使って5体のサーヴァントを処理した。

 最も厄介な鈴鹿御前をリップの胸に押し込み、メルトリリスの力でエリザベート(ブレイブ)のレベルを奪って、力ずくで全てリップの胸へと不法投棄し、後は1人なった俺が助けを求めるまで待つだけだった。

 

「罰としてエッチ事は禁止です。

 達したかったら縛られたまま1人虚しくすれば…………って、調教途中にメルト! 何をしているんですか!」

 

「ん……っ……ぷはぁ……レベルドレインで脱出不可能にしているだけよ……」

 

「リップ!!」

 

「はいお母様。えへへ、肩揉んであげますね」

 

 唇から力が抜けていき、肩に圧力と背中に弾力が与えられる。喋るだけの気力はもう無い。

 

「2人して好き勝手にしないの!

 じゃあ私はやっぱり先輩の一番大事な部分を――」

 

『えぇい! 終了だ終了! これ以上見ていられるか!』

 

 

 

 

 翌日、エドモンから3週間程ヤンデレ・シャトーは一時停止になると書かれた紙が机の上に置かれていた。

 休日だった為、怠い体を横に倒してその日は夕方まで寝たっきりだった。

 




BBは先輩とセンパイで呼び分けていますが本編の主人公がCCCプレイヤーなので先輩と呼ばせています。

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