ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今回は切大さんの最後の休暇中に起きた出来事です。



不良入ってない時の玲と切大の違い、書けてるかなぁ?


学園→ヤンデレ監獄塔

「よっし、侵入成功です♪ 此処で早速、センパイの弱い所を攻めに攻めて――」

 

「やっちゃって下さい、エミヤさん」

「了解」

 

「ちょっと、侵入して直ぐに攻げーー!!」

 

「新宿のアーチャーさん」

 

「バレルの準備は万全だ」

「ファイアです」

 

 エナミハクツの指示の元、彼女の夢に侵入したBBはエミヤ(オルタ)の攻撃で怯んだ所を拘束され、大砲に入れられると共に新宿のアーチャー(匿名希望)の能力で彼女の夢の外へと打ち出された。

 

 

 

「っく……アレが百合を1ミリも受け付けない鉄壁乙女ですか……!」

 

(お母様、人間にちょっかい掛けようとあっちこっち行ってるけど、全然上手く行ってないですね)

(BB=胡散臭いって認識しているマスターが多いせいね。間違いじゃない事が致命的ね)

 

「ちーがーいーまーす! トンデモマスターが多過ぎるだけですぅー! 

 モードレッド大好き人間とか、睡眠オンリーとか、クセの強いマスターが多過ぎます!

 ですが、今度は違います!

 初心者、ビギナーなら、きっと私を唯の小悪魔系後輩キャラだと思う筈! そしたら…………ふふふ、地獄を味合わせてあげます!」

 

(……BBって、何がしたいんだろうね?)

(配布キャラで多くのマスターの夢の中を入り込めるようになったから、取り敢えず毎日リアクションを返してくれる様な人間を探してるんじゃない?)

 

「そこ! 聞こえてますよ! 私は唯、新しい玩具が欲しいだけです!」

 

((……構って欲しいの間違いじゃ……))

 

「だから、聞こえてますよぉ!?」

 

 

 

 ヤンデレ・シャトー内にて新聞部部長が定着しつつある俺、玲は呆れた表情で部員2人を見つめていた。

 

「……もぐもぐもぐ」

「ムシャムシャ、ムシャムシャ」

 

 新たに2人の部員が加わった新聞部内のエンゲル率が上がった。

 この学園、新聞部は俺のお陰もあって部費は結構貰える上にあまり使わないので余っている分は食費に回しても良いが、どう考えても多い。

 

「魔人セイバーさん、部長が眉を細めて困っています。恐らく貴方の食べ過ぎが原因かと」

「失礼な、私の食量は貴方とほぼ同程度。ならば、マスターが不快感を覚えるとしたら私達2人共だと思われます」

 

 アンパンの入っていたプラスチックの袋とたこ焼きのパックの山で埋め尽くされた2つの机の先で、ヒロインXオルタと魔人セイバーの声が聞こえる。

 

 机の上で作業している俺は時折2人を見ていたが、いつの間にか見えなくなっていた。

 

「おい、流石に食べ過ぎだろ……」

「もぐもぐ……だそうですよ、魔人セイバーさん」

「ならばやめるべきですね、Xオルタ一年生」

 

 ダメだ。お互いに止まるつもりは無いらしい。

 

「なら拳骨制裁しか無いか…………」

 

「…………」

「…………」

 

 俺が腕を鳴らすと2人の音がピタリと止んだ。

 

「……あの2人、あの脅しには素直っすね」

「サーヴァントの頭に野球ボール程の大きさのたんこぶを作った拳だ。

 俺も、出来ればアレは受けたくはない」

 

「分かったらさっさとそのゴミの山を片付けろ」

「「はーい」」

 

 2人の返事を聞いて俺は小さく溜め息を吐いた。

 

「……所で、式セイバーは?」

「ヒロインXと一緒に体育館に向かったわよ。模擬戦だって言ってたけど」

 

 新聞部員のフリーダムさに流石に頭を抱える。

 別に束縛するつもりは無いが、部活のメインである新聞作成を部長とジナコに任せっきりって……

 

「んー……ま、平和でいいか」

 

 

 

「……って感じだっただろ。どうなってんだコレ?」

 

 昨日のゆるい青春部活モノから一転、マジモンの悪夢になったかもしれない。

 

「学園が悪魔の城みたいになってんだけど……」

 

 目の前に鎮座する洋風の城は禍々しい上に空すら怪しく曇っている。

 

「何よこの趣味の良さそうな城は?」

「ジャンヌ・オルタ……」

 

「何よ? 言っておくけど、私じゃないわよ?」

「私の……あんこ補給所が……」

 

「あら、随分様変わりしましたね?」

「……学園が……」

 

「っむ……嫌な感じですね」

 

 落ち込むXオルタ、不敵に笑う式セイバー、静かに怒る魔人セイバー、何かを感じ取ったヒロインX。

 

 いつの間にかカルナとジナコ以外の新聞部のメンバーが集結した。

 

「……で、どうする? 入るか?」

 

「ええ。今日が休校とは聞いていません。取り敢えず登校しましょう」

 

 俺の言葉に頷いて答えた式セイバーは先に城に向かって歩き始めた。

 

「仕方ありません……あんこを探しに行きましょう」

 

 Xオルタも立ち上がる。そして、結局全員で城に乗り込む事になった。

 

 

 

「……あっさり開いたな」

 

 俺が手で押すと扉は開いた。全員が隙無く辺りを警戒する。

 

「……どうやら、歓迎は無いらしいな」

「歓迎されていないかもしれませんね」

 

 出来れば学校側のお巫山戯で、此処で盛大に出迎えてくれる事を願っていたが、外れだった様だ。

 

「となるとマジで何なんだコレ……ん?」

 

 見れば少し離れた先には誰かが倒れている。

 

「おい、大丈夫か?」

「……ん……」

 

 良かった。どうやら無事の様だ。

 紫色の髪の女子か。見た事は無いが服装からして学園の生徒の様だ。

 

「……センパイ……?」

「一体、何があった?」

 

「……分かりません。普通に登校した筈なのに、気付けば気を失っていて……」

「……もしかして、学園が様変わりしているの、知らないのか?」

 

 だとすると、この生徒が登校した時間で学園が城と化したのかもしれない。

 

「……いえ、知りません。普通の学校だった筈なんですけど……」

「そっか……なら、さっさと此処から出ろ。後は俺達が調べてみるから」

 

 そう言って手を差し出して立ち上がらせた。結構胸あるな……

 

 女子生徒が扉へ向かって歩いて行くのを見て、俺達は城を調べる事にした。

 

「セ、センパイ! 開きません!」

 

 が、どうやら閉じ込められてしまったようだ。

 

「しょうがない……俺達に着いてくか?」

「は、はい! お願いします!」

 

「……あの娘、怪しくないでしょうか?」

「……胡散臭い」

 

 何やら部員達は怪しんでいる様だが、ここで悩んでも仕方が無い。

 

「わ、私は1年B組のB.ブロッサムです。よろしくお願いします、センパイ!」

 

「おう。よろしくな」

 

 全員の自己紹介が終わると、早速俺達は城の探索を始めた。

 

「校舎と同じ大きさなだけ合って広いみたいだし二手に分かれるべきだな」

「それじゃあ、私があんたと同じグループね」

「いえ、センパイの護衛役は私です……!」

「いえ、此処は私が行くべきです!」

 

 ジャンヌ、Xオルタ、ヒロインXが言い合いを始める。だが、残念ながらこちらで決めさせて貰う。

 

「魔人セイバーと式セイバーは俺から離れ過ぎるのは駄目だ。契約したからな、250mの距離を維持しなければいけない」

「ふふ、そういう事ね」

「……勝利」

 

 そこ、妙は挑発をするな。

 

「せ、センパイ……私は?」

「サーヴァント候補生じゃなくてマスター候補生だろ? 出来れば他の3人と行動してもらいたいんだが……」

「い、いえ……私はまだ能力に目覚めてなくて……」

 

 むぅ……そうなると少々面倒だな……3人に魔力を供給しながら守ってもらう作戦だったのだが……

 

「仕方ない……俺達の方と一緒に安全だろ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 3人が正直心配だが……まあ、クセは強いが同じ位戦闘能力もあるし問題無いだろう。

 

「何かあったらすぐに叫べ。此処は響くから多分聞こえるだろ」

 

「了解」

「ふんっ! 助けを呼ぶのはそっちでしょうけど」

「折角の闇討……いえ、お任せ下さい!」

 

 別れた俺達は早速探索を始めた。

 

「式、楽しそうだな」

「あら、そう見えるかしら? だって、遊園地みたいで素敵でしょう?」

 

「マスターを守るのは私。貴女はのんきに構えていれば良い」

 

 辺りを警戒して進む魔人セイバーは頼りになるが、それもなんか嬉しそうなのは気のせいだろうか?

 

「く、暗いですね、センパイ……」

 

 ブロッサムは暗闇が怖い様で、俺の腕に抱き付いている。

 正直、胸が当たる感触が役得である。

 

「……」

「……」

 

 そんな邪な事を考えていると、式と魔人の視線が冷たい物に変わった気がした。

 

「ほ、ほら! 探索だ!」

 

 誤魔化しついでに側にあった扉を開けた。

 

「……ん?」

 

 だが、そこはアパートの一室の様な、教室よりも狭い4畳半の部屋だった。

 

「教室じゃないのか?」

「まるで私達の部屋ですね……」

「借宿……」

 

 どうなってる? 校舎と同じ形の建物だから、教室があると思ったのだが……

 

「じゃあ、あっちの部屋は?」

 

 少し先にある部屋に向かった。

 開いた先は女子の部屋。

 

「……これは……」

「アンパンの枕……もしかして、Xオルタさんのお部屋では?」

 

「何故、私達の部屋が此処に?」

 

「分からない……式セイバー、先の部屋のタンスとかはどうだった?」

 

「はい、私の着物が入っておりました……あ、下着類の色もお聞きしますか?」

「……私は褌」

 

「いや、聞いてない!」

 

 急に酔っ払いの如くカミングアウトをする2人に狼狽える。

 

「センパイ、一体何が?」

「分からないな……どうなってるんだ?」

 

 

 

「BBは上手くあちらに馴染めたかしら?」

「はい、そのみたいだね」

 

「まぁ、早く事を起こさないといずれボロを出すわ。さっさと終わらせましょう」

 

「……メルトは、どのマスターさんがお気に入りなの?」

「何よ急に……別に、マスターなんてどれも一緒よ」

 

「ふふ……どんなマスターさんも大好きなんだね?」

「っち、違うわよ!

 そ、そういうリップはどうなのよ!?」

 

「私はねぇ……どのマスターさんも大好きだよ?」

「……先週のアレはどうなのよ?」

 

「あの人もだよ。一途で、一直線で……素敵な人だよね?」

「はぁ……こう言う事では貴女に敵いそうに無いわ……」

 

 

 

「……此処は一体……?」

「マスターさんの部屋だけ無かったけれど、私達とブロッサムさんの部屋は全て、細かい所までしっかり再現されていましたね」

 

「残った道はこの広場の先にある階段だけか……」

 

 探索が殆ど終わった俺達は、辿り着いた広場で結果を纏めつつどうするか考えていた。

 

「一先ず、戻るか」

「そうですね……一度他の方と合流して、情報の交換をするのが大切ですね」

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

 ブロッサムの意見に賛成したが、式セイバーは何故か俺の腕を掴むと体を抱き上げようとしたので、瞬時に掴まれた腕を振り解いた。

 

「何だ? どうかしたか式セイバー?」

 

 いきなりの行動に若干威圧しつつ式セイバーを見る。

 

「あら、ごめんなさい。ちょっと不意に部長さんを攫いたくなってしまいまして」

 

「どういう理屈、っだ!?」

 

 後ろから飛んできた刀による峰打ちを両手で抑えた。

 

「……!」

「魔人セイバー……!? 何のつもりだ!」

 

 殺意は無い。しかし、気絶させるつもりで振り下ろして来た事だけは嫌でもわかる。

 

「……欲しいです、部長」

「私もよ……」

 

 式セイバーも俺の背後で鞘から刀を抜いている。

 

「っち!」

 

 俺は魔人セイバーを蹴り飛ばすと振り返って式セイバーの刀を握っている手を抑え、足払いをした。

 

「っきゃ!?」

「ブロッサム、一旦引くぞ!」

 

 俺はブロッサムの手を引いて元来た道を走り出した。

 

(ココのセンパイ、戦闘力高過ぎませんか!? なんで普通の人間がサーヴァントと渡り合っているんですか!?)

 

「……!? 階段!?」

 

 先まで通っていた1本道の廊下を走ってきた筈だが、何故か見覚えの無い階段があった。

 

「ええい! 知るか!」

 

 1秒も迷う事なく、俺は階段を降りた。なお、ブロッサムは転びそうなので抱き抱えた。

 

「……此処は、先の広場か?」

 

 降り切った所は先と同じ広場。まさか、繰り返しているのだろうか?

 

「いや、流石に無いよな?」

 

 確証なく否定したが、確認しなければ何とも言えない。俺は広場から出て最初のドアを開いた。

 

 女の子らしい部屋、ジャンヌ・オルタの物だと思われる部屋。

 

「さっきと同じ、広場に一番近い部屋がジャンヌの部屋だ」

 

 だとしたら不味い。このまま真っ直ぐ言っても可笑しくなった式と魔人のダブルセイバーに捕まるのは時間の問題だ。

 

「……先輩」

 

 ボソリと聞き覚えのある名前を呼ばれ、そちらに顔を向ける。

 

 少しだけ開いた扉の先にはXオルタが手招きしていた。

 

「こっちです」

「サンキュー!」

 

 俺は迷う事なくXオルタの部屋に入っていった。

 

 

 

「――で、急に襲われた訳だ」

「なるほど……こちらは、3人とも無事です。ですけど

、急にこんな所まで転移されてしまって、どうしようかと話し合っていた所でした」

 

「そっか……」

 

 Xオルタ以外の2人も居てホッとした俺達は情報を交換したが、Xオルタ達も大した情報は見つけられなかったそうだ。

 

「セイバーの相手なら私がしましょう! 丁度良いです、私が両方共成敗して見せましょう!」

 

 ヒロインXが興奮しているが、流石にあの2人は不味い。契約しているので他のサーヴァント候補生よりも強いし。

 

「……」

「……ジャンヌ、どうかしたか?」

 

「な、何でも無いわ……それよりも、ちょっとこっちに来なさい」

 

 壁に背中を着けているジャンヌが手招きして俺を呼ぶので、そちらに向かう。

 

 そして、唐突にジャンヌの体はふらっと、倒れそうになった。

 

「おわ!? だ、大丈夫か!?」

 

 迷わず両肩を抑えた。が、ジャンヌは俺の背中に両手を回して抱き抑えた。

 

「捕まえたわ……!」

「っ、何のつもりだ!」

 

「先輩の常識外れな力の対策です。観念して下さい」

 

 Xオルタは動けない俺の両足に素早く手錠を付けた。途端に力が抜ける。

 

「あぁ……あの部長が私に体を預けてる……可愛いわね?」

「っく……力が入らねぇ……!」

 

 ジャンヌは俺をまるで子供を見る様な目で見下ろしている。

 ヒロインXは探しても見つからない。既に部屋を出ていった様だ。

 

「邪魔者を排除したいって煩かったので、ドアを開けてあげました。

 ああ、ブロッサムさんも出て行って下さい」

「……マスターに匂いが付いているわね……始末しても良いんじゃない?」

 

「駄目です。私の愛の巣が汚れてしまいます」

「……私達の、よね?」

 

「あー、そうでしたねー」

 

「「アハハハ」」

 

 まるで悪役の如く笑う2人。残念ながら俺はそこに活を入れるだけの力が入らない。

 

「じゃあ私はシャワーでも浴びてくるわ、部長と一緒に」

「いいえ、それは私の任務です」

 

「良いじゃない。貴女は先に青い方と一緒にセイバー狩りでもしてくれば?」

「貴女こそ、憤怒の魔女とやらは唯のあだ名ですか?」

 

 力の抜けた俺を挟みつつ、2人は言い合いを始めた。

 ブロッサムは今の内に逃げ出したらしい。

 

「……じゃあ、2人でマスターを洗う?」

「妥協案ですか……良いでしょう、それで行きましょう」

 

 案外すんなりと啀み合いの終わった2人はシャワールームに入ると、服を脱ぎ始めた。

 動けないのが屈辱なのでせめてもの抵抗としてガン見する事にした。

 

「……そ、そんなに見ないでよ……恥ずかしぃ」

「――」

 

「せ、先輩……私の体はどうですか?」

「――、――」

 

 やはり男心を掴むのは巨乳だ。ジャンヌ・オルタだけをガン見する。

 

「……!」

 

 Xオルタの怒りが目に見えて燃え上がっている様だが、そんな事は関係ない。

 

「や、やめなさいよ! アンタ、そんなにスケベだった!?」

「いや、男の前で脱いでんだからお前の方がエロい」

 

 両手で隠しつつも顔真っ赤に照れ始めるジャンヌ。

 するとXオルタがジャンヌの両脇をくすぐり始めた。

 

「こちょこちょこちょこちょ……」

「っひゃぁ!? っちょ、あはっはははは!や、やめなひゃ、あははは!!」

 

「先輩が見たいって言ってるんです。見せて上げたらどうですか?」

 

 拗ねた様子でXオルタはひたすら弄っているが、唐突に俺の体が持ち上がった。

 

「マスターさん、こんな所で覗きですか?」

「……いやぁ……ちょっと捕まったんだが」

 

 式セイバーが俺の顔のすぐ側で微笑んでいた。

 

「ふふふ、そうですよね? 捕まって、無理矢理裸を見せられているだけですよね?」

「は、はい……当然だろ?」

 

 その後ろにはブロッサムが見えるので恐らく彼女が呼んだんだろう。ヒロインX

は無事だろうか?

 

「……折角の部長との入浴を……邪魔しますか?」

「あっはぁ……はぁ……! も、燃やしてやるわ……!」

 

 式セイバーはそんな2人を玩具を見る子供のような目で見ている。

 

「あぁぁ……斬ってあげるわ! アナタ達を、全部!」

 

「センパイ、今外します!」

 

 その間に俺に近付いたブロッサムは俺に近付くとどうやってかは知らないが、両足を縛っていた手錠を外してくれた。

 

「良し! これで3人を……!」

「いえ、センパイ! こっちです!」

 

 ブロッサムは俺の腕を引っ張り、部屋の外に連れ出した。

 

「おい! 3人を止めないと!」

「いえ、それよりもこっちに! 今回の事件の黒幕、漸く見つけました!」

 

「――!」

 

 ブロッサムの言葉に俺は走り出し、彼女に案内を急かせた。

 

「場所は!?」

「先の広場です!」

 

 広場に着いたが、俺には何も分からない。

 

「こっちです」

 

 見ると、ブロッサムが手を翳した先に道が出来た。

 

「良し! この先だな!」

 

 

 

 

 

「――で、どうですかセンパイ?

 可愛い後輩に裏切られた気分は! 私が、貴方の夢をシャトー化した張本人。ブロッサムなどではなく月の支配者、BBです!」

 

 洞窟を抜けた先に待ち構えていたアルターエゴとやらの痴女2名を含めた3人に囲まれた俺に、態々自己紹介をするBB。

 

「なるほどぉ……今までのは芝居だったわけか」

 

「観念してくださいね? これから毎晩毎晩、私による私の、私の為だけのヤンデレ・シャトーをセンパイにお届けして差し上げます!」

 

 ヤンデレ・シャトーとやらが何か知らないが、コイツに俺の部員が世話になったのは間違いない。

 女を殴るのは趣味じゃないが、俺は襟元を崩すとニヤリと笑ってやった。

 

「後輩に上下関係を教えんのも先輩の役割だもんなぁ……チョイとキツイの、くれてやるよ――!」

 

 拳を鳴らした俺は、走り出すと一気にBBに飛び掛かった。

 

「え、あ、あれ? ちょ、身体能力高過ぎ(スペックオーバー)じゃ――」

 

「おらぁ!」

「っきゃぁ!?」

 

 っち、ギリギリ腕で防ぎやがったか……だが、唯じゃねぇぞ?

 

「ッニ……!」

 

 笑いながら俺はあいつが握っていた指揮棒の先端を見せて、落とした。防いだ時に反射的に握ってやったんだ。

 

「ちょ、宝具折るとかそろそろ生物辞めてませんか!?」

 

 狼狽えているBBにもう一発……と思っていたが、瞬間、辺りがグラッと揺れた。

 

「指揮棒が折れて私の存在がエドモンさんに……!?」

「ちょっと! 今回、私まだ何も――」

「私達、しっかり準備したのに――」

 

 アルターエゴの2人は叫びながらも光の粒子となり、消えていった。

 そして、BBと可笑しくなった校舎も同じ状態の様だ。

 

「うー! 何もかも想定外です! 何でこんなマスターばっかりなんですか!? チェンジです、チェンーー」

 

 意味不明な叫びと共にBBは消えて、俺達の学園は元に戻った。

 

 

 

「……」

「……はむ」

 

 あの1件以来、部室の雰囲気が変わった。全体的に部室ではぼーっとする事が多くなったが、Xオルタは俺の机との距離を縮めて、今では椅子を持ってきては俺の隣に座っている。

 あんぱんは手放していない様だ。

 

「……!」

 

 ジャンヌは目が合ったら逸らすが、胸元の露出が多くなった気がする。

 

「……セイバー……絶……殺……」

 

 見た感じ大して変わらないのはヒロインXだが、今までよりも部室に顔を出している。

 

 そして、式セイバーと魔人セイバーに至っては……

 

「さぁ、マスターさん、帰りましょう?」

「晩御飯はハンバーグ……」

 

 部活後、俺と一緒にいる事に積極的になった。

 今までも契約の関係上同じアパート住んでいたが、最近は同じ部屋で過ごす事が多くなった。

 

「――今日は、私も行くわよ!」

「私も行きます!」

 

 それに比例して、他の部員が俺の家に来る回数も多くなったけど。

 

「っはぁ……あんまり五月蝿くするなよ?」

 

 

 

 

 

「お願いします……自重しますから此処に居させて下さい……」

 

 涙目でBBに頭を下げられ、俺とエドモンは若干引いていた。

 

「私、切大先輩じゃないと駄目なんです……他のセンパイでは……満足出来ないんです……

 しかも、アルターエゴの2人には見限られたのか別々に別れてしまいまして……」

 

「――!」

 

 ドン引きした。

 

「……どうする?」

「ど、どうするも何も……どうしよう」

 

 割りとマジでどうしようか考えたが、よく考えたらどうしようとも勝手に何かしでかす後輩系黒幕だ、許可しなかったら余計手が付けられない。

 

「……はぁぁ……分かった。エドモン、頼むから本当に自重させてくれよ?」

「……ふむ、お前がそういうのであれば善処しよう。そういう事だ、頭を上げて礼でも言ったらどうだ?」

 

「うわぁぁん!!」

 

 泣きながら思いっきり抱き着かれた。

 

「はいはい……それが嘘泣きじゃない事を祈ってるよ……」

 

「――」

 

 おい。

 

「……」

 

 おい?

 

「おい……なんだ今の沈黙は?」

「……うわぁぁぁん!!」

 

「おい、絶対嘘泣きだったな! 嘘泣きなんだな!?」

 

 

 

 

「ぁりがとぉござぃます……せんぱぃ……」

 




次回から切大さんのターン! 更新速度は落ちてますけど、これからもよろしくお願いします!

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