ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今回は新しくやって来た人達の話。

まだキャラが把握しきれてないオケアノスのキャスターは別の機会に登場させます。



ヤンデレと例の部屋

 

「では行くぞ?」

「待て待て待て! よりによってヤンデレ相手にそのシチュエーションは駄目だろ!?」

 

 エドモンの発表した今回の悪夢の内容に

俺は頭を抱えた。

 どんな想像をしても逃れられる未来が見当たらない。

 

「なんでヤンデレと一緒に『性交しないと出られない部屋』に入らなきゃならないんだよ! 喰われる一択じゃねえか!」

 

 あの4コマ漫画のお題みたいな状況になれば、即落ち2コマみたいな流れで犯されるのは分かりきっている。

 

「お前にのみ伝えておくが、その部屋は3時間後に開くから、それまで抵抗すればいい」

「サーヴァント相手に狭い部屋の中で3時間抵抗し続けろって……かぐや姫並の無理難題だろ」

 

 俺の文句をいつも通り無視し続けるアヴェンジャー。

 

「ふん……良い喜劇を期待しているぞ、マスター?」

 

 鼻で笑ったかと思うと機嫌の良い笑顔を見せて来た。

 

「……で、相手は誰なんだよ?」

 

「3騎の新顔……と言っておこうか」

「嫌な予感しかしねぇ……」

 

 最近引いた3人を思い出し、嫌な顔をした。

 

 

 

「――と言う訳で、別に性交をしなくても3時間待てば開くから俺の上から退いてくれると嬉しいんだけど」

 

 例の部屋、『性交しなければ出られない部屋』に移されて早々、マイルームのベッドの上で犯されそうになった俺はお引き取りをお願いした。

 

「迅速、脱出、優先」

「だ、だから、これは……俺の休息を願ったスタッフの悪ふざけだから……! ゆっくり休ませてくれないか……!?」

 

 何とか目の前の赤毛のサーヴァント、哪吒の迫りくる手を何とか抑えつつ、落ち着く様に説得する。

 

 残念だが玲みたいな摩訶不思議な戦闘力の持ち主では無い俺がサーヴァントを抑える事など不可能なので、哪吒の腕は俺の服へとあっさり触れる。

 

「……淫行、不要?」

 

 が、そこで動きが止まった。素直でよろしい。

 

「あ……ああ、だ、だから出来れば寝かせて貰えると、有り難いなーって……」

「了解。主、安眠、守護」

 

 そう言って俺の安眠を守るためか彼女はその体を俺の横に置くと、自分と俺の上に毛布を掛けた。

 

「コレ、絶対守護、成」

 

 任せろ、と自信満々な瞳が訴えている。

 

 ヤンデレと同じベットなんて命の危険しかないが、どうせマイルームの中だけなので逃げ場がない。

 

(陽日はこの状態でヤンデレ・シャトーを乗り切ったらしいけど、正気か!? 否、正気じゃないからあれで乗り切れたのか……)

 

 少なくとも自分はこのままだといつ喰われても可笑しくないと知らせ続ける本能を無視出来そうには無い。

 

「……! ……ん!」

 

 隣で寝ているだけだった哪吒は急に距離を詰めた。

 

 最初は横に添い寝するだけだったが、俺の体をバッと両腕で抱きしめた。

 

「主、良い匂い……」

「そうですか……」

 

 チャイナガールに抱き着かれ、正直今にも抱きしめ返したいがそんな欲望に抗う。抗えても、引き剥がす事はできない。

 

「息、荒い。興奮、期待してるか、主?」

「い、いや……」

 

 武術の達人であり、人の思考が読める哪吒は俺の心臓の鼓動を見逃さない。

 

(思考並みに冷静な本能だったら良かったんだが、男の性には勝てないか……!)

 

 哪吒は俺が必死に冷静でいようとしている事に気付くと、今度は両足を回して俺の足を封じながら更に抱き着いてきた。

 

「……主、苦痛?」

「い、痛くはないけど、足は外してくれると嬉しいかな……」

 

「大丈夫なら、続行、進展」

 

 哪吒の目を見た。肉欲に溺れている様には見えず、狂気に染まった訳でも無さそうだ。

 

(大好きなマスターへの過激なスキンシップな訳か……本人にとっては、だろうけど)

 

「ん、っちゅ、ん……」

「っ!」

 

 呑気に分析している場合じゃない。首筋を舐められ、思わぬ刺激に体がビクリと震えた。

 

「主、反応、上々……!」

 

 それに気を良くした哪吒は更に舐める。

 同じ場所は効き目が弱いと気付くと、直ぐに別の場所を舐め、俺の背中にはゾクゾクと快感が走り続ける。

 

「ん……我慢、良くない」

「っぐ……!」

 

 足を動かして膝の部分で下半身を刺激し始める。やはり、ヤンデレの隣で寝たのは間違いだったかと、獲物を前にした虎の様な目の彼女を見て後悔する。

 

「硬化……準備万端?」

「いや、しないから!」

 

 俺は発動させた【瞬間強化】で哪吒の両腕を掴んで彼女を引き剥がす。

 

「っん!? 攻守、逆転……だけど、何時でも、大丈夫……」

 

 驚いた哪吒だが先まで興奮しギラギラと輝いていた目から、期待に揺れる様にウルウルとした瞳へと変え、無抵抗を表すかの様に体から力を抜いた。

 

「……いや、そんな気は一切な――」

「――マスターを発見しました。外敵に襲われている様です。低威力殺傷弾で威嚇します」

 

 可愛らしい声色で放たれた氷の様な冷たい言葉と共に、マシンガンが放たれた。

 

 それをいち早く感じ取った哪吒はサッと俺の拘束を抜けると俺に背を向けて槍を取り出して全ての弾を弾いた。

 

「……主、無事か!?」

「あ、ああ……」

 

「大丈夫です。当たっても精々アザができる程度の威力です。私が今壁越しに見ていた光景、それを見て傷んだ心に比べれば……」

 

 突然現れたクレイジーなメカメカしいエリザベートはサーヴァントクラスアルターエゴ、メカエリチャンである。

 

 どうやら壁がドアの様に開いてここに入ってきた様だが、それはもう既に閉まっている。

 

「此処は魔術工房の様な、結界の様な空間。どうやら特殊な行動か時間経過で開く様になっている様ですね」

 

 顔を機械的に動かしつつ辺りを見渡すメカエリチャンの後ろには彼女が通ってきたであろう隠し扉が閉まって、元の何もない壁に戻った。

 

「――で、そこの赤い方は何時までマスターの側にいるつもりですか? 速やかに離れなさい」

 

「っむ……不意打ちを行った者に、マスターを近付けさせない」

 

 腕を僅かに上に上げたメカエリチャンに哪吒はそう言って静かに武器を構えた。

 

「ちょ、タイムタイム! 別に今2人が争う理由は無いだろ!」

 

 俺は哪吒の構えている槍を手で握って止める。

 

「む……」

「……まあ良いでしょう。マスターが言うのだから、私からは攻撃しないわ」

 

 メカエリチャンが手を下げると哪吒も渋々ではあったが、武器を下げた。

 

「マスター、見た限りでは此処から脱出する気は無いのかしら?」

「3時間程度で開くって話だし、無理に脱出する必要は無いかなぁって……」

 

 それを聞いたメカエリチャンは少し残念そうな顔をした。

 

「そう……」

 

(て言うか、そもそも機械のメカエリチャンとはどうやっても出られないんじゃ――)

 

 なんて俺が考えているとメカエリチャンの掌が開き、そこからマシンガンの銃口なんかよりも大きな筒状のナニカが――

 

「――要らないだろ、そんな機能!?」

「あら、このデザインの方が無難かしら?」

 

「別に赤と白の縞模様とかどうでも良い! 何でそんなふざけた機能が!」

「当然、マスターの遺伝子情報から後継機の人工知能を作り出す為よ」

 

 鋼の顔を持つメカエリチャンは少し笑いながらそう言うが俺からしたらシャレにもならない。

 

「主、機械と談笑、ズルい」

 

 拗ねた哪吒は俺に抱き着いてそのまま俺を枕の方へと押し倒した。

 

「機械、夜枷の相手、無理」

「言いますね……私が貴方に何ら劣らないテクニックを持っている事を今から証明いたしましょうか?」

 

 隙あらば性交に持ち込もうとする2人に流石に生命の危険を覚える。

 て言うか手の先から棒状の道具を出すな、そんな趣味はない。

 

 3時間で開放と言うが、その前に俺が喰われる。

 

「マスターのバイタルチェック……正常ですね。疲労の色も見えないですし、行為に及んでも問題の無い状態です」

「主、忍耐、不要。毒を食らわば皿まで」

 

「ええい! 来るな――」

 

 ――そう叫んで令呪を使おうとしたが、唐突に上から何かが降ってくると俺の言葉は遮られた。

 

 

 

「――んもっ、ん!!」

「っひゃ……!」

 

 俺の口は塞がれていた。

 

「はぁ……ま、まって下さいマスター……! そんな、事されて私、っひゃぁ……! く、くすぐったいぃ……です……」

 

 上から降ってきたセイバーのサーヴァント、新撰組の沖田総司に。

 

「……ふぅ……ま、マスター、ご無事ですか!?」

 

 俺の顔から黒い何かが取り払われ、沖田が顔をこちらに振り抜いた事で漸く沖田の股が俺の顔に覆いかぶさっていた事に気づいた。

 

(って、そんな漫画みたいなラッキースケベ要らねえよ!?)

 

 目の前の沖田同様に自分の顔が赤くなったのが理解出来る。体が勝手に興奮している事も。

 

「……と、突然、上の階の部屋に穴が空いてボッシュートされた時は私も驚きましたが……マスターのお顔にその……不測の事態とは言え腰掛けてしまい、申し訳ありませんでした……」

 

「い、いや……俺も、わ、悪かった……」

 

 何故か俺も謝ってしまい、沈黙の空気が流れた。

 

「………………っ!」

 

 が、唐突に沖田の顔が驚愕に染まると遠慮がちに近付いた。

 

「ま、マスター……私のせいで、お辛そうですね……でしたら、沖田さんが一肌脱いであげますね?」

 

 視線の先は俺の下半身だ。熱い視線を隠そうともしない。

 

「いや、それはいらないお世話だ!」

 

「えへへ、嫌がらなくも良いじゃないですか……大丈夫ですよ、握り慣れてますから!」

「刀! 握り慣れてんのは刀だよね!?」

 

 て言うか、先迄すぐ側にいた哪吒とメカエリチャンは何処に……?

 

 視線を動かすと沖田のすぐ後ろに2人が倒れていた。顔をベッドにつけたまま一向に顔を上げない2人。

 よく見ればその首元には背後に隠していた沖田の右腕が握っている刀が当てられている。

 

「邪魔者は……動けませんし、ね?」

 

 見られた事が分かった沖田は隠すのをやめ、寧ろ見せつける。

 

「性交しないと出られないなんて、破廉恥なお部屋ですよね?

 でも、ずっと此処にいる訳にはいきませんし……」

 

 不意に扉を見る。何故か扉は既に開いている。

 

「あーあ、残念です。どうやら先の事故が性交した扱いになって開いてしまった様ですね」

「そう、みたいだな……だったら、俺はもう出て行く!」

 

 ベッドから立ち上がって扉の先に向かおうとするが、沖田の左手が俺の前を遮る。

 

「もう、せっかちなマスターですね……では、こうしましょうか? 沖田さんが満足したらこの2人を開放します」

 

 沖田の右腕に力が込められ、刀が僅かに動く。その先にいる哪吒とメカエリチャンは動く気配がない。恐らく落下時のどさくさに紛れて気絶させられているんだろう。

 どんな神業だ。

 

「……お、脅しか?」

 

「えへへ、沖田さん。今すっごく気分がいいんです。まるでお酒に酔ったみたいに気分が良くて……でももっと気持ちよくなりたいです、マスター」

 

 気分が良い、沖田はそう表現するが恐らくヤンデレ・シャトーの影響で俺への愛情に溺れているのだろう。

 

「マスターに抱いてもらいたいなんて

……人斬りの私にはおこがまし過ぎますかね? でしたら、人斬りらしく……他人の血で濡れてしまいましょうか」

 

 そう悲しそうに言った沖田の刀が2人の首から離れる。それと同時に刀身が鋭く輝いた。

 

 不味い、もう令呪で止めるしかない!

 

「ま、待って――おわっん!?」

 

 思わず静止しようと手を伸ばし令呪が輝くが、それを沖田は待っていたかの様に伸ばされた手首を掴むと刀を床に放って、空いた手で俺の肩を掴み抱き締めると同時に唇を奪う。

 

「んーっちゅ……接吻、しちゃいましたね?」

 

 短いキスの後、沖田は俺を見ると微笑んだ。

 

「信じてましたよマスター? マスターならきっと私に仲間を斬らせたりしないって。ちゃんと令呪で止めて貰えて嬉しいです」

 

「……もし、止めなかったら?」

 

「へ? そんな事、考えてもいませんでした。全力で斬り掛かったので2人の頭が転がっていたんじゃないでしょうか?」

 

 怖い。

 俺に絶対的な信頼を寄せている沖田には躊躇など無い様だ。

 

「さあマスター、これから2人でお楽しみと行きましょう。まあ、此処だとちょっと場所が無いので部屋から出て、私の部屋に行きましょう」

 

 俺と手を繋いだ沖田は開いた扉ヘと俺を引っ張る。

 

「ふふふ……マスターに抱いて頂けるなんて沖田さん大勝利、ですね」

 

 

 

 

 

「って、何でなんですか!? 沖田さんとマスターのベッドシーンは!?」

 

「部屋から出た時点で今日のシャトーは終了だ」

 

「ちょ、納得出来ません! 今のは完全にマスターとの濡れ場で、夜の無明三段突きぃ! とか言っちゃう流れじゃないですか! エロ同人みたいに!」

 

「知るか!」

 

「た、助かった……」

 




次回は……いよいよ書くかもしれませんね。例の話の第二弾。

メカエリチャンに関してですが、自分は2号を選びました。本編では敢えてどちらかは明記しておりませんし、これからも2人が同時に登場しない限りは明記しない予定ですのでお好きな方のヤンデレをご想像下さい。

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