ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今回はあまり遅くならなくてホッとしてます、スラッシュです。
待望(?)のヤンデレ家庭未来図、第二弾です。

感想を書いて下さった皆さん、返信が遅れて申し訳ありません。感想には欠かさずに目を通していますので、良ければこれからも感想や質問、何でも書いて下さい。返信はこの後すぐに書いていきます。



第二ヤンデレ家庭未来図

「…………」

 

 現在、俺はカルデアのマイルームで椅子に座り腕を組みながら、指を動かして気を紛らわせていた。

 

 1人でいる筈のマイルーム内に流れる謎の緊張感は、アヴェンジャーから告げられた「今日は平和だ」の一言が原因だ。

 

 最近は一切聞かなかったその言葉には決してそのままの意味は込められていない。

 

「っく……まさか、アレの再来か?」

 

 以前、一度俺の身に起こったあの惨劇。小さな我が娘とカルデア中を駆け回ったあの事件。

 

「ヤンデレ家庭未来図……」

 

 娘を全サーヴァントに見せる事が悪夢からの脱出の条件で、娘は近くにいる女性サーヴァントの影響を受けその姿と在り方を変える。

 

 近くに女性サーヴァントが複数いれば二股だの三股、認知してない子供だとか酷い状態が再現される。

 

「…………」

『ピンポンパンポーン』

 

 唐突に鳴り響くアナウンス。間違いなく、悪夢の始まりの合図だ。

 

『迷子のお知らせです。マスターは至急、迷子保護センター、ダ・ヴィンチちゃんの素敵なショップにお越し下さい』

「……行くか」

 

 覚悟を決めた俺は、立ち上がった。

 どうせ行かなくてもダ・ヴィンチちゃんがこっちに来るだけだろうし。

 

 

 

「やあやあ、切大君。よく来てくれた。久しぶりに世紀の天才、ダ・ヴィンチちゃんの登場だよ!」

「お母さん、恥ずかしいからその話し方はやめてよ」

 

 相変わらずモナリザみたいな顔をしている天才美女の横には、メガネをクイっと上に上げながら母親に小言を言う娘の姿があった。

 見た感じ、15歳と言った所だろうか。背は俺の肩位の高さにまでなっている。

 

「見てくれ切大君! 私達の娘がこんなにも大きく立派になって……!」

「お母さん、お父さんと結婚する可能性低いんでしょう? 泣くのはどうかと思うんだけど……」

 

 どうやら、年頃の少女らしく成長した様で母親の上げ下げの激しい豊かな感情表現を鬱陶しく思っている様だ。

 

「何を言う! 例え育てた記憶が無くとも我が娘の体を見ればその成長過程など容易に想像出来る! うむ、実に素晴らしい黄金比を保って成長してくれた!」

「記憶が無いのに、天才的な観察眼と変態的なセクハラは健在なのね……」

 

「それじゃあ娘とのスキンシップはそこそこに……一緒に来てくれる?」

 

 俺は娘にそう言うと、娘は少し目を見開くと愉快そうに笑った。

 

「あははは、お父さん、かしこまり過ぎ! 私がお父さんのお願い、断る訳が無いのに!」

 

 そう言って慣れた手付きで娘に手を握られた。

 

「それじゃあ、行ってくるねお母さん! あんまり期待しないけど、お父さんと結婚したら宜しくね!」

 

 そう言った娘は恥ずかしいのか、俺の背中を押しながら工房を出ていった。

 

「……娘、か……」

 

 

 

「お父さん、今日はどんなお母さん達に会えるかな?」

「出来れば母親を複数形で呼ばないで欲しいんだけどなぁ……」

 

 娘と手を繋いで歩く。いつの間にやら黒髪に戻っている。

 

「そもそも、君のお母さんは誰なんだ?」

「だーめ。若いお父さんには内緒だってお母さんと約束したの」

 

 人差し指を口の前に立てる娘を見て一体誰なんだろうかと思っていると、ぽんっと効果音が鳴って娘の姿が変わった。

 

 ピンク色の髪にピョコンと狐耳が立っており、首辺りまで髪を伸ばしている。

 何故か水着だ。縁の青い白色のビキニに草履っぽいデザインのサンダルを履いている。

 

「とーさん若いー……あ、この若い魂の感じ、かーさんの言う通り私の好みだ」

 

 そんな事を呟くと何故かそっと抱き着いてきた。

 

「――ちょ、ちょっとマスター!? 何ですかコレー!?

 曲がり角を曲がったら運命の人とぶつかる展開だと思ったら、曲がり切った先にマスターに見知らぬ女性が抱き着いてるんですけどー!?」

 

 そこに現れたのはやはりと言うか、今の娘にそっくりな水着タマモだった。

 俺に抱きついた娘を見て「しかも水着で狐耳、私を丸パクリじゃないですかぁ!?」と1人盛り上がっている。

 

「あ、かーさん……じゃなかった、お母様」

「はぇ!? な、何ですか貴女!? 私、貴女を産んだ覚えなんてないんですけど!?」

 

 娘はタマモの手を取ると少々テンションを下げ、落ち着いた感じ話しかけていた。

 

「これには深い訳がありまして――」

 

 普通に良妻している時のタマモの様な礼儀正しい口調で話し始めた娘。最初は戸惑うばかりだったタマモだが、最後まで聞くと漸く納得した。

 

「娘! 娘ですか! 私と! マスターの! 愛の結晶ですねぇ!」

「お母様、い〜た~い〜で〜す〜!」

 

 激しいハグを娘にお見舞いするタマモ。娘もどうやら言葉とは裏腹に喜んでいるようだ。

 

「お父様!」

 

 ハグから開放された娘は何故か俺に抱きついた。

 

「うふふふ、遂に私の勝ちなんですね! まあ、最初から良妻、ヤンデレ、狐耳、巫女の最強サーヴァントタマモちゃんがヤンデレ・シャトーの勝者だなんて、決まっていた様な物なんですけどね!

 さぁマスター!

 そうと決まれば早速甘々新婚生活に――アレ?

 …………マスター? 娘!?」

 

 

 

 タマモが1人で勝手に優越感に溺れている内に、お決まりの如く俺は拐われていた。

 

「キャス狐が娘娘と騒いでいたので気になっていたが、なるほど。未来から来た奏者の娘であったか!」

 

 誘拐犯は赤いドレスに身を包み、あまり大事な部分を隠していないセイバーのサーヴァント、ネロだった。

 

「母上!」

「おー! 我が愛娘よ! うむうむ、余ににて結構な美少女でないか! うかうかしていると、世界一の美貌の称号をその内奪われかねんな!」

 

「母上も薔薇の如く美しいです。お姿は変わりありませんが、未来と比べると何処か咲いたばかりの生命力に溢れる色鮮やかな花弁を思い起こさせます」

 

 娘は母親と同じ金髪で、学生服の様なブレザーは真っ赤な生地と金色のリボンの飾りで派手な物になっている。

 

 そんな2人はとても女と女、母親と娘とは思えない程近い距離と方向でイチャイチャしている。何らかの拍子でキスしてしまいしそうだ。

 

『勿論、奏者(父上)もかっこいいし大好きだぞ(です)!!』

 

「お、おう……」

 

 母娘同じタイミングで俺にフォローを入れてくれた。きっと未来の俺もこんな感じでいつも置いて行かれているに違いない。

 

「所で娘よ! 余と奏者は未来だとどんな感じだ!」

 

「父上はいつも頑張ってます! 仕事から帰ると偶に泣きじゃくっている母上を励ましてくれて、その日は2人で部屋に入ってました!」

 

 どういう状況だそれ?

 

「……余は、泣いておったのか?」

「最近は全然ですけど、私が6歳位までは留守番が怖くて、定時よりも10分位遅く帰ってきた日には何時も帰ってきた父上に泣き着いていましたよ!」

 

 

『ただいま――』

『――そ、そうしゃ……そうしゃぁぁぁ……!』

 

『ど、どうした!?』

 

『う、うぅ……今日は結婚記念日なのに……何故、10分も遅く帰ってきたのだぁ……? 浮気か? 愛人か!?』

 

『いや、ちょっと最後の方にミスがあったから――』

『――違う! そなたの間違いは余と愛娘に寂しい思いをさせた事だ!』

 

『そ、そうか……』

『うう……せめて、もう一人位居たら……寂しくないかも――』

 

 

(……なんかありそうで怖い)

 

 そんな自分の中に浮かんだ妄想を掻き消した。

 

「しかし、こんな可愛らしい愛娘が生まれた未来なら余は喜んで受け入れよう! ならば今すぐ奏者と式を上げるべきだな!」

 

「……母上のドレス姿……! ええ、すぐに上げましょう!」

 

 何故か娘も乗り気だが俺としては断りたい。

 誰でも良いから、この防音ドアを突き破ってやって来てはくれないだろうか。

 

『――オラァ!!』

 

「っ!?」

 

 うん、来てしまったな。

 

「失礼しま~す(はぁと)」

 

 パラソルでドアをぶち壊すというダイナミックエントリーを決めた人物は笑っていない事だけが伝わる笑顔でピクリと狐耳を動かしながらネロを睨んだ。

 

「むぅ……お主は、キャス狐か! 随分派手な登場では――っく!?」

 

 ネロのセリフを遮る様に放たれた御札を、間一髪で躱した。

 

「っち、外しましたか」

「むぅ……今のは何だ? 余の頭痛が一瞬だけ酷くなったのだが……」

 

 いつの間にか娘はどのサーヴァントの者でも無い事を示すかの様に黒髪に戻っている。

 

「子孫破滅の呪い……つまりは、女性としての最大の不幸を齎す呪符です。

 これが体に付けばマスターとの間に子を宿す事が出来ないと言えば……頭がお花畑のネロちゃまでも、理解できますよね?」

 

「ぬぅ……そんな恐ろしい呪いを……! なんて陰険な!」

 

 確かに、人徳的にも問題になる呪いだ。そんなモノ、いくらヤンデレでもタマモが使う筈が無い。

 

「あっははは! 

 何と言われようと関係ございません。

 ご主人様が旦那様になる以上、遠慮も容赦も無用です。

 第一、反英霊である私が真っ向勝負でマスターを頂こうとしたのが間違いだったんです! 輝かしい未来の為に、タマモは一切の迷いなくダークサイドに堕ちます!」

 

 そう言ってタマモは呪符を両手一杯に取り出すとそれをネロに向けて構えた。

 

「さぁ、お覚悟を!」

 

「お父さん、こっち!」

 

 俺は娘に引っ張られ部屋を脱出した。

 

 

 

「……ネロ、大丈夫なのか……?」

「ううん……分かんない。私のせいだと思うとちょっと心苦しいけど、こうするしかなかった」

 

 娘は顔を俯かせる。だが、今更あちらに戻る訳にもいかない。

 

「まあ、もしもの場合はキャスター総出でなんとかするさ。此処には古今東西、色んなサーヴァントがいるからな」

「……うん、ありがとうお父さん」

 

 礼を言った娘は再びその姿を変えた。

 髪は黒いが服はゴスロリ、髪留めやリボンが多数施されている。

 

「マスターさん、みーつけた!」

「っげ!」

 

 その母親らしきサーヴァントを見つけ、俺の心に鋭い痛みが突き刺さった。

 

 可愛らしいファンシーな衣装に身を包んだ黒一色のゴスロリで幼女なサーヴァント、ナーサリー・ライムだ。

 

「う……また幼女と娘が出来てる未来か……」

「あら、可愛らしいお洋服ね? 貴方はだーれ?」

 

「ママ! 私はママの娘だよ?」

「え、私の子供……?

 わーあ! 本当なのね! マスターと私の物語! 貴方から伝わるわ!」

「っ!?」

 

 そういえばナーサリー・ライムは絵本の英霊だ。その娘が普通の工程で生まれる訳が無い。

 

(よっし、セーフ! 今回は幼女に手を出してない!)

 

「うん! ママとパパのラブラブ日記! それが私なの! だから私は、パパもママも大好き!」

 

 ゴスロリ姿の中学生が小学生位の少女を抱え上げている。

 て言うか、日記なのか……

 

「……うーん、だけど貴方、読めなくなってるわ」

「未来の事を知るのは駄目だよママ!」

「そうね! ネタバレは厳禁ね!」

 

 娘とその母親の仲が良いのは結構だが、俺としては複雑である。

 なんせ、どれだけ求められても俺はそれを否定するしかないからだ。

 

「だったら早くマスターと紡ぎましょう! サラマンダーが火傷するほどに熱い、ラブラブなストーリーを!」

 

「え、いや、ちょっと……!?」

「私も行きます!」

 

 唐突にナーサリーに腕を掴まれた俺は何処かへと引っ張られていき、そんな俺達2人の後を娘が笑いながら着いてくる。

 

 カルデアの廊下をバタバタと走っていく。

 行き着いた先をマスターとしての記憶が知っていた。

 

「図書室……」

「やっぱり此処よね! 多分アンゼルセンもシェイクスピアのおじ様も今は居ないわ!

 さあ、入りましょう!」

 

 扉を開いたナーサリーと共にそこに入った。何度かゲーム内の背景で見た事のある古い雰囲気の漂う図書館には、先客がいた。

 

 

 

「あらあら、先輩じゃないですかぁ?

 幼女と一緒の様ですけど、事案ですか?

 美少女警官BBちゃんが悪い先輩をた・い・ほ、しちゃいますよ?」

 

 

 

 

 

 やばい、すっごく面倒臭い。

 

「――って、何ですかそのあからさまに嫌そうな顔は!? いくら何でも失礼ですよ!」

 

 頬を膨らませプンプン怒るBBだが、そんな事は一切気にせずにナーサリーは俺を引っ張って机に座った。

 

「駄目よマスター! こんな頭の可哀想な人は無視してあげなくちゃ。それにこれからは私達の子供を作るんだもの! 集中しなくちゃ!」

 

「ちょーっと聞き逃せませんね? マスターと子作り? 子供サーヴァントの分際でなーにマセちゃってるんですかぁ?」

 

「あらあら、敗者さんは随分惨めね。じゃあ先に紹介してあげる! 私達の娘を!」

「はじめまして! アリスママとパパの娘です!」

 

 ナーサリーはイタズラな笑みを浮かべて娘をBBに紹介する。

 

「っ――!? …………ふぅ」

 

 それを見て驚いたBBだが、3秒程娘を見続けると安堵の溜め息を吐いた。

 

「なるほど、大体の事情は把握しました。それなら……先輩!」

 

 唐突にBBが椅子に座る俺の前でしゃがんで両手を掴んだ。

 

「わたし……先輩の隣じゃないと……」

 

 泣き落としか。前回は引っ掛かったが誰が今更後輩系黒幕の涙なんぞ信じるか。

 

「……世界をぶっ壊しちゃいますよ?」

 

 ぽん。

 

 俺の後方からそんな音が聞こえ、がバッと後ろから抱き付かれた。

 

「おっ、とう、さーん!」

 

 テンション高めの娘に抱き付かれた。

 て言うか髪の色から服装まで全てBBだ。身長だけは僅かに低いけど。

 

「遅いですよお母様! でもご苦労様!

 さあさあ若いお父さん、私と楽しくイチャイチャラブラブしちゃいましょう!」

 

「ちょ、ちょっと!? 何ですかこの娘! 何で私に挨拶も断りもせずに先輩に抱き着いているんですか!?」

 

(胸が……当たってるんですけど……!)

 

 立ち上がったBBの乳袋が顔を挟み、背中では同じ位の弾力のモノが当たっている。

 

「お母様のデータから作られたBB2ndと呼んでも過言でない私がお父さんの事を好きにならない筈がないじゃないですか?

 お父さん、親子丼ですよ? 合法ですよ?  お得ですよ?」

 

「何が合法ですか! 良いから先輩から離れて下さ――」

 

「――凍てつきなさい!」

 

 唐突に放たれる氷。BBはヒョイっと動いて距離をとる。

 

 氷を放ったナーサリーは走ってBB2ndに抱きついた。その瞬間、娘は黒一色のゴスロリ衣装に戻った。

 

「この娘は私とマスターの娘よ! 貴女なんかには絶対に渡さないわ!」

「この……! 絵本程度が人間の妻になろうだなんて、烏滸がましいですね!」

 

「だったらAIである貴女がプリンセスだなんて、とんだお笑い草ね!」

 

「あはっ!」

「無駄です!」

 

 放たれ迫る氷を指揮棒の光線が砕いた。だがBBの目の前に居るのは俺と娘だけだ。

 

「……え!?」

 

「えい!」

「っきゃあ!」

 

 どんな手品か、後ろを取ったナーサリーはBBの背中に火柱を放った。

 

「木を隠すなら森の中、本を隠すなら図書館の中よ!」

「っく……本の姿になって隠れましたか……! 本来、BBちゃんはこう言う戦闘は嫌いですが…………先輩! 指示を下さい!」

 

 図書館の中に、沈黙が流れた。

 

「って、先輩がいつも通り逃げてるじゃないですか!」

「貴女を倒したら追いかける! 貴女はシンデレラの意地悪な姉みたいに、足をちょん切ってあげるわ!」

 

「あぁん、先輩のバカー!

 捕まえたら絶対押し倒して犯し尽くしてパパにしてあげますからね!!」

 

 




恐らく、これが今年最後の投稿です。次回の投稿は今話の続きか正月ネタを予定しております。

どうか良いお年を! メリーグランドオーダー!(流行れ)



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