ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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年も開けてもう一週間! ……あれ、まだでしたか?

 ニューイヤーガチャで限定星5を2体引き当てた自分は上機嫌です。何を引いたか第二家庭未来図で登場させますのでお楽しみに。
 でも二部のキャラが手に入るか不安なレベルの幸運です。出来れば、この幸運が一年間続きます様に……


第二ヤンデレ家庭未来図 ニ

 

 戦闘を始めたナーサリー・ライムとBBから逃げ出した俺と娘はそれなりに離れた場所で息を整えていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ふぅ……はぁ……け、結構走ったね……」

 

「ああ、そうだな……」

 

 以前は10歳程度だったので担ぎながら走っていたが、流石に此処まで大きいと礼装で強化してもサーヴァントに追いつかれそうだ。

 

「……お父さん……なんか失礼な事を考えてない?」

「考えてない」

 

「そう言い切られると逆に怪し――」

 

 こちらを睨んでいた娘はまたしても姿を変えた。

 

 桜色の髪に、中学生らしくセーター服を着ており、その首には黒いマフラーが巻かれている。

 

「……お父さん、お母さん以外との女性と接触は控えて欲しいです。娘として、大変心配です」

「うぉ……なんか真面目……」

 

 見た感じの印象は沖田総司で間違いなさそうだ。

 しかし、母親のコハエース的なぐだぐだな雰囲気は感じられない。真面目そうな娘だ。

 

「ちゃんと聞いてますか? 他の娘は知りませんけど、私は現れたり消えたりは嫌です! 今のお父さんにもしっかりとお母さんと結婚して将来的には私を産んで欲しいです!」

 

 今までの娘達とは異なり、俺と自分の母親の結婚にかなり積極的だ。

 

「そう言われてもだな……そもそも召喚したのだって最近だし……」

「私が生まれた未来がある以上不可能ではない筈です!」

 

 余程家族仲が良いのだろう? サーヴァント並に奇人変人な娘が多いので何とも言えない。

 

「おや……マスターじゃないですか!

 む、そちらの方は何方ですか?

 もし恋人等と世迷い言を言うようでしたら切り捨てますけど?」

 

 現れた途端に娘に刀を向けたのは桜セイバーこと沖田総司だった。

 

「……あれ? よく見たら何処か私に似ていますね?」

 

 刀は一切ブラさずにたった今気が付いた疑問を口にする。

 

「お母さん、私は貴女の娘です!」

「……へ?」

 

 少しだけ、刀が動いた気がした。

 

「――っ!」

「――」

 

 瞬間、俺にはとても見切る事の出来ない速度で沖田との間合いを娘は詰め、何処から取り出した竹刀を振った。

 

 奇襲の様な攻撃だったが流石英雄と言うべきか、沖田はそれを受け止めて見せた。

 

「…………」

「…………」

 

 刀と竹刀が交差したまま止まる。お互いに見つめ合っている。

 

「……貴女、私の娘と言いましたね?」

「……」

 

「……」

 

 沈黙の中で刀が竹刀を払い上げ、お互いに僅かに距離を取った。

 

「私の剣筋と、確かに似ています…………マスターも同意してる様ですし、私もそれで納得しましょう」

 

 そう言って沖田は剣を収めた。娘もそれに習って竹刀を下げた。

 

「……所で、マスター」

「……えっと、何?」

 

 唐突に話を振られて俺の返事が遅れたが、沖田は顔を赤く染めて言った。

 

「……い、いつ夜這いをかけて下さったんですか!?」

 

 いきなり詰め寄られ胸ぐらを掴まれた。

 

「違う! してない!」

 

 沖田の頭にチョップを叩き落として落ち着かせた後に俺は事情を説明した。

 

「ぬのぉ!? 沖田っぽいのが増えておるではないか! まさか、“りりぃ”とか言う奴か!? 水着が無かったからお情けで実装させて貰ったのか!?」

 

 その間に、何故かノッブこと織田信長もやって来た。ぐだぐだである。

 

 

「娘と聞いた時は思わず撃ち殺そうと思ったが、なんじゃあくまで可能性の話じゃったか……それにしても、見た目以外は全然似ておらな」

 

「確かに」

 

 信長の言葉に頷く。沖田は真面目な時は真面目なんだが、病弱スキルとコハエースのせいで若干、ギャグキャラに寄っている感がある。

 

「お父さん、お母さんを悪く言わないで下さい!」

「おお! さすが私の娘です!」

 

「確かにお母さんは剣術くらいしか取り柄がないし、料理中や洗濯中に吐血するから家事もせず仕事もせずにお父さんのヒモみたいになってますけど! それでも私の大好きなお母さんなんです!」

 

「っがは!?」

 

「おーい、娘とやら。母親の方が死にかけているじゃが……」

 

 見れば沖田は深い絶望に苛まれ、膝を床に付けている。

 

「いつも、毎日、どんな時にも家にいてくれて、帰れば笑顔で出迎えてくれる優しいお母さんです!」

 

「ぐはっ!?」

 

 トドメを刺した様だ。それが哀れに思えて来たのか、信長は俺を引っ張って静かにその場を去った。

 

 

 

「――さあ、わしとの娘を見せて貰おうかのう!」

 

 まんまと信長の部屋に連れ込まれた俺はそう言われ、特に反応したつもりは無かったが娘の姿が変わった。

 

「……」

 

 黒いセーラー服に赤いマントを羽織った信長の様な姿の女の子。が、母親とは違って髪は短い。

 

「お、おお! 何とも愛らしい! わしの娘じゃ! 文句無しでわしの娘じゃな! ははははは! マスターとの子じゃ!」

 

 感激極まって抱き着こうとしたが娘は少しだけど表情を曇らせるとそれをひょいと避けた。

 

「娘? わしはお前を見れて幸せ者よ!」

 

 またしても避けられた。

 

「……娘?」

 

 そして、俺の肩に隠れた娘はボソッと口にした。

 

「……母上、嫌い」

「な――なななななっ!?」

 

 娘の拒絶の言葉に身内に甘い信長はショックを受けた。

 

「……えっと、なんでお母さんの事が嫌いなの?」

「人目を憚らずに騒ぐし、煩い。あと無駄にお金を使いたがるし、偉そうな態度が嫌い」

 

 今だけ反抗期な事を願おう。織田信長の人格全てを否定され、本人は瀕死だ。

 

「……ふんっ」

 

 そんな母から顔を逸らす。先から母娘で性格の異なっている気がする。

 

「お父さん、良くお母さんと結婚したよね?」

「そこまで言うか……」

 

「だって……煩いんだもん」

「じゃあ、俺達が結婚しない方が良いか?」

 

「……っだ、駄目! お父さんはお母さんとっ!?」

 

 少々意地の悪い質問だったが、予想通りの答えで安心した。

 本気で嫌がっているなら母親と似たような格好をする訳がないし、今までの娘の中には(清姫は例外として)結婚に反対する様な娘はいなかった。

 

(……ヤンデレじゃなかったら、誰と結婚しても幸せな訳だ)

 

「お父さん! 次に行きましょう!」

 

 先まで質問の答えに困っていた娘は元の黒髪に戻っている。なんとなく、信長の娘が慌てて逃げた様に思えた。

 

 

 

「ますたぁ……私は……穀潰しですかぁ? 役立たずなヒモ女なんですかぁ……?」

「うぅ……煩いって……騒がしいって……わしのアイデンティティーの全てを娘に否定されてしまったぁ……」

 

 ゾンビの様に、俺の背中に力無く寄りかかる2人。お互いに哀れんでいるのか悲しみで恋敵と認識できていないのか、取り敢えず争う気配はない。

 

「ご、ごめんね? お父さん……」

 

 黒髪の姿の娘は自分でしでかしてはいないが、間接的に関係があると知っているので両手を合わせて謝っている。

 

「別に良いが、流石に重いんだけど……」

 

「「マスターまで厄介者扱いするんですか(のじゃ)!?」」

 

 酔っ払いの如く面倒だな。適当に振りほどいて寝かせようにもサーヴァントの持つ圧倒的な力で掴んでいるのでそれも難しい。

 

「おや、ますたぁ殿。どうやらお困りの様だなぁ……そらっ!」

 

「がふ!?」

「ぬが!?」

 

 不意に現れ投げられた2本の筆がキレイに2人の顔に直撃し、倒れた。

 

「ふぅぅ……絡み酒はこの手に限る、ってね」

「か、葛飾北斎!?」

 

「おおっと、今は葛飾応為さ。とと様は居ねえし……ん? んんんー……?」

 

 挨拶もそこそこに、葛飾応為を名乗った袖の捲くられた着物のサーヴァントは最近やって来た降臨者、フォーリナーのクラスを持つ特別なサーヴァントだ。

 

 普段は小さなタコ――葛飾北斎本人だと思われる存在と一緒にいる。

 

 そんな彼女の視線は、俺と娘へ交互に向けられていた。

 

「おー……めんこい娘だ。うーん? 何処か見た事ある様な……無い様な?」

「なんでぃなんでぃ! 応為、遂にとと様の顔も忘れちまったかぁ!?」

 

 いつの間にやら娘は応為に似た幼い顔に芸術的な露出が目立つ衣装に変わっていた。

 

「……へ? と、とと様!?」

「流石にこれは……!!」

 

 俺は慌てて事情を説明した。だが、俺自身も驚きだ。

 

「嘘だろ!? ますたぁともしも結婚したらなんて話だけでも驚きなのに、生まれてきた娘がとと様なんて……ありゃ? こうなると、とと様? 娘? なんて呼べば良いんだ?」

 

「な、なんかややこしいし取り敢えず北斎さんで……あの、北斎さん?」

 

 応為よりも背の低い北斎はいつの間にか彼女の後ろに回っていた。

 

「へへへ、こう見えて結構この生活も気に入ってるだよ。画工として、これ以上に楽しい事なんてないから、ね!!」

「ひゃ!? と、とと様!?」

 

 顔を真っ赤に染める応為。後ろに回った北斎に着物を着崩されたその姿は、霊基再臨第二段階に見せた花魁の様な格好になった。

 しかも、北斎はそんな格好の自分の娘を俺に向かって押した。

 

「うぁ!?

 な、何すんだよとと様!?」

 

「何って、決まってんだろぉ? おれを産む為にお前らは夫婦になるのさ!」

「はぁ!?」

 

 先程から応為が代わりにリアクションしてくれているが、俺も当然ながら驚いている。何言ってんだこの人……

 

「おめえも、別にますたぁ殿を抱かれたくない程嫌ってる訳じゃねえんだろ?」

「う……い、いやでも……」

 

「安心しろ。春画、漫画、浮世絵……俺の技術の全てを持って、最高の絵にして残してやる」

「……とと様には“ぷらいばしぃ”なんて言葉は通用しないなぁ」

 

 応為の力を北斎が上回り、壁際に追い詰められた俺の体に応為の体が押し付けられた。

 

「……!」

 

 チラリと、上から見下ろす様に着崩れた着物の谷間が見えた。

 

「……ま、ますたぁ殿……どうやら年貢の納め時みたいでさぁ……」

 

 応為の方は諦めた様に……いや、それを言い訳に迫る気のようだ。密着させた体を少し揺らして、着物の崩れを更に大きくした。

 

「は、恥ずかしいかもしんねぇけど……おれぁ、ますたぁ殿にだったら……」

 

 初心な娘らしく照れ顔を浮かべていた応為だが、俺の視線の先に自分の顔がある事を確かめるとニヤリと笑った。

 

 ギョロリと、花飾りに隠れていた目玉が顕になる。驚き目を見開いた俺に目玉は怪しげに輝いて視線を合わせた。

 

「女らしい所、見せられるかもしんねぇや……」

 

 

 

 

 脳が――溶け、思考が流さ――ナニカ、入ってく――ふんぐ――ふんぐる――――

 

 

 

 

 

 自分と異物の境目に一瞬だけ、何かが煌めいた。

 

 

「――ナイスじゃ、人斬り! くらえ!」

「なっ!?」

 

 担がれた自分。それと同時に俺の中に入り込む怪しい輝きが銃弾によって塞がれた。

 

「っち! 乙女の恋路の邪魔しやがって!」

 

「何処が乙女ですか! その奇妙な蛸の力で、マスターを歪めようだなんて恐ろしい方ですね!」

「うむ、退治してやりたいがそんなシリアスな展開よりも、わしらの得意とする展開に持って行こうか!」

 

「「即ち、撤退!」」

 

「な! ま、待てーー」

「ーーお母さん! 待って下さい!」

 

 沖田の娘へ戻った少女も駆け出すが、隣を素通りされたまま葛飾北斎(・・・・)は落ちそうになる体で踏ん張って意識を取り戻した。

 

「……おっと!

 ……娘から応為の体に逆戻りしちまった様だな。娘とその想い人をくっつけるつもりだったんだがぁ……上手くいかないもんだねぇ」

 

 そう1人でポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

「……ノッブ? 長い付き合いですから見逃してあげましたけど……そろそろ娘を返して頂けませんかね? 私の娘ですよ?」

 

「何を言うかと思えば……ならばマスターを寄越せ。わしの夫じゃぞ!」

 

 依然として、修羅場はまだまだ続く様だ。

 

「埒が明かないのでサクッとやっちゃいましょうか」

「おう、望む所じゃ!」

 

 日本刀と火縄銃を互いに向け合う。娘が慌てて2人の間に入った。

 

「だ、駄目ですよお母さん!」

 

「誰がお母さんか! わしの娘はあの娘だと決まっているのじゃ!」

「止めないで下さい! 私達の未来の為、邪魔者は切り伏せます!」

 

 止めるどころか更にヒートアップした。

 少し離れた所でそろそろ逃げようかと思った矢先、背後から誰かが抱き着いて来た。

 

「マスター!! 茶々に構って構ってぇ! 初登場だけどなんか最初から居た感が出るあたり、茶々ってやっぱりマスターの正妻だよね?」

 

 自分で説明してくれたが、今回初めて悪夢に現れたサーヴァント、バーサーカークラスの茶々だ。

 

(あれ……初めて……? うん、初めてだよな……?)

 

 ちょっといきなり過ぎて混乱しているみたいだ。一度頭の中を――

 

「あー! わ、私の娘が……別の姿に!」

「こ、こやつはまさか……」

 

 沖田と信長の声に振り向けばそこには茶々と同じ長い茶髪、着物の様に黒の布に花柄の入ったエプロン、その下にはピンク色のシャツを着ている様だ。

 足は黒いタイツを着用しており、お子様サイズの茶々と違って俺より少し小さい程度の身長の持ち主だ。

 

「……母上、茶々の娘です」

 

 茶々に、ニッコリと笑ってそういった。

 

「ほえ? 茶々の子? でも、知らない顔じゃし……」

 

「私は父上、マスターとの間に生まれました」

「ま、マスターとの!?」

 

「またロリコン案件かぁ……」

 

 興奮した様子の茶々が俺の袖を引っ張った。

 

「茶々が超絶可愛い最強ヒロインだからな! 是非もないヨネ!」

「はい、母上はとても可愛いですよ」

 

「えへへへ!」

 

 俺の袖を放さない茶々を撫でる娘。その光景は母娘の美しい愛に溢れている様に見えるが、立場は完全に逆だ。

 

「…………ああそうですか。全員消せば、私がお母さんなんですね、分かりました」

「おい人斬り、茶々には手を出させんぞ?」

 

 再び交わる剣先と銃先。

 

「お主を撃ち抜いた後で、茶々の奴を折檻してやるのでな……」

「伯母上ぇー!? な、なんだか分かんないけど、娘の為なら伯母上だって容赦しないムードなのだ!」

 

 各々が得意の獲物を取り出し、交わる最中、またしても筆が飛んできた。今度は全員それをはたき落とした。

 

「ふぅ……とと様に起こされて来てみれば……なんでい、なんでい! おれを差し置いてもうおっ始めようってか! そう言わずに混ぜてくんなぁ!」

 

 画工、葛飾応為も参戦し、当然ながら俺はその隙に娘と共に逃げる事にした。

 

 

 

「良いじゃん良いじゃん! 結構私似っしょ!」

「ママもマジイケてる! そのアクセ、こん時にも付けてんだ!」

 

 JKっぽいサーヴァントとJKっぽい娘に挟まれました。

 

 鈴鹿御前はセイバーのサーヴァント。何故かJKっぽく喋り、どっかで見た事ある狐耳を自分の能力で着けている。

 

「でしょー! 私のお気になんだ!」

 

 娘も娘で似たような格好をしている。わかりやすさ重視とはいえこの冬の季節に学校の夏服はどうかと思うけど。

 

「……なんか、盛り上がってるみたいだし、暫く待とう……」

 

 居たたまれなくなった俺は少し距離を取って休む事にし、その場で出会ってきたサーヴァントの数を数え始めた。

 

「タマモ、ネロ、ナーサリー、BB……」

 

「沖田、信長、応為、茶々、鈴鹿御前……9人」

 

 この流れだと以前のサーヴァントは現れはしないだろうが、それでもまだまだいる。

 

「サンタ組やら水着組、イベント配布は勿論、アメリカ、キャメロット、バビロニア、レムナントのサーヴァントもか…………」

 

 そこまで数えて溜め息を吐いた俺は……

 

 

「……多くね?」

 

 ガチャを回し続けた自業自得ながらも、そんな悪態を呟いた。

 




最後はセリフが作者の本音だったり…………頑張ります。

今回の話は英霊剣豪七番勝負のガチャで何かしら引いていればサーヴァントが増えて良かったんですけどね……個人的にはアサシン・パライソが気になってます。

娘との絡みが多くてヤンデレ要素が少ないかもしれない……次回、出来れば本気で病ませたい。

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