ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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お待たせいたしました。最近、なんやかんやゆっくりスマホで書ける時間が取れず、遅れた上に少々短くなってしまいました。(それでもイベントは周回してます)

次は少し多めに書けたら良いなと思っています。


第二ヤンデレ家庭未来図 三

 

 

 日本出身のサーヴァント達に囲まれ、逃げ出した先で鈴鹿御前と出会った俺は……

 

「んー……まあ、こんなもんかなー?」

 

 250本の刀の中に閉じ込められていた。

 

「マスターを守る為の檻……うんうん、いい感じっしょ!」

「これなら誰も近付けないし、パパはママにゾッコンだし! まさに最強の愛の巣だし!」

 

 娘は大喜びな様だが俺はそうも……喜んでいた。

 

「そんじゃ、疲れたし魔力補給っと! マスター、キスしてあげる!」

 

 仕事帰りの夫にキスを強請る妻の様な笑顔を向ける鈴鹿御前。未来の娘の前だと言うのになんの遠慮も躊躇いも無く貪り始めた。

 

「ぁ……んっん……っちゅ、っちゅ……んぁぁ」

「うわぁ……ママ、すっごくエッチなキスしてる……小さいパパも表情は動かないけど赤くなってて……」

 

 隣で堂々と実況するな娘。

 

「……っぷはぁー……! ぃししっ、マスターの魔力頂き!」

 

 若干体から力が抜けていく。しかし、この程度なら問題はない。

 

(どのみち、この宝具から自力脱出は無理だし)

 

 辺りを囲んで静止する刀に目を向ける。

 これら全てが鈴鹿御前の意志で動かせるとなれば、足を切られて逃げ出す事も叶わない。

 

 それ以前に……

 

「うん、うん……好きだよ鈴鹿」

 

 魔眼の力で魅了されてるから抵抗の意思が薄いんだよな……幸運な事に、女神クラスの魅了じゃないから問答無用でデレデレとはいかないのは幸いだ。

 

 嫌われるのが怖い程度の好意だ。脱出には余り支障はない。

 

「……ふふふ、ノッてきた! このまま、出来ちゃった結婚まで駆け抜けても……文句ナシ、みたいな!」

 

 そうこうしている内にマウントポジションを取られた。魅了のせいで本当に抵抗力が落ちている。

 

「ま、待て鈴鹿!」

「あっは! そんな風に名前で呼ばれちゃったら我慢なんて出来ないし!」

 

 顔を近づけ、両手で俺の顔を抑えた鈴鹿御前の瞳に魔力が灯った。

 

「……一時の感情でも良いから私を愛してよ、マスター」

 

 

 

「返せぇぇぇえ!

 私の娘と、夫を返しやがれぇぇぇぇぇえ!!」

 

 魔眼に当てられ、意識が飛んでいた俺は全てを呪う様な怒号と共に目が覚めた。

 

 辺りを確認すれば鈴鹿御前は250本に分裂した刀を操作し、俺と娘を抱えて走るサーヴァント、最近引いたアルターエゴのメルトリリスに向かって放っていた。

 

「凄い気迫ね。だけど、当たらないわよ?」

 

 バレリーナのような動きは俺と娘を抱いていても健在で、既に四方から迫る刀の半数以上を躱している。

 

「っく! なら――!?」

「流石、私の子ね」

 

 誇らしげな笑みを浮かべたメルト。鈴鹿御前の体にはいつの間にかメルトと同じ青紫の髪に変わっていた少女が放った蜜が付着していた。

 

「メルトウィルス、ちゃんと使いこなしているみたいね」

「刀が危ないから止めただけよ。これ位、訳ないわ」

 

「っぐ、う、動かないし……!!」

 

「レベルドレインじゃなくて触れただけで体が停止する麻痺ウィルス。お母様と違って、私はウィルスを使い分けれるの」

 

 恐ろしい娘……! と、俺が戦慄している間に鈴鹿御前の気絶を確認したメルトは、再び俺と娘を抱えて走行を始めた。

 

「ちょ、何処まで連れて行く気だ!?」

「あら、折角スズカから助けてあげたのに随分な物言いね?」

「助けたのはお母様では無くて私なのだけど?」

 

 言い争いながらも目的地に着いた様だ。

 

「って、此処は……」

 

 連れて来られた場所はマイルーム、俺の部屋だ。

 

「これからは私達の愛の巣ね?」

「お母様、気色が悪いです」

 

 先からやたら母親に反抗的な娘だ。て言うか、俺はどう思われているんだろうか。少し観察しようか。

 

「……」

 

 メルトリリスに降ろされた娘は無言で部屋中を見渡した。

 

「……!」

 

 そして、その先にあった俺のベッドを見つけるとそこへ駆け出した。

 

 それを見たメルトリリスは口元を服の袖で隠しながら少し笑っている。

 

 そのままベッドに飛び込んだ娘はゴロゴロと転がって毛布に体を包みながら、枕を抱いて匂いを嗅ぎ始めた。

 

「すぅー……すぅー……すぅー……」

「っく……んふふふ……!」

 

 メルトリリスは堪えるのが難しい位に笑いそうになっている。体を支えるため、そばにあった机に手を置いた。

 

「っ!?」

 

 その音に正気を取り戻した娘は慌てて枕を放り投げると真っ赤な顔で俺達を睨んだ。その顔がメルトリリスに似ているのでとても愛らしい気持ちになった。

 

「ち、違うわよ! べ、べ、別に、お父様大好きファザコン娘なんかじゃないわよ!!」

 

 必死に顔を降って否定する。今にも噛みつきそうな勢いだが、それすらも微笑ましく感じる。

 

「――っ!! お母様のデータを元に作られた私がお父様大好きで何がいけないのよっ!」

 

 

 

 いじけてしまった。

 メルトリリスにそっくりな彼女が、彼女同様細い手足と体を丸めて部屋の隅で体育座りしている。

 

「……大体、15歳でこの体型よ……何が究極の造形美よ……ファザコンだし、自己嫌悪でお母様も嫌いだし……」

 

 どうやら娘なりの苦労がある様だ。

 改めて見た娘は俺が見てきた娘達と比べても小さく、下手したら10歳の頃の娘と同い年だと思われるかもしれない。

 

「うう……BB2ndやリップちゃんが羨ましいぃ……」

「ブフゥー!!」

 

 娘の言葉に俺が吹き出した。

 今回はまだ起こっていなかったのですっかり忘れていたが、メルトリリスが相手だと他の2人とも関係を持っている様だ。

 

(またか……!)

 

「うふふふ……あらあら面白い事を聞いたわよ、ねぇ? お父様ぁ?」

 

 メルトの足、棘の先端が俺の首元で輝いた。

 

「……なーんて、冗談よ。私が結婚すれば余計なのが付いてくるなんて、簡単に予想できていたわ」

 

 あっさりと先端が遠ざかり、俺は安堵した。

 

「でも、私が正妻なら何も問題無いわ。BBとリップがいても、一番美しい私が一番愛されるなら何にも不満は無いわ」

 

 メルトの服に隠された少女の手が僅かに震えながら俺の両肩を包んだ。感覚の鈍いメルトリリスは首を這う様に腕を動かして、抱き着いた。

 

「さぁ……受け入れて。私の愛を――」

 

 耳元で囁く。命令の様な口調ではあったが、少女の様な甘い声にも聞こえた。

 

「……駄目っ、駄目っ!」

 

 突然、メルトリリスの娘――では無く、ベッドの下から声が聞こえて来た。

 

「マスターは……私と、一緒にいてくれる御方です!」

 

 ヌルリとベッドの下から現れたのは褐色肌の暗殺者、静謐のハサンだった。

 

 その姿を見た瞬間、メルトリリスは俺から離れて戦闘態勢となった。

 

「驚いたわね……いくら感覚が鈍くてもこんなに近くにいるサーヴァントに私が気付かないなんて……マスター、とんだ変態がストーカーをして――っ!」

 

 軽口を叩くメルトリリスの顔が驚きと共に強張った。

 その理由は自分の娘が静謐に抱かれた上で、その姿を彼女と同じ褐色肌に白いワンピースを来た女の子に変えたからだ。

 

「これで……貴女の子供は……もういない」

 

 そう呟きながら愛おしそうに自分と同じ大きさの子供を撫でる。

 

 大人しそうな静謐の娘は、母親とは違い長い髪に水色のリボンを着けている。母親にギュッと抱き着いているその姿は仲の良い双子と見間違えるかもしれない。

 

「…………」

「娘にも触れていられる……マスターのおかげです。ふふっ」

 

 メルトリリスが無言で静謐に迫った。それだけで俺は次の行動が読めた。

 

「消えな――」

「令呪を持って命ずる! メルトリリス! この場から去れ――!」

 

 静かに振り上げられた足より早く、俺の手の甲の光がメルトをこの場から消し去った。

 

「マスター……!」

 

 思わず、静謐を守る形になってしまった。

 言うまでもなく、静謐からは感激され凄く嬉しそうな目で見られている。

 

「お父さん……!」

 

 娘と静謐に同時に抱き着かれた。どうやら内気な娘に成長した様だ。

 

「毒が……」

「うん……お母さんから受け継がれたの」

 

 娘から感じた甘い匂いに静謐は悲んだ。

 

「ううん、大丈夫。私の毒はちゃんとコントロール出来るから」

「……コント、ロール……?」

 

「うん」

 

 そう言って手の平を俺の前に――って、俺で試すな。

 

「媚薬と惚れ薬だよ、お父さん」

「ちょっ、何を……!?」

 

 吸ってしまったら最後、頭がフワフワし始め体は徐々に体温を上げていく。

 

「……お母さんをイッパイしてあげてね?」

 

 母親の幸せを願う良くできた娘だとか、そんな感想が頭の片隅で思い浮かんだがそんなに呑気していられない状況だ。

 

「あ……ぅ、ぁ……」

 

 思考が定まらない……本能が剥き出しになる。

 

「ま、マスター……大丈夫ですか!?」

「お母さん、今のお父さんは落とせるよ。頑張って!」

 

「う、うん……! マスター、まずはキスから……」

 

 迫る唇。今キスされたら絶対に恋に堕ちる自信がある。

 ……だが、手はある。

 

「アトラス院礼装【イシスの雨】!」

 

 すっかり忘れていたが弱体化解除のこれがあれば、どんな状態異常も効かない。 

 だが……

 

「2度目は無い! 逃げる!」

「ぁ……マスター……」

 

 俺の後を追い掛けて来るが静謐の足取りが遅い。ならばこのまま逃げてしまおう。

 

「勝った! 第二未来家庭図完――!?」

 

 ドアの前に立ち壁に取り付けられたボタンでドアを開こうとした瞬間、ドアの下から少しづつ部屋に入ってくる青い液体に思わず足を止めて驚いた。

 

「うわっ、な、なんだとっ!?」

 

 何処からどう見てもメルトウィルスだ。だが、メルトは先程令呪で退場させたばかりの筈だ。

 

 そう思った時、部屋のモニターが付いた。

 

『帰って来て上げたわよ……マスター。

 さあ、早く扉を開けなさい』

 

 怒りの無い声……には聞こえないが、メルトリリスが部屋の外側からモニターを通して声を発しているのは理解できた。

 令呪で特定の場所を指定しなかったから、思ったよりもずっと早くメルトが戻ってきた様だ。

 

『早く、早く開けなさい! ……まさか、私以外の女と肌を重ねてなんていないでしょうね!?』

 

「お父さん!」

「捕まえ、ました……!」

 

 俺が戸惑っている内に、後ろから静謐母娘が抱き付いてきた。2人の手は俺の鼻を抑えるようにおかれ、嫌でも俺はその匂いを嗅いだ。

 

「興奮剤、媚薬、惚れ薬」

「あ、安全面も考えて……薄めておきました」

 

『マスター!? もういいわっ、今すぐ壊してあげる!』

 

 何かを切り裂くような音ともに扉の外側から棘が生えてきた。

 

「邪魔が……」

「お母さん、どうします?」

 

 その間にも一切手を離さないので俺の体は薬によって本能の化け物と化していた。

 

「……漸く開いた! マスター、溶かされる覚悟を――ッキャ!?」

 

 刺激的な格好で部屋に入ってきたメルトリリスに向かって抱き付いたのは本当に仕方がなく、どうにも出来ない事だった。

 

「ちょ、ま、マスター!? いきなりなんてそんな……あ、駄目っ! 剥ぎ取らないで……!」

 

 結局、その場でメルトリリスに襲いかかった事で、メルトの娘が戻ってきたと同時に放たれたウィルスで俺は気を失ったのだった。

 

 

 




次回に続きます。

ジャンヌ・オルタが引けませんでした……
やはり新年で運を使い果たしたか……
すり抜けで三蔵ちゃんは来たけどね。

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