ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

88 / 162
遅くなりました。空の境界コラボが原因です。
いつも通り爆死しましたが、今は駐車場で周回してます。





第二ヤンデレ家庭未来図 五

 

「父上、行為が始まる前から絶望と強姦に満ちた目をしていますが大丈夫ですか?」

「ぱぱー、しんじゃだめー!」

「母上、父上の代わりに私が!」

 

 娘に三者三様の反応をされる程に、俺の目は深い絶望に閉ざされているのだろう。

 もはや顔にレイプ目と書かれているレベルだ。

 

「こんな弱い男から私が生まれるか心配です」

 

 スカサハの娘は辛辣だった。というか、こんな状況のお父さんをそんなつまらなそうな目で見ないで下さい。

 

「確かに、私と結婚する……には戦士として些か力が足りていないかもしれんな」

 

「だいじょうぶだよー。ますたーはねー、そういうふりがとくいだから」

 

「うむ! 死んだ魚の様な目の奥に、活路を開こうとする輝きがある! だが、獅子は兎を狩る時も全力で、の言葉に習って余も本気で奏者を骨抜きにして見せよう!」

 

 っち、駄目か。

 鎖に繋がれサーヴァントに囲まれた俺に出来る事は無いのでせめてそういう雰囲気にならない様にと死体になったつもりだったが上手くは行かない。

 ならばプランBだ。

 

「【オーダーチェンジ】!」

 

 サーヴァントを入れ替えるスキルを厄介そうなスカサハに使った。

 

 因みにこれを多用しない理由は2つ。

 

 入れ替えられるのは今日の悪夢の中で出会ったサーヴァント同士だけと言う制約。

 それと、入れ替えたサーヴァントは直ぐに戻ってくるので寧ろ数だけで見れば増える。

 

「……タマモだ!」

「ミコーン! ご指名入りましたぁ!」

 

 だが、保管室に入れられたサーヴァントと交換すれば戻っては来ないだろう。

 

 その場から消えたスカサハの代わりに、天からタマモが降ってきた。

 

「む、先程のキャス弧ではないか!」

「めんどうなやつ、ふえた」

 

「きゃー! マスターが壁に鎖で繋がれている所に呼び出されるなんて、これなんてアピールチャンス!?

 タマモのヒロイン力高過ぎー! 高過ぎてカンストしてますぅ!」

 

 保管室で何があった。

 テンションが可笑しい。

 

 テンションの高さに押されてか、3人の娘は消え去って今はタマモの娘だけが残った。

 

「あいしょうてきに、ふらんがゆうり!」

「限定星5の力、どうかご覧あれ!」

 

 なんの躊躇いもなく、水着フランは剣を振りかざしタマモに襲い掛かりタマモも負けじとパラソルで応戦する。

 

「……ふわぁ」

 

 と思いきや、おでこに御札を貼られたフランはタマモに向けていた武器をぶらりと下げた。

 

「真夏の呪術です!」

「うーがー……」

 

 どうやらフランを魅了した様だ。口数が減って元のバーサーカーみたいになった上に、御札のせいでキョンシーに見える。

 

「とーさん、大丈夫?」

 

 娘は御札を俺を縛っている鎖に貼り付け、魔力を込めて粉砕した。

 

「ありがとう」

「ううん、どう致しまして。それよりかーさんなんかヤバイよ? 水着なのに魔力最大って感じ」

 

 娘の指差す方では水着ネロをフランを使って容赦なく攻め立てるタマモの姿があった。

 

「ほっほっほ! 自慢の砲撃はどうしましたかネロちゃま!?」

 

「ぐぬぬぬ……マスターを背に戦うとは卑怯だぞキャス狐!」

「これが元キャスターと即席キャスターの知能の違いです! さあ、愛しの我が娘、今の内にマスターを安全な我が家に!」

 

「はい、お母様」

 

 これは好都合だ。これなら外に出て他のサーヴァントと会える。

 

 そう思った俺にタマモはゆっくりとした動きで首をこちらに向けて話し始めた。

 

「ますたぁ……次にお会いした時には結婚しましょう。もしその時に他のサーヴァントに現を抜かしている様であれば…………おわかりですよね?」

 

 釘を刺された。

 

「それじゃあ、行きましょうお父様」

 

 母親の手前、敬語で喋る娘に手を引かれてその場を後にした。

 

 

 

「……マスターが出て行った今、余の砲撃を阻む者はいなくなった! 今度は派手に撃たせて貰うぞ!」

「んー、あんまり派手には暴れないで下さいまし? そう言うのってセレブ的に面倒です」

 

「そもそも、マスターを逃したのが失敗だぞタマモよ! これで余の砲撃は自由だ!」

「いえいえコレで良いんですよ? だってマスターに――」

 

 ――他のサーヴァントとの魔力補給なんて、あまり見せたくないじゃないですか?

 

 

 

「とーさんはさぁ、かーさんが逃がしてくれると本気で思ってたの?」

 

 娘の煽りスキルの高さを実感しつつも、その正論に押し黙った。

 

 何故なら部屋を出て1秒程度で出待ちしていたタマモキャットに目に見えない速度で飛び掛かられた上で抱っこされて連れ攫われているのだから。

 

「ご主人、ラブラブスイートタイムにいざ参ろうワン! キャットも元気なマイガールの姿に喜びと驚きと欲情を隠せない!」

 

「かーさんはやる気満々ね、娘の前でも恥ずかしくないのかな?」

「いや、欲情は隠せよ。一生出すなよ」

 

 なお、娘はピンク色の髪のままメイド服に変わっている。母親が同じタマモなせいか性格少々サバサバしているし、キャットの前でもとーさんかーさんと呼んでいる。

 

「未来でも大体こんな感じだから」

「マジか」

「諦めて元気な私を産んでね?」

 

 娘にそんな事を言われて項垂れる。

 

「よーし! 着いたぞマスター! キャットのこのジーニアスな頭が弾き出した完璧な要塞なのだ!」

 

 そう言って潜ったドアはカルデアの食堂だ。

 その先には数人の人影があった。

 

「あ、来ましたね!」

「娘も無事に回収したようね」

 

 1人はランサークラスのサンタさん、ジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィ。

 2人目はキャスタークラスのエレナ・ブラヴァッキー。

 

「っげ……!」

「あら、人の顔を見てそんな声を上げるなんて、全く失礼しちゃうわ」

 

 ロリ系のサーヴァントを見た俺は少女である2人との間に娘が出来る未来に恐怖した。

 

「事情はナーサリー・ライムさんから聞いてます!」

「なんでもマスターの娘の顔が見えるらしいじゃない! ぜひこの目で確かめたいわ!」

 

 なんかはしゃいでるが俺は微塵も面白くない。

 

「てな訳で、キャットはご主人を逃さない様に最高の愛の鎖、愛妻料理を作るワン! 者共、それまでマスターの護衛を頼むぞ!」

 

 そう言ってキッチンの奥へと消えたタマモキャット。同時に俺の横の娘もその姿を変えた。

 

「……お母様」

 

 そして先程の派手な髪とメイド服とは打って変わって、暗い紫色のフードとローブに見を包んだ娘の姿があった。

 

「貴女、その姿は……」

 

 母親だと思わしきエレナは少し近づいて娘を見上げた。身長は俺より少し低い程度なのでやはりエレナとの身長差は大きい。

 

「……」

「……」

 

「「マハトマ!」」

 

 完璧なタイミングでハイタッチした。

 

「良いわ、凄くマハトマね!」

「今日のお母様も、凄くマハトマです!」

 

「その服、魔術師のマスターと私、両方のイメージを取り入れているのね!」

「この感じ……今より高いマハトマを感じます!」

 

 謎の褒め合いが始まった。

 またなんか置いてけぼりにされている。

 

「トナカイさん! 私も早く、私の娘の顔が見たいです!」

 

 ジャンヌ・リリィにそうせがまれるが俺はこれ以上娘を出す気は無い。

 

「え、お父様って……ロリコンなんですか?」

 

 そして娘に引かれた。お前の母親はロリには入らないのか。

 

「? お母様はお母様です。それよりも、そんな小さい娘に迫られていてはお父様がロリコンだと思われてしまいますよ?」

 

 なるほど、エレナの低身長はロリでは無いと……

 

「トナカイさんはロリコンじゃないです! 私の為に(再臨素材と)お金を沢山使って、沢山(周回を)頑張ってくる優しい人です!」

 

「うーん……確かにそうだけどその言い方だと……」

「ロリコン……援交……」

 

「やめろ! それ以上言うな」

 

 母娘からのロリコン認定を否定しつつ、俺はリリィの頭を撫でる。

 

「むぅ……子供扱いしないで下さい!」

「でもリリィ、俺の嫁も娘は1人だけで今はエレナだから」

 

 俺がそう言うと、リリィは俯いた。

 

 そしてその両手に旗を出現させた。

 

「じゃあ、エレナさんを殺せば良いんですね?」

「あら、物騒なサンタね。遊び相手が欲しいなら、良くってよ?」

 

「ふむ、邪魔者同士で潰し合うならばそれもいいが、今はご主人の食事の時間だ、邪魔をするではない」

 

 そう言ってキャットは俺を挟んで睨み合う2人の机上に異なる料理が盛られた皿を7枚も置いた。

 

「…………」

「うむ、言わなくてもご主人の言いたい事は良く伝わるぞ。私の意図をよく理解してくれた事もだ」

 

 豪華に、贅沢に作られ並べられた料理の数々はどう見ても勢力増強として有名なニンニクやニラ、鰻等の食材が使われている事が分かる物だらけだ。

 

「ふふふ、本当にご主人を手に入れたいできる女は目の前の幻になんぞ興味は無い。キャットは愚直に、貪欲にご主人と本物の娘を手に入れるだワン!」

 

「「なっ!?」」

 

「ふふふ、ロリババアやロリサンタなんぞには真似出来ない家事スキルにご主人は喜び、性の昂ぶりを存分に私にぶつけるのだ!

 これこそワンナイト人狼! 一生の過ちである」

 

 よく分からんが発情している事だけはよく分かった。

 

「なので、今の内に娘と会話すればいい。キャットはマスターを愛でるのでな!」

 

 キャットの言葉が終わると、娘の姿が再びメイドとピンク色の髪の組み合わせに変わった。

 

「え、う、嘘!?」

 

 どうやら今の言葉でキャットへと運命が向きを変えたらしい。

 

「ワハハハ、どうやら精神的にキャットに敗北したらしいな。理性に縛られた哀れなインテリプリズナー共よ」

 

 エレナの顔はこのヤンデレ・シャトーでは珍しい事に憤怒によって赤く染まった。

 

「……屈辱……屈辱だわ!」

「っそ、そんな筈……!」

 

 ジャンヌ・リリィは年相応と言うべきか、泣きそうである。

 

「ほほう? 今度は気に入らないから力づくか? 良いぞ? キャットは今幸せで有頂天、魔力も力もボルケーノの如く溢れ出る故、小娘の1匹や2匹、さくっと仕留めてやるワン!」

 

 爪を顕にし威嚇、挑発するキャット。本気で2人に勝てるつもりだろうか。

 

「とーさん、こっちこっち!」

 

 娘は俺を引っ張ってキャット側、キッチンの奥へと避難した。

 

「あの状態のかーさんはヤバイよ」

「未来で何かあったのか?」

 

「うん。とーさんがかーさんのそっくりさん達に襲われそうになった時もあんな状態になったの」

 

 そっくりさん……タマモナインの面々だろうか。

 

「全員、ものの数分で英霊の座に返された」

「嘘だろ!?」

 

 狂化でステータスが上がっているとはいえ、キャットと他のナイン達のステータスは同じ位の筈だ。

 

「それって、いま結構やばくない?」

「因みに、あの状態になった後はとーさんに迫ってイロイロ甘えるから」

 

 そこまで聞いた俺は、視界を手で抑えると食堂の出入り口を見た。

 

「逃げようか」

「とーさん、もう結構色んな人から逃げてなかったっけ?」

 

 確かに。保管室にいるであろう2人以外に何人かは戦闘不能だろうけど、俺を捕まえようとしているサーヴァントは多いだろう。

 

「サーヴァントを誰も連れないで廊下に出たら危なくない?」

「一理あるけどこのままだと父さんの貞操が……」

 

「んー、私的にはかーさんに食べられちゃう方が良いんだけどなー」

 

 そう言って俺の両肩に手を置くと軽く体重を掛けてきた。娘なりに俺を抑える気らしい。

 

「だから、もうちょっとここに居てよ。ね?」

「いや、そんな甘え方されても素直にはいって訳には行かないだろ」

 

 俺はそう言ったが娘は両肩の手を俺の首にまで伸ばしてくる。

 

「……カエルの子はカエルだよ、とーさん」

 

 ――耳元でそう囁かれて漸く、自分の娘の歪みを見た気がする。

 

「他の私がどうだったかは知らないけど、私もとーさんが大好きだよ? ファザコンでゾッコンって感じ」

 

 ギュッと抱き着く娘の声に若干、慣れ親しんだ重く暗い色が混じっている。

 

「だけどねー、かーさんとの結婚を平気な顔で薦められるほどじゃないからキスしてくれたらこの手を離してあげる」

 

 子供っぽいイタズラな声でそう言った。

 

「…………ねぇ」

「いや、俺はーー」

「――ごめんなさい、時間切れですお父様」

 

 急な敬語、父娘の絆というべきかその意味は直ぐに理解できてしまい、反射的に振り返った。

 

「お待たせしました、マイ、ダー、リン! 貴方のタマモちゃんが迎えに来ましたよー!!」

 

 テンションの高い水着タマモが食堂にやってきた。

 

 そして、エレナとジャンヌ・リリィを床に伏せさせる程のダメージを与えたタマモキャットは顔を上げ地面を蹴って迫った。

 

「来やがったなタマミシャーク! ちょうど良い、今宵のキャットは血に飢えているワーン!!」

「あら、番犬の使命を与えてあげたのにマスター欲しさに私を裏切った子猫さんじゃありませんか」

 

 跳んで空中から迫る鋭い眼光のキャットに、余裕の表情でパラソルを開く。

 

「まあ、私以外のナインなんて今の私にとっては養分でしかありませんけどね?」

「ニャハッ!?」

 

 キャットの腹貫く様な勢いで放たれた蹴り。その一撃に悲鳴をあげ、キャットは地面へと倒れた。

 

「狂化スキルと怪力、それと普段の面倒見の良い純真な心を一時的に捨てて容赦を失くす、クラス通りバーサーカーになる技の様ですけど……残念ですが、保管室のサーヴァントを含めて4騎から奪った魔力の前では赤子同然ですね」

 

「ニャンと!?」

 

 唯のチートだろそれと心の中で突っ込んだ。ランサーの速さに加えて魔力で筋力を強化しているのでバーサーカーと互角以上の戦闘能力を誇っているらしい。

 

「但し、これは全てのタマモお母様に言える事ですが……自己強化した後は暴走、羞恥心、自己嫌悪に陥るのでお父様と一緒に寝るのが前提の大技です」

「デメリット全部俺行きな訳ね」

 

 途方も無いパワーインフレの代償が俺の身一つとは……デカイのかデカくないの分からない代償だ。無論、俺にとっては大問題だが。

 

「そう言う訳でして、ヤラレ役、ご苦労様です」

「ならば! ニャン王拳4倍ニャ――ガハッ!」

 

 本気を出すつもりだったであろうキャットの腹に再び容赦の無い蹴りを放つと、その身をクルリと翻して水着タマモは俺を見た。

 

「ふうう……まさかネコ科気取りの分際で送り狼をしようだなんて、我が側面ながらなんとも愚かでしょう。

 さっさ、旦那様? お見苦しい所をお見せ致しましたが今度こそ夫婦一緒、親子仲良く帰りましょう?」

 

 そう言ったタマモは胸から御札を取り出して壁に貼った。

 

 どうやら瞬間移動の類いの様だ。

 娘に背中を押されながら食堂の壁から部屋へと入ったが、通り抜けた先で何故か水着タマモは部屋の両手を付けて落ち込んでいた。

 

 

 

「ああ……セレブでありながらあんな蹴り……絶対にマスターに引かれました……

 しかも魔力補給の為、女性が相手とは言え、マスター以外に唇を重ねるなんて……タマモ、良妻失格です…………」

 

 

 

「あれがお母様の自己嫌悪モードです」

「本当に落ち込んでる……みたいだな」

 

「ええ、面倒臭い事にこの状態になると私とお父様の声しか聞こえません」

 

 あれ、でも放っておけば今まさに脱出チャンスなのでは……?

 

「――痛っ!?」

 

 しかし、扉を開けようとした俺の手に電流が走った。

 

「自分の失態に落ち込んではいますが心の奥では励まして欲しいので部屋全体に結界を張ってます。元に戻るまで出れません」

「メンドくさっ!」

 

 

『ピン、ポン、パン、ポーン』

 

 突然、アナウンスが鳴り響いた。因みに今の音は呼び鈴では無く女性の声だった。

 

『えー、アルテラ・サンタからのプレゼントのお知らせじゃ。

 このヤンデレ・シャ――もとい、カルデアに今、「マスターと娘が欲しい」と言う願いが溢れているのだ。このままでは保管中の聖杯に影響が出ると見て、アルテラ・サンタがマスターの娘を全サーヴァント分召喚したので各サーヴァントは受け取りに来てくれ』

 

『なお、マスターは別だ。このカルデアで唯一のマスターは只今タマモちゃんサマーの部屋にいるそうだ……

 ……ん? どうした我が娘よ? え、マスターに言いたい事がある? 良いぞ、このマイクに向かって喋ってみろ』

 

『父上……浮気は悪い文明、っめ!』

 

『っ! そ、そうだな! そうだぞマスター! 浮気は悪い文明! 私も今からそっちに行って破壊してやるからな! 因みに夕食はシチューだ!』

 

 

 

 こうしてアナウンスは終了した。

 

「お父様、どうやら事態は更に悪化したみたいですね」

「あははは…………どうやらそろそろ命日みたいだ」

 






タマモちゃんリターン!

作者的には他の未登場サーヴァントがいるから控えて欲しいなーなんて思ったりして……

今回割と雑な扱いになってしまったエレナとジャンヌ・リリィも、もしかしたら……?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。