ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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どうも、スラッシュです。
最近、子猫を2匹飼い始めまして、私事ではありますがヤンデレ・シャトーの執筆に時間が割れず遅れてしまっています。

何か不満点や問題点があれば感想欄に、誤字脱字報告もよろしくお願いします。



第二ヤンデレ家庭未来図 六

 

 アルテラ・サン[タ]のアナウンスにより、未来から来た俺の娘が全サーヴァント分流出された。

 

 これにより(俺に)どんな悪影響があるかと言うと――

 

「「ママ!」」

「母様」

 

「こ、これが私の娘! ああ、純粋で可愛い! ママ、嬉しくってお菓子あげちゃうわ!」

「流石私の娘ね! きっと私と同じ位、世界一キュートで可愛いスーパーアイドルになるわー!!」

 

「未来の母様と父様に造って頂いた娘です。とある事情により機体名と番号は伏せさせて頂きます」

 

「この私が――創造主、ですか?」

「はい。この身には偉大なる母様の技術と父様の想いを宿しています。15年で多く事を学びました。感謝してもし切れません」

 

 ――母性に目覚め、積極的になる。

 

 

「母上!」

「なるほど、私の娘だと言うだけあって強く鍛えられている様だな……だが、その格好はなんだ!」

 

「っは! 父上から頂きました!」

「マスターか……だが、娘のお前がそんなに美しいと母親の私まで近所中に美しいと思われ広まってしまう……! ええい、今すぐ家族会議だ! お前の服装に関して、今すぐ見直さねばならん!」

 

 ――娘を既に在る者として扱い、夫婦になっていると誤認する。

 

 

「……マスターと私の娘」

「はい、そうです。お母さん」

 

「嬉しいです……けど……

 マスターは怪物にならなかった私の事を……強く成長しなかった私を、受け入れてくれたんですか?」

「勿論ですよ! 伯母さん達と一緒に、皆で暮らしているんです!」

 

「っ! それは駄目です! 愛される女神であるお姉様達と一緒なんて……マスターが私の事、見てくれる訳が……」

「大丈夫です! お母さんはお父さんの一番です! だから今すぐに、お父さんを縛り上げて愛し合いましょう!」

 

 ――娘に励まされ、やる気を滾らせる等、その矛先である俺への負荷が半端ないのである。

 

 

 

「……結界、保つと思う?」

「無理ですね。

 お母様の落ち込んだ時に張る“悲除傘・頂戴一心”はそんなに丈夫じゃないですし、魔力を回しているお母様は周りが見えていないので魔力を込めたりしません」

 

 宝具名で遊ぶなと言いたくなる名前の結界だな。

 もしかしなくてもこれは袋のネズミなのでは?

 

「ならばお母様を励ましてあげてください」

「えぇ……」

 

 嫌だ。絶対に嫌だ。

 

「でもするしかないんだよなぁ……」

 

 サーヴァント達はすぐにやってくる。ここにいればいるだけ危険度は増していく。

 

 俺はいつの間にか嘆くのを止めて膝を抱えて座り込んでいる水着タマモに近付いて声を掛けた。

 

「タマモ……」

「……ま、マスター……面目ございません」

 

 本気で落ち込んでいるのか普段のウザさもすっかりなりを潜めている。

 

「まさか冬場にも関わらず娘見てテンション上がって魔力吸い集めた上にバーサーカーを筋力で粉砕するなんて……セレブが聞いて呆れますよね……」

 

 今回自分が行なった全ての事に大して反省している様だ。許してやると付け上がるのでどう慰めようか。

 

「まあ、そうだろうな」

「はい……タマモ、大変悲しいです」

 

 取り敢えず一旦下げて見た。よし、もう少し追い詰めてから持ち上げてみよう。

 

「娘欲しさにその場のテンションに身を委ねるとか、バーサーカーじゃないんだから」

「ランサー失格です……優雅も何もあったもんじゃございません」

 

「はぁ……で――っおい!?」

 

 まだ話の途中だと言うのに水着タマモは俺に抱き着いた。

 

「うわぁぁぁん!! タマモ、反省してますぅ! どんなお仕置きも甘んじて受けます! ですからマスター、タマモの事捨てないで下さいまし!」

「取り敢えず放せ!」

 

 ヤンデレと言うか素のタマモの様に泣きじゃくり始めた。

 

「まあ、そうなりますよね」

「ちょ、ちょっと助けてくれ!」

 

「お母様の抱擁はお父様が受け取って下さい」

「あ、お前知ってたな!?」

 

 ヤンデレの依存とかでは無く絡み酒の様なハグ。娘はこんな面倒な起こる事を事前知っていて俺に押し付けたのだろう。

 

「マスター!」

「離れろぉぉぉ!」

 

 

 

 結局、慰める所か余計に時間を消費してしまった。当然、こんなに時が経ってしまえばサーヴァントが来てしまうのは当たり前だった。

 

「迎えに来たわよマスター。

もう娘もいるんだし、呼び方は変えたほうがいいわよね? お父さん? ダーリン? それとも、あ・な・た?」

 

 そんな特に違いの見当たらない3択を問い掛けて来たのは白髪で褐色肌のロリっ娘、アーチャーのサーヴァント、クロエだ。

 アルテラ・サンタのアナウンス通り、娘は無事に彼女の元に届いている様で、同じ色の肌と髪の美少女が隣にいる。

 

「お父さん、また別の女の人に捕まってるんだ」

 

 なお、水着タマモと娘も侵入者の姿を捉えているが、現在俺がタマモの抱擁を娘に擦り付けたので母娘揃って行動不能だ。

 

「この子、私と見た目そっくりだけど、中身はマスターそっくりなの! 私達の未来が安泰ね!」

「……お母さん、他の女とその娘がいるのに安泰なんて言ってて良い?」

 

 すぐさまクロエの手に投影される宝具。

 

「大丈夫大丈夫! 今から居なくなる人の事なんかどうでも良いでしょう?」

「物騒だからやめてよ」

 

 そう言って娘はクロエが即座に投影した武器に触れると魔術を発動させて玩具の剣に変えた。

 

「っちょ、嘘!?」

 

 クロエは驚いた。自分の魔術で造り出した宝具がこうもあっさりプラスチックに変えられたのだから当然か。

 

「私の魔術属性は干渉だよ。魔術に関する物なら、大掛かりな魔術でもない限りそれを変化させられるの」

 

 なんと、珍しい事に娘がヤンデレのストッパーとして機能している。

 

「あ、お父さん今ので100円だからね」

 

 しかもちゃっかりしてる。

 

「お母さん、短絡的なのは良くない。

 お父さんに愛して欲しかったら、剣じゃなくてお父さんの手を握ってあげないと」

 

 娘はそう言ってプラスチックの剣にもう一度触れた。

 手錠が出てきた。

 

「って、それも駄目だろ!?」

「お父さん、流石に結婚相手のお母さんに浮気相手を見逃せ、自分も許せは横暴だと思うよ?」

 

「だから結婚なんてまだしてない――!?」

「――ウフフフ……良い子でしょう? ちゃーんと私達の事を考えてくれる偉い子なのよ?」

 

 一回の跳躍で俺の目前まで迫ったクロエは俺を下から見つめながらジュルリと唇を撫でた。

 

「だから私達もラブラブで幸せな夫婦になりましょう? 大丈夫よ。私だけに興奮するロリコンさんにしてあげるから……ね?」

 

 上目遣いで手錠を勧めてくるが、誰がそんな物を受け取るか。仕方なしに【ガンド】を発動させてクロエを狙う。

 

「【ガ――」

「――ロマンチックじゃないからダーメ」

 

 無情にも娘が魔術を起動させガンドの魔力が拡散した。

 

「魔力がもったいないわね……はむっ」

 

 クロエは指鉄砲で向けられた指を舐めると、そこに僅かに残っていた魔力を吸った。

 

「ん……やっぱり、キスのが美味しいわね」

「チェストォォォォォ!!」

 

 クロエは俺を突き飛ばして自身は後ろに跳び退いた。

 

 その間を狐色の閃光が通り過ぎた。

 回避に成功したものの、部屋の壁には穴が空いて隣の部屋と繋がってしまった。

 

「あ、危ないわね!? マスターごと仕留めるつもり!?」

 

 当然ながら飛び蹴りを放ってきたのは先程まで部屋の隅で娘を抱いていた水着タマモだ

 

 煙の中から飛びてて俺の前に立つと殺気立った瞳でクロエを睨む。

 

「おいたが過ぎたマセガキは、大人の私がガツンと拳骨を落として差し上げましょう!」

 

 その言葉にクロエは笑って双剣を投影した。

 

「生憎、貴方みたいな年増のオバサンに負けるつもりは無いわよ!」

 

 2人が戦闘を始めた。

 

 しかし、遠目見ていた俺はもう1つの脅威に気付いてしまった。

 

 金属音の鳴り響く部屋のドアが、何かをぶつけられて今にも壊れそうだ。

 

「娘は……全員に配られてるから別に連れて行かなくてもいいか……」

 

 なので俺は独りで、先のタマモの蹴りで空いた穴から脱出した。

 

 その部屋から退室したのは、丁度隣の部屋に複数の足跡が入っていった後だった。

 

 

 

「やばいな……今までと違ってサーヴァントの動きが激しい。カルデア中で動いてるみたいだ」

 

 廊下を後ろに娘を乗せながら馬で駆けているアルトリア・オルタをやり過ごした俺はこの状況で逃げ続ける方法を考えていた。

 

(自動販売機の後ろに隠れ続けるのも限界だし……そもそもこの悪夢、全員に娘を見せると覚める仕様じゃなかったか?)

 

 これは俺が直接1人ずつ会わないといけないだろうなと思いながら、廊下の様子を伺う為に顔を動かした。

 

「マスター、見つけた!」

「うぉ!?」

 

 急に大きな帽子に……じゃなくて、フランス王妃、マリー・アントワネットに見つかった。

 

「お父様……かくれんぼのおつもりですか?」

 

 そして隣にいた娘には呆れられた。

 

「いいじゃない。マスターだって童心に帰って遊びたい事があるのよ、ね?」

 

「お母様、私、どう見てもお父様はお母様達から隠れているようにしか――」

「――私から隠れるなんて、そんなわけないじゃない? ね?」

 

 マリーは娘の口に人差し指を置いて笑顔で黙らせた。

 

「は、はい……そうです、ね」

「うんうん、私はマスターが大好きで、マスターも私が大好き! 相思相愛の相手から逃げるなんて……そんな悲しい事、マスターがする訳ないもの」

 

 マリーの言葉には一切の悪意がない。本気で俺の事をそう思っている様だが、娘の方は正常でまるで白百合の騎士、デオンの様に彼女の意見を曖昧に肯定している。

 

「折角親子3人が揃ったんだから、一緒に散歩致しましょう?」

 

 どうやらマリーは普段の恋愛脳なヤンデレが暴走して、娘が既にいる者だと思い込んでいるらしい。

 本人の性格もあるからだろうが、暴れないでいてくれるなら助かる。

 

「…………」

 

 逆に娘には何処か冷ややかな、ロクデナシを見るような目で睨まれているけど。

 

 そんな状態な俺達3人はマリーを挟んで手を繋ぎながら廊下を歩き出した。

 

 こうなったらサーヴァントに出会ってこの悪夢から出る作戦で行こう。

 そんな覚悟で廊下を歩いていると前方から早速誰かやってきた。

 

「撃ち抜け!」

 

 と思ったら唐突に光の矢が飛んできた。

 

「っ!」

 

 俺へと迫る一筋の光を、マリーの娘が何処からか取り出した剣で弾いた。

 

「お父様、無事なんですか?」

「おい、無事じゃない方がいいみたいな言い方をするな!」

 

 目の前には黒髪ツインテールに赤色のパーカー。頭の中に英霊ではないキャラクターが頭に浮かんだ。

 

「……遠坂凛?」

「誰よそれ。お父様ったら、娘の事を他人と間違えるのかしら? ま、これだけ浮気相手に困らない場所ならそうなるわよね?」

 

 凛に似た人物が俺の娘なら……間違いなく、あのサーヴァントが相手だろう。

 

「でも……私とお母様を裏切ったアンタなら、始末しても良いわよね?」

 

 人差し指をこちらに向ける。その動作は指鉄砲に近いが何故かそれを見た俺は弓矢を構えた様に見えた。

 

「確かに、私達の父親はロクデナシかもしれないが……殺させるつもりはない!」

「邪魔よ。そこのクズを守るなら、アンタも殺す」

 

 娘の目は本気だ。

 どうも水着の方の女神イシュタルの娘らしいが俺が他の女性と関係を持っているのが不満らしい。(当然の事だが)

 

 下手な言い訳も聞いてくれそうにない程に、その目は俺を撃ち抜いている。

 

(娘が増えるってつまりヤンデレじゃないけどサーヴァントレベルで強い奴が増えるって事か!)

 

 今更ながら状況がどれだけ悪化しているか気が付いた。しかも娘相手だから令呪も使えない。

 

「そもそも、イシュタルは何処に?」

「今更お母様を気にするだなんて、本当にがっかりさせる男ね……!」

 

 放たれる光、再び剣が弾いた。 

 

「っ!?」

 

 しかし、放たれた光の数は2本。娘の横をすり抜けて迫る矢が俺の頭を撃ち抜くのは避けられない。

 

 が、当たる筈だった光は同じ光に遮られ、俺ではなくカルデアの壁に穴を開けた。その時の衝撃で俺は後ろ倒れたが、傷はない。

 

「……お母様、何故邪魔をするんですか?」

「いきなり親殺しをする娘を止めない母親がいる訳ないでしょ!」

 

 ピンク色のパーカーを来た黒のツインテール、ライダーのサーヴァント、水着イシュタルがそこにいた。

 

「全く、我が娘ながらとんだお転婆ね。マスター、無事かしら?」

「あ、あぁ……」

 

 イシュタルの伸ばした手を取って立ち上がる。娘は母親に攻撃するつもりは無いようで、腕をぶらりと下へ下げた。

 

「まぁ、マスターも悪いのよ? 私という女神をないがしろにするから娘に命を狙われる羽目になるの」

 

 イシュタルは俺の耳元で囁いた。

 

『あの子を引き取った時にも沢山の他のサーヴァントの娘がいてね、何人かは貴女が浮気したと思って怒って飛び出したらしいわよ』

『それって……』

『良い? 今はアンタを見逃してあげるから此処から逃げなさい。他のサーヴァントや娘も、今の騒ぎで集まっている筈よ』

 

 なんてこった。

 

「マスター、何を話しているのかしら?」

 

 唐突に先程まで空気だったマリーが俺に話しかけて来た。

 

「あんまり他の方に色目を使っていると私、色々と我慢出来なくなりそうなの……ねえ、私だけを見て」

 

 此処でヤンデレてどうするマリー……!

 

「逃げなさい、マスター!」

「【瞬間強化】!」

 

 全速力で廊下を駆け出した。

 

 

 まずは、マリーとイシュタルの娘の視界から外れる為にも角を曲がって――

 

「このまま逃げ切って――!?」

「発見」

 

 目前には見知らぬ人物がいるが、身体能力を強化した状態では急に止まれない。

 焦る俺と違って武道の達人の様に構えている女子には焦りがない。

 

「迎撃――捕縛」

「っがぁ!」

 

 理解出来ないまま俺の体は地面に叩きつけられ、こちらを見下ろす茶髪のツインテールは俺の首に手刀を向けた。

 

 痛みでろくに動けない体は、その視界が落とされる寸前で哪吒の雰囲気に似ている事だけ理解した。

 

 




そろそろこの小説も2周年目を迎えますし、次辺りで一度家庭未来図の投稿を止めてお礼企画を始めたいと思ってます。
ハーメルンに登録されていない読者さんも参加できる様に、今回はツイッターでも募集を掛けようと思いますので興味のある方は是非フォローしておいて下さい。

企画の詳しい内容は次話の投稿の後、活動報告とツイッターで発表しますのでもう暫くお待ち下さい。

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