無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦   作:ザルバ

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10 特異能力が使えない②

 小糸は朝目を覚ますとミルクを鍋で温め、カップに注ぐと砂糖を四杯入れ、溶かして飲んだ。そして声を出す。小糸が声を出すと部屋の照明がチカチカと点滅する。

「まだ完全じゃない。でも・・・・・・治りが早い。」

 晴彦からもらった薬の効果はあったようである。

 小糸が外に出るとそこにはルルと晴彦がいた。

「おはよ。喉の調子はどう?」

「一晩中いたの?」

「まさか。ちょっと早く起きてきたところだよ。」

 ルルは小糸の部屋を除く。

「へー。これが小糸ちゃんのお部屋かー。」

「人の部屋勝ってに見るな。」

 晴彦はルルを掴み部屋を見ないようにするとルルは頬を膨らます。

「一人暮らしなの?」

 ルルの問いに小糸は黙って扉を閉めた。

 

 

 一方その頃、舞たちは久瑠美と共に見回りをしていた。

「ごめんなさいね、久瑠美ちゃん。朝から付き合わせちゃって。」

「いえ、私もうさちゃんたちが心配ですし。それに前から、お姉さんたちの事かっこいいなって思ってましたから?」

「アタシたちのことを知ってたの?」

 久瑠美の言葉に舞は驚く。

「は、はい。」

「でも、危なくなったらすぐ逃げてくださいね。」

「は、はい!ドキドキです。」

 そんな話をしながら歩いていると小糸と晴彦に出くわした。

『あ。』

「わーい、みんないるー。」

「晴彦君たちも見回りですか?」

「ふん。考えることは同じだったか。」

 舞は腕を組みながらそう言う。

「無関係の子、巻き込むなんて感心しないわ。」

「ほっといて。本人の意思よ。」

 二人の間に見えない火花が散る。

「はいはい、お二人共。年下が見ているんですから喧嘩はそこまで。」

「アンタとは口聞かない。」

「あーそーですか。そーですか。」

 晴彦は諦めた口調をする。

「ルル、アンタだけでも帰ってこない?」

 ルルは考えると答えた。

「こっちの方が面白そうだからいい。」

 ルルがそう答えると小糸は歩き始める。

「水無瀬さん!じゃあ。」

 晴彦はそう言うと小糸を追いかけ始めた。

「はい、お気をつけて。」

 玲奈は晴彦に手を振った。

「あんな言い方なさらなくても・・・・」

「っ!わかってるわよ。それでも頭にくるの。玲奈もムカつかない?ああいう晴彦見て。」

「舞お姉さま、ムカつくんですか?私は晴彦君らしいと思うのですが。」

 玲奈の言葉に舞は頬を膨らました。

「なんかわかんないね、アルブレヒト。」

 

 

「いいの?私に構ってると友達無くすわよ。」

「あの人はいつもああだから。それに、小糸さんのことほっとけないし。」

 晴彦の言葉に小糸は立ち止まり、晴彦の方を向く。

「小糸さん?」

「あ、ごめん。フレンドリーになることが俺あって。怒った?」

「しっ!」

「どうしたの?」

 急に黙るように促す小糸に晴彦は問う。

「ここだわ。間違いない!」

 小糸そう言うと急に走り出した。二人がいた場所は小学校であった。

 

 

 小学校の飼育小屋に昨日のファントムが地面から現れた。タイミングよく小糸が駆け付け、上から音の攻撃をする。ファントムはその攻撃に押しつぶされる。

 が、ファントムの咆哮によって攻撃が掻き消される。

(効いてない!)

 ファントムが尻尾を振るい小糸を薙ぎ払うと三つ首の右が電撃の攻撃を繰り出す。小糸は音の壁で防ごうとするが間に合わないと思った。

「無茶しすぎだ!」

「熾天覆う七つの天環!」

 晴彦が駆け付け、熾天覆う七つの天環を展開し攻撃を防ぐ。ファントムは警戒し、その場から姿を消した。

「小糸さん!」

「その呼び方止めて!」

 小糸は尻尾が当たったところを抑えながら立ち上がると歩き始める。

「どこ行くの?」

「決まってるわ。あのファントムを探すのよ。」

「ええ!少し休んだ方がよくない?」

 ルルの言葉に小糸は答えた。

「グズグズしてたら、貴方たちの仲間に先を越されちゃうでしょ?」

 小糸はそう言うと階段を上り始める。

(やっぱり・・・・・・・・・・・・似てる。)

「ねえ、追いかけないの?」

 ルルの言葉に我に返った晴彦は小糸を追うが、その小学校の校門を出た時にはすでに小糸の姿はなかった。

「見失った・・・・」

 

 

 晴彦は小糸のクラスを訪ねた。

「え?水無瀬さんですか?」

「今日は来てないみたいですけど。」

 そのことを聞き、晴彦はアリスに聞いた。

「水無瀬さんが今回のファントムにこだわる理由?」

「はい。」

「彼女が子供のころから、強い能力に目覚めていることは話しましたよね?」

「はい。」

「実はね、そのきっかけが学校の飼育小屋を荒らしたファントムだったんです。」

 晴彦はその真実に驚く。

「当時水無瀬さんは、ファントム退治のクラブが無い、普通の小学校に通っていました。ある時、学校のウサギ小屋がファントムに襲われて。たまたまそこに居合わせた飼育係の水無瀬さんが、特異能力に目覚めて、ファントムを封印したそうなんです。

 でもあまりにも強い力だったため、教師もクラスメイトも怖がって、家族までも怯えてしまって。結局家に居られなくなって、ファントム対策局に迎えられたんです。

 それ以来、彼女は心を閉ざすようになったと聞きます。」

「その力が目覚めるきっかけになったのが・・・・・・・」

「今貴方たちが追いかけているのと同じファントムかもしれません。

 一度封印されたファントムでも時間が経てばまた活動を開始することもあるから。

 水無瀬さんにとって、ファントムと言う存在は、自分と、家族や友達との絆を断ち切った憎むべき敵なんでしょうね。」

「・・・・・・・・・・・・・無茶しすぎだよ。」

「え?」

 晴彦の言葉にアリスは首を傾げる。

「一人で苦しんでるのに、抱え込んで、俺みたいだ。」

「晴彦君・・・・・・」

「彼女に教えてあげないといけませんね。たまには助けを求めろって。それと地図ありがとうございました。」

 晴彦はそう言うと準備室を後にした。

 

 

 小糸は待ちを巡回していると耳に音が聞こえてきた。

 小糸は急いで駆ける。行先は動物園であった。

 動物園はその日は休みで、動物一匹もいない状況。彼女にとっては好都合であった。

 小糸が手摺に腰掛け時計台を見上げるとそこにはファントムがいた。

「三度も食事の邪魔をされて、イラついているようね。アンタにとっての私は、自分を封印した敵のはず。決着を、つけましょう。」

 小糸がそう言うと三つ首の中央が口にエネルギーを溜める。それに対し小糸は詠唱を始める。

「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、光を知らしめせ!」

 小糸が声を出すと同時にファントムも攻撃を繰り出す。互いの攻撃がぶつかり合い、衝撃波が発生する。小糸の攻撃がファントムを押す。

(力が戻ってきてる。いける!)

 小糸は右に走るとファントムは光弾を飛ばす。小糸はその攻撃を回避すると音の攻撃をファントムに繰り出した。ファントムは爆煙に包まれるが、その中から三つ首の左が小糸の方まで伸びる。

(首が!)

 ファントムは霧状の攻撃でまたしても小糸の声を封じる。その隙にファントムは近づき、三つ首の右が電撃攻撃を小糸に喰らわせ、小糸は倒れてしまう。ファントムは雄叫びを上げる。ファントムの三つ首の中央が止めを刺そうとした途端であった。

 なにかが刺さる音が聞こえ、小糸は顔を上げるとそこには赤い槍が突き刺さっていた。

「おうらぁ!」

 晴彦は追撃にと赤い槍を蹴る。槍は奥に刺さり、ファントムは後ろに下がりながら苦しむ。

「大丈夫、小糸さん!」

「貴方・・・・・・・・・・・どうしてここが?」

「これ。」

 晴彦は小糸に地図を渡した。

「ん?・・・・・・・・・・・・・・っ!これって・・・・」

 地図には先ほどまでファントムが出演した場所と、動物園と飼育小屋がピックアップされていた。

「最初はランダムって考えたんだけど、そうじゃなかった。一定の距離を移動してから補給しないと燃費が悪い奴だから、距離とその範囲で襲われるリスクが高い所を探ったら丁度ビンゴしたってわけ。」

「・・・・」

 小糸は晴彦に驚かされた。

「小糸さん、アリス先生から過去の話は聞いた。」

「ッ!余計なことを・・・・・」

「でも・・・・・・・・全部の根底にあったのは願いだったんだよね?助けたいって願い。」

「貴方に何が分かるの!私は何もかも・・・・・・・・・」

「失った?それは俺も同じだ。」

「っ!」

 その言葉に小糸は驚く。

「俺はこの投影をあの日に得た。でも、この力があっても当時の俺には何もできなかった。俺だけがあの地獄で願いを叶えられた。」

「地獄?叶えられた?」

 小糸は晴彦の言っていることが分からなかった。

「全てを助けることは出来ないってわかってる。決して善意で行ったとしても、それが皆に認められるわけじゃない。」

「貴方に何が分かるの!そんな経験―――」

「俺の知っている人で、そんな経験をした人がいたんだ。」

「え―――」

 小糸はその話に驚くが、ファントムが動きだした。ファントムは左右の首で赤い槍を引き抜き、左に投げた。

「話は後で!投影、開始!」

 晴彦は干将と莫耶投影する。ファントムは突進してくるが晴彦は十字に組んで受け止める。

「くっ!・・・・・・・・・・・ぬあああああああああ!」

 晴彦はファントムを押し返すと詠唱する。

「—―――投影、開始」

「—―――憑依経験、共感終了。」

 晴彦の周りにいくつも槍や剣が投影される。

「—―――工程完了(ロールアウト)。全投影、待機(バレッド、クリア)。」

 全ての武器がファントムに剣先を向ける。

「—―――停止解凍(フリーズアウト)、全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!!」

 全ての武器がファントムに向かい跳ぶ。ファントムの三つ首の中央が落とそうと攻撃するが全てを落とすことは出来ず、いくつもの武器がファントムに刺さった。

「壊れた幻想。」

 刹那、刺さった武器が全て爆発する。

「・・・・・・・・まだだな。投影、開始。」

 晴彦は干将と莫耶を投影する。爆煙からファントムがいまだ健在していた。

「晴彦!」

 舞たちが丁度その時に来た。

「先輩、そこの槍拾っといてください。」

「え?これ?」

「はい。ちょっとそれを使うんで。」

「わ、わかった。」

 舞は晴彦の言葉に従い槍を拾いにかかる。

「いくぞ、狂犬!」

 晴彦は干将と莫耶を投擲する。

「—――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(じんぎ、むけつにしてばんじゃく)。」

「—――心技、泰山ニ至リ(ちから、やまをぬき)。」

 投擲された干将と莫耶はファントムに当たるとファントムの周りを旋回する。

 晴彦は再び干将と莫耶を投影し、投擲する。

「—――心技、黄河ヲ渡ル(つるぎ、みずをわかつ)。」

「—――唯名、別天ニ納メ(せいめい、りきゅうにとどき)。」

 更に二対の干将と莫耶がファントムに当たると晴彦は三度目の干渉と莫耶を投影し、後ろで手を組みながらファントムに向かい走る。

「トレースオン、オーバートレースエッジ!」

 干将と莫耶は羽の様な剣となり、晴彦は翼を広げたような光景になった。晴彦は上に跳び、最後の詠唱をする。

「—――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら、ともにてんをいだかず)!」

「鶴翼、三連!」

 投影された二対の干将と莫耶が同時にファントムに炸裂した。晴彦は距離を取る。

「先輩、それを俺に!」

「わかった!」

 舞は晴彦に槍を投げ渡す。

「貴様の心臓・・・・・・・・・・・貰い受ける!」

 槍先に魔力が集中すると晴彦は真名を開放する。

「—―――突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!」

 槍先から放たれた魔力が一直線にファントムに向かう。ファントムは避けようと跳ぶが、攻撃がファントムの後ろ脚に当たった。その瞬間、因果逆転の呪いが発生しファントムの心臓を突き穿った。

「よし!」

 晴彦はスケッチブックが入ったカバンを拾うとスケッチブックを取り出し写生する。

(強化、開始!)

 晴彦は身体能力を強化し、スケッチを終えるとスケッチブックを前に突き出し、詠唱する。

「千早振るファントム!THOTHの天倫に虚像をさらせ!」

 ファントムはスケッチブックに封印される。

「いっちょ上がり―――!」

「小糸さん!」

 喜ぶルルを他所に晴彦は小糸の元まで駆けよる。小糸は苦しそうであった。

「どうしましょう?救急車を!」

「そんな暇はない!ちょっとゴメン。」

 焦る玲奈はアリスの顔を見て話すが、晴彦は犬歯で親指を斬ると小糸の喉に紋章を描く。

「ちょっと晴彦!」

「我、水を扱いて汝を清める。

 我、水を持って汝の邪を祓う。

 我はここに血の契約を結び、対価と共に汝を癒さん。」

 晴彦が詠唱を終えると小糸の喉の血の紋章が光り、小糸を癒した。

「・・・・・・・・・ファントムは?」

「ごめん、ここに。」

「・・・・・・・・」

 小糸は何か言いたそうだがそれを押し込めた。そんな小糸に舞は言う。

「ちょっと、ここは怒るところじゃないわよ。」

「晴彦君は、水無瀬さんのために・・・」

 その時、雨が降り始めた。小糸は溢れんばかりの感情を必死に抑えていた。そんな時アリスが晴彦のスケッチを見る。

「このファントム、水無瀬さんが昔倒したのではなさそうですね。」

『え!?』

 一同その言葉に衝撃が走った。

「昔の記録を観ましたけど、このファントムは、水無瀬さんが以前倒したものとは少し形が異なります。種類は同じだけど、四年前のファントムではないでしょう。」

 小糸はそのことに鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

「どうやら、勘違いで一条君たちを振りまわしてしまったみたいですね。」

 小糸はそのことに居られないほど恥ずかしかったが、ふと晴彦が言ったことを思い出した。

「ねえ、さっきの話。“決して善意で行ったとしても、それが皆に認められるわけじゃない”。あれってどういうこと?」

「・・・・・・・・・・・・・少し、ある人の話をしよう。」

 

 

 その人は、ある日災害に遭った。目を覚ませば広がるのは町で会った場所が瓦礫が散乱し燃える地獄であった。

 少年は起き上がると耳に聞こえてきたのは呻き、悲鳴、そして助けを求める声であった。

 だが少年にはそれを助ける力がなかった。ただその声を聴く度に涙を流し、歩くしか少年には出来なかった。

 どれくらい歩いたであろうか?雨が降り、火は大分収まったが、それでも火は残っていた。

 少年は遂に体力が着き、倒れた。

気力も無くし、もはや絶望と地獄に立たせられた少年は空に手を伸ばした。誰か助けて欲しいと、本のわずかな希望にすがった。だが誰もその手を取ることはないと、少年は思っていた。

 少年の手が落ちそうになった途端、その手を一人の男が掴んだ。

 少年が生きていることに感謝していた。まるで助けられたのは少年ではなく、その男の様であった。

 少年は男に引き取られ、共に生活をした。いつしか少年の夢は“正義の味方”になる事であった。ある日の夜、月が昇った夜に男は少年に話した。

「正義の味方を名乗るには、年齢制限がある」、と。

そんな男に対し少年は言った。

「俺が正義の味方になってやるよ。爺さんの夢は、俺が引き継いでやる。」

 しばらくして男は死んだ。

 そして少年は男になった。

 大きくなっても夢は捨てきれず、むしろ強くなった。

 そして男は、本当の“正義の味方”になった。

 男は世界を救うために、戦った。そして男は世界と契約し、この世から戦いを無くそうと召喚に応じ、あらゆる時代の戦場に召喚された。

 その度に、世界の抑止として殺し続けた。

 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し続けた。

 だが、世界から戦争が無くなることはなかった。戦う度に、殺す度に彼の心は削られていった。いつしか彼の好意は正義の行いから、作業へと変わってしまった。

 彼の心を壊す決定的なことが起こってしまった。彼が助けた人が、彼を殺し始めたのだ。

 善意で行った個あれの行動は、何の見返りを求めない余り不信感を抱いた。

 ”何や策略を考えているのではないか“、”あいつは何かを企んでいるのではないか“

 そんな思いが彼を殺す行動に至ってしまった。

 けれど彼は、何度殺されても世界との契約から死ぬことは許されず、戦い続けるしかなかった。

 どこで間違ったのだろう?何が間違っていたのだろう?

 彼はずっとそう思った。」

 

 

『・・・・・・・・・・・・』

「これがその人の話。本当は、人を助けたい願いがあった。」

「その人は・・・・・・・・・そのままずっと生き続けたの?」

 小糸の問いに晴彦は答えた。

「いいや、これには続きがあるんだ。」

 

 

 男は運命の悪戯か、過去に自分がいる時代の戦争のパートナーとして召喚された。

 男は思った。その時代で過去に自分を殺せば、今の自分を無くせるんじゃないかって。

 そして男は、過去の自分を殺そうとした。

 力の差は歴然。男の方が強く、勝っていた。

 だが過去の自分は気づいた。正義の味方になりたかったのは、助けてくれた男の夢を引き継いだものではあるが、根底にあったのは願いだと。

 誰かが犠牲にならないと助けることは出来ない。そんなことはわかっていた。それでも、誰も傷つかない幸福を求めた。

 そして男は、過去の自分に負けた。倒される直前、こう思った。

”酷い話だ。過去の自分を鏡で見ているみたいだ。こういう男がいたのだな。“とね。

 召還される際にパートナーは言った。

「貴方が私のパートナーでよかった」と。

その言葉で彼は救われた。誰かにそう言ってもらえる、それだけで彼は救われた。男は去り際に言った。

「大丈夫だよ。俺も、頑張っていくから。」

 

 

「これが俺の知っているその人の話。」

 晴彦が言い終えると、雨が降り始めた。

(雨・・・・・・・・・・・・・やっぱり、思い出すな。)

 晴彦は自分以外の人数分の傘を投影する。

「はいこれ。雨が降って来たから。」

「貴方のは?」

 小糸が聞くと晴彦はこう答えた。

「今日は・・・・・・・・・・・・濡れて帰りたいから。」

 そう言うと晴彦はその場を去った。

 

 

 翌日、晴彦が登校しようと車庫からバイクを出すと小糸の姿があった。

「何してるの?」

「なんで晴彦の家わかったの?」

 ルルの問いに小糸は答えた。

「姫野先生に聞いて来たのよ。ちょっと一条君に話があって。」

「俺に?」

 小糸は頬を赤らめながら言った。

「昨日は助けてくれてありがとう。色々とごめんなさい。」

「「っ!?」」

 小糸のまさかの言葉に二人は驚いた。

「じゃ。」

「ちょっと待って。どうせなら後ろ乗る?」

「・・・・・・・・・・・ヘルメは?」

「ここに。」

 晴彦はヘルメットを投影する。

「・・・・・・・・・・・お願いします。」

 小糸は晴彦の後ろに乗り、晴彦はバイクを走らせようとエンジンを吹かす。

(やっぱり・・・・・・・・・・・・あのバイク、晴彦くんだったんだ。)

 小糸がそう思う中、晴彦はバイクを走らせる。

 

 

 一方その頃久瑠美は一人で学校に登校していた。

「はぁ~、またお手伝いするのか~。アタシ、ちゃんとできるのかな?」

 

 

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