無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦   作:ザルバ

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オリジナルの話です。


13 キマイラを倒せ①

 朝のホセア学院のグラウンド。まだ学校には誰も来ていない時間帯に晴彦は一体の傀儡をトランクに入れ来ていた。

「アリス先生の許可は取ってあるし、大丈夫。後は上手くいけばいいんだけど・・・・・・いけるかな?」

 晴彦はトランクから傀儡を出すと心臓部を開ける。

「これにルーンを刻んでと。」

 晴彦は親指を噛み切ると人差し指でルーンを描く。すると傀儡は水を得た魚の様に動き始める。

「よし。俺の言葉はわかるか?」

 コクコク。

「じゃあ・・・・・・・・・やるぞ!」

 コク。

 傀儡は頷くと構える。晴彦も同じように構えると二人は同時に動き始めた。

「ふっ・・・・はっ!」

 晴彦が拳と蹴りを振るうと傀儡は防御を取り、そして反撃をする。晴彦もその攻撃を防ぎ、反撃する。

 数十分後、晴彦は組手を終わらせ、傀儡をトランクに収めた。

「さて、帰るか。」

 

 

 晴彦はバイクで学校に登校しているとグラウンドに生徒たちが集まっていた。

「なんだ?」

「なになに?なんかのお祭り?」

 ルルが先にグラウンドの方を見ると、グラウンドの真ん中で奇妙なファントムがいた。

「ルル、何がいた?」

「な、なんか変なファントム!ファントムって元々変なんだけどあれはこれまで以上に変なファントムだよ!」

「なんだそりゃ?」

 晴彦もグラウンドを見るとそこには驚くべき光景があった。頭はライオン、身体はロバ、尻尾はヘビ、身体にはロバの首が生えているファントム。晴彦はその姿を見て名前を口にした。

「キマイラ・・・・・・・・・だと!」

 キマイラは荒々しい殺気を放ち、グラウンドに誰も近づけまいとする。

「これは・・・・・ちょっとやばいかもな。」

 晴彦の言葉通りキマイラによってグラウンドは使えない状態になり、急遽クラブの部員全員の招集が決まった。

 クラブでは教卓にアリスが立ち、部員全員に向かって話した。

「皆さんも知っているかと思われますが、我が学院のグラウンドにファントムが現れました。とても並のファントムとは思えません。晴彦君、あのファントムはどんなものかわかりますか?」

「はい。おそらくあれはギリシャ神話に出るキマイラです。あれには誰もが苦戦すると思われます。」

「おーい、晴彦。どういう意味か説明してくんね?」

 翔介が晴彦に問う。

「キマイラってのはキメラの名でも知られている。キメラの特徴は様々な動物の特徴を掛け合わせている。つまり、舞先輩で例えると五行全てを扱えるようなものなんだ。」

「アタシの五行全てを!」

 舞は晴彦の言葉に驚く。

「けど問題はそれ以外。あの殺気から察するに手練れだ。それに能力もまだわからない。遠方と至近距離の両方から攻めて調べないといけない。・・・・・・・・・だから俺が先行して戦います。」

『えぇえええええええええ!』

 晴彦の言葉にその場にいた誰もが驚いた。

「ちょっと晴彦!なんでそう言う結果になるのよ!」

「そうですよ晴彦君。危険すぎます。」

「同感。第一、貴方一人にさせられない。」

 舞、玲奈、小糸の三人が晴彦の意見に反対する。

「玲奈ちゃんは言わなくも分かるけど戦闘向きじゃない。舞先輩と小糸さんは戦闘向きだけどどちらも一点に特化している。俺だったら近距離と遠距離、両方から攻めれるから。それに、二人は俺より特化している分戦力としての疲弊が大きいけど、俺一人だったら全体的に少なくて済む。合理的な結論です。」

 晴彦はそう言うと立ち上がる。

「もっと無いの?誰かを犠牲にしない方法とか?」

 そんな舞の言葉に晴彦は答えた。

「先輩、俺が言うのも何ですけど、誰の犠牲も無く勝つとかは無理なんです。誰かを救うということは、誰かを犠牲とするということなんです。」

 晴彦はそう言うと部屋を後にした。

 

 

 グラウンドを全校生徒が注目する中、晴彦は軽いストレッチをしていた。

「さて・・・・・・・・・いくか。投影、開始。」

 晴彦は弓と剣を投影するとつるがえ、剣を射る。キマイラはそれに気づきライオンの口から咆哮の弾を飛ばし剣を壊す。

(嘘だろおい!)

 晴彦はキマイラの周りを旋回するように走り、剣を何度も射るがその度に相殺される。

「くそっ!だったら!」

 晴彦は偽・螺旋剣を投影する。

「—――I am the bone of my sword.」

「—――偽・螺旋剣。」

 魔力を込めた偽・螺旋剣を晴彦は放ちそれはキマイラには壊されず、キマイラに刺さる。

「壊れた幻想。」

 偽・螺旋剣に込められた魔力が一気に爆発する。

「どうだ!」

 爆煙がキマイラの姿を隠す。が、爆煙の中から咆哮の弾が晴彦に向かい跳んでくる。

「っ!?」

 晴彦は咄嗟に盾を投影するがその盾はそれの前では無力で、すぐに壊されてしまう。

「がっ!」

 晴彦は後ろに飛ばされ、倒れる。

「く・・・・・・・・・やっぱ普通の盾じゃダメか。」

 晴彦は立ち上がると干将と莫耶を投影する。「強化、開始。」

 晴彦は肉体を強化すると一気にキマイラまで跳ぶ。

「はぁあああああああ!」

 晴彦は干諸と莫耶を振り下ろすがキマイラのロバとヘビによって受け止められる。

「ちぃ!」

 晴彦は干将と莫耶を離し、キマイラから離れると「壊れた幻想」と詠唱する。干将と莫耶は爆発するがキマイラにダメージはない。

「投影、開始。」

 晴彦は黒鍵を投影する。爆煙の中からキマイラのヘビが晴彦に向かい襲い掛かってくる。

「くっ!」

 晴彦は避けると右の黒鍵を刺し、左の黒鍵を振り上げ、斬る。晴彦は首を投げ捨てる形で右の黒鍵を振るう。

「これで少しは・・・・・・っ!?」

 キマイラの戦力を少しは削られたと思った晴彦であるが目の前では信じられない光景があった。斬ったキマイラのヘビの首が再生をし始めたのだ。

「おいおい・・・・・・これは反則だろ。」

 晴彦は黒鍵を構える。キマイラは咆哮の弾をいくつも飛ばしてくる。晴彦はそれを後ろに跳びながら黒鍵で相殺してゆく。

「これ全て相殺するのは・・・・・がっ!?」

 晴彦は一発方向の弾を喰らうと態勢を崩す。更に体勢を崩すように咆哮の弾が放たれる。

「ぐっ、がっ!うぁああああ!」

 晴彦は咆哮の弾の雨に倒れてしまう。

「く・・・・・」

 キマイラがじりじりと晴彦へと近づいてくる。と、そこへアルブレヒトがタックルしてくる。

「っ!アルブレヒト!てことは!」

 アルブレヒトが来た方向を見ると舞がキマイラに向かい走ってきていた。

「やぁあああああああああああ!」

 舞はキマイラに蹴りを喰らわそうとするがキマイラのロバの首が舞を咆哮の弾で落とす。

「きゃっ!」

「先輩!くそっ!」

 晴彦は弓を投影するとキマイラに向け投影した剣を構える。晴彦の周りにいくつもの剣が浮遊する。晴彦が剣を射ると雨のように剣がキマイラに向け放たれる。

 が、キマイラのライオンお顔が咆哮を上げると剣は空中で止まり、そしてそのまま重力に引っ張られる。

「そこを動かないで!」

 小糸がキマイラの後ろに立つ。

「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、標を留め置け!」

 「あー。」と声を小糸が出すとキマイラを拘束する。更に攻撃の詠唱をする。

「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べて、焔を知らしめせ!」

 「あー。」と声を出すが、キマイラのヘビの口が高い声を出し、小糸の声を相殺する。

「声を殺された!」

 小糸は驚くがヘビの口は咆哮の弾を小糸に放った。

「ぐっ!」

 小糸は後ろに弾き飛ばされる。そこへキマイラにアルブレヒトがトールハンマーを喰らわせようとするがキマイラはアルブレヒトを後ろ脚で蹴り飛ばした。

「アルブレヒト!」

 久瑠美が声を上げる。

「こんの!」

 舞は詠唱をする。

「五行万象を発生し、露なる力が水を清め、いざや!破邪顕正の戦に挑もうぞ!」

 舞の拳に五行線が浮かび上がると、舞はキマイラに向かい拳を振るう。が、ロバの口から電撃が放たれる。

「あぁああああああ!」

 舞は電撃を喰らい倒れる。キマイラは止めを刺さんと舞に近づき、右足を振り上げる。

「舞お姉さま!」

「お姉さん!」

 玲奈と久瑠美が声を上げる。

(もう・・・・・・・・・・・だめっ!)

 舞は目を瞑り諦めてしまう。そしてキマイラの右足が振り下ろされた。

「・・・・・・・・・・・あれ?」

 舞は目を開けると映ったのは男士の制服の袖。舞は顔を上げるとそこには晴彦の姿があった。

「晴彦!」

「先輩・・・・・・・・・・・・一時撤退します。」

 肉体を強化した晴彦は小糸も回収し、玲奈たちの方まで撤退する。

「大丈夫ですか・・・・先輩・・・・・小糸さん・・・・」

「え、ええ・・・・」

「何とか。」

「よか―――」

 晴彦はそこで前に倒れそうになる。

「ちょっと!」

「晴彦、アンタ・・・・・・・・え!」

 舞たちが晴彦の背中を見るとそこにはキマイラによって傷つけられた背中があった。

「晴彦・・・・・・・・・・・・・晴彦!ねえ晴彦ってば!ねえってば!晴彦!」

 舞の声に晴彦は答えず気を失ってしまう。

 玲奈と久瑠美は声にならない悲鳴を上げた。

 

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