無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
玲奈の“ファントムイーター”の能力の応用で晴彦の背中の傷は治せたが、晴彦は保健室のベッドで寝ていた。
「晴彦・・・・・・・・ごめん。」
晴彦の横で椅子に座っている舞がそう言った晴彦の側には玲奈、小糸、久瑠美、ルルがいた。
「晴彦・・・・・・・・・・・なんであんなこと言ったんだろう?」
「え?」
ルルの言葉に舞は間抜けな声を出す。
「ほら、“誰かを救うことは、誰かを犠牲にすること”って。あれって・・・・・」
そんな時保健室に翔介が入ってくる。
「失礼します。どうっすか、晴彦?」
その言葉にルルは首を横に振る。
「そっか。」
「ねえ翔介。」
「なんだ?」
「なんで晴彦は・・・・・・あんなこと言ったの?」
その言葉に翔介は気づき、重い表情になる。
「・・・・・・・・・・・先輩たちは、十年前の隣町で起きた大災害覚えてますか?」
「覚えてるも何も・・・・・・・あれは忘れることできないわよ。」
舞の言葉に一同頷く中、ルルと久瑠美だけはわからなかった。
「あの、十年前の大災害って何ですか?」
「私も久瑠美ちゃんも知らないよ。」
「そっか。二人は知らなくて当然だよね。」
舞は二人が知らないことに気づき、小糸が説明する。
「十年前に起きた原因不明の大災害。町一つを巻き込む大災害はその町に住む人全てを殺してしまったの。」
「それは違う。正確には、生存者が一人だけいるんだ。」
その言葉に衝撃が走った。
「ど、どういうことですか!あの災害で生存者は・・・・・」
「いないって報道されたけどあえてしたんだ。けど、生きているけどある意味死んでいるんだ。」
『???』
「あそこで・・・・・・・・・・・六歳までの晴彦は死んで、そして今の晴彦が生まれたんです。」
「ちょっと待って、言っている意味がわからないけど要するに晴彦があの災害で生き残ったって事?」
小糸の言葉に翔介は頷く。
「でも、アイツその日のことを夢にまで見るくらい覚えているんです。」
「夢にまでですか?」
久瑠美が驚く。
「だからアイツはあんなこと言ったんです。全てを救うってのは出来ない。誰かを助けるということは、誰かを犠牲にするってことを誰よりも理解しているんです。」
翔介が晴彦を見る。それに釣られるように舞たちも晴彦を見た。
「で、どうするんすか?俺たち晴彦がああなったから、弔いって意味も兼ねて戦うつもりです。」
翔介の言葉に舞は立ち上がって答えた。
「決まってるでしょ。戦うわよ!」
舞の言葉に小糸も頷いた。
「舞お姉さま、でしたら私も!」
「く、久瑠美も!」
「気持ちはありがたいけど二人には危ないからここで晴彦を見てて。きっと無茶するだろうから。」
「ここは・・・・・・・」
晴彦は不思議な空間にいた。桜の木が生えた小さな草原以外真っ黒で、そこだけをスポットライトで照らされたような空間にいた。すると突然、後ろから衝撃が来た。
「おっと!なんだ?」
晴彦が後ろを振り向くと二頭身の黒と赤と金の軍服を着た生き物がいた。
「ノブー!」
「え?行けってのか?」
「ノブノブ!」
小さな生物の指示に従い晴彦は桜の方へと進む。
「ノッブー。」
小さな生物は座るように促す。
「まぁいいけど・・・・・・・・・ここはどこなんだ?」
「ノブ。」
小さな生物が指を指す。すると奥から金属の靴の足音が聞こえてくる。長い金の靴に黒軍服、赤のマントに腰のベルトに備え付けられた刀、そして黒の帽子に金の装飾が施された黒い長髪の女性が来た。
「ん~?なんだ?いっぱい酒でも飲もうかと思ったら先客か?」
女性の手には酒瓶とガラスコップが握られていた。
「ま、いいけどネ。」
「えーっと・・・・・失礼ですがあなたはどちら様で?あ、俺は一条晴彦です。」
「おー、自己紹介できるとは感心感心。しかしわしの名を知りたいか?」
「はい。」
「本当か?」
「はい。」
「本当に本当か?」
「だからそう言ってるじゃないですか。」
「よし!ならば名乗ろう!わしこそは第六天魔王、織田信長じゃ!」
「・・・・・・・・・・・・・・へ?織田信長?」
「そうじゃ!第六天魔王、織田信長じゃ!」
「・・・・・・・・・・・・・え――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」
「うおっ!すごい肺活量じゃな。どんだけなんだよお前。」
「あの悪逆を行った大うつけの!」
「是非もないね!まあそんなことはどうでもいいとして。」
「いいんかい!」
「いーんだよ。こーしてグダグダ―ってしてた方がわしらしいんだから。」
信長はそう言うと晴彦の隣に座った。
「ま、わしは酒飲むがお前は?」
「未成年なんで。」
「なんだー、つーれーねーなー。」
「それしたらアーチャーに怒られちゃうので。」
「ん?お前の言ってるアーチャってどんな奴だ?」
信長が酒を注ぎながら聞く。
「白髪に黒い肌、そして赤い服を着たアーチャーです。」
「お~アイツか。知ってる知ってる。」
「本当ですか!」
「わしとアイツ同じアーチャだからな。ま、たまに飲むときもある。」
「そうですか。・・・・・・・・・・・・・・・・あの、アーチャーはどうでしたか?」
「それって元気でしているかって意味か?」
信長はそう言うと酒を飲み、話す。
「ま、あいつ自身は残酷な現実と直面しながらも戦っているよ。自分でも叶いもしない夢と知りながら。」
「でも・・・」
「?」
「多分お前のことかもしれないけど、“あの子に会えてよかった”って言ってたぞ。」
「・・・・・・・・・・・アーチャー・・・・」
「ま、アイツが孤高なのはどうやっても仕方がないことだ。だが一人でも理解してもらえて、礼の言葉の一つでももらえればアイツは救われるだろうな。」
信長はコップに注いだ酒を手で揺らしながら話す、
「で、一つ問おう。お前は、“誰かを救うということは、誰かを犠牲にする”そう言ったな?」
「ええ。」
「ならば・・・・・・・・それを理解した上であいつと同じ道を辿るのか?」
「・・・・・違う。俺はアーチャーとは別の正義の味方の道を通りたいと思っている。
「具体的には?」
「・・・・・・・・一人じゃなく、みんなの力を借りて正義を行う。」
「つまり、チームによる正義か?」
「そうだ。」
「・・・・・・・・・・ふ、ふはは、ふははは、ふはははははははははははははははは!はっはっはっはっはっはっは!」
晴彦の言葉を聞いて信長は盛大に笑った。
「その言葉やよし!わしはお前の本心が見たいが故に聞いた。アイツにはなろうとせず、お前自身の信念を通すその姿勢、思い、願い、そして矛盾!」
「む、矛盾!?」
「そうじゃ。犠牲は仕方ないと言いながらもそれでも正義の味方を目指す者など矛盾でなくてなんと言う?他に言葉はあるか?いいや、ない。ならば矛盾と言っても間違いではなかろう。」
「まぁ・・・・・・・・・・・確かに。」
「が、その意気込みをわしは買った!こいつをお前にくれてやろう。」
信長はそう言うと小さな生き物を差し出す。
「ちなみにこれの名は?」
「ちびノブじゃ。こいつがお前の力になってくれよう。」
「はぁ・・・・」
晴彦は信長からちびノブを受け取った。
「ん・・・・・・・・・」
晴彦は目を覚ますとそこは知らない天井であった。
「あれ?俺なんで・・・・・」
晴彦は意識がはっきりしないまま体を起こす。
「あっ!晴彦君!」
「晴彦お兄ちゃん!」
「晴彦、おきたー!」
晴彦が起きたことに玲奈、久瑠美、ルルが声を上げる。
「えーっと、あ・・・・・」
晴彦は自分に何があったか思い出した。
「背中に傷を貰ったのに痛くないけど・・・・・・・・なんで痛くないんだ?」
晴彦は背中を見る。
「ああ、それは。」
「玲奈ちゃんが治してくれたんだよ!特異能力を使って!」
「そっか。ありがとう、玲奈ちゃん。」
晴彦が笑顔でそう言うと玲奈は顔を赤くする。
「大丈夫?」
「う、うん!大丈夫!大丈夫だよ晴彦君!」
玲奈は手を振って答える。
「そっか。ちょっとスケッチブック取ってくれる?」
「はい。」
久瑠美が晴彦にスケッチブックを渡す。晴彦はスケッチブックを開け、絵を描き始める。
「どうするつもり、晴彦?」
「あのキマイラを倒す手を作ってる。」
「そんな!さっきあんなダメージを受けたのに!」
「でもアイツを倒さないと色々困るし、何よりみんなにとって困るでしょ。」
「でも・・・・・・」
「それに、どうせ舞先輩たちが弔い合戦って名目で戦いに行ってるでしょ?」
その言葉に三人はビクッと反応する。
「やっぱりね。出来た!」
「「「早っ!?」」」
今までにない速さで完成した絵に三人は驚く。
「じゃ、行ってくる!」
晴彦はそう言うとベッドから立ち上がり靴を履き、そしてグラウンドの方へと走って行った。
「のわぁああああああああああああ!」
翔介がキメラの方向の弾によって星になった。グラウンドには舞を含めた戦闘系特異能力者たちが片膝を付いていた。
「ぐ・・・・」
「強い・・・・・」
舞も小糸も膝を付いていた。
「舞先輩!小糸さん!」
「「晴彦!!」」
晴彦はスケッチブックを開き、犬歯で指を切ると陣に血を付ける。
「我は汝を此処に示す!汝の願いは我が願い!我の夢は汝の夢!我が思いに応えるならば、ここに姿をさらせ!」
スケッチブックが輝き、使い魔が召喚される。
「ノッブー!」
『はぁっ!?』
召喚されたちびノッブに一同間抜けな声を出す。
「ちびノブ、頼むぞ!」
「ノッブー!」
ちびノブはキマイラに向かい突進する。
「ちょっと!あんな小さいのじゃ!」
「ノブ―――――!」
ちびノブはキマイラのヘビによって弾き返された。
「ほらみなさい!」
「なんで!てかアイツ俺の力になるって言ったじゃん!」
晴彦がちびノブを抱き抱えるとちびノブが光り始めた。
「ちょ、ちょっと!なにこれ!」
光るが晴彦を包み、そして姿を変えた。
「は、晴彦!」
光が止むとそこには晴彦ではなく、信長がいた。
「よもやこのような形で召喚されるとはな。我がサーヴァントとしての生涯は面白いものよ!」
「え?なに?何が起こったの?」
「あれは・・・・・・・・・・・晴彦なの?」
「ん?おお、こいつの仲間か。」
信長は舞と小糸に気づき声を掛ける。
「あ、あんた誰よ!」
「わしか?聞きたいならばしかとその身に刻め!わしこそは第六天魔王、織田信長じゃ!」
「え?織田・・・・・・・・・・・信長?」
「そうじゃ。わしはこのような形は言え召喚された。まあ、デミ・サーヴァント?みたいな感じじゃが、召喚された。深く突っ込まないように。さて・・・・・」
信長はキマイラの方を見る。
「今日の再生能力を持っているから倒すの難しーねー。でもやらなきゃメンドーなんだよねー。」
「あ、アンタそんな悠長な!」
「まあ安心せよ!わしがいるからな!」
「どこが安心できんのよ!」
ツッコミを入れる舞。安定のグダグダである。
「さて、では行くか。」
信長は刀を抜刀する。
「三千世界に屍を・・・・・・」
信長は宙に浮く。
「天魔轟臨!」
その言葉と同時に三千丁の火縄銃が現れる。
「これが魔王の三段撃ちじゃ―――!」
信長が刀を振り上げ、キマイラに向けると同時に火縄銃が火を噴いた。
キマイラは悲鳴を上げる。どんなに強い再生能力を持ってはいても、三千丁の火縄銃の前には敵わず、ボロボロになる。
すると学院の方から何やら大量の足音が聞こえてくる。
「なに、この足音?」
舞は学院の方を向くと大量のちびノブに運ばれている玲奈の姿があった。
「れ、玲奈!何してんの!」
「ま、舞お姉様~。それが分からないでこうなってるんです~。」
「おお、来たか。ささ、早くアレを封印してくれ。質問は聞かん!」
「え、えっとなんだか知りませんけどわかりました。」
玲奈は流されるがままキマイラを封印した。
「うむ、一件落着だな。ではさらばじゃ。」
信長はそう言うといなくなり、代わりに晴彦だけが残った。
『晴彦(君)!』
舞たち三人が晴彦の方へと駆けよる。
「アンタ大丈夫?」
「怪我はないですか?」
「体に異常は?」
「えっと・・・・・・大丈夫ですけど何があったんですか?キマイラに倒された後でここにもう一度来たところまでは覚えているのですがそこからが・・・・・・・」
その後、晴彦は自分があの時描いたスケッチも忘れていた。結局晴彦も舞たちもわからないまま事件は解決(?)した。
「で、わしは今回だけの出演か?」
「はい、そうです。」
「うそ―――――――――――!」