無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
夏。
晴彦の家では朝から晴彦は準備をしていた。そんな中ルルは床で花火大会のチラシに目を光らせていた。
「うわー!今日の花火大会、屋台がいっぱい出るんだ!かき氷と、とこ焼きと、リンゴ飴と、後ラムネ!ビー玉をプシュッとするヤツ。ラムネは絶対外せないよね、晴彦?」
ルルが晴彦の方を向きとそこには晴彦の脚があった。
「ぐえっ!」
「あ、ごめん。ワザトじゃないけどゴメン。」
「晴彦!」
「だからいつも言ってるだろ。ルルは体が小さいんだから床で読むなって。それともう俺出るから。」
晴彦はそう言うと学校に向かった。
照り付ける夏の日差しがアスファルトを熱鉄板の様にする中、一人魔女の格好をした人が歩いていた。その女性はホロが掛かっている点もあり、ファントムである。そして帽子の金属がチリンとなると女性はそこから姿を消していた。
一方その頃ルルは公園で野良猫に愚痴を言っていた。
「でもさー、確かにちっさいと不便なこともあるよねー。大好きなラムネも全部飲めないし。」
すると野良猫はルルから去って行った。ルルは溜息を吐くと本音をぶちまけた。
「おっきくかったっらラムネ一本ぜーんぶ飲めるのになー。」
ルルのが本音を暴露する隣には魔女の格好をしたファントムが座って聞いていた。
「お嬢さん。」
魔女のファントムはルルの前に立つ。
「何か願い事がおありですね。」
魔女がファントムと決定づける物は、耳がとがっていることだった。
「ファントム!」
ルルはベンチの側に置いてあったラムネに身を隠した。
「貴方の願いを叶えてあげましょう。」
「?」
「怪しい者ではありません。」
「滅茶苦茶怪しいよ!」
「いえいえ、わたくしは善良な魔女ファントム。ただ、ちょっと変わり種でして、ファントムたちの願いを叶えて回っているんです。」
「そんな上手い話あるわけないじゃん。願いが叶う代わりに寿命が縮むとか、そういうパターンだよ。」
「とんでもございません。これがわたくしの存在意義、きっちり願い叶えます。」
ルルは疑いながらも魔女ファントムに問う。
「ホントに落とし穴無し?」
「魔女に二言は有りません。」
「じゃあ叶えてもらっちゃおーかなー。」
「はい、喜んで!で、貴方の願いとは?」
マジファントムはルルに問う。するとルルは魔女ファントムの身体を見る。
「う~ん、やっぱりこれ。人間サイズになりたい。」
「かしこまりました。あ、でも人間サイズになると今のように空を飛ぶことは出来なくなりますけど。」
「そうなんだ。ま、人間が空を飛んでたらマズいしね。オーケーだよ。」
「それからもう一つ。」
魔女はルルに重要なことを言う。
「誰かに貴女だと気付かれたら、その時点で元のサイズに戻ってしまいます。」
「ええ!ファントムの気配にすごーく敏感な子がいるんだけど。小糸ちゃんにばれたらお終いじゃん!」
ルルは小糸を頭に浮かべる。
「ああ、その辺も含めて人間になった段取りも込み込みでサービスしときますので、安心して大きくなってください。」
魔女ファントムはそう言うと球体のアクセが付いたペンダントをルルに渡した。
「では、いきますよー。」
魔女ファントムは金の杖を左手に出すと天に掲げる。
「ファン、ファン、ファントム!おーきくなーれ、おーきくなーれー。」
魔女ファントムが詠唱するとペンダントのアクセが光り、ルルの身体を人間サイズにする。
「これが・・・・私?」
「お気に召されましたか?」
「うん、すごいよ魔女!」
「それはよかったー。ではでは、ハブ ア ナイス デーイ。」
魔女ファントムはそう言うとその場から姿を消した。後に残ったのはホセア学院の制服を着て髪色が濃い緑になった人間サイズのルルだけであった。
ルルはラムネを手に取ると微笑み、ゴミ箱に投げ入れた。
「皆、席に着けー。」
朝の晴彦のクラスのSHRで先生が生徒たちにあることを発表した。
「今日からこのクラスに、新しく生徒が転入してくることになった。入ってきていいぞ。」
先生がそう言うと入って来たのは頭にお団子を二つ作り結び目に細い三つ編みをしているルルであった。その姿を見て生徒たちは声を上げる。
(うわー、マジホントにおっきくなってる!すごい!しかも転校生って!ナイスな段取りだよ、魔女。)
ルルは心の中で魔女ファントムに感謝する。
「じゃあ、自己紹介してもらおうか。」
「自己紹介?」
「ああ。まずは名前を。」
さすがにそこまでは考えていなかったルルであった。
(魔女、そこはフリーなの?えっと・・・・名前名前・・・・)
するとルルはある名前が頭に思い浮かび、黒板に名前を書き始める。書きなれない分、キーッという音を立ててしまう。
「夏野らむねです。よろしくお願いします。」
ルルは両手を広げながら礼をする。すると拍手で歓迎された
「よし、では夏野。席はあそこだ。一条、頼んだぞ。」
「はい、先生。」
(おー、晴彦のお隣だー。)
ルルはいつもの感覚で飛んで行こうとするが当然飛べず、そのまま冷たい床に倒れる。
「夏野、大丈夫か?」
先生がルルを心配する。
「(そうだ、飛べないんだった。)だ、大丈夫です。アタシよく転ぶんです。」
ルルはそう言うと席に座った。
「よろしく、夏野さん。」
晴彦がルルに挨拶をする。
「よろしく。」
ルルは晴彦にあいさつすると内心で喜んでいた。
(へへへ、バレてないバレてない。)
そんな時翔介が晴彦に言った。
「夏野さんってルルに似てない?」
「っ!?」
「他人の空似だろ。同じ顔は世界に七人はいるっていうし。」
晴彦の言葉にルルは安堵を吐く。
「夏野さん、何か困ったことがあったら言ってね。」
「う、うん。」
授業が始まるや否や、ルルは眠くなってしまう。普段ルルは晴彦たちと一緒の授業を受けない分退屈であった。そのためルルは授業中にもかかわらず席からあくびを描きながら立ち上がる。
「夏野さん!」
「ちょっと散歩してくる。」
ルルは授業を途中退席しようとするが晴彦が引き止めた。
「授業中だから散歩は無し!」
「えー。」
そして授業が終わるとルルは机と親睦を深めていた。
「夏野さん、次、教室移動だよ。」
「はーい。」
「物理の教室は一階だから。」
「じゃあ先に行ってるね。」
ルルはそう言うと窓から行こうとする。
「ちょおおおおおおおおおおおい!」
ルルは木にぶつかり何とか事なきを得た。
「大丈夫か、夏野さん!」
「(しまったー。)平気平気、あはははは。」
ルルは笑って誤魔化した。
「・・・・・・・・自由と言うか、なんかあれだな。サバンナとかで生活していたのかな?」
そして転校生お決まりの部活勧誘。
「夏野さん、テニス部入らない?」
「新体操部の見学に来ませんか?」
「我が落語研究会に是非!」
「卓球部も是非!」
その勧誘にルルは嬉しそうな表情をする。
「全部面白そーだなー。」
そんな光景を見ていた晴彦が翔介に問う。
「なにあれ?」
「部活の勧誘。夏野さん可愛いからな。晴彦、俺たちのクラブに勧誘して来いよ。」
「バカかお前?夏野さんは特異能力者じゃないって言ってたし。」
そしてルルはテニスコートでラケットとオールを手にしていた。
「いくよー。」
ルルはテニスボールを高く上げる。
「とりゃ!」
ルルはラケットを振るうが空振り。そしてお尻にテニスボールが当たる。
「あれ?マイラケットはどこ?」
そのラケットは見ていた晴彦に当たる直前で晴彦にキャッチされていた。
(モン太みたいな奴っているんだな。)
「あちゃー。」
その後も卓球部でも同じようなことが起こり、落語研究会では生徒からの受けはよかった。
晴彦とルルは一緒に歩いていた。
「次ははるひ・・・・一条君のクラブに行きたい。」
「え?でも夏野さん、特異能力者じゃないんでしょ?」
「でも見てみたいんだー。」
「わかった。部室はこっちだよ。」
晴彦はそう言うと歩き始める。するとルルは今の自分の身長と晴彦の身長を比べた。
(晴彦と並んで歩くって、こんな感じなんだ。)
ルルはそのことに喜んだ。
そして晴彦はクラブにルルを案内する。
「ここが部室だよ。」
「わー、すごーい。」
ルルがわざとらしく言う中、舞と玲奈はルルを見ていた。
「何、あの子?」
「晴彦くん緒クラスに来た転校生ですね。」
「ふーん、転校生。」
舞は少し不貞腐れていた。
「どうしたんですか、舞お姉様?」
「ちょっとね。晴彦と仲良くしてるのが・・・・・・」
「わかります。ちょっと羨ましいですよね。」
玲奈の言葉に舞は頷いた。
晴彦たちは準備室でアリスと話していた。
「夏野さんは特異能力者じゃないですけど、見学希望と言うことで連れてきました。」
「顧問の姫野です。ゆっくり見学して行ってくださいね。」
アリスがそう言うと晴彦は舞たちをルルに紹介する。
「こちらが二年の川上舞先輩。初等部の熊枕久瑠美ちゃんとアルブレヒト。一年の和泉玲奈ちゃんと水無瀬小糸さん。」
ルルは小糸を見るまり顔を反らした。
(小糸ちゃんに気づかれないかな?)
ルルがそう思うと舞がルルに話しかける。
「夏野さん、前はどこの学校だったの?」
「実は・・・・・」
ここからルルの三流芝居が始まる。
「あたし、両親のこと知らないんです。アタシが生まれる半年前に二人とも死んでしまって。」
ルルは泣く演技をする。
(勝手にプロフィールが出てくる。魔女ナイス!)
「いや待って、半年前にお母さん死んでたら夏野さんこの世に存在してないぞ。」
「ウ゛っ!」
「あ、間違えた。半年後だったって。」
「それにしても可哀そうです。」
久瑠美が同情する。
「(もう、魔女しっかりしてよ!)北は北海道、南は沖縄まで、親戚たちから盥回しにされたあげく、たったひとり、冷たい世間に放り出され、生きるためには非合法なことでも何でもやりました。」
その言葉に舞、玲奈、久瑠美は涙を溜め、アリスは同情し、小糸はヤカンで湯を沸かし始めた。
「アタシ、可哀そう。」
ルルは自分で自分を抱きしめる。
「大変だったんだね。」
「そんな生活に疲れ果て、もうのたれ死にそうになって諦めかけたその時、ずっとあたしのことを探してくれたおじいちゃんとおばあちゃんに巡り会うことができたのです。」
ルルの作り話に舞たちは泣く。
「よかった。」
玲奈がそう言うと小糸がルルに近づく。
(バレた!)
ルルがそう思った途端、小糸はホットココアをルルに差し出した。片目には涙を溜めていた。
「苦労したのね。」
小糸も同じ立場であるため、その気持ちが分かった。
「あ、ありがと。」
ルルはそれを受け取る。
(小糸ちゃんも騙されてる。やっぱりやるじゃん、魔女!)
心の中で魔女ファントムに感謝するルルはホットココアを飲む。
「甘ッ!」
ルルはスイーツ好きだが、小糸は極度の甘党であった。
「夏野さん。学校生活、めいいっぱい楽しみましょう!」
舞がルルの手を握りそう言った。
「今まで苦労した分を取り戻すのよ!」
その言葉に一同頷いた。そんな時アリスが言った。
「今日は丁度花火大会。たくさんの人が集まる場所にはファントムが出やすいから、見回りも兼ねて、みんなで出かけましょ。」
「皆で・・・・・・・・・・・花火・・・・・・・やったー!」
夕方になり一同は浴衣姿になっていた。因みに晴彦は赤の記事に白のラインが入った浴衣である。
「ラララ浴衣―、浴衣ーラララー。」
「日本文洋部に借りた物ですけど。」
上機嫌なルルの側でアリスがそう言った。
「玲奈が着付け出来て助かった。流石はお嬢様ね。」
「いえ、そんな。所で晴彦君、今日ルルちゃんはどうしたんですか?前から花火楽しみにしてたのに。」
玲奈の言葉にルルはギクッとなる。そんな時舞がルルにルルのことを説明する。
「ルルって、晴彦といつもいるファントムのことよ。」
「へー。」
「あー、ワザトじゃないけど今朝アイツを踏んじゃって。多分それでかな。」
赤信号で止まると晴彦に攻撃が集中する。
「踏んづけた?」
「ひどい晴彦。」
「ワザトじゃないですから!第一そんな気なんて一度も起こす気なかったですから!(まあ、床で読むなって言い付け聞かなかったアイツも悪いんだけどね。)」
そんな時久瑠美が言った。
「ルルちゃん、早く来ないかな?」
そんな久瑠美の言葉にルルは複雑な心境になった。そんなルルに玲奈が話しかける。
「夏野さん。」
「なになに?」
「花火大会で何がしたいですか?」
玲奈の言葉にルルは反応する。
「えっとね、屋台に行って、かき氷と、タコ焼きと、リンゴ飴と、後ラムネ!」
(あれ?これって今朝ルルが言っていたような・・・・・)
晴彦がそう思っていると舞はルルに言った。
「オッケー。片っ端から制覇していくわよ。」
「うん!(ラムネ一本丸丸飲むまで、アタシがルルだってバレないようにしなきゃ!)」
そして信号が青に変わり、更に日が沈んだ空で魔女ファントムが空を飛んでいた。
「ん?」
魔女ファントムは会場に置かれた花火台の一つに目が留まり近づく。魔女ファントムは発射口を塞いでいる紙を外す。
「貴方、花火玉が付喪神になったファントムですね。」
花火玉ファントムはそこから浮き出てくる。
「何か願いがあるのですね。」
魔女ファントムはそう言うとルルと同じようにペンダントを外し、花火玉ファントムに掛ける。
「その願い、この魔女ファントムが叶えて差し上げましょう。」