無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
花火大会は屋台がたくさん出ており、賑わっていた中にはカップルも目立っていた。
そんな中を久瑠美と玲奈は手を繋ぎ、舞と一緒に回っていた。
「す、すごい人ですね。」
「ホント。歩くのも大変。あっ、あった!」
舞はかき氷屋を見つける。
「かき氷屋あったよ、夏野さん。」
舞が後ろを振り向くとアリスと小糸しかいなかった。
「あれ?夏野さん?」
一方その頃ルルはリンゴ飴を手に晴彦と歩いていた。
(足痛い・・・・あー、空飛べたらなー。人間ってやっぱ不便かも。)
ルルがそう思うと晴彦は気づいた。
「夏野さん?あ、そっか下駄履き慣れてないんだね。少し休みませんか舞せんぱ・・・・あれ?」
晴彦もはぐれたことに気づいた。
「マズイ、はぐれた。」
そんな晴彦の浴衣の袖をルルが引っ張る。ルルは目に涙を溜めていた。
人が少ない場所で晴彦はルルにルーン文字で治療を行っていた。
「はい、これでいいよ。」
「ありがと。いつもこれくらい優しくしてくれればいいのに。」
ルルは後半を小声で呟いた。
「え?」
「ううん。」
「はい、左足も出して。」
晴彦がそう言ったすぐ側を浴衣を着た人が通り過ぎた。
「ん?」
「ああ、いや。ルルが。」
「っ!」
「さっきラムネ飲みたいって言ってたからさ。」
ルルはそのことを覚えていたことに驚く。そんな時ルルは晴彦に聞いた。
「ルルちゃんってどんな子の?」
「どんなって・・・・いつも一緒にいるのが当たり前って感じで、だからいないと寂しいかな。実際、俺は一人ぼっちだしね。」
ルルはその言葉を聞いて嬉しくなった。
「明るくて元気で、ルルがいるといつも賑やかで、疲れる時もある。でもアイツ、本当に来ないつもりか?ラムネ買っといてやろうかな?」
ルルは晴彦の言葉に反応する。
「でも体が小さいから飲みきれないか。」
その言葉を聞くなり晴彦にキックを喰らわせるルル。
「なして?」
「ああ、蚊がいたの、蚊!(ふんっだ阿保晴彦。ざまあみろ。)」
ルルが不貞腐れていると晴彦は言った。
「やっぱり、ラムネ買ってくるよ。」
「買ってくれるの?」
「夏野さんも飲む?」
その言葉に恥ずかしがりながらルルは言った。
「後でいい。」
「今じゃなくていいの?」
「うん。後で貰う。」
ルルはそう言うと指先を合わせて笑った。
「わかった。じゃあ・・・」
その時であった。花火大会の客が悲鳴のような声を上げる。
「ファントムだ!花火のファントムが出たぞ!」
晴彦が見る先には花火玉のファントムがいた。
「おら!一花咲かせまっせー!」
導火線の根元にはルルと同じペンダントが付けられていた。
(あのペンダント!)
「花火玉のファントム。君は安全なところに!」
晴彦はそう言うと花火玉ファントムの方へと向かった。
「あ、アタシ・・・・!」
ルルは晴彦と追いかけようとするが治療途中の脚ではまともに歩けなかった。そして気づけば晴彦はいなくなっていた。
「晴彦・・・」
浜辺では舞たちが花火玉ファントムと対峙していた。
「花咲かせまっせー!」
花火玉ファントムはそう言いながら空中を舞う。
「舞先輩!」
「晴彦。花火玉のファントムよ。たく、こんな人ゴミで暴れるなんて。私たちで何とかするわよ。」
そんなとき小糸が言った。
「燃やすわ。」
「待って待って!花火だから!アレ火薬だから!」
晴彦の言葉に小糸は頬を膨らます。
「小糸の声が使えないわね。」
「では私が!」
玲奈はそう言うと口を大きく開け、花火玉ファントムを封印しようとする。すると導火線が徐々に燃え始める。
「待って玲奈!」
舞は玲奈に抱き着いて止める。
「あんな火薬が詰まったの食べたらお腹壊しちゃう!」
「でも、舞お姉様・・・・」
(そこじゃないだろ!最悪爆発の方だろ!)
「花火玉のファントム。当然弱点は水の気。」
舞はそう言うと自信を抱きしめる。舞の手の甲に五行線が浮かび上がる。
「はっ!」
舞は花火玉ファントムにまで跳ぶと拳を振るうがすれ違いざまに避けられてしまう。舞は着地をして花火玉ファントムの方を見る。
「速い。」
「私に任せてください。」
久瑠美はそう言うとアルブレヒトを花火玉ファントムに向け投げる。
「アルブレヒト、お願い!」
アルブレヒトは空中で大きくなり、花火玉ファントムを殴ろうとするが届かず、足掻くもそのまま砂浜に落ちる。
「アルブレヒト!」
すると晴彦がスケッチブックと鉛筆を投影する。
「俺が封印します!」
その言葉に花火玉ファントムは反応する。
「たーまやー。」
晴彦の目の前に花火玉ファントムは来ると一瞬で後ろに回る晴彦を銜え、空を飛ぶ。
「晴彦!」
その光景を少し離れたところで魔女ファントムが見ていた。
「ああ、どうしましょう。とんでもないことに!」
そんな魔女ファントムにルルが話しかける。
「魔女!」
「あ、貴方は!」
「ねえ、あのペンダントって・・・」
「・・・・・・・・・・・はい。あの花火玉のファントムは“一世一代のでっかい花を咲かせたい”と言うので。まさか、こんなに大暴れするとは。」
「くそっ!放せ!」
「晴彦!」
ルルが見る先には花火玉ファントムに捕まっている晴彦の姿があった。花火玉ファントムの導火線が燃え始めていた。
「こうなったら!」
「そうはさせませーん!」
更に速度を上げ晴彦に抵抗できないようにする。
「クソッたれ―!」
そんな時魔女ファントムがルルに話しかける。
「自分の願いを邪魔立てする者を排除しようとしているのでしょう。」
「どうにかならないの?」
「あのペンダントを外せば、魔法も解けるんですけど。」
「ペンダント・・・」
ルルは自分が掛けているペンダントを握る。
「晴彦、そのペンダント外しちゃえー!」
ルルが大声でそう言うと舞たちがルルの方を見る。
「夏野さん!」
突然ルルが言ったことに舞は驚く。
「なんで来た!」
晴彦が驚く中、舞は最悪の事態を目にする。
「マズイ。このままじゃ晴彦が道連れにされちゃう!」
「でも、あそこでは手が出せない。」
「どうすれば?」
「お兄さん・・・」
刻一刻と迫るタイムリミット。そしてルルは覚悟を決める。
「私が行く。」
「え!」
「どうやって?」
舞が驚き、小糸が問う。するとルルは頭を抱え願望を言った。
「ラムネ一本飲むまでは、おっきいままでいたかったのにー!」
「夏野さん?」
舞はルルの言葉に疑問を持つ。ルルは助走をつけて跳びながら叫んだ。
「皆、アタシ、ルルだよ―――――!」
そしてルルは元の大きさに戻った。
「ルルだったの!?」
「全然気づきませんでした。」
「じゃあ、あの悲しい過去話は嘘って事?」
表情は変わらないものの目は怒っている小糸。
「っ!と、飛べるのアタシしかいないししょうがないなー。」
ルルは誤魔化し晴彦の方へと飛ぶ。
「もう、何捕まってるの?」
「お前が言うか!てかどうやっておっきくなった!」
「ちょっと大きくなってみただけ。」
「ちょっとじゃないわ!」
晴彦がツッコムとルルはペンダントの方へと飛ぶ。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
ルルはペンダントを抜こうと引っ張る。
「ダメだ、取れない!」
「こんなところで爆発したら大変なことになる!」
「アタシに任せて。」
ルルは花火玉ファントムの方に話しかける。
「デッカイ、ハナ、サカセテ、ヤル!」
「アンタの気持ちよくわかるよ、花火玉。」
その言葉を聞くと花火玉ファントムは空中で制止する。
「止まった・・・」
「アタシも、あの魔女ファントムに願いを叶えてもらったの。叶える前に魔法解けちゃったけど。でも、アンタはまだ願いを叶えられる。」
「っ!」
「大きい花、咲かせられるよ。でも、こんなところで大爆発したらみんなに迷惑だからさ。もっと上に、一緒に行こう。」
ルルの言葉に晴彦は衝撃を受けた。
「お前・・・・・まさか!」
「アタシ、今日一日とっても楽しかった。晴彦と並んで歩けたのも。ふへへ、足もありがとね。」
「ルル・・・・」
ルルは晴彦に悲しげな顔をする。
「じゃあね。」
ルルがそう言うと花火玉ファントムは晴彦を放した。
「ルル――――――――!」
ルルの名を叫びながら晴彦は海へ落ちる。
「よし、行こうか。」
「ルル!」
「ルルちゃん!」
舞と久瑠美がルルの名を叫ぶ。そんな時に晴彦が海面に姿を現した。
「・・・・・・・・・・・・行くなよ。ラムネ飲むって言ってたじゃないか。行くなよ・・・・ルル。」
晴彦の頭にルルと過ごした日々が蘇ってきた。
「行くな――――――――――――!」
晴彦は手を空に伸ばす。が、その手は届くことはなかった。そして盛大な花火が空に咲いた。そして花火は、一瞬で咲き、そして散った。
晴彦は喪失感に襲われた。
「また・・・・・・・・・・・俺だけが・・・・・・・・・・・生き残った・・・・・・・・なんでだよ・・・・・・・・・・・なんで俺だけ・・・・・・・」
晴彦は涙を流す。そのことは舞たちも同じであった。
「なになに、どうしたの?」
少し焦げたルルが晴彦に問う。そのことに晴彦も舞たちも驚いた。
「お前・・・・・・・・・・・今花火玉ファントムと・・・・」
「綺麗だったねー、花火!すっごくおっきくて、キラキラだったー。」
感想を述べるルル。そんなルルを見て晴彦は微笑むと説教をする。
「人がどんだけ心配したと思ってんだ、このバカ!」
「なに言ってんの!心配させたの晴彦の方でしょ!あのファントムに捕まっちゃって―――」
そして時間は過ぎて予定通りに花火大会が始まり、花火が空に打ち上げられた。
「ぷはぁ。もう何にも入らなーい。」
空のラムネを枕に大きく腹を膨らましたルルは感想を述べていた。そんなルルを見て晴彦は微笑むと謝罪する。
「今朝は悪かったな、踏んじまって。」
そんな晴彦の手をルルは踏んだ。そして晴彦の顔と同じ高さまで上がると言う。
「お返し。」
「なんだよ、それ?」
そんな時花火の昇る音が響き渡る。一同花火の方へ視線を向ける。そして綺麗に茜色の花が咲いた。そんな光景を見て晴彦たちは言った。
「たーまやー。」
花火が打ちあがる空を魔女ファントムは飛んでいた。