無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦   作:ザルバ

25 / 31
24 ちびっ子晴彦君②

 それからの舞たちの行動は晴彦と共にしながら、勉学に、バイト(舞)、ファントム退治に追われた。幸いにも晴彦は一応戦えるので助かっているが子供な分限界があった。それでも助かっているのには変わりなかった。でも何分不慣れなこともあって三人は疲れていた。

 晴彦たちはクラブに集まっていた。

「結構子供も面倒って大変なのね。」

「でも晴彦君、他の子に比べてよくできていますから負担がうんと減りますね。」

「一人だったら絶対にクマができていたわ。」

「熊?」

「そのクマじゃない。」

 久瑠美の問いに小糸が答えた。

「でも結構倹約家だったのね。出費が少ないわ。」

「いい人だったんですね。本来だったら大人である私がやるべきなのですが、夜は阿頼耶識社に行ってますから。」

「でも早く戻って欲しいですよね。元の晴彦お兄さんに。」

 晴彦はその会話に聞き耳を立てていた。そんな時ルルがあることを言った。

「う~ん、晴彦が好きそうなもので刺激してみたら元に戻るかな~?」

 ルルはそう言うと何処から取り出したのかわからないがグラビア雑誌を晴彦に見せた。

「なんですか、これ?」

「翔介が“男だったら絶対好きだ”って言ってたよ。」

 ルルの言葉を聞くなり舞たちは「うわサイテー。」「不潔です。」「ゴミ虫。」と、翔介に陰口を言った。

「っ!!なんか今すっごく心が痛くなった!」

 どこかで翔介が言ったそうな。

「っ!」

 晴彦はそれを見るなり真っ赤なトマトになると後ろに倒れかける。

「危ない!」

 舞が間一髪でキャッチする。

「だめかー。」

「てかどんだけ耐性ないのよ!」

「純粋だったんですね。」

「純粋にも程があるわよ。」

 舞はツッコミ、玲奈は感心、小糸は呆れた。

 

 

 夕方、空は雨が降るか降らないかくらい曇っていた。そんな空の下を晴彦たちは一緒に歩いていた。そんな時公園の方から声が聞こえた。

「ママ、もっと!」

「はいはい。」

 晴彦が公園の方を向くと家族三人仲良く公園で遊んでいる姿があった。

「わー、すごーい。」

 そんな光景を晴彦は羨ましそうに見つめていた。

 

 

 夜になると雨が降っり始めていた。

「さて、そろそろ寝なきゃね。明日もバイトだし。」

「明日も原因探しですし。」

「貴方も大変ね。午前は原因探しで午後はバイト。」

「まあね。ん?」

 ふと舞は晴彦の方を見た。晴彦は雨を見ると片腕で身を抱きしめていた。

「どうかしましたか、晴彦君?」

 玲奈が晴彦に近づき話しかける。

「あ、いえ。ちょっと思い出して。」

「思い出したって・・・・・・・・・・・なにを?」

「・・・・・・・・・・・・いえ、気にしないでください。」

 晴彦はそう言うと歯磨きをしに洗面台へと向かった。

『・・・・・・』

 舞たちはそんな晴彦の背中を見た。晴彦の背中は、どこか無理をしてそうであった。

 

 

 晴彦のを囲う形で床に布団を敷き、舞たちも寝る準備をしていた。

「よいしょ。じゃあ消すよ。」

「はい。」

「っ!やけに素直ね。」

 小糸が気付いた。いつもなら“もっと起きていたい”などと言うが今回は素直に従っていた。

「でもそんなところも可愛いですね。おやすみなさい。」

「「おやすみ。」」

「おやすみなさい。」

 晴彦たちが寝ようとすると突然雷が鳴った。

「きゃっ!」

 玲奈が驚く。

「玲奈、雷怖いの?」

「はい。どうしても慣れなくて。」

「恥じることじゃないわ。ん?」

 やけに静かな晴彦の方を見ると晴彦は雨の音も聞かないように体を丸めていた。そんな晴彦に舞は近づき布団越しに触って言った。

「晴彦、怖かったら“ぎゃー”っとか、“きゃー”とか叫んでいいんだよ。」

「・・・・・・・・」

 答えない晴彦を見て舞は言った。

「ずっと、アーチャーと二人で頑張ってきたんだよね?」

「どうしてわかるんですか?」

「だって、晴彦が家事や掃除、洗濯に料理とかみーんな、“アーチャー”が教えてくれたって言っているじゃない。私は一人だったけど。」

「お姉ちゃんが?」

「ちょっと事情があってね。」

「私も。」

 舞の言葉に小糸も続いた。

「・・・・・・・・・・僕と一緒ですね。」

「え?」

「お父さんは仕事でいろんな国に、お母さんはこの間出て行ってしまったそうなんです。」

 その言葉に暗くなる舞たち。そんな時玲奈が気付いた。

「なんか聞いているとらしいとかって言ってますけど・・・・・・・・・・なんでそう言うんですか?」

「・・・・・・・・・・・・覚えてないんです。お母さんの顔も、お父さんの顔も。一緒に過ごした日々も。」

「え・・・・・・・・・・」

 晴彦の言葉に衝撃が走った。

「僕、雨が嫌いなんです。あの日も、雨が降ってました。大分後でしたけど。でも、雨を見るとあの時を思い出して、それで・・・・・」

 晴彦は自分の身体を抱きしめた。そんな晴彦を見て舞は布団を剥ぐと晴彦の背中を抱きしめた。

「大丈夫。今は私たちがいるから。」

「・・・・・・・・・・・うん。」

 晴彦は舞に抱きしめられ、玲奈と小糸が挟む形で寝た。

 

 

「ん・・・・・・・・・・・・」

 舞が目を開けると黒い空間にいた。

「ここ・・・・・・・・どこ?」

「舞お姉さま。」

「玲奈!小糸も!」

 その空間には玲奈と小糸もいた。

「どこかわかる?」

「わかりません。目が覚めたらここにいました。」

「それより私たち寝間着姿だったよね。なんで制服を着ているの?」

 舞たちはその空間で制服を着ていた。

「ん、あれは?」

 舞が光る方を見ると三人はその光に包まれた。

「ん・・・・・・・・っ!なによ・・・・・・・・・これ・・・・・・・・・・・・」

 舞たちは目の前の光景が信じられなかった。

 目を開けは広がるは火の海と瓦礫の山。がれきからは焼け焦げた人の身体がちらほら出ていた。

「な、なんなんですかここは!」

「ちょっとこれ見て!」

 小糸がカレンダーを指さした。カレンダーには十年前の大災害の日付が書かれていた。

「この日付・・・・・・・・」

「それにこの光景・・・・まさか・・・・・・・・」

「・・・・・・晴彦が経験した大災害。」

 舞たちは驚きを隠せなかった。話では聞いてはいたものの、実際にどんな現場だったのかは一部しか公表されていない。つまり舞たちの目の前にある光景が真実である。

「晴彦は?晴彦はどこ!」

 舞の言葉に三人は探す。すると炎の中から小さな晴彦が起き上がった。

「晴彦!」

 晴彦を見つけた舞は触れようとするがすり抜けてしまう。

「え?」

 舞は何度も触ろうとするがすり抜けてしまう。

「なによ・・・・・・・・・・これ。」

「これってもしかして晴彦くんの記憶じゃないでしょうか?」

「だとしたら私たちは触れないわ。結局これは記憶でしかないんだから。」

「でも!」

 舞は声を上げてしまう。今の晴彦は何が起きたかわからず、ただ茫然と辺りを見回していた。聞こえてくるのは助けを求める声。目にするのは燃えて瓦礫と化した町。そして自分だけ一人生きていた。

「う・・・・・・・・・・・・・うえ・・・・・・・・・・・・うぇえええ・・・・・・」

 晴彦は涙を流す。自分だけがこの地獄でただ一人生きていた。そして晴彦は歩き始める。

 聞こえてくる声に耳を塞ぎ、晴彦は歩いた。声を聞けばその度に泣き、そして歩いた。

「こんなの・・・・・・・・・ひどすぎるよ。」

「晴彦君・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

 晴彦の体験は実際その場にいた本人しか知りえないほどの体験。言葉で表現しようにも、出来ないほどであった。

 それからしばらく歩くと雨が降り始めた雨によって炎は消されていったが、それでも炎は燻っていた。そして晴彦は力尽き、倒れてしまった。目には生気が無く、希望も抱いてはいない。ただ死を受け入れるように悟った眼をしていた。

 だが、ほんのわずかな希望だけは抱いていた。晴彦は空に向かって手を伸ばした。なんの力も無い、その手を。しかしその手を取ってくれる人は誰一人としていない。

 虚しくも晴彦の手は落ちようとしていた。その時、舞たちは思った。

(誰か、誰でもいいから晴彦を!)

 そう思った途端、アーチャーがその手を掴んだ。

「よかった・・・・・・・・・・よかった・・・・・・!これで私は・・・・・・・救われる・・・・・・・・・・」

 アーチャーは雨が降る中涙を流した。

「アーチャーは・・・晴彦を助けたのね。」

 舞がそう言うと景色が変わり病院の個室。ベッドには一人晴彦が上体を起こしていた。外からは看護婦の声が聞こえてくる。

「あの子奇跡的に生き延びたらしいわよ。」

「でも記憶を全部亡くしたそうよ。自分の名前すら覚えてないみたい。」

「持ち物で判明したそうよ。」

「でも残酷よね。母親は父親と離婚して家を出て、その父親は仕事にかまけて息子を気にも留めてないわ。」

「可哀そうに。でも誰が面倒を見るの?」

「記憶を無くしてるって時点でコミュニケーションが・・・・・」

 看護婦たちが外で話しているとジャージに黒のセーターを着たアーチャーが花と果物を持って晴彦に面会に来た。

「やあ。」

「・・・・・・・・・・・誰?」

「晴彦と言ったか?私はワケあって名前が言えないがアーチャーだ。よろしく頼む。」

「・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします。」

 晴彦は他人行儀な挨拶をする。

「そんなに硬くならなくてくれ。それより君は退院した後どうするんだい?」

「・・・・・・・・・わかりません。僕の家に帰ろうにも一人じゃ・・・・・・・」

「そうだろうな。そこで提案なのだが私が家政婦をしてもいいだろうか?と言うか育て親と言った方がいいかな?」

「・・・・・・・・・・・・・でいいんですか?」

「ん?何か言ったかな?」

「こんな僕と一緒でいいんですか?記憶もないのに・・・・・」

 晴彦がそう言うとアーチャーは晴彦の額を指で小突いた。

「子供がそんなことを気にするものじゃない。分からないところがあれば助けを求めればいい。無理にやろうとしなくていいんだ。」

 アーチャーはそう言うと晴彦を抱きしめた。

 

 

また風景が変わり、晴彦の家。

 家では晴彦がアルバムを見ていた。

「少しでも記憶が戻るきっかけにと思ったが・・・・・・・・・・大丈夫か?」

「ごめんなさい・・・・・・・・・・・・・なにも・・・・・・・・・・何も思い出せないんです。」

 そんな晴彦を抱きしめるアーチャーは言った。

「いいんだ。記憶がないなら作ればいい。君と私、一緒にな。」

 それからはアーチャーと過ごした日々の記憶が流れた。

 読み書きに料理、掃除に洗濯をアーチャーからは一通り教わった。

 そんな記憶の中にあることが映し出された。

晴彦は手にしていた鉛筆がもう一つあったらと思った。その途端、鉛筆を持っている手に同じ形同じ傷の鉛筆が投影された。晴彦はそのことをアーチャーに話した。

アーチャーは晴彦の特異能力について調べ、絵にファントムを封印・召喚する能力しかないことを知った。アーチャーがそのことを晴彦に話すと晴彦は言った。

「アーチャー、僕・・・・・・・怖いよ。こんな力があるなんて・・・・・」

 そんな晴彦を見たアーチャーはある言葉を口にした。

「投影、開始。」

 すると晴彦と同じように鉛筆を投影した。

「アーチャー、それって・・・・・」

「安心しろ、晴彦。私も同じ能力を持っている。君だけじゃないんだ。」

 そんなアーチャーの言葉を聞いて晴彦は泣いた。その光景に舞たちも泣いた。

 

 

また景色が変わり満月の夜、晴彦はアーチャーと話をしていた。

「晴彦、伝えておかなければならないことがある。」

「なーに、アーチャー?」

「私はもう数年したら、この世界から消え、また別の世界の抑止として召喚されなければならない。」

 晴彦はアーチャーの言葉に衝撃が走った。それは舞たちにも走った。

「だがな、晴彦。君は一人じゃない。ここにいる町の人が、学校の先生が、友達が、周りにはいる。わかるな?」

「うん・・・・・」

「・・・・・・・・・・・少し、昔話をしよう。

 私は、君と同じような災害に遭い、記憶を失った。そして、正義の味方に出会った。

 それから私はその人に引き取られ、その人と生活を共にした。

 その人が正義の味方であったためか私は、いつしか正義の味方になることを夢にしていた。そんな私にあの人は言ったんだ。

“正義の味方になるには、年齢制限がある”とね。そんなあの人に私は何と言ったと思う?

私はこう言ったんだ。

“爺さんの夢は、俺が受け継いでやる。”

 そして私は、高校生になってもなおその夢を抱き続けた。いや、むしろ強くなったといった方がいいか。そして私は、正義の味方となった。

 誰もが傷つかない世界を、誰もが悲しまない世界をと、この手に武器を取り、悪を倒した。

 だが・・・・・・・・・途中で正義の味方であることに疲れてしまったんだ。」

「どうして?正義の味方であることになんで疲れちゃうの?」

「こんなのでもか?

 生きるために盗みをする人を、家族を守るために武器を手に取る人を殺すのが正義と言えるのか?

 いや、もっとわかりやすい話をしよう。

 致死性の高い伝染病が蔓延した乗客乗員600人の命と、都市に住む15,000人の命。どちらを救うかの瀬戸際に私は立たされた。どちらも罪もなく、等しい命だ。飛行機の中には生きようと互いに励まし合っている人たちがいるかもしれない。運良くいけば不時着できるかもしれない。だが、不時着すれば都市に住む何の罪もない人を巻き込んでしまう。

 結局私は、全てを救うことができず、飛行機の人たちを、殺した。

 誰かを救うには誰かを見捨てなければならない。そんな現実に、私は疲れてしまった。

 決定的だったのは、私が善意で行動していたのに、世界に裏切られて殺された時だった。

 もし、何の見返りも求めず人助けをする人がいたらどうする?いつも、見返りも、恩賞も求めない人がいたら人は不安を抱く。”何か考えているのではないか?“、”もしかしてだましているのではないか?“

 そんな感情が彼らに不信感を抱かせ、やがて私を殺す行動に至った。」

 その言葉を聞くと舞たちは晴彦が話したあの話を思い出した。あれはアーチャー自身の体験を話したのであることに気づいた

「・・・・・・・・・・・でも、アーチャーは僕の命を救ってくれた。それは紛れもない事実だよ。」

「・・・・・・・・・そうだな。それは紛れもない事実だ。単に、あれは偶然だったと言えよう。私が召喚された時には、既にあんな光景であった。私は召喚されすぐに絶望した。また人を救えなかったのではないかと思った。だが・・・・・・・・・・・・私はほんの少し希望を抱いた。もしかしたら、誰か生きているんじゃないかと思ってね。

そして君を見つけた。あの時助けられたのは、私だったのだ。晴彦、君に問わせてもらいたいことがある。」

「なーに、アーチャー?」

「君は・・・・・・・・・・・・・・どんな人になりたい?」

 アーチャーのその言葉に晴彦は考えた。

「・・・・・・・・・・アーチャーとは別の正義の味方になりたい。」

「っ!ほう・・・・・・・・・・・それはどういうことだ?」

「あの日・・・・・・・・・・・・・すべてを失ったあの日に、自分の無力さを感じた。誰かを助けたいって思いは、今も変わらない。ニセモノなんかじゃない。でもすべては救えいないってわかってる。

 だから・・・・・・・・・・・・・僕は自分が救える範囲の人を救って、自分の正義を貫こうって思ってる。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか。私にはない答えだな。」

 その光景を見ていた舞たちは口にした。

「そっか・・・・・・・・晴彦が超えたいのは、アーチャーなんだ。」

「自分を助けてくれた人を目標に・・・・・・・」

「あの話は・・・・・・・・・・アーチャーの話だったんだ。」

 

 

 そして景色は変わり、アーチャーとの別れの時となった。

「アーチャー・・・・・」

 晴彦はポロポロと涙を流す。

「泣くな、晴彦。前に別れることは言っただろ?」

「でも・・・・・でも!」

 そんな晴彦をアーチャーは抱きしめる。

「こんな短い時間ではあったが、君と過ごした時間の中には、私が経験した地獄はなかった。むしろ、心が休まる時だった。」

「でも・・・・・・・・・・・・また戦いの場に召喚されちゃうんでしょ?そんなの・・・・・・・・・・アーチャーが辛いだけだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・晴彦、私のことを心配してくれるのか?」

「当たり前だよ。だって・・・・・・・・・・・・・アーチャーは僕のかけがえのない“家族”なんだから!」

 アーチャーはその言葉を聞くと驚き、そして微笑んだ。

「ありがとう、晴彦。本当に、本当に君と会えて私はよかった。これを君に渡そう。」

 アーチャーは懐から虹色の意思が入った砂時計のよなものを取り出す。

「この石が全て下に移動した時、君が持つ第二の能力、投影を公に使っていい。」

 舞はその砂時計を見るなり思った。

(あの約束は、アーチャーと交わした最後の約束なんだ!)

「でもあれは・・・・・・」

「確かに異端な力だ。だが・・・・・・・・・・・・君なら使える。正しく使いこなせる。だからこれが全て落ちる日まで約束をしてくれるか?」

 晴彦は―チャーの言葉に対し、「うん。」と返事をしてそれを受け取った。

「晴彦、俺はこれからも頑張っていく。お前も頑張れ。」

「うん・・・・・・・・・・・・・・・うん!約束するよ、アーチャー!僕も、頑張るよ!」

 晴彦の言葉を聞くとアーチャーは召還された。

 晴彦は一人泣いた。掛け替えのない“家族”が離れてしまった。それに耐えきれなかったのである。

 そして再び黒い空間へと戻った。

「・・・・・・・・・・・晴彦、私たちの前ではあんなに元気に振る舞っているけど、本当は寂しいんだね。」

「中学生の時からずっと一人。可哀そうです。」

「でも・・・・・・・・・・・今は私たちがいるわ。」

 小糸の言葉に舞と玲奈は頷いた。

 

 

 朝。日が昇り、部屋を日光が照らす。

「んん・・・・・・・・・」

 晴彦が目を覚ますと顔に何やら柔らかい感覚がした。

「なに・・・・・・・・・・・これ?」

 晴彦はそれを触ろうとするが腕が動かなかった。

「ん?っ!」

 腕が動かないのを見て左を向けば玲奈が晴彦の左腕を抱き枕の様に寝ていた。

(な、なんで玲奈ちゃんが!)

 晴彦は右を向く。するとそこには玲奈と同じように寝ている小糸の姿があった。

(小糸さんまで!てことは・・・・・・)

 晴彦は恐る恐る正面を向く。するとそこには寝ている舞の姿があった。

(な、なんでさ―――――――――――!)

 晴彦に衝撃が走った途端、三人はタイミングよく起きた。

「おはようございます・・・・・・・・・・・晴彦君。あれ?」

「どうしたの・・・・・・え?」

「なんだか重いわね。一体・・・・・・・・・・・へ?」

 三人は元に戻った晴彦を見る。

「あ、あー、えー・・・・・・・・・お、おはようございます。」

『っ~~~~~~~~~~~~~~/////////////////』

 自分たちの置かれている状況に赤面した玲奈と小糸は晴彦を投げると舞が晴彦に拳を繰り出した。

「なんでさ――――――――――――――――――――!」

 

 

「なんか色々迷惑かけてすみません。」

 晴彦は三人に土下座をしていた。

「い、いいのよ!き、気にしてないから///////」

「そ、そうですよ////////」

「ま、まあ仲間だから当然のことをしたまでだし//////////」

 三人は口ではそう言うが顔を赤くしていた。

「覚えてないんですけど・・・・・・大丈夫でしたか、俺?」

「覚えてないの?」

 晴彦の言葉に舞が驚く。

「ええ。なんでかはわかりませんけど。」

「晴彦、何か心当たりない?」

「心当たり・・・・・・・・・・もしかしてあれかな?」

 晴彦はそう言うと机の中にあった宝箱を取り出した。

「小学生の時に書いた作文を読んだからかもしれません。」

 晴彦がそう言うと台所でヤカンの湯が沸く音が聞こえてきた。

「あ、じゃあちょっと離れます。紅茶を淹れてくるんで。」

 晴彦はそう言うと台所の方へと向かった。

「なんだろう?」

 舞が気になり晴彦が出した作文を手に取る。玲奈と小糸もその作文を覗き込んだ。作文を舞が音読する。

「“日曜日のできごと 一年A組 一条晴彦

 今日はお父さんとお母さんと一緒に公園で遊びました。シーソーに乗ったり、ブランコに乗ったり、滑り台を滑ったりしました。とっても、楽しかったです。”」

 その作文を読むと、舞も玲奈も小糸も涙を流した。

「全部・・・・・・・・嘘だよね、これ。」

「もしかして晴彦君、この作文の願いを叶えたかったんじゃ?」

「久瑠美ちゃんの時の様な能力と心が反応して・・・・・・ん?」

 小糸が作文の裏に書かれている字に気づいた。

「裏にも何か書いてある。」

「え?」

 舞は裏を見ると小さくある一文が書かれていた。

“世界一の最悪な贋作”

 それは自分でもわかるほどひどいものだと晴彦は知っていた。知っている上で敢えて書いたのだ。

「もう一枚はなんでしょう?」

 玲奈がもう一枚の紙を広げる。

“晴彦へ

 この手紙を読んでいる時、私はもう別の世界へと旅立っているであろう。

 君は恐らく、無理をしているのではないか?一人で突っ走り、無茶をして、突き進んでいるであろう。

私も、君の様に全てを守ろうとして戦った。出来もしない理想、誰も傷つかない、誰の犠牲も無いようにと戦った。

だが、結局他人も自分も救えなかったがな。だが、私はこの選択に後悔はしていないと言えば嘘になるが、私は君と会えてよかった。君は、まるで私の昔の姿だ。あの地獄で、私は君を救えた。私の爺さんも同じように私を救った。私もあの時救われた。

絶望と言えるあの場で、君一人と言う人間を救えた。君と過ごした日々は私にとってとても掛け替えのない時間だ。どうか、君は君のまま、君の正義を通してくれ。それが私からの願いだ。

最後になったが、君に私の本当の名を教えよう。

 

私の名は、エミヤシロウ。

君の家族、アーチャーより“

 その手紙を読むとまた涙を流した。玲奈はそっとそれを晴彦の宝箱の一番上に置き、舞は手に持っていた晴彦の作文をその下に置いた。

「みなさ~ん、紅茶ができましたよー。」

 晴彦に呼ばれ三人は向かった。そんな光景を、半透明なアーチャーが見て笑っていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。