無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦   作:ザルバ

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26 母は帰りぬ②

 夏の公園。公園には家族連れで賑っていたそんな公園に一人晴彦はベンチに座って晴彦の母を待っていた。

 そんな時、晴彦は自分に向けられている視線に気づいた。その先には日傘をさしている晴彦の母の姿があった。晴彦の母は気マズそうに笑みを浮かべた。晴彦は軽く頭を下げた。

「そう・・・・・・・・・貴方記憶を・・・・・」

「ええ。貴方のことも、写真でしか知りません。」

「そうなの・・・・・・・・・・今は高校生よね?学校はどこ?」

「あの・・・・・」

「え?」

「どうして小さい頃の俺を置いて急に?」

 そのことに母は答えた。

「急にじゃないの。ずっとあなたのことが気になってたのよ。」

「結婚した人は?」

「随分前にお別れしたわ。・・・・・・・・・・本当は、もっと早く連絡したかったんだけど、きっと許してもらえないと思うと勇気が出なくて。」

「・・・・・・・・確かに、一歩踏み出すのは難しいです。俺も、そうですから。」

「え?」

「こんなこと言うのは変なんですけど・・・・・・・・・・・・俺の母として、接してくれますか?」

「っ!?」

 そのことに母は涙を流した。

 こうして晴彦は、一度は捨てた晴彦の母とまた一緒に暮らすこととなった。

 

 

 朝母が目を覚まし晴彦を起こしに行こうとするが、ベッドに晴彦の姿はなかった。すると家の扉が開く音が聞こえる。

「ただいまー。」

「お帰りなさい、晴彦。どこに行ってたの?」

「日課の鍛錬。朝はランニングするって決めてるから。」

「そうなの。シャワー浴びてきなさい。上がった頃にはご飯ができているから。」

「はーい。」

 晴彦はシャワーを浴びて髪を乾かすと母とルルと一緒に朝ご飯を食べた。

 朝食はご飯に味噌汁、天ぷらに惣菜である。晴彦はおいしそうにそれを食べていた。その光景をルルは見ていた。

 それから洗濯物に料理、部屋の掃除と一緒にやった。

 そんな感じで、一週間が過ぎた。

 そして晴彦は通信端末を直していた。そんな晴彦にルルが背中合わせで話しかける。

「なんかさ、おかしくない?」

「なにが?」

「急に帰って居付いちゃって。あの人、本当に晴彦のお母さんなの?」

「・・・・・・・・そうだと思う。いや、思いたいのかもな。ルルはもしかしてファントムが化けているとでも思っているのか?」

「ん~・・・」

 ルルと話していると母が晴彦に声を掛ける。

「晴彦、お買い物に行くの手伝ってくれない?」

「はーい。悪い、ルル。」

「うん・・・」

 ルルは席から離れ、晴彦は立ち上がる。

「今行くよ。」

 そして晴彦は母の方へと向かった。

 

 

 一方その頃舞たちはファントム退治をしていた。

「喰らえー!」

 ひまわり怪人ファントムが舞たちに向かいひまわりの種を飛ばしてくるが、アルブレヒトを盾にしてその攻撃を防いでいた。

「ひまわりの種は、食べられるんです。」

 玲奈はそう言うと前に出てヒマワリの種を全て食べた。舞はアルブレヒト越しに言った。

「いい加減観念しなさい!」

「ひーまひまっひま!このひまわり畑のヒマワリは、全部俺様のもんだー!」

「ここのヒマワリは土地の所有者の物よ!」

「うるさいわり!うるさいわり!うるさいわり!」

 そんな時小糸がひまわり畑のヒマワリと太陽を見て気づいた。

「皆、こいつの弱点は太陽よ。」

「ひまっ!」

 小糸は指を指しながら言った。

「こいつはひまわりだから、太陽の方しか向けないの。」

「ひまっ!」

「わかった。全員移動。」

 で、結果。

「かっかっか、ふんぬぐかっかっか!」

 ひまわり怪人は後ろを振り向こうにも特性的に振り向くことができない状態と格闘していた。そんな光景を見て舞たちは思った。

(さっきまでの苦労は何だったんだろう?)

「おのれ卑怯な!」

「やかましい!」

 ひまわり怪人の後頭部(?)に舞の右足蹴りが決まり、ひまわり怪人は倒れた。その際に全ての花弁が散った。

 

 

「晴彦は何やってるのよ!一週間も顔出さないで!」

 コンビニの前で舞がアイス片手に怒っていた。そんな舞にルルが説明した。

「なんか、お母さんといる方が楽しいみたい。今日も二人で買い物に行っちゃった。」

「ずっと帰りを待っていたんですもの。一緒にいたい気持ち、わかります。」

「だからと言って、こっちを疎かにするのは問題だわ。まあでも・・・・・・・・晴彦はずっとアーチャーと過ごしてたから記憶が・・・・・」

 ルルの言葉に玲奈は共感し、小糸は文句を言うが文句を言いきれない状況であった。

「ていうか、アンタいつの間にかチームに混ざってるわね?」

 舞が今更ながら気づいた。

「いまさら何言ってるの?」

 そんな時久瑠美がルルに聞いた。

「お母さんってどんな人なんですか?」

「えっとねー・・・・あっ!」

 ルルが向かいの魚屋を指さす。

「あんな感じの人。て、晴彦!」

 そんな舞たちを他所に晴彦は母と会話をしていた。

「重いでしょう?半分持とうか?」

「大丈夫だよ。鍛えてるし。それより次は?」

 そんな光景を舞たちは茫然と見ていた。

「あれがお母さん?」

「綺麗な人ですねー。それに優しそう。」

 久瑠美と玲奈が感想を述べる中、小糸が何かに気づき、それに舞が気付いた。

「どうしたの小糸?」

「気のせいかもしれないけど・・・・・」

 小糸は直感的に感じたことを舞たちに話した。しかもしゃがんで。傍から見れば不良である。

「ええ!」

 小声で玲奈が驚く。

「微かだけど、変な気配がしたわ。」

「やっぱりファントム?」

「違う。今まで感じたことない気配よ。」

「ええ、なにそれ?」

 ルルは小糸が言いたいことが分からなかった。

「わからないわ。どういうことなのか。」

「どうしましょう?」

 一同舞を見る。

 そんな時舞は晴彦の笑顔を思い出した。母と一緒にいる時の晴彦は、まるで子供のような笑顔になっていた。

そして舞はある決断をした。

「まずは姫野先生に連絡。後は相手の懐に飛び込む!」

 舞は握り拳を作ってそう言った。

 

 

 晴彦の家のインターホンが鳴ると母が「はいはいはーい。」と言いながら扉を開ける。

「まあ、嬉しいわ。こんなに大勢お客様だなんて。」

 玄関には舞たちがいた。

「ささ、上がって上がって。」

『おじゃましまーす。』

 舞たちが来てテーブルには多くの料理が並べられていた。海の幸の刺身に冷やし中華と、夏らしい食べ物である。

「材料をいっぱい買っといてよかったわー。タイミングバッチリ。」

 母は指を合わせながら言った。

「貴女が、川上舞さんね?いつも息子がお世話になってます。」

「あ、いえ・・・こちらこそ。」

 舞は緊張気味に挨拶をした。

「和泉玲奈さんね。たくさん食べる子って大好き。いっぱい召し上がってね。」

「ありがとうございます。美味しいです。」

 玲奈は丼ぶりを持ち上げながらそう言った。

「水無瀬小糸さんね。甘いものもたくさん用意してあるわよ。」

「あ、その、どうも。」

 小糸は少し照れながらも礼を言った。

「熊枕久瑠美ちゃんね。アルブレヒトちゃん可愛いわね。」

「あ!ありがとうございます。」

 久瑠美はちょっと驚きながら返事をした。

「ほらほら、みんな食べて食べて。」

 母が一同に促す。そんな中ルルが背中合わせで小糸に尋ねた。

「どお、気配?」

「よくわからないわ。」

「私が会った家族ファントムとも違いますし。」

 玲奈が小声で話した。

「こんなに大勢ガールフレンドがいるなんてさすが私の息子ね。」

「やめなよ。みんなに失礼だから。」

(((気づけよこのバカ!)))

 舞、玲奈、小糸の思いが一つとなった。

「お母さんと暮らせるようになってよかったわね、晴彦。」

「私たちも嬉しいです。」

「ありがとう。まだちょっと慣れていないんですけど。」

「ねえ、この中に晴彦の好きなこっているの?」

「はい?」

 その言葉に舞、玲奈、小糸はビクッと反応した。晴彦は赤面しながら席を立ちあがった。

「母さん!何言ってるの!」

「だって、将来私の娘になる子がいるかもしれないんだもの。今からよく知っておきたいじゃない。」

「やめてー!」

「みんなも息子とは仲良くしてくださってるんでしょ?」

 晴彦は手で顔を隠す。

「ま、まあ一週間ぐらい一緒に暮らしたりはしました。」

「私もですが、それに加えて“俺たちのいる場所が玲奈ちゃんの居場所だ”とか言っていただいたりしましたけど。」

「私もですけど・・・・・その・・・・・・・・・・いろいろ気を使ってもらっています。」

「私も、いつも晴彦お兄さんから勇気を頂いています。」

 それぞれ感想を述べた。が、何気に一緒に暮らしたことを玲奈と小糸も混ぜていた。

 そんな光景に母は喜んだ。

「こっちは受け入れ態勢万全よ。何時でも誰でも、お嫁に来てくれていいからね」

 その言葉に一同反応する。

「早い!早すぎるからその話!」

「ごめんごめん、母さん言いすぎちゃった。」

「ホントだよ!」

 そんな光景を見てルルは思ったことを口にした。

「何この雰囲気?みんなすっかり仕切られちゃって。」

 母は晴彦の反応を見て微笑む。そんな母を見ていた舞だがマナーモードにしているスマホが振動した。

「ああ、すみません。電話。」

 舞はそう言うと席を離れ廊下に出た。舞は廊下に付くと一息吐く。

「でもいいな。あんなお母さん。」

 舞はそう言いながらスマホを手に取ると電話に出る。

「もしもし?」

『川上さん、よく聞いて。一条君のお母さんには、捜索願いが出ています。』

「えっ!」

 舞はそのことに衝撃を受けた。

『届け出たのは、今の結婚相手の男性。一週間ほど前に、突然様子がおかしくなって、行方不明になったそうです。』

「行方不明?」

『一条君の家にも電話したけど、連絡が着かなかったって。』

「それって、まさか・・・・え?エニグマにはそんな能力も?それじゃ、それじゃあのお母さんは!っ!」

 舞が後ろを振り向いた途端、母が溝に拳を叩き込むと左手の筋肉を異常にして横に振るい、舞のスマホを破壊した。

「あんた・・・・・エニグマ。」

 母の瞳はエニグマと同じ模様が刻まれていた。

「母さん!」

「晴彦、こいつはあんたのお母さんじゃないわ。エニグマよ。」

「え!」

 晴彦とルルはそのことに驚く。

「今先生から電話があったの。エニグマには人間の意識を乗っ取る力があるって。」

「そんな・・・・母さん?」

 ショックを受ける晴彦。母は晴彦の方を振り向くと溜息を吐く。晴彦の家の電話回線は抜かれていた。

「もうちょっと様子を見るつもりだったけど、潮時かしら。」

「っ!」

「人間の身体を乗っ取っていたのね。道理で可笑しな気配を感じたはずだわ。」

 小糸がやっと謎に辿り着いた。

「晴彦、貴方の能力は実に興味深いわ。自由にファントムを呼び出せる。他人の意識や記憶に潜ることもできる。でも使い方が下手。」

 母はゆっくりと晴彦に近づく。

「上手に使えば、最強の能力になるのに。」

「晴彦、逃げて!」

「その能力は、私が貰うわ!」

 普段の晴彦なら対応できたが、ショックを受けた晴彦は対応できなかった。晴彦を庇う様に小糸が前に出るが小糸と玲奈を水の能力が襲う。

「玲奈ちゃん。小糸さん。」

 晴彦は母に右腕でがっちりホールドされていた。

「やめろ!やめろ!」

 母は久瑠美の方を見る。久瑠美はアルブレヒトを出し、舞が後ろから攻めようとする。

 母は左手を左に突き出すと別の能力で穴を開ける。土煙によって二人の視界が遮られる。

 舞たちが次に目にしたのは唇を奪われ、能力も奪われている晴彦の姿であった。晴彦は能力を奪われ倒れる。

「晴彦!」

「能力はもらったわ。ん?」

 母が気付くと晴彦が母の脚を掴んでいた。片手には紫にジグザグの短剣が握られていた。

「貴方、もしかして私を倒すつもり?無理よ。この身体を殺しても私は殺せないわ。」

「ころ・・・・・・・・・すん・・・・・・・・・・・・・・じゃ・・・・・・・・・・・ない。たす・・・・・・・・・・・け・・・・・・・・・る・・・・・・・・・・ぐっ!」

 晴彦は最後の力を振り絞り叫んだ。

「破壊するべき全ての符!(ルールブレイカー)」

 破壊するべき全ての符から発せられた魔力によってエニグマと母は切り離された。

「ぐぅ・・・・・・・・・まだ能力が・・・・・・・・・・まあいいわ。」

「エニグマ!」

 舞がエニグマを睨む。

「人間には勿体ない力よ。私が有効に使ってあげる。」

 エニグマはそう言うとそこから飛び去った。

「くっ!」

 舞は苦虫を噛み潰した表情でエニグマが飛んで行った方を睨みつける。

「晴彦君!」

「おばさん!」

「晴彦!」

 玲奈、小糸、久瑠美が二人の方へと駆けよる。

 舞は殴られた腹を抑え悔しがっていた。

「意識がないわ!早く病院へ!」

 小糸がスマホで救急車を呼ぼうとした時であった。チリーンと音が鳴った。舞が振り向くとそこには倒れているルルの姿があった。

「ルル?ルル!」

 舞が叫ぶことで一同も気づく。

「ルル!アンタまでどうしたの?ルル!ルル!ルル―――――――――――!」

 

 

 何時だっただろう?アーチャーが俺に言った。

「聖晶石というのがある。これは膨大な魔力の塊だが、もう一つ使い道がある。それは欲するものを一つだけ具現化することだ。」

「へー。だったら僕は何をお願いしようかな?」

「記憶ではないのか?」

「ううん、僕は今アーチャーと暮らしているからいいよ。うーん・・・・・・・・・・そうだ!僕が欲しいのは―――――」

 

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