無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
いやー、自分でも驚きました。まさかできるなんて。
正直、他にもファントム・ワールド作品増えたらって思ってます。
描きたいと思った人は書いてみたらいいと思いますので頑張ってください。
では、最終話をどうぞ。
アリスは荒々しい運転をしながら阿頼耶識社の裏のゲートに向かっていた。その後を晴彦がバイクで追いかけていた。
「裏のゲートに向かいます!」
「エニグマの狙いは何なんですか?」
舞がアリスに問う。
「研究所と病院にある、ファントムの情報です。エニグマは、一条君の召喚能力を手に入れました。後はデータがあれば自由にファントムを操れます。」
「そんなことになったら・・・・」
「ええ。エニグマの最終目的は、ファントムを支配し、人間を制圧することでしょう。」
そのことに舞たちと念話で聞いていた晴彦は驚く。
「エニグマは特異能力者を襲い続け、更に強くなっています。まずは一刻も早く患者さんたちを避難させなければ。」
晴彦たちが裏ゲートに着くと病院から避難誘導をしている阿頼耶識社の人間と武器を構えている人間がいた。
「焦らずゆっくり避難してください!」
「えらいことになってるわね。」
舞がそう言い、エニグマのいる方を向く。
「っ!」
その時晴彦の記憶がフラッシュバックした。あの地獄を晴彦は再び思い出した。
「あなた方も能力を奪われる恐れがあります。エニグマとの接触を避けて、避難誘導を手伝って下さい。」
そんな時小糸が気付いた。
「来たわ!」
『っ!』
一同エニグマの方を向く。エニグマは煙の中から姿を出した。
「先に病院の方を襲う気ですね。」
「そんな・・・・・まだ避難もできてないのに。」
「・・・・・」
晴彦は前に出ようとするが舞が立ちふさがる。
「先輩?」
「今のアンタを行かせられるわけないじゃない!」
「でも・・・・・・・・・・・・俺は行きます。もうあんな地獄を、二度と、繰り返したくないんです!」
晴彦は干将と莫耶を投影する。そのことにアリスは驚いた。
「すみません。」
晴彦はそう言うとエニグマに向かい突っ込む。
「晴彦!」
「晴彦君!」
「晴彦!」
「晴彦おにいさん!」
「一条君!」
「晴彦さん!」
晴彦はエニグマの前に立つ。
「あら、貴方は召喚能力の子ね。この能力をありがとう。」
「そらどうも。ところであんたは何がしたいんだ?ファントムの女王になるつもりか?」
「あら、いいわね。女王。ええ。全ての人間とファントムを従える。私ににしかできないことだわ。」
「・・・・・・・・・・・・・人間に作られたからか?」
「そうよ。私は人間に作られた。実験材料としてね。」
『っ!?』
そのことに晴彦たちは衝撃を受ける。
「身体中を弄られ、改造され、ファントムでも人間でもない、他のどんな生き物と違うものにされてしまった。」
「・・・・・・・・・・・・・恨んでいるのか、人間を?」
晴彦の言葉にエニグマは笑った。
「とーんでもない。感謝してるわ。今ではね。ファントムでありながら人間の特異能力も使える。それは私がファントムと人間、両方を超越した証。進化の頂点に立ったのよ!劣ったものは優れた物に従う!それが必然じゃない。後ろの子たちの能力も、私が頂くわ。」
「させない!絶対に!」
晴彦はエニグマに正面から突っ込み干将を突く。が、エニグマの特異能力の脚が干将を砕く。
「せい!」
莫耶を振るうがエニグマは片手に氷を作り防ぐ。
「こっちの番よ!」
エニグマは晴彦の腹に片手を添えると光弾を放った。
「がぁあああああ!」
晴彦は街灯にめり込む。
「ぐ・・・・・」
「驚いたわ。結構楽にさせてあげよと思ってやったのに。しぶといのね。」
「生憎それが売りなんでね。投影、開始!」
晴彦は緑の黒鍵を投影する。晴彦の身体を風が纏うと一気にエニグマの後ろに立ち、黒鍵を振るうがエニグマは影の盾で防ぐ。
「甘いわ!」
「くそっ!」
晴彦は離れながら黒鍵を投げる。が、黒鍵は影の盾で防がれてしまった。
「壊れた幻想。」
黒鍵が爆発すると晴彦はエニグマの上を飛びながら弓を投影し、エニグマに剣を射る。晴彦は着地するまで何度も剣を射るが、手応えはなかった。
そして爆煙の中から晴彦がエニグマに向け射った剣が帰ってきた。
「—―――I am the bone of my sword.」
「熾天覆う七つの天環!」
晴彦は熾天覆う七つの天環で防ぐ。
「貴方のその力は一体何?特異能力でもない、別の物よ。」
「投影って魔術だよ。それにしても・・・・・」
爆煙が晴れるとそこには傷一つ負っていないエニグマがいた。
「あんだけやったのにピンピンとはな。」
「降参する?」
「ほざけ!」
晴彦は干将と莫耶を投影し再びエニグマに向かった。
『晴彦(君)・・・・』
舞たちはその光景をただ見ることしかできなかった。そんな中アリスがふと疑問に思った。
「どうして晴彦くんの投影は奪われなかったのでしょう?晴彦君のもう一つの能力は投影と本人から聞いてますが、もし違うとしたら一体・・・・・・・・」
アリスはブツブツ言いながら考える。
「先生、どうしたんですか?」
久瑠美がアリスに尋ねた途端、晴彦が舞たちの前まで跳んできた
「がぁ!」
晴彦が舞たちの元まで跳んできた。
『晴彦(君)(お兄さん)(さん)!』
「一条君!」
舞たちが見ると晴彦の制服の上着はところどころ破れ。体には剣が刺さった跡があった。
「よく頑張った方ね。でも・・・・・これでお終いよ。」
「させないわ!」
舞と小糸が晴彦を守る様に前に出る。
「先生!」
久瑠美がアリスに声を掛ける。
「一条君!」
「っ!」
「貴方の能力が取り戻せるかもしれません!」
「なっ!」
『っ!?』
アリスの言葉にその場にいた誰もが驚いた。
「よく聞いてください。ルルちゃんは、一条君から生まれたファントムなんです。」
「「・・・・・・・・・・・え?」」
『えっ!?』
アリスの言葉に晴彦とルルは間抜けな声を出し、舞たちは驚く。
「私はずっとあなたたちを見守ってきて、この結論に達しました。おそらくルルちゃんは、一条君が無意識に抑圧している奔放な性格がこういう形で実体化したファントムなんだと。だとすれば、ルルちゃんも潜在的に同じ能力を共有し、一条君の成長に同期、シンクロナイズされている可能性があります。」
「へー、じゃあその能力も私が頂くわね。」
エニグマは晴彦に近づこうとするが舞がエニグマの左から蹴りを喰らわせようとする。しかしエニグマが奪った能力で左腕を大きく変化させ防ぐ。
「それで、どうしたらいいんですか?」
小糸がアリスに問う。
「ルルちゃんに保存された能力を、一条君に移します!」
「でもどうやって?」
「エニグマが能力を奪ったように、同じことをするんです。」
「そうか・・・・・・・・・・・・・て・・・・・・・・・はい!?」
そのことに舞たちも衝撃を受ける。
「やんなさい晴彦!」
「先輩!」
「そうよ!考える暇ないわ!急いで!」
舞と小糸が促す。
「晴彦さんと・・・・・・・・そんな///////////」
「こんな状況で照れるな!」
ルルが照れる。
「晴彦君、ファイト!」
「今その言葉!」
玲奈が晴彦にエールを送る。
「いいから早くやりなさいよ!」
舞が時間を稼ぐ。
「先輩!・・・・・・・・・ルル、やるぞ!」
「は、はい!」
ルルは恥ずかしながら唇を突き出す。その間にエニグマを小糸の音と玲奈の吸収で動きを封じる。
(時間がない!すまん!)
晴彦はルルを掴み自分の方へと引き寄せる。それと同時に拘束が解かれた。
「そこまでよ!」
エニグマの攻撃が当たる直前に二人はキスをした。その瞬間、ルルの記憶を晴彦は共有した。
「ここが俺たちの内面世界か。」
「早く保存された能力を探し出しましょう。」
「ああ。ん?」
晴彦はルルの記憶にはない晴彦自身の記憶を見つけた。
「・・・・・・・・・・・・そっか。これがあったんじゃないか。」
晴彦はそれに触れた。
エニグマの攻撃が晴彦に直撃する。
「晴彦!ルル!」
「そ、そんな・・・・」
舞が声を上げ、玲奈が絶望する中、エニグマは微笑む。
「やだ、やりすぎちゃった。ん?」
エニグマはある変化に気づいた煙の中から晴彦の姿が見えた。
そのことに舞、玲奈、小糸は喜んだ。
「晴彦!」
「晴彦君!」
「晴彦!」
その光景を見たアリスが言った。
「成功です!」
「ふーん、でも同じことよ。また能力を奪うだけ。それとも私と組む?一度は私と一緒に暮らした仲だもの。それもいいわね。」
エニグマの言葉を無視して晴彦はアブラメリンの指で二つ召喚の陣を描く。
「INVOCO!」
「忘れないで!私も同じ能力を持っているのよ。」
エニグマはそう言うと赤鬼ファントムと三つ首ファントムを召喚する。
「貴方の封印したファントムよ。研究データを手に入れれば、もっと大勢のファントムを操れるわ。」
「お前は何もわかっていないな。お前にとって俺は相性が悪い。」
「なんですって?」
「アーチャーが言っていた。“使い手を倒せるのはそれを凌駕する使い手か、若しくは絶対的一を持っている者”だと!お前は多くの特異能力者の能力を奪った。だがそれは、その人のその時の力だけだ。お前は所詮俺と同じ半端者。だが、一つだけ優れるとするならば俺の特異能力は、術者であることだ!来い、マルコシアス!クトゥルーク!」
召喚の陣からマルコシアスとクトゥルークが晴彦のスケッチ通りに出てきた。
「行け!二人共!」
マルコシアスが火を噴き、クトゥルークが強力な放水で二体のファントムに向け放った。二体のファントムはダメージを受け消滅する。
「すごい・・・」
舞が声に出してそう言った。
「人間ごときが・・・・・・・・・・だがまだだ!まだ負けてない!」
「そうだな。それとお前には一つ感謝をしている。」
「感謝?」
「聖晶石のことだ。昔アーチャーにその話を聞かされ、欲しいものがあるとしたら何を願ったと俺は言ったと思う?」
「知る必要のないことだわ。」
「いいや、お前にとってこれは最悪の事態を招くことだ。俺が望んだのは――――」
『僕が欲しいのは――――』
「『—――アーチャーの様に、守るための強さ!』」
その声に応えるかのように、晴彦の部屋にあった砂時計の聖晶石が晴彦の元へと現れた。
「これはアーチャーがくれた聖晶石だ。これは所有者の願いを一つだけ叶える。俺が願うは・・・・・・・・・・アーチャーの経験だ!」
晴彦がそう言うと聖晶石が光り、晴彦の身体の中へと入ってゆく。
「っ!!」
聖晶石から来るアーチャーの記憶が晴彦の中へと入ってくる。
記憶の中にはアーチャーの体験した戦闘や苦悩、そしてあの日の地獄と同じ光景、聖杯戦争。それらすべてが晴彦の中に入ってきた。
「・・・・・・・・・・・ありがとう、アーチャー。」
晴彦の手が魔力で光る。
「それが願い?笑わせてくれるわね。」
「そうかな?そんな余裕はなくなると思うぜ。それと俺は勘違いをしていた。」
「勘違い?」
「ああ。俺の投影ってのは武器や物を作り出すことじゃない。無限に剣を内包した世界を具現化することだったんだ!」
「I am the bone of my sword.
(体は剣で出来ている)
Steel is my body, and fire is my blood.
(血潮は鉄で、心は硝子)
I have Created over a thousand blades.
(幾たびの戦場を超えて不敗)
Unknown to Death.
(ただ一度の敗走もなく、)
Nor known to Life.
(ただ一度の勝利もなし)
Have withstood pain to create many weapons.
(彼の者は常に一人、剣の丘で鉄を打つ)
Yet, those hands will never hold.
(ならば我が生涯に意味はいらず)
So as I, UNLIMITED BLADE WORKS.
(この体は、無限の剣で出来ていた) 」
晴彦から魔力が発せられ、舞たちを巻き込む。
次に舞たちが目にしたのは信じられない光景であった。先ほどとは全く別の光景となっていた。見渡せば赤原にいくつもの剣が刺さった世界。空は赤く染まり、大きな歯車が浮いていた。
「何よこれ・・・・・・・・・どこよここ?」
舞たちは突然のことに頭が付いて来なかった。
「坊や、これは何?」
「固有結界だ。これはいわば俺の心象風景の具現化。と言っても、アーチャーの経験を共有しただけなんだがな。けど、ここにあるのは全てが偽物。だが、いくら偽物だからと言ってもお前に敵わないわけじゃない。」
「ふざけないで!」
エニグマは火球を晴彦に向け放つ。すると刺さっている剣がいくつも円を作る様に晴彦の前に出て攻撃を防ぐ。
「なにっ!」
エニグマは驚く。
「おかしいことじゃない。ここは俺の世界。ならば、俺が思うがままに武器を出せ、そして扱えるんだ。愚問だが聞こう、エニグマ。能力の補充は十分か!」
晴彦は干将と莫耶を投影しながらエニグマに接近する。
「ほざけ!」
エニグマは片手に光の剣を作り出し、晴彦とぶつかり合った。
「はっ!らっ!たっ!はっ!やぁあっ!」
晴彦は干将と莫耶でエニグマを押してゆく。
「くっ!」
エニグマは晴彦の攻撃を受けるだけで精いっぱいであった。
「らぁっ!」
晴彦が干将上と莫耶を振り下ろした途端、エニグマの剣が砕けた。
「なにっ!」
エニグマは錫杖を手にすると晴彦に向け放水をする。晴彦はそれに波乗り距離を取る。その際に晴彦は刺さっている剣を手に取ると左手に弓を投影しエニグマに向け射る。その剣がエニグマの方に刺さる。
「ぐあっ!な、なぜこの私が・・・・・」
「お前は能力を奪った。だがそれは一つではなく複数。一つを極めたのなら俺に勝ち目はないが、お前は極めていない。俺と同じ半端者だと言ったはずだ!」
「くっ!」
エニグマは影を晴彦に伸ばす。刺さっている剣が影を刺し、動きを止める。
晴彦は旋回しながら剣を拾っては射るを繰り返す。
「舐めるな!」
エニグマは複数の能力を晴彦の全方位を囲う様に発動し、一斉に襲い掛からせる。
『晴彦(君)!』
舞、玲奈、小糸が声を上げる。エニグマは微笑むが上からの気配に気づいた。
「っ!」
「熾天覆う・・・・・七つの天環!」
そこには熾天覆う七つの天環を展開している晴彦がいた。
「ちぃ!」
エニグマは晴彦に向け影をいくつも伸ばす。
(・・・・・・・・どかせる!)
伸びる影を晴彦は熾天覆う七つの天環で防ぐが徐々に削られ、一枚、また一枚と消えてゆく。崩れたところから影が晴彦の身体を傷つけてゆく。
(・・・・・・・届かせる!)
ついに熾天覆う七つの天環は全て破壊されたが、それでも晴彦は干将を投影し致命傷となる所以外全ての攻撃を受ける。
(この攻撃は・・・・・・・・・・・届かせる!)
そして晴彦はエニグマの右腕を取った。
「ぐぅっ!」
エニグマは晴彦から距離を取ろうと後ろに下がろうとする。
「逃がすかぁあ!」
晴彦は莫耶を投影しエニグマに突き刺した。
「がはっ!」
エニグマは吐血する。
「ふんっ!」
晴彦は更に追い打ちをかけるように干将を突き刺した。
その瞬間、固有結界が解けた。
「まさか・・・・・・・・・・・ここまでとはね。」
「ああ・・・・・・・・・・・・俺も驚いたよ。俺の勝ちだ、エニグマ。」
風景が元に戻るとそこにはエニグマに干渉を突き刺した晴彦がいた。
「でも・・・・・・・・・・・・まだ私には少し余力が残ってるわ。」
エニグマは晴彦の手を掴む。するとエニグマの身体に異変が起き、身体が水晶に変わっていった。
「貴方を巻き込んであげるわ!」
「くっ!こうなったら片腕を斬り捨ててでも―――――」
「それもいいかもしれんが、そこを動くなよ、晴彦。」
「え・・・・・・・・・・・・」
晴彦はその声に聞き覚えがあった。忘れもしないあの声が、今聞こえたのである。
そしてエニグマの腕に一本の剣が刺さると爆発した。
「ぐぉっ!」
晴彦は地面を転がる。
「いてて・・・・・・・・・・今のって・・・・・・・」
晴彦が剣が飛んできた方を向くとそこには光の粒子だ微かに残っていた。
「・・・・・・・・・・・・・最後に一言話したかったな。」
晴彦はそう言うとエニグマの方を見る。
「貴方と過ごした時間、悪くなかったわ。」
「・・・・・・・・・・・ああ、俺もだ。」
そしてエニグマは完全な水晶になった。晴彦は弓と偽・螺旋剣を投影するとつるがえす。
「I am the bone of my sword.」
「偽・螺旋剣!」
晴彦は最後の魔力を振り絞り、偽・螺旋剣をエニグマに向け射る。そしてエニグマは粉々に砕け散った。
「・・・・・・・・・・・・・皆さん、人間も捨てたもんじゃないって・・・・・・・・」
晴彦は舞たちの方を向く。
「頑張りましょ。」
晴彦がそう言うと舞、玲奈、小糸、久瑠美、アリスは微笑んだ。そんな晴彦にルルが駆け寄る。
「晴彦!やったー!」
ルルは晴彦の顔に抱き着く。
「ルル!お前元に戻ったのか?」
「うん!」
「みなさーん!」
「久瑠美ちゃん!先生!」
「皆さん、よくやりました。特に晴彦君はとてもよくやりました!」
「アタシのおかげだね。」
「本当にそうですね。」
「でもあの剣、誰が投げたんだろ?」
「いやあれは―――――」
そして事件が終わった晴彦の母の病室。晴彦の母は意識を回復し、上体を起こして黄昏ていた。
「・・・・・・・・・母さん。」
晴彦の母が声のする方を向くとそこにはボロボロの晴彦がいた。手にはあの絵本が握られていた。母は晴彦を見て涙する。
「晴彦です。と言っても、貴方との記憶はありませんが。」
「晴彦・・・・」
「・・・・・・・・・母さん。」
「大きく、なったね・・・・ごめんね・・・・・・・・・お母さん、ごめんね。」
涙を流す晴彦の母の涙を晴彦はぬぐう。
「この本、ずっと持っていたんですね。前の俺が、貴方との大事な思い出が詰まったこの本を。」
「だって、貴方が初めて夢中になった本だもの。」
「っ!」
その瞬間、晴彦の記憶の中に母と一緒にその本を読んだ記憶が蘇った。ただ一つではあるが、晴彦にとっては大事な記憶である。そして晴彦は涙を流した。
「会いたかった・・・・・・・・・・・ずっと、ずっと!写真でしか記憶がなかった貴方と、会いたかった。」
その光景を病室の外から舞たちは見ていた。舞は壁に背もたれをして一言言った。
「よかったね、晴彦。」
こうして晴彦は、母との本当の再会を果たした。
事実を隠そうとした阿頼耶識社は、厳しく責任を問われることとなり、特異能力を奪われた人も元に戻った。だけど阿頼耶識社は外部からではなく内部から極秘情報が暴露された。アルブレヒトもそんなことはしていないから誰がやったのか多くの人は見当もつかないが、晴彦には見当がついていた。
そして晴彦と過ごしたエニグマの記憶は母に移っていた。そのあと聞いた話によると、あれは母自身の本心でもあるらしいと言うことが分かった。そのことで何やら火花がそこかで散った気がした晴彦だが、誰がどう散らせていたかは本人は全く見当がつかないとか。
そんなことがあって晴彦は女子から注目を浴びていた。ビーチエンジェルズも晴彦に注目し、スキンシップを取るが舞たちが許さなかった。
「なんか面白くないなー。私が晴彦の一部だなんて。」
食堂で晴彦たちは昼食を食べてた。ルルはプリンを食べながらそう言った。
「一部と言うより、双子みたいなものじゃないでしょうか?」
「そうね。元々一つだったわけだし。」
玲奈と舞がそう言った。
「ッ!双子かー。よーしよし、お姉さんと呼んでいいからね。」
「お前は妹だろ。年齢的に。」
舞たちはクラブに向かっている最中に話をしていた。
「今日もシール交換したんですよ。小糸さんにもあげますね。」
「ありがと。」
「アタシも欲しい。」
ふと晴彦は立ち止まり、ルルを見た。
(そういえば・・・・・・・・・・・・・あの絵本にこんな奴がいたな。それとあの時・・・・・・・・)
晴彦は窓を見る。
「アーチャー、あの時助けてくれてありがとう。二度目だね。」
「気にするな。私に身勝手な正義を行っただけだ。」
「・・・・・・・・・・・そっか。ねえアーチャー。」
「ん?」
「俺、アーチャーに会えてよかった。ありがとう。」
「・・・・・・・・・・・・・・ふ。どういたしまして。」
そしてアーチャーの気配は消えた。今度こそ本当に召還されたのだろう。
「晴彦、早くしろー!」
「ああ。」
晴彦は舞たちの元へと歩き出す。
(アーチャー、俺は正義の味方になるよ。俺の信じる、正義を通す正義の味方に。)
「皆さん揃いましたね。」
教卓にはアリスが立っていた。
「今回の依頼は少し大変ですが、貴方たちなら問題ないでしょう。やっていただけますか?」
『はい!』
ファントム。それは人間の脳が生み出した幻影。晴彦たちは。幻想と現実が曖昧になった世界を生きている。だけど晴彦たちは、この世界を結構気に入っている。