無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
「ふっ!はっ!」
晴彦は人気のない公園で干将と莫耶を振るう。公園は晴彦しかおらず、晴彦はアーチャーをイメージして干将と莫耶を振っていた。
「はっ!」
晴彦は干将を突くと、二つを魔力に戻した。
「また負けたか・・・・・・・」
イメージでもアーチャーには勝てなかった晴彦であった。
和泉玲奈が正式にチームに加わり、晴彦たちの戦力の補強はされ、晴彦たちのチームに明るい未来が広がった。
「晴彦も頑張らないと。」
「わかってる。一応、スケッチブックも投影したし、他の武器の資料も見ている。」
晴彦はホセア学園内をバイクを押しながらルルと話していた。
「一条君、ルルちゃん!」
晴彦が学院内の階段を上っていると玲奈が声を掛けてきた。
「おっはよー。」
「おはよ。今日から同じクラブだね。」
「はい。よろしくお願いします。」
玲奈は律儀にお辞儀をする。
「ルルちゃんと一条君って、仲がいいですよね。いつも一緒で。」
「まあ、中学からの付き合いだからな。」
「ちなみに私のフルネームは、ルルラルリ・ルララリララ・ルルリリラリ・リララルルララ・ルルララリラリって言うの。」
「ルララララララ・・・・」
「ちっちち。ルルラルリ――――」
「はいそこまで。」
晴彦は手をパンと叩く。
「ま、なんでか気に入られてな。っ!」
「っ!」
二人は昨日会った彼女に気づく。
「水無瀬さん、おはよう。昨日廊下で会ったね。俺は同じ一年の一条晴彦。」
「和泉玲奈です。」
「ルルラルリ・ルラ―――」
「はい長くなるからルルで。」
晴彦はルルを握る。
が、水無瀬は無視してその場を通り過ぎる。晴彦は昨日のことを思い出した。
準備室で晴彦たちは水無瀬についてアリスから話を聞いていた。
「水無瀬小糸さん?」
「ええ。特異能力者の中でも、非常に強い力を持っているんです。だから、一人で活動することがほとんどなんですって。ファントム対策局の候補生でもあるんですよ。」
「へー、なんかすごーい。」
アリスの話にルルは感心する。
「うちのクラブに入らないか誘ってみたんだけど、断られちゃって。まだ学校になじんでないみたいですね。」
「私、気持ちが分かります。転校したばかりだと不安ですから。」
「晴彦、小糸ちゃんもチームに誘う気?」
「いや、今のところは考えてない。ただ・・・・・・・・」
「「ただ?」」
「なんかほっとけないんだよ。無理に一人で抱え込んでいる。そんな感じがするんだ。」
そんな晴彦の言葉を聞いてルルはショックを受ける。
「ガーン!晴彦、小糸ちゃんのことが好きになったんだ!だから気になっているんだ小糸ちゃんのことを!」
「それも考えてない。」
晴彦はルルに凸ピンを入れる。
「アンタはアタシと言う者がありながら・・・・・」
「えっ!?」
ルルの言葉に玲奈は驚く。
「一条君とルルちゃんってそういう関係!?」
「誤解しないで。ないからね、絶対。」
そんなことをしている中、小糸はヘッドホンを掛けながら黄昏ていた。
放課後になり準備室では晴彦たちがアリスから依頼を受けていた。
「阿頼耶識社の廃工場?」
舞がアリスから言われた依頼内容を口にする。
「はい。前に稼働していた警備ロボットが、ファントムになって暴れているそうなんです。危険だから駆除して欲しいって依頼なんです。」
「阿頼耶識社って、ウィルスの流失事故を起こした会社ですよね?」
「そう。貴方たちに行ってもらうのは事故を起こした施設ではないですけどね。実は、当局からの依頼でもう水無瀬小糸さんが向かっているんです。」
「じゃあ俺たちが行っても邪魔になるだけでは?」
「そのことですけど・・・・水無瀬さんって子供のころから強い能力を持っていたそうなんです。そのせいで、周りから特別扱いされることが多かったらしくて。でも私としては早く学校に溶け込んで欲しいんです。他の人と協力することを知って欲しい。だから貴方たちに加勢をお願いしたんです。」
「・・・・・・・・・・・・なら、行かないといけないですね。」
晴彦はそういうと扉に向かう。
「待ってよ晴彦。晴彦っていっつも誰かのために動くけどなんでなの?」
ルルの問いに晴彦は答えた。
「言っただろ、前にも。俺は・・・・・・・・俺なりの正義の味方になりたいんだよ。」
小糸は当局から依頼で阿頼耶識社の廃工場の扉を開けた。すると奥から機械音が聞こえてくる。
〈侵入者、発見。侵入者、発見。侵入者、発見。侵入者、発見。〉
いくつものドローンがタイヤを転がしながら小糸の前まで来る。すると小糸は詠唱する。
「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、標を留めおけ!」
小糸は詠唱すると「あー。」と声を出す。すると小糸の口から広範囲にドローンを捕らえる糸が表れ、ドローンを捕まえると続けて詠唱する。
「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、焔を知らしめせ!」
「あー。」と声を上げるとドローンを捕まえた糸は着火剤となり燃える。
すると奥からその光景を見ていた警備ロボットがスピーカーから音を出し、小糸の音を相殺する。
「声が消えた?」
小糸は一瞬気を取られる。その隙を逃すまいとドローンの脚から折り畳み式のプロペラが出て、飛行する。
〈強制排除モードに移行。〉
ドローンは備え付けられていたスタンガンから放電する。
「っ!?」
いくつものドローンが一斉に特攻を仕掛けるが小糸は回避行動を取る。回避し着地するがそれでも数はあった。
「くっ!」
いくら音で攻撃できるとはいえど詠唱する暇もなくては手の出しようがない小糸。そんな時男の声が聞こえた。
「そのまま動くなよ。」
刹那、六本のアンバランスな剣がドローン六機に刺さった。ドローンは機能を停止し落ちる。
「っ!?」
小糸が後ろを振り向くとそこには晴彦の姿があった。
「やれやれ、手を焼きそうだな。投影、開始。」
晴彦は両手に黒鍵を投影する
「さて・・・・・・・・・・・相手をするか。」
晴彦がそう言うとドローンは一斉に晴彦に向かい特攻をしてくる。晴彦は両手の黒鍵を仁王立ちで振るい迫りくるドローンを破壊する。
(すごい・・・・・・・・・あんな早く迫ってくるのを的確に捌いてる。なんで・・・・なんであんなに実力があるのに今まで隠してたの?)
小糸がそう思っていると舞たちが遅れて来た。
「晴彦!大丈夫・・・・・・・・・・・・て、大丈夫みたいね。」
「水無瀬さん、こっちです。」
玲奈が自分たちの方へと寄せる。
「貴方たち、なんでここに?」
「姫野先生に頼まれたの。貴方を手伝って欲しいと。」
「余計なことを。」
小糸はそう言うと晴彦の方を向く。まだ晴彦は黒鍵を振るっていた。
が、その時であった。ピキッという金属に亀裂が入る音がする。
「ちっ・・・・・」
晴彦は舌打ちをすると黒鍵をドローンに投げる。投げた黒鍵はドローンに刺さるが、それでもまだいくつかは残っていた。
「投影、開始。」
晴彦は干将と莫耶を投影し、ドローンを斬る。
「数だけあっても意味が無いな。ん!」
晴彦は奥から来る本体に気づく。
〈新たな侵入者を認識しました。排除を開始します。排除を開始します。〉
奥から出てきた警備ロボットからは黒いオーラのようなものが見えた。すると黒いオーラは更にドローンを生成する。
「うわー、ファントムがいっぱい!」
「増殖型か・・・・・・・・・・本体を倒さない限りこちが不利だ。」
晴彦がそう言うと小糸は晴彦の間に出て詠唱する。
「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、焔を知らしめせ!」
小糸は音の攻撃をするが警備ロボットのスピーカーから発せられた音によって相殺される。
(また!)
小糸は心の中で驚く。
「何故声が?」
「音の逆位相を使っているな。」
「どういう意味よ?」
「簡単に言えば10の音を消すには-10の音を使って0にするようなものだ。イヤホンのノイズキャンセルに使われる。あのロボットのファントムも、水無瀬さんの声の逆位相を使っているものだろう。それでパロールの効果を消しているんだな。」
「パロール?」
晴彦の言葉に玲奈は疑問を持つ。そんな中、小糸は一人あることに理解していた。
「そうか。最初に小型のファントムが壊されたのを見て・・・・・」
「舞先輩。俺が隙を作りますからスピーカーを。」
「わかったわ。」
晴彦は干将と莫耶を魔力に戻すと詠唱する。
「投影、開始。」
晴彦の左手に黒い弓が投影される。
「弓?矢はどこに・・・・」
「投影、開始。」
晴彦は右手に捻じれた剣を投影する。
「剣?でもそれは・・・・」
晴彦は矢をつがえ、詠唱する。
「―――――
「—――
晴彦の放った偽・螺旋剣が飛んでいるドローンを通過の際の突風で巻き込むと、舞がスピーカーに向かい拳を突く。
「はぁあああああああああ!」
舞の拳によってスピーカーが破壊される。
「水無瀬さん!」
「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、標を留めおけ!」
小糸の音によりドローンもろとも捉えられる。
「玲奈さん!」
「はい!」
玲奈の特異能力、“ファントムイーター”が発動し、ドローンのファントムを飲み込む。
「コイツの属性は間違いなく金!」
舞は警備ロボットの方に意識を向ける。
「五行万象を発生し、緋にして燈なる火の気は金を禁ず。心の火気で拳を満たさん。
陽にして飛なる火の気はこ無事を満つ!いざや!一騎当千の戦に挑もうぞ!」
舞は右手で胸を揉みながら詠唱すると、足元に火が起こり、舞はそれを左足に纏わせる。
「シッシッシッシッシッシッシッシッシッ!」
舞が蹴りを繰り出す中、晴彦はスケッチを書き終える。
「先輩!」
晴彦の言葉に舞はファントムから離れる。
「千早振るファントム!THOTHの天倫に虚像を晒せ!」
封印される最中、ファントムは言った。
〈阿頼耶識社の秘密を守ることが、私の存在か・・・・・〉
ファントムが言い終わる前に封印され、警備ロボットは爆発する。
「ぷはっ!すごかったねー。」
晴彦の髪の中で隠れていたルルが顔を出す。
「さりげなく逃げたな。」
「なんのこと~?」
「とぼけんでもいい。」
晴彦とルルが反していると玲奈が晴彦に話しかける。
「一条君、今のファントムは何だったのでしょう?また、付喪神ですか?」
「おそらく。でも増殖や自己進化と言った点から、また別のタイプだ。ファントムについてはまだわからないことが多い。どんなことでもあり得るからね。」
「何でもありかー。なんかファントムってテキトー。」
「お前が言うな。」
晴彦は自分御方でくつろいでいるルルにツッコミを入れる。そんな時小糸は舞に気づく。舞もそのことに気づき自己紹介をする。
「自己紹介がまだだったわね。アタシ、川上舞。以後よろしく。」
サイムズアップで自己紹介をする舞。そんな舞に来いとは思ったことを口にする。
「意外とやるのね。貴方も、そっちの子も。そして君も。」
小糸は玲奈と晴彦の方を向く。
「あっ・・・・和泉玲奈です。」
「改めて、一条晴彦だ。」
「報酬は山分けでいいわ。でもその前に聞きたいことがあるけど、いい?」
「答えられる範囲であれば。」
小糸は晴彦に気になったことを聞いた。
「なんであなたはあの力を今まで隠してたの?特異能力が二つあるなんて人は今までいなかった。つまり貴方はイレギュラーよ。」
「まあそうだね。その問いに関しては・・・・・・・・・約束だったんだ。」
「約束?」
「ああ。俺を・・・・・・・・・・あの地獄から助けてくれたあの人との最後の約束。これはね、一見他人から見ればすごいことだけど、俺はこの力を最初持った時は怖かった。あの日に・・・・・・・・・・」
晴彦はそこから先の言葉を言おうとすると顔が白くなり、自分で自分を抱きしめる。
「・・・・・・・・・・・・・もういい。辛そうだから。それと貸しとは思わないから。」
小糸はそう言うとその場を後にした。
「大丈夫ですか、一条君?」
「ああ・・・・・・・・・ちょっと思い出しただけだから。」
「でもすごかったですね。一度にあんな多くのファントムを動けなくするなんて。」
「そうね。あーでも、服が汚れちゃった。またクリーニング代が嵩むわ。」
「どーしましょ。こんな格好で帰ったら叱られてしまいます。」
困っている二人に晴彦は助け船を出す。
「うちに来ればいいよ。母さんの服を貸してあげるから。」
三人が話している中、ルルは倉庫の中にあった壊れた金庫を見つけ、中にあった機械を手に取り、勝手に持ち出した。