無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦   作:ザルバ

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4 迷惑UFOをやっつけろ!②

 ファントム退治の後、舞と玲奈は晴彦の家でシャワーを浴び、ルルはお菓子を食べていた。晴彦は部屋で少し手作業をしていた。

「悪いわね、シャワー借りちゃって。」

 風呂から上がった舞が晴彦に詫びを入れる。

「ご両親はお留守なんですか?」

「まぁ、そんなところだ。」

「しっかし、相変わらずすごい本の量ね。」

「これ全部一条君の“残念知識”の源なんですか?」

「残念知識って言わないで・・・・・・まあそうなんだけど。」

「雑学や神話、武器まで・・・・・・・・・・・・・ん?これは何?」

 舞の目に入ったのはアーチャーからもらった砂時計と飾られた干将と莫耶、そしてアーチャーと一緒に写った写真である。

「ああ、それですか?大事な思い出です。その砂時計はアーチャーがくれた物で、投影を使えるようになるまでのリミットを計ってたものです。」

「じゃあこの飾ってる武器は?アンタが初めて投影したの?」

「いえ、それはアーチャーが投影した干将と莫耶です。」

「へー。ん?」

 舞は晴彦の言った言葉に気づく。

「今、アーチャーが投影したって言ってたけど・・・・・・・・・・・あんたのその・・・・・・・魔術じゃないの?」

「いえ、前にも言いましたけど投影ってのは贋作作りの魔術です。アーチャーはそれに長けて、俺はそれを習ったんです。」

「へー。でもなんでアーチャー?本名は?」

「わかんないんです。」

『は?』

 晴彦の言葉にルルと玲奈も間抜けな声を上げる。

「アーチャーはワケあって本名を言えなかったんです。でも俺にとってそんなことはどうでもいいんです。あの人は・・・・・・・・・・・俺に全てをくれました。そして俺は、あの人に憧れたんです。あの人は俺にとって、目標で、夢で、正義の味方なんです。」

 晴彦はそう言いながら写真を手に取った。

「そっか。ん!」

 舞はルルが布で丁寧に拭いて着る機械に目が行った。

「ルル、なにしてるの?ん!なにそれ、ゲーム機?」

「ああ、これさっきの工場で拾ってきたの。」

「勝手に持ってきたらマズイだろ。」

「いいじゃない。どうせ廃工場にあったんだし。」

 そんな話をしていると玲奈が気付く。

「ランプが付いていますね。まだ使えるんでしょうか?」

「PCのデバイスかな?」

 晴彦はルルから受け取る。

「ゲーム機じゃないみたいね。」

「起動ボタンも操作パネルも見当たりませんし。」

「何かの暗号でしょうか?」

「エラーが出ているだけかもしれない。どっかにスイッチは・・・・・」

 晴彦は機械全体を見ているとモニターが消えた。

「あっ!壊した!」

「いや、バッテリー切れかなんかじゃないですか?第一触って壊れるってどんだけもろいんですか?初期のファミコン以下ですよ!」

「でもランプ消えちゃってますよ。」

「参ったなー。充電すれば動くのかもしれないが・・・・・」

 三人が話をしているとルルが皿を差し出す。

「おかわり。」

「お前も少しは責任を持て。そしてそれ以上腹に入らないだろ。」

 晴彦が言うとルルはゲップをした。

 

 

「それでは、今日はここで失礼します。」

「いろいろありがとう。助かったわ。」

「いえ、いつでも遊びに来てください。」

 舞と玲奈はそう言うと帰って行った。

「んじゃ、また明日ね。」

 ルルもそう言うと自分の寝床の方へと帰って行った。

 晴彦は見送るとふと一人になった家を見渡す。

(やっぱ・・・・・・・・・・・一人って寂しいな。)

 そう思った晴彦だが、気持ちを切り替える。

「さて、ちょっと進めようか。」

 晴彦はルルが持ち帰った機械をUSBケーブルで充電し、手作業を続けた。

(上手くいけば・・・・・・・・・・訓練相手を作れるんだよな~。一応予備の二体作ってるけど・・・・・・・・やっぱ関節面が難しい。)

 

 

 翌日の放課後、晴彦たちはクラブで報告していた。舞は玲奈と共にストレッチを行い、晴彦はスケッチブックに何かを描いていた。

「結局直んなかったんだ、あの機械?」

「ああ。」

 晴彦はルルの言葉に応える。

「でももうちょっとやってみる。阿頼耶識社に届けるとしても、直しといたほうがいいだろう。」

「晴彦、さっきから何を描いてるの?」

 ストレッチをしている舞が声を掛ける。すると晴彦はスケッチを二人に見せる。

「マルコシアスって名前の魔物です。もっと手段を増やそうと思って。」

「でもあなたには投影があるじゃない。」

「あれは場所を選びます。剣や槍とかは下手に振るったら関係のない人に被害を与えます。でもこれだったらある程度の被害を軽減できますから。」

「でもなんだか怖そうですね。」

「自分の助けになる使い魔的ファントムを呼び出せるようになりたいんだ。俺、一応召喚能力もあるから。」

 そんな晴彦にルルが文句を言う。

「助けならアタシがいるじゃな~い。」

「お前は何もできないだろ。」

 そんな晴彦の言葉にルルは小突く。

「いい考えかもね。でもあんた、武器をあんなに匠に使えるんだし。」

「俺は二流なんで。それと新しいパロールももう考えてあるんです。後は絵が完成すれば。」

 そんな時玲奈が晴彦に気になったことを聞いた。

「あの、すみません。お二人のお話によく出てくる“パロール”ってなんですか?」

「特殊能力を使う時の一種の呪文だよ。俺や舞先輩が使っているでしょ?“THOTOの天倫に虚像を晒し”とか、“五行万象を発生し”とか。」

「ああ、水無瀬さんもおっしゃってましたね。“天地開闢の調べ”とか。」

「パロールがあると特殊能力の効率が上がるんだ。君の様にパロール無しでもう力を発揮している人は珍しいと思う。」

「はぁ、そうなんですか?」

 イマイチ実感がわかない玲奈。

「俺が使う“トレース オン”や“I am the bone of my sword.”同じ言葉だけど使い方によって使い分けているしね。」

「え!アレみんな同じじゃないんですか!」

「ああ。“トレース オン”には“投影、開始”、“解析、開始”、“強化、開始”なんかって使い分けの仕方があるんだ。」

「投影はわかりますけど・・・・・・・・・・強化と解析は何なんですか?」

「強化は物や自身の肉体の強化で、武器の強度を上げたり、肉体の身体能力を上げること。解析は身体状態や物の構造解析に使ってる。“I am the bone of my sword.”は意味として“身体は剣で出来ている”と“骨子は捻じれ狂う”の二つに分けられる。」

「身体は剣で出来ているはわかりますけど・・・・・・・・・・もう一つはいつ使ったんですか?」

「昨日の倉庫で使った。偽・螺旋剣を放つ時に使ったんだ。」

「へー。」

 玲奈が感心しているとアリスがクラブに入って来た。

「あら。貴方たちだけですか?」

「あ、はい。他のチームは皆で払っています。」

 アリスの言葉に晴彦が答えた。すると舞が喰いつくように質問をする。

「何か仕事ですか?」

「ええ。近所の女子大の寮から。」

「すみません、俺は帰っていいですか!」

「何全力で拒んでんのよアンタは。いやらしい。」

「ヒドッ!」

 

 

 晴彦たちは依頼のあった女子大生二人から話を聞いた。

「覗き?」

「そうなの。アタシたちが着替えているとUFOが窓から覗いているの。」

「しかも写真まで撮られたんです。」

「うわ~、悪質。ファントムじゃなかったらファントムのせいにする変態だな~。」

 晴彦は思った言葉を口にした。

「じゃアタシたち用事があるからお願い。」

「よろしくお願いします。」

 二人はそう言うとその場を後にした。

 晴彦たちが依頼人お部屋に入るとそこは一面ピンクの世界。家具から床まですべてピンクで統一されていた。

「うわ~、すごい部屋。」

「なんでもいいわよ。報酬さえもらえれば。」

 そんな時玲奈があることに気づき、恥ずかしがりながらも二人に問う。

「その報酬なんですけど・・・・品物じゃなくても申請すれば貰えるんでしょうか?」

「物にもよると思うけど。何が欲しいの?」

「あの・・・」

「「「?」」」

 三人は玲奈の言葉が気になる。

「だぁい・・・・行きたいです・・・」

「「「え?」」」

「た・・・・食べ放題のお店に行きたいです!」

 玲奈の言葉に衝撃が走った。

「私の家って、少し厳しくて。両親にお願いしても、はしたないからダメだって言われているんです。」

「食べ放題がはしたない?」

「へー、結構お金持ちの感覚ってわかんないわ。」

 二人は玲奈の家の事情がますます分からなくなった。

 それからしばらく時間が経ったが、一向にファントムは出てこず、時間だけが過ぎて言った。

「ねー、まだファントムでないの~?」

 机の上でお菓子を口にするルルがくつろぎながら問う。

(やっぱり・・・・・・・・・・あれじゃないからか?でもこれ俺が言うと・・・・・・・・)

 晴彦は予想していることを口にしたかったが、男であるため言えない。そんな時玲奈が晴彦の代わりに口にした。

「あの、やっぱり着替えをしないと出ないんじゃないでしょうか?」

「あー、そうかもねー。」

 舞は晴彦に視線を向ける。晴彦はそのことに気づき、外に出る。

「準備しとこ。“ヤキンボアス”。」

 晴彦がスケッチブックが入ったカバンを開いた時であった。

「出た―――――――――っ!?」

「っ!?」

 部屋の外からUFOのファントムが来る。

「来たわね覗き魔!」

 舞は晴彦が投影した棍棒を突くがファントムはそれを華麗に回避しながら写真を撮る。

「舞先輩!大丈夫ですか!」

「バカ彦!まだ入ってくるな!」

 玲奈は顔を赤くしながら晴彦の胸ぐらを掴むとファントムに向け晴彦を投げる。

「なんでさ―――――――――――――!」

 理不尽にも投げられた晴彦を他所に舞はファントムを退治しようと奮闘する。

「ふっ!はっ!こっち!」

 晴彦は急いで部屋へと戻る。

「待て!この~!」

「一条君、やっぱりお願いします。」

 玲奈の言葉を聞いて晴彦は再び部屋に入る。部屋の中では舞がファントムを棍棒で退治しようと振っているが、全て避けられ、今度は強敵を玲奈に向ける。玲奈は逃げようと晴彦の方へと駆け、何とか撮影を阻止する。

「いつつ・・・・・・・・・・ッ///////////」

 気づけば玲奈は足で晴彦を固めていた。

「無礼者!」

「なんでさ―――――――――!」

 晴彦はまたしても吹っ飛ばされる。

「はっ!ごめんなさい、うっかり!」

「いや、大丈夫。」

 部屋に戻った晴彦に玲奈が謝る。そんな時ルルが気付いた。

「晴彦、血が出てる。」

 ルルの言葉に晴彦は右の人差し指を見ると確かに切れて血が出ていた。

「あ!アタシのせいで・・・」

「いや、丁度いい。魔物を呼び出すには、人間の血が必要なんだ。」

 晴彦はそういうとスケッチブックを手に詠唱する。

「前いまし今いまし先します主の戒めあれ。ZAZAS、ZAZAS、NASZAZAS。」

 晴彦は召喚の陣に血を塗り付ける。

「罪生の魔性を回生せよ。EVOKE、マルコシアス!」

 晴彦はスケッチブックを前に向ける。するとマルコシアスが召喚される。

「出た!俺の使い魔!」

 が、マルコシアスは小さな子犬であった。

「うそーん!」

「かわいい!」

「これが一条君の使い魔ですか?」

「う~ん、イメージが足りなかったか~。」

 三人が話していると舞が棍棒を晴彦に向け話す。

「こら!出たんだから何かしなさいよ!」

「マルコシアス!GO!」

 マルコシアスは晴彦の言葉に従いファントムに襲い掛かる。

「ちょっと二次災害を防ぐ手段を講じよっか。」

 晴彦は呪符を手に家具などに被害が行かないように飛ばした。

「なにそれ!」

「呪符です。ルーン文字で簡易的な結界ですけどこいつには十分です!」

 話している間にマルコシアスがファントムを捕まえる。

「玲奈ちゃん!」

「はい!」

 玲奈は口を開けファントムを吸い込み始める。が、マルコシアスは犬奈文一度噛みついたら中々離さない。

「こら、離せ!お前まで吸収されてしまうぞ!」 

 晴彦の言葉に従ったのかマルコシアスはファントムを放す。そしてファントムは玲奈に吸収された。

「えらいぞ、マルコシアス。」

 晴彦がマルコシアスを撫でていると足音が聞こえてくる。そのことにいち早く気付いたルルは足音の方を向くとそこには小糸の姿があった。

「小糸ちゃん!」

「水無瀬さん、なんでここに?」

「昨日は緒と感心したけど・・・・」

 小糸は壊れた窓を見る。

「私の見込み違いだったみたい。」

「ええ、壊れた窓?これならすぐに直せるよ。」

『は?』

 晴彦の言葉に一同間抜けな声を上げる。晴彦は窓枠に手を添え、詠唱する。

「解析、開始。(トレース オン)」

 晴彦は材質を解析すると手を放し、詠唱する。

「投影、開始。」

 晴彦は壊れていない窓枠を投影する。

「すっごい!投影ってこんなのもできるの!」

「まあ、一応。後はドライバーとネジを投影して付け直しますんで、先輩たちは着替えてから外に出たガラスを回収してください。」

「わかったわ。」

「わかりました。」

 脱衣所の方で二人は着替えはじめ、晴彦はドライバーを投影しネジを取り始める。

「ん!どうかしましたか?」

「・・・・・・・・・・・・別に。」

 小糸はそう言うとその場を後にした。

「ねー晴彦。小糸ちゃん、なんで来たんかなー?」

「多分・・・・・・・・・いや、言わないでおこう。」

 晴彦は再び作業を開始した。

(きっと・・・・・・・・・誰かの助けを借りたいんだと思う。でも彼女はその方法を知らない。でも・・・・・・・・・たった一言いえば、助けになってやるよ、小糸さん。)

 晴彦はそう思いながら作業を続け、直した。

 

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