無彩限のファントム・ワールド 二つの能力を持つ晴彦 作:ザルバ
「一条君はファントムと召喚できる特異能力者。つまりこの世ならぬ世界との交流できる、稀有な才能を持っているんです。」
(まぁ、実際アーチャーにも会ってるしな。)
「へー、稀有。」
アリスの言葉にルル感心する。
「一条君なら、川上さんのスキルをコピーできるかも。この世ならぬどこかに保管されている、人類の記憶サーバーにアクセスしてね。」
「マジで言ってます、それ?」
「て、なんであんたが驚くのよ。」
驚く晴彦に舞が突っかかる。
「私は阿頼耶識社の研究員も兼ねています。この試みはぜひレポートにして発表したいです。」
「姫野先生がそう言うなら、やってみてもいいけど。具体的にはどうするの?」
「大丈夫。ちゃんとアイディアがありますから。」
アリスのアイディアに一同首を傾げた。
翌日。
「なんであんたとこんな?」
「仕方ないでしょ。先生がやれと言うのですから。」
二人は遊園地で一緒にコーヒーカップを回っていた。そんな光景を少し離れた木陰のベンチからアリスと玲奈、ルルが見ていた。
「ここは、川上さんが小さい頃遊んだ場所だそうです。記憶を共有するんだから、思い出の場所を回ってみるのも良いと思って。」
そんな光景に玲奈は不貞腐れていた。
「本当に記憶のダウンロードなんてできるんでしょうか?」
「二人に疑似的な共有体験をさせれば、記憶の同期も、もしかしたら可能かもしれません。特異能力にもまだまだ謎が多いですから。」
「でもこれほとんどデートだねー。」
ルルの言葉に玲奈は頬を膨らます。
ところ変わって映画館で晴彦と玲奈は格闘映画を見ていた。
《ふはははは!ここが貴様らの墓場だ。あの世で後悔するがよい!》
《弟子よ!今こそあの技を!》
《はい、師匠!》
映画では雷鳴が轟いた。
《天与怒れ!》
《大地よ叫べ!》
師匠と弟子が両手を合わせる姿に舞は夢中になる。
《こ、これは!》
師弟の合体技が敵に炸裂する。そんな光景を少し離れたところで玲奈たちは見ていた。
「昔見て感動した映画だそうです。丁度リヴァイヴァルしててよかったです。」
そんなアリスを他所に玲奈はガムチャラにポップコーンを口に運んでいた。
また場所は変わってロッククライミングを二人は行っていた。
「アンタ意外と筋肉あるわね。」
「まあ、自主練はしてますから。」
そんな光景にルルは「人間って飛べ無くて不便だね。」と言った。」
「ここも思い出の場所なんですか?」
「昔お父様とよく来ていたそうです。スポーツ好きの方だったみたいですね。」
それから中華料理屋、海岸、展望台と一緒に回った。
展望台で舞は三人家族が目に映り、ふと昔の自分と照らし合わせた。そんな光景に微笑む舞はふと晴彦に視線を向けると、晴彦はどこか悲しそうな表情をしていた。そんな晴彦を見ると舞は指をイゴイゴ動かし始めた。
「で、ファントムの出る場所に戻ってきました。」
ルルが誰かに向かい説明する。
「あー、今日は色々懐かしかったー。」
「これで記憶の共有ができるのかな?」
晴彦がそう呟いていると舞はふと公園に近くに咲いている花に目が行った。
「あ、思い出した。」
舞はそう言うと立ち止まる。
「え?」
「ここも昔、来たことあるんだ。」
舞はしゃがむと花を近くで見ながら話す。
「幼稚園の遠足で。その頃は建物も少なかったからわからなかったけど、内気だったアタシは、他の子から離れて遊んでたの。そしたら知らない子が二人、声を掛けててきてくれて。人見知りだったはずなのに、なぜかその子たちとはすぐに仲良くなれたの。名前も聞かなかったんだけど・・・・・どこの、誰なんだろう?」
舞はそう言うと立ち上がった。
(もしかして・・・・・・・・・・その二人は・・・・・)
晴彦がそう思った途端、二人組のファントムが現れた。
「現れましたね。」
「川上舞。」
二人は橋の上から舞を見下ろしていた。
「出たわね。」
「いや、記憶がコピーできてないのに!」
「いいのよ!元々そんなの、アテにしてなかったんだから!」
舞はそう言うと晴彦の手を引っ張る。それに続くようにファントムも舞に迫る。
舞は白、晴彦は黒のファントムを相手にする。
舞は白のファントムの攻撃を流し、そして反撃する。
「なかなかやるな、お前。どこでその動きを学んだ?」
「アーチャーからだ・・・・よっ!」
晴彦は両手を一気に突き出しファントムを吹っ飛ばす。その瞬間、舞がファントムに吹っ飛ばされる。
「先輩!」
晴彦は一気に跳び舞を受け止めようとするが足を滑らしそのまま舞と頭をぶつけてしまう。
しかしそれによって、二人の意識は別の場所で共有された。
「え?なにこれ?」
そこはまるで深海のような世界ではあるが、舞の記憶が映し出された空気の泡がいくつも漂っていた。
「これは・・・・・・・・成功です。俺たち、舞先輩の記憶にアクセスしているんです。」
二人は足を着ける。
「えっ!本当にできちゃったの?」
「先輩、拳法の修業を思い出してみてください。」
「わ、わかった。えーっと・・・」
舞は晴彦の言葉に答え拳法の修業を思い出す。すると空間に舞の拳法の修業が次々と出てくる。そしてそれは晴彦の記憶に入ってくるが、そんな中一つの記憶の泡に目が止まった晴彦は、それに触れる。その記憶には、二人のファントムを子供の姿にした記憶があった。
「やっぱり・・・・」
「おっきろ、おっきろ、お・き・ろ!」
ルルが倒れて散る晴彦の顎を何度もたたいていた。
「今の・・・・」
「お二人共、大丈夫ですか?」
玲奈とアリスが心配する中舞が頭をぶつけたところを抑えながら起き上がる。そんな舞に晴彦は声を開ける。
「舞先輩。舞先輩、昔アイツらと会ってますよ。」
「アイツらって?」
舞はファントムの方を向く。
「ええー!」
舞はそのことに驚き声を上げる。
「え?なに?どういうこと?」
「もしかして、記憶のコピーに成功したんですか?」
「そう・・・・・確か幼稚園の遠足でここに来た時に。」
晴彦がそう言っても舞は一向に思い出した顔をしない。」
「ちょっと待て川上舞!まさか我らを忘れているのか!」
「ここは我らの出会いの場所!」
黒いファントムが袖を振るうと、花びらが舞った
その光景を見て舞は昔を思い出した。
「降参!もう降参~!」
声がする方を向けば夕暮れに小さな舞が子供姿の白いファントムに逆蛇固めをしている光景があった。
「ねえ、もっとあそぼーよー。」
「いや!いやいや!」
瞳に涙を溜めた白いファントムは舞から逃げるように走るが、舞はそこファントムに飛び掛かる。
「これって・・・・・・・・・舞先輩の幼稚園の時の思い出ですよね?」
「なんで!覚えてたのと違う!」
舞は記憶の違いに衝撃を受ける。
「ねえねえ、今度はそっちに技掛けさせてあげるからー。」
「「いやだー!」」
そんな光景に舞は顔を赤くする。
「たまたまこの地で修業をしていた我らに、いきなり襲い掛かってきた其方の暴虐。」
「雪辱のため、長き年月、我らは鍛錬を重ねてきたのです!」
「これってどーなってるの!」
舞はわからず頭や顔を抱える。そんな舞に晴彦が答える。
「記憶が改変されていたのではないですか?」
「改変?」
晴彦の言葉に玲奈が復唱する。
「人間は、記憶を自分の都合よく改変する傾向があります。つまり舞先輩は、実際には自分では思っていたほど内気ではなかったてことです。」
衝撃の事実に舞は声を上げる。
「えぇ―――――――――――――――!」
「変だと思ったんだよねー。舞っちが内気だなんて。」
ルルがそう言った途端、舞はルルを見る。
「でも元気な舞お姉様も可愛かったです。」
玲奈がそう言った途端、ファントムが声を掛ける。
「川上舞、勝負はまだ着いてはおりませぬぞ!」
「苦節十年、修行の成果、見せてくれる!」
「皆、下がってて!」
舞は前に出る。舞は二人に挟まれる形で対峙するが、そこに晴彦が来た。
「あんたなんで!」
「さっき、記憶を投影しまして、再現しました。」
「え?」
「理念を鑑定し、経験を共有し、達成に至る工程を理解しつくし、全てを理解して今ここに具現化しています。これが俺の・・・・・・・・いや、贋作者にできることです。」
晴彦はそう言うと右手を左脇に置き、詠唱する。
「五行万象を発生し、露なる力が水を静め、火の五気で拳を満たさん!」
晴彦の拳に五行線が浮かび上がる。
「うおー、舞っちみたい!」
「「っ!!」」
二人はそのことに驚くが、晴彦は構わず黒、白の順に拳をぶつける。
「よくやったわ、晴彦!」
舞はそう言うと詠唱を始める。
「五行万象を発生し、露なる力が水を静め、いざや!破邪顕正の戦に臨もうぞ!」
舞の拳に五行線が刻まれる。
「「おのれ!」」
「晴彦、あの技よ!」
「はい!」
舞と晴彦は映画で見たあの技を繰り出す。
「「天よ怒れ!大地よ叫べ!二頭の竜が今こそ吠える!とうっ!」」
二人は上に跳び、手を重ねる。
「「必殺!竜巻地獄車――――!」」
「「はぁああああああああ!」」
「「はぁあああああああああああ!」」
舞たちとファントムたちの技がぶつかり合う。
そして立っていたのは晴彦と舞であった。二体のファントムは道路に仰向けに寝ていた。
「まだまだ修行が足りなかったようですね。」
「しかし、それでこそ我らが宿敵。倒し甲斐があるというもの。」
二人は舞の方を向く。
「アンタたちこそ、大したものよ。」
舞は二人に手を差し伸べる。二人はその手を取り、立ち上がる。
「正直、ギリギリの勝利だったわ。」
二人の身体は、徐々に消えかけていた。
「いずれまた、挑戦に参ります。」
「それまで、どうぞ息災で。」
「ええ、待ってるわ。」
舞がそう言った途端、二人は消え、ピンクと紫の花弁だけが手に残った。舞はそれをそっと握りしめる。
「舞おねーさまー。」
玲奈が舞の名を叫びながら抱きついて来る。後からアリスが声を掛ける。
「お疲れさま。よく頑張ってくれましたね。」
舞は笑顔で微笑むと「はい。」と返事をした。舞は晴彦の方を向くと、晴彦は橋の策で肩を掛けていた。
「アンタもお疲れ。」
「どーも。でも今回の記憶の投影、余計なものまでオプションで付いてきましたけどね。」
そんな光景をクマのぬいぐるみを持った女の子が見ていた。
「やっぱりかっこいい。」
翌日、舞はクラブで黄昏ていた。
「はぁー、記憶って不思議ね。昔の自分が本当はあんなだったなんてショックだわ。」
「あやふやで不確かで何が本当だったかはっきりしない。人間の記憶も、ファントムみたいなものなのかもしれませんね。」
アリスがそう言うと晴彦が続けて言った。
「思い出が失われても、また新しく作ればいいんです。俺もアーチャーにそう言われましたし。あのファントムたちとも、今度は本当に仲良くなれるかもしれないでしょ?」
晴彦のその言葉に舞は微笑む。
「えっらそうに!」
舞は晴彦に凸ピンをする。
「で、舞っちの記憶はどうなったの?」
「それがまだ消えてないんだ。」
ルルの問いに晴彦は答えた。
「うっかりすると、舞先輩の記憶とごっちゃになりそうで。」
「ちょっと待って!マジ!」
晴彦の言葉に舞は驚くが、アリスが補足を入れる。
「心配しなくても2~3日したら消えると思いますよ。一夜漬けで勉強してもすぐに忘れてしまうのと同じで。」
そんな時ルルが突然質問をする。
「しっつもーん!舞っちが初めてブラ付けたのはいつ?」
ルルの問いに舞は顔を赤くする。
「勝手に言えるか。第一、俺の記憶じゃあいからそこは思い出さなくてもいいだろ。」
そんな光景に玲奈は少し羨ましそうな眼をしていた。
(舞お姉様と晴彦君、それにルルちゃんはまるで仲のいい家族みたい。私も・・・・・・・・私もいつかもっと親しくなれるのかしら?ふと・・・・・・・・・そんなことを思った私でした。)