INNOCENT Brave Heart   作:零円

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01-01 乱入者

 佳奈達がブレイブデュエルを始める少し前に、浩樹もまた、ブレイブデュエルの世界へと足を踏み込んだ。

 四人と同じく、制服を真似た白い服飾に身を包み、右腕には肘までをまるまる覆うナックラー。浩樹の腕のサイズがそのまま倍になったような感じだ。結構重そうだったが、浩樹は気にする様子無く、ぐるぐると腕を回して具合を確かめながら、そのナックラー型の自身のデバイスと会話をしていた。

 

『どんな感じ?』

「……まあ、これくらいの重さなら問題ないかな」

『そっか。なら良かった』

 

 声の感じから、浩樹は隣家に住んでいるツインテールを思い出した。すっかり疎遠になっている彼女。別に喧嘩をしているわけでもないのだが、今ではなんと声をかければいいのか分からない程に離れている。思わず溜息を漏らすと、浩樹の腕についたデバイス――AH-05が『どうしたの?』と尋ねる。そんな彼女へ、「何でもない」と浩樹は短く告げた。

 

「そういえば、お前の名前を考えないとな。流石にAH-05のままじゃ呼びづらいし。どんなのがいい?」

『お任せで』

「……なら『アルハ』でいいか。響きもいいし」

『じゃあ、それで!』

 

 あっという間に決まった。

 

「さてと。それじゃあ、この後どうすればいいんだ? スキルカードの使い方、アルハの具合も大体わかった。体の動かし方は――まあ、これは慣れるしかないが、問題はない」

『そうだねぇ……どうしよう?』

「えー」

「それなら、あたしと一緒に乱入だな」

 

 高い高い空の上。これからどうしようかと浩樹とアルハが悩んでいると、二人の元へ、新たな声がかけられた。視線を移せば、八神家最年少、八神ヴィータが赤いゴシックロリータ衣装に身を包み、その手にハンマーを持って浩樹を見下ろしている。勝気なその瞳がすっかりやる気なのを見て、(うわぁ)と声を出さずにドン引きする。こういうやる気な彼女が面倒なのは、長い付き合いでしょっちゅう割を食う浩樹には良く分かっていた。

 

「あんだよ」

「別に何も。てか、乱入って?」

「他でブレイブデュエルやってる連中に殴り込みに行くんだよ」

「……それってどうなんだ? 今日から稼働なんだから、殆ど初心者だろ?」

「乱入の有り無しは設定で決められんだよ。乱入出来る所は設定ON。掛かって来いって向こうが言ってんだ。問題ねぇだろ」

「成程。それで? 俺も参加ってどういうこと?」

「暇そうにしてっからな。ブレイブデュエルがどんなもんなのか見せてやる」

「……ならそうするよ。丁度、この後どうするかって困ってた所だ」

「なら決まりだな」

 

 ニッっと嬉しそうに笑ったヴィータが、ディスプレイを表示させると、乱入設定がONになっている相手を探し始める。

 とはいえ稼動初日。中々相手は見つけられず、暫し検索が続けられ、漸く乱入OKになっている相手を発見したヴィータは、迷わず乱入を選択する。

 すると、ヴィータと浩樹の前に、ゲートが現れた。

 

「よし! 行くぞ、浩樹!」

「おー」

 

 やる気満々のヴィータに対し、どこか気の抜けた様子で拳を上げる浩樹。

 そうして二人は、ゲートへと飛び込む。向かう先は、ホビーショップT&H。なのは、アリサ、すずか、佳奈の四人がフリートレーニングを行う雲海上空。

 

 

***

 

 

 突如第三者の現れた方角を見て、なのはが戸惑う。気の利いた自身のデバイス、レイジングハートによって見せられた乱入者の名は『所属:ベルカ{鉄槌の騎士}ヴィータ(R)』と『所属:ベルカ 高坂浩樹(N+)』の二つ。明らかに自分達よりも格上のヴィータはいざ知らず、まさかこの場に浩樹が現れるなど、なのははおろか、他の誰も予想だにしていなかった。

 そしてそれは、浩樹の方も同じである。まさかこの場で、この四人と鉢合わせるハメになるなど、全くもって考えてもいなかった。ヴィータから数メートル下がった場所で、さてどうしたものかと浩樹が考え始めた中、ヴィータが標的となる四人を値踏みしていく。浩樹と同じN+が四人。恐らくは初心者に毛が生えた程度だろうと考えながら、しかしヴィータは一切の容赦をするつもりもなかった。乱入OKにしたのは向こうなのだから、遠慮するのも変な話であり――

 

「弱いもんイジメは趣味じゃねぇが、あたしも記録更新しねぇといけねぇからな。悪いが全力でブチのめすぜ」

「……あー、ヴィータ? ほんとにやるの?」

「うっせぇぞ浩樹。お前は下がってろ」

「へーい」

 

 ヴィータの気迫に押されて、浩樹がすごすご引き下がる。(そこはもっと頑張れよ、バカ兄貴)と内心で罵倒しながら、すっかりやる気のヴィータを前に、佳奈は静かにキュートジェミニを構えた。

 レアリティの話は聞いているし、二つ名まであるのだ。恐らくは段違いの差なのだろうということは、容易に想像がついた佳奈。ゲームを始めたばかりの自分達がまともな連携を取れるのかも怪しいところであり、仮に取れたとしても、勝てるかどうか怪しいところだ。

 

(……兎に角時間を稼ごう。皆が慣れてくれれば、もしかしたらチャンスもあるかもしれないし)

 

 一息ついて、体に力を入れる。移動に関しては通常移動に魔力を追加して加速するものだというのを、誰かのデバイスが言っているのを聞いたから、それを信じて。

 

(初撃必殺――)

 

 キュートジェミニを回転させ、刃の方が上に来るように持ち替える。この持ち方だと銃を撃つことは出来ないが、使い慣れていない銃よりは幾分慣れた刃の方が、今は信用に足ると判断した結果だ。ググッと引き絞るような構えを取る。ふぅ、と短く息を漏らして

 

「疾っ!」

 

 魔力を爆発させ、初速から最高速を叩き出す。一拍遅れて、ヴィータが動いた。直線機動でそのまま突撃する佳奈に対し、ヴィータの持つデバイス。グラーフアイゼンは鎚。一拍遅れた上、更に振るという動作を行わなければ攻撃が行えないその武器であり、そもそも攻勢に出て叩き潰すことを生業とする彼女は、反射的なカウンターが苦手であった。

 

「チッ!」

 

 舌打ちを漏らしながら、ヴィータは強引に体を動かす。N+相手なのだ。喰らってもそこまでのダメージにはならないはずと判断し、受けながらでも、強引に叩き潰そうとしようとした矢先

 

「ごめーん、ヴィータ。佳奈とは戦わせてくれないかな?」

 

 少し間の抜けた声と共に、弾丸の如き速度で迫っていた佳奈がヴィータの眼前で叩き落とされる。慌ててアイゼンを止めるヴィータ。少し視線を動かせば、アルハを纏った右拳を振り切った体勢の浩樹が居た。

 

「テメェ……」

「だからごめんって。でも俺も乱入した組なんだし、戦う権利あるだろ?」

「……そいつだけだかんな」

「分かってるよ」

 

 視線を再び動かし、ヴィータは此方を見る三人を見る。今の数秒で何があったのか分かっていないのか、未だにぼんやりした様子の三人だ。一番まともそうなのを取られたと、ヴィータは内心で歯噛みしながらも、デバイスを振るい、空を駆ける。

 

「え、えーと、佳奈ちゃんがなんか突っ込んでって、浩樹くんと戦い始めて、改めてなんか突っ込んできたんだけど!?」

「落ち着いてなのはちゃん!?」

「良く分かんないけど……対戦ゲームなんだし乱入上等よ! 行くわよ、フレイムアイズ!」

『――ん? おぉ、俺のことか?』

 

 戸惑うなのはとすずかを他所に、すっかりやる気になったアリサが自身の愛機を振るう。直後に放たれた炎の斬撃を――

 

「しゃらくせぇ!」

 

 ヴィータはグラーフアイゼンで相殺した。

 

「ちょっ、反則じゃない!? あれ!?」

「お返しだ!」

 

 自身のシュートである鉄球を四つ作り出し、纏めてアイゼンで叩き飛ばす。

 まだ飛び慣れていないアリサは当然避けきれるはずもなく、四つすべてがクリーンヒット。一撃のもとに戦闘不能まで陥った。

 

「アリサちゃん!」

 

 すずかがアリサの方を向く。その隙に、ヴィータと共にいたのろいうさぎがすずかの背後へと回り込む。

 

*スキルカード エナジードレイン*

 

 直後、のろいうさぎはスキルカードを発動する。すると、すずかの体から力が抜けて、そのまま戦闘不能になってしまった。

 

「なんだ、やっぱり大したことねぇ」

 

 瞬く間に二人を片付けてしまう、ヴィータ。この分では、残った一人も大したことはないだろう。やっぱり今からでも浩樹と相手を交換して貰うかと、ヴィータは浩樹と佳奈が戦う空域へと視線を移した。一対一で空戦を繰り広げる双子の兄妹に、ヴィータは感心した様子で口笛を吹く。

 

「あっちはやんじゃねぇか」

 

 流石に始めたばかりとあって、幾らかぎこちなさはあったが、飛来する弾丸を回避する浩樹の空中機動も浩樹の豪腕を上手く刃で受け流す佳奈の技量も。初心者だというのに目を見張る物があった。そんな光景を前に、ヴィータは考えを改め、なのはの方を向く。もしかすればあいつも。そう考えたからだ。

 

「気が変わった。続きやっぞ」

 

 グラーフアイゼンを突きつけながら告げるヴィータを前に、なのはが焦る。

 

「わわっ。どうしよう、レイジングハート」

『私を相手に向け、こちらのスキルを使ってください』

 

 指示されたのは、初期デッキに入っていた二枚のスキルカードのうちの一枚。急ぎそれを発動する。

 

「いくよっ。ディバインシューター!」

 

 スキルを発動すると、桃色の光を持った五つの弾がなのはの指示のもとで飛んでいく。

 威力はそこそこの当たり障りの無いシンプルな魔力弾だ。シンプル故に様々な応用が効かせられる利点があるのだが、初心者らしい殆ど直線軌道の攻撃だ。だが、その分速度は速い。

 

「……中々だな」

 

 シールドを発動し、ヴィータは危なげなくなのはの攻撃を防ぐ。そうして防ぎ切った後、シールドを解きながら、新たに鉄球を八つ作り出し――

 

「オラァ!」

 

 撃ちだした。

 

『ナノハ!』

「うん!」

 

 防ぎきれるとは思わず、レイジングハートに褒められた飛行技能を活かしての回避を、なのはは選択する。

 一先ず上へと飛び、そこから始まる急制動急展開。迫る鉄球を避けるどころか、お互いにぶつけ合って相殺させていく。

 

『三機撃墜、残り五機――残り二機――対象、全て破壊しました』

「やった!」

「ゆだんたーてきだ!」

「っ!」

 

 鉄球を避け切り、安心したところを間髪入れずにヴィータは強襲する。

 

「ウォラ!」

 

 回避も防御も間に合う訳もなく。真上からのヴィータの強襲を受けたなのはは、そのまま吹き飛ばされた。

 

「飛行はなかなかだけどな!逃げ足だけじゃ、デュエルには勝てねぇ!」

 

 勝ち誇った様子のヴィータ。そんなヴィータを前に、我慢できなくなったのか、彼女の愛機が水を差す。

 

『……一応言うが、油断大敵だ。たーてきではない』

「……う、うっせー! 大体あってっからいいんだよ!」

 

 一言余計な愛機へと噛み付かん勢いのヴィータ。その顔は先程までの狩人のような顔から年相応の少女のものへと変わっていて――すぐに狩人のそれへと舞い戻る。視線の先。爆炎の晴れた先に居たのは、ヴィータが吹き飛ばしたなのはである。

 よもやN+相手に、自分の一撃を耐え切れるだけの地力があったとはにわかに考えづらかったが、それもそこまで。新たな鉄球を作り出し、ヴィータはその手に握る。

 

「案外しぶてーみたいだが、これで終いだ」

「……」

「テメェ」

 

 肩で息をしながら、満身創痍であるはずなのに、なのはの眼力は衰えない。まだ何か、そう考えている瞳は、ある男の瞳によく似ていた。ロケテストの際に自分の圧倒的有利で進み、誰もがヴィータの勝利を確信していたであろう試合において、男がその瞳になった直後から逆転された為に、ヴィータの敗北で終わってしまった。

 だからこそ、ヴィータはなのはを前に、初めて警戒する。

 

(まだ諦めてねぇのかよ)

 

 どうしようもないはずだ。まだスキルカードこそ一枚しか見せていないが、何が来ようときっちり対応する自信はあるし、そもそもN+がスキルカードを使ったところで、限界まで強化された自分へは然したるダメージも与えられないはずである。

 そのはずなのに。瞳の力は揺るがない。

 

「喰らっとけ!」

 

 焦りを覚え、ヴィータは鉄球を放つ。満身創痍のなのはは動かない。動けないのか、動かないのか。ヴィータがその判断を付ける前に、鉄球はなのはのもとへ殺到した。

 爆発。爆煙が辺りを包む。

 

(やっぱ、ハッタリか……?)

 

 気合だけでどうにか出来るほどのスキルがあった訳でもないはずだ。それでも、一発逆転狙いのスキルが来ないとも限らないため、警戒は怠らず。だからこそ、爆煙のはるか上空。足から伸びる桃色の羽を大きく広げたなのはが、何事かを始めようとしていることに、ヴィータは気がついた。

 

「カードリリース ノーマル二枚! カードフュージョン! ストライカー……チェンジ!」

「なっ!?」

「ドライブレディ! リライズアップ!」

 

 直後、光に包まれたなのは。なのはの纏っていた制服は形を変え、幾らかの装甲のついた白いドレスへと変化し、レイジングハートもまた、魔法の杖のような形から砲台を彷彿させる槍のような形へと変わった。新たななのはのアバターを前に、「んげっ」とヴィータが心底嫌そうな声を漏らす。

 

「『セイクリッド』かよ!」

 

 自分に煮え湯を飲ませた男と同じチームにいた、セイクリッドの少女を思い出す。ロケテスト1位。男と同じく、自分を負かした相手の顔。舌打ちを一つ漏らし、ヴィータはセイクリッドの特徴を思い出す。堅牢な防御力と一撃必殺の長距離砲。これだけ空いている距離も、完全になのはの間合いだと、自覚した。

 

「スキルカード、スラッシュ!」

「こんの!」

 

 突撃するには距離があり、回避も間に合わない。ヴィータは慌ててシールドを展開する。

 

「ディバイン……バスター!!」

 

 直後、レイジングハードの穂先から、ディバインシューターと同じ光の砲撃が放たれた。

 

 

***

 

 

 なのはの砲撃が炸裂したのと同じ頃。

 

「……成程」

 

 弾幕を張って浩樹の進撃を食い止めながら、何か秘策はないかと考えていた佳奈は、なのはの方を見ていた。飛行技能もそうだが、一番目を引いたのは、ストライカーチェンジ。N+のカードを二枚使っていたのは、佳奈の視力一.二を誇る双眼がはっきりと認識していた。

 

「大体分かった。行けそうかな、ジェミニ」

『ええ、カナ。時間さえ稼げれば、デッキに入っているN+のカードを使い、ストライカーチェンジが可能です』

「了解。じゃあスキルカードから使おうか!」

 

 言うが早いか、カナの手にスキルカードが現れる。

 

「スキルカード スラッシュ!」

 

 それをそのままキュートジェミニへと装填し――発動し――引き金を引いた。

 

「アクアバレット! フルオートだ!」

 

 通常の射撃と違い、スキルカードによる射撃は原則弾丸を使わない。使用するのは魔力だ。

 その為、引き金を絞ったままにすれば、結果は佳奈の言うとおり。フルオートで撃ち出される。

 

「くそっ」

 

 単発の弾丸であれば幾らかは弾けもするが、流石にフルオートでばらまかれる弾丸には対応しきれず、浩樹は自ら距離を開けながら、フルオートでばらまかれる弾丸を只管に回避していく。隙をついて、再び接近したいところではあったが、魔力消費お構いなしの弾幕に対して、浩樹のスキルカードには有効打が入っていなかった。

 

(好機!)

「行くよっ、キュートジェミニ!」

『はい!』

「カードフュージョン! ストライカーチェンジ! リライズアップ!」

 

 光に包まれ、佳奈のアバターの姿が変わる。

茶色のローファーと黒の指ぬきグローブはそのままに、ピッチリとした黒のパンタローネパンツに、半袖の白いブラウスと燕尾服のような裾のついた袖のない黒の上着。

 右手に持ったCJ-01を一凪ぎし、左手を突き出せば、そこにCJ-02。白ではなく黒に染まったCJ-01の同型機が現れた。

 

「もうちょっと可愛い色が良かったなー」

『カッコイイですよ、カナ』

「格好良いのはアリサちゃんの役だよ」

 

 言いながら、佳奈は空中に弾丸を作り出す。その弾丸を手に取ることはなく、リボルバー部分を出した状態のCJ-01と02を動かすことによって装填し、リボルバーを収納。装填を終えると、佳奈は視線を浩樹へと移した。油断なく構えているが、そもそも自身の射程でないにも拘らず待ちを選択した時点で、恐らく本人も気がついているのだろうと、佳奈は察する。

 今この瞬間、浩樹よりも佳奈の方が強くなったことに。

 

「容赦する気はないけどね? さーてと。じゃあ、お兄ちゃん?」

「……なんだいマイシスター?」

「負ける覚悟は出来ているかぁっ!!」

 

*スキルカード アクアバレット*

 

 先程から使いまくっているアクアバレットのカードを再びスラッシュ。ガチャリと金属音を伴い構えた二丁のキュートジェミニの銃口に、弾幕を貼っていたときよりも大きい、円錐が作り出される。二つでなく、一つ。その代わり、特大サイズのそれの頂点が浩樹の方へと向けられ、ギュンギュンと唸りを上げるさまは、まるでドリルであった。

 

「必殺!」

「殺!?」

「コーラルブラスト!」

 

 かちりと引き金を引いた直後、巨大な水のドリルが、唸りとともに撃ち出された。その巨大さはあるものの、自身が回転していることもあって、その速度はピカイチだった。反撃しようとすら思えぬ程の一撃に、迷わず回避を選択して避けようとするが、その巨体に見合わぬ俊敏さで、水のドリルは浩樹へと肉薄する。

 

「怖いわ!」

『……あのサイズだと、スキルカードの関係上、足を止めて反撃って選択肢はそもそもないし、シールドは抜いてきそうだし、……浩樹』

「なんだアルハ」

『ドンマイ!』

「ぶっ飛ばすぞ、テメェ!」

 

 グンッっと体を動かし、水のドリルをギリギリで回避する。若干掠ったが、戦闘不能に陥る程ではなかった。そのことに安堵して、再びドリルが迫る前に佳奈を接近しようと、体に力を込めた直後。

 

「がっ!?」

 

 浩樹の額へ何かが当たった。続いて、腹部、肩と次から次へと攻撃が当たっていく。

 

『相手の子の射撃だね。実弾の方』

「さっき装填してたやガフッ!?」

 

 再び額に攻撃を当てられて仰け反り、意図せず見上げた頭上に、Uターンしてきたらしき水のドリルが更なる唸りを上げて接近してくる光景が、浩樹の視界へと飛び込んできた。

 回避なりシールドを張るなりしようにも、先程から嫌というほどの魔力を込めた佳奈の弾丸が、浩樹の初動すらも許さない。

 

「ちょっ、待っ」

 

 言葉は最後まで音になることはなく。とうとう避けきれなくなった浩樹へ、水のドリルがぶつかり、そのまま炸裂した。

 ハジけた水が霧となって暫く周辺を覆う。そうなってしまうと追撃は出来ず、佳奈はCJ-02を一旦消し、丁寧に一発ずつ、新たな弾丸をCJ-01へと装填していく。そして漸くそれが晴れた時、フラフラしながらもまだ意識を保っているらしい浩樹の姿を佳奈は見つけた。

 

「むぅ、決めきれてないか」

『どうやらセイクリッドのようですね。流石に頑丈です』

「なのはちゃんと一緒かー」

 

 やっぱり仲良しだなーと思いながら、ガチャリとキュートジェミニを構える佳奈。

 

「とりあえず止めね」

 

 兄相手に容赦はしない。虫の息の浩樹相手に五回のリロードを挟んだ合計四十八発の弾丸を叩き込み、オーバーキルして完全に浩樹を沈黙させると、佳奈はカッコつけるように銃口を口元へと持ってきて、上がっていた硝煙を吹き飛ばす。刃がついているから、クルクルと回せないことが残念だった。

 

「……あのー、もういいですか?」

 

 おっかなびっくりと行った様子で、エキシビジョンマッチを行っていた少女が佳奈へと声をかける。

 そんな彼女の言葉に、佳奈は首を傾げた。

 

「えっと、どちら様?」

 

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